働き方改革の記事

<厚生労働省の概算要求>

平成30年度厚生労働省所管予算概算要求関係の資料が発表されました。その中で、働き方改革に関連する戦略的な重点要求(ポイント)は、次のように示されています。

 

同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善

 ・「同一労働同一賃金導入マニュアル」の作成・周知啓発

 ・ キャリアアップ助成金の新たな加算の仕組み創設

 

長時間労働の是正や柔軟な働き方がしやすい環境整備

 ・ 労働時間の縮減等に積極的な企業等への助成金の拡充

 ・ 医療従事者・トラック運転者・建設業従事者など、業種ごとの取組の支援

 ・ 雇用型・自営型テレワークの就業環境の整備

 ・ 副業・兼業の普及推進

 

生産性向上、賃金引上げのための支援

 ・ 介護や生活衛生の分野における生産性向上のためのガイドライン作成

 ・ 保育・介護事業所におけるICT化の推進や介護ロボットの活用促進

 ・ 生産性向上に資する設備投資への助成など雇用管理改善に対する支援

 

女性・若者の活躍の推進

 ・ 子育て等により離職した正社員女性等の復職の支援

 ・ 男性の育児休業の取得促進

 

人材投資の強化、人材確保対策の推進

 ・ 雇用管理改善に対する助成

 ・ 介護未経験者への入門的研修

 

治療と仕事の両立、障害者・高齢者等の就労支援

 ・ 両立支援コーディネーターの育成・配置の推進

 ・ ハローワークへの専門職員の配置などによる精神障害や発達障害などの支援

 ・ 継続雇用等を行う企業への助成の拡大

 

<働き方改革の特色>

働き方改革は、20168月に安倍政権が閣議決定した経済対策です。働き方の抜本的な改革を行い、企業文化や社会風土をも含めて変えようとするものです。

労働基準法などが、立法権(国会)により制定・改正されて、企業と労働者との間に介入するのとは違い、行政権(内閣)が企業に働きかけ、やがては社会風土をも変革しようとするものです。

それでも、働き方改革が働く人の視点に立ち、企業文化、ライフスタイル、働き方を変革させようとするものである点では、労働基準法などと同じ視点に立っているといえます。

 

<注意したい業種>

「長時間労働の是正や柔軟な働き方がしやすい環境整備」という項目の中に、医療従事者、トラック運転者、建設業従事者が具体的に示されています。

ここの部分は、労働者である医療従事者、トラック運転者、建設業従事者を救うため、行政が介入する意図を示していると考えられます。

 

<医療従事者の労働条件の改善>

医療従事者、特に医師は高給取りであることが多く、残業代など必要ないと勘違いされ、また、人の命を預かる仕事なので、長時間労働もやむを得ないという風潮があります。

たしかに、病院や医師と患者との関係は、患者のためにベストを尽くす委任契約でしょう。しかし、病院と医師との関係は雇用契約です。労働基準法も労働安全衛生法も、その他の労働法も適用されます。

最近になって、若手医師やインターンなどから、病院に対して残業代を請求する訴訟が提起され、最高裁で病院側敗訴の判決が出るようになって注目を集めています。

病院側が医師を労働者として扱わず、労働基準法違反を続けていたのですが、これを不服に思った医師が訴えたら、病院側が敗訴したので全国の病院が驚いたというわけです。

特定の業界や業種の中で、法令違反の慣行が続いていたところ、誰かが訴えを起こして、その慣行が間違いであることが公にされてしまうと、急いで是正しないと経営が危険にさらされてしまいます。

 

<トラック運転者、建設業従事者の労働条件の改善>

トラック運転者や建設業従事者は、1回現場に出ていくらの賃金という扱いをされることが多いのです。会社とこれらの労働者との間に請負契約があるかのように扱われています。しかし、会社の指定した時間に現場に行き、会社の指示に従って働いているのですから雇用契約です。もちろん、労働基準法の適用がありますから、残業手当も、年次有給休暇もあります。

最近になって、過労死の問題が多発したこともきっかけとなり、これらの業界の従事者が自分たちの権利を強く認識するようになりました。退職後に会社に対して多額の未払い残業代を請求することも珍しくなくなりました。一人が上手くいくと、仲間も真似をするというパターンで、会社の経営が危機にさらされることもあります。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

近々病院、運送業、建設業に行政のメスが入るのは、厚生労働省の予算関連の情報を見ても明らかです。

働き手の皆さんから一斉に権利を主張される前に、あるべき姿を整えてしまうのが、経営者側にとって大切だと思います。

具体的なことは、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.09.08.解決社労士

<政府の方針>

政府は、少子高齢化対策を継続的に強化しています。

そして、少子高齢化による労働力不足に対応するため、政府は計画案で副業・兼業を推進する方針です。企業に対しても、副業・兼業を容認するように求めています。

 

<1つの会社でフルに働く場合>

1日8時間、週5日勤務で、月給40万円の人がいるとします。

健康保険、厚生年金、労災保険、雇用保険は勤務先で加入します。

プライベートのケガや病気で長期間働けない場合、働けない期間については、健康保険で月給の3分の2程度の傷病手当金が支給されます。月額27万円弱の支給です。

業務上あるいは通勤途上のケガで働けない場合、労災保険などで月給の8割程度が補償されます。月額32万円程度です。

失業した場合には、雇用保険の失業手当(求職者給付の基本手当)が支給されます。

 

<ダブルワークの場合>

A社で週25時間働き月給25万円、B社で週15時間働き月給15万円という、ダブルワークの人がいるとします。

健康保険と厚生年金は、A社が大きな会社で特定適用事業所の要件にあてはまると、A社で加入することになりますが、そうでなければ、国民健康保険と国民年金に加入することになります。

プライベートのケガや病気で働けない場合、国民健康保険からは傷病手当金の支給がありません。

国民年金は、厚生年金よりも支給額が少なかったり、支給開始年齢が遅かったりの不利があります。

労災保険はA社とB社の両方で入ります。業務上あるいは通勤途上のケガで働けない場合、労災保険などで月給の8割程度が補償されます。A社の方で発生した労災なら月額20万円程度ですし、B社の方で発生した労災なら月額12万円程度です。両方もらえるわけではありません。

雇用保険は、A社の方で入ります。B社では入りません。失業したときの手当は、A社の給与だけが基準となります。

 

<予想される法改正>

政府が副業・兼業を推進するには、ダブルワークについて社会保険・労働保険での明らかな不利を解消するような法改正が不可欠でしょう。

法改正があってから対応したのでは、他社に後れを取ってしまいます。これから出てくるであろう法改正案の情報を踏まえ、会社の仕組み、就業規則、運用を速やかに変えていく必要があります。

こうしたことについて、社内に専任者がいない場合には、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.08.15.解決社労士

<兼業はバレるのか>

会社が給与から所得税や住民税の徴収手続きを行っている場合に、社員が別に収入を得ていれば、住民税の金額が会社で手続きした金額よりも多いので、別収入があることは判明します。

しかし、その具体的な内容まではわかりません。

本当は別のところでアルバイトをして収入を得ていても、FX(外国為替証拠金取引)によるものだと嘘をついたらバレないかもしれません。

ただ、この場合に、一歩踏み込んで「すごいね!私にも教えて欲しいな。社内ではあなたがアルバイトをしているというウワサがあるけど、その疑いを晴らすために、明日、FXの年間損益報告書を持って来てよ。それで、疑いはスッキリ晴れるから」ということになれば、ウソをウソでごまかしきれなくなる可能性が高くなります。

 

<素人判断では>

会社に無断でアルバイトしている社員がいたら、会社目線の素人判断からは、「うちの会社とアルバイトのどちらを選ぶかハッキリしてもらおう」「アルバイトを辞めないならクビにしよう」などという意見が出てくるものです。

そして、本当にクビだと言ってしまった場合には、その99%が不当解雇になります。その時点では、自分が悪かったと思う社員でも、後から不当解雇であることに気づいて、その後の給与・賞与と慰謝料を請求してくるかもしれません。

 

<不当解雇にはならない条件>

勤務時間外の行動は、基本的に自由です。社員の兼業を禁止するためには、就業規則に兼業禁止を定めて、兼業禁止を労働契約の内容にしておく必要があります。

だからといって、すべての兼業を禁止できるわけではありません。

ましてや、何らかの処分をするのであれば、兼業により十分な休養が取れないために会社での業務遂行に支障を来すとか、会社の名誉や信用を著しく害するとか、ライバル会社での兼業であるためにお客様から不信感を抱かれるなどの特別な事情が必要となります。

こうした特別な事情があって、口頭注意、書面注意をしても、なお兼業を続けるのであれば、懲戒処分を検討することになります。

しかし、この場合でも、懲戒解雇まで許されるケースは極わずかです。

 

<政府の政策>

「働き方改革実現会議」(議長・安倍晋三首相)の会合で、副業・兼業の環境整備を進める方針が打ち出されています。政府は、会社員が副業・兼業をしやすくするための指針づくりに乗り出しています。

つまり、政府は企業に対して副業・兼業の容認を求める態度を明らかにしています。

企業成長のためには、こうした政策を無視できないでしょう。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

そうは言っても、やはり社員が無断でアルバイトをするのは阻止したい、会社の業務に専念して欲しいという場合には、会社の実情に合った対応が必要です。

こんなときは、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.07.17.解決社労士

<行政運営方針>

東京労働局が「平成29年度 東京労働局行政運営方針」を策定しました。(平成29年4月3日発表)

東京労働局の今年度の最重点課題として、次の2つが掲げられています。

・「働き方改革」の推進などを通じた労働環境の整備・生産性の向上

・「全員参加の社会」の実現加速

2つ目は、安倍政権の一億総活躍プランが反映されたものです。

 

<労働環境の整備・生産性の向上>

この最重点課題を達成するための取組として、次の4つが掲げられています。

・長時間労働の是正による良質な労働環境の確保

長時間労働の抑制・過重労働解消に向けた取組、ワーク・ライフ・バランスの推進等

・非正規雇用労働者の待遇改善等

― 非正規雇用労働者の正社員転換・同一労働同一賃金の実現に向けた待遇改善の推進、最低賃金の周知・履行確保等

・人材確保対策の推進や労働生産性の向上等による労働環境の整備

― 労働者のキャリア形成に係る支援策の普及促進、全産業の労働生産性の向上等

・労働者が安心して健康に働くことができる職場づくり

労働条件確保、労働災害防止対策、メンタルヘルス・健康確保対策、労災補償の迅速・適正処理

 

<会社として特に気をつけること>

東京都内の労働基準監督署が、長時間労働、最低賃金、労働基準、労災隠しについて、監督という名の調査・指導を強化することは明らかになったわけです。

・長時間労働の是正 ― 月間法定労働時間を80時間以上上回って勤務する従業員がいれば是正が求められるでしょう。具体的には、毎月の勤務時間が254時間を超えないことが求められます。

・最低賃金の順守 ― この数年、東京都の最低賃金は10月の最初に引き上げられています。今の時点で最低賃金を上回っていても、10月に再度確認が必要です。定額(固定)残業代のある会社や、試用期間の賃金を低く設定する会社は、特に注意が必要です。

・労働基準法の順守 ― 法改正が行われていますので、数年にわたって就業規則変更届が労働基準監督署に提出されていない会社には、監督が入りやすいことになります。

・労災隠しの禁止 ― 労災隠しは犯罪ですが、具体的には「労働者死傷病報告(休業4日以上)」を労働基準監督署に提出しないことをもって、違法な労災隠しとされています。特に建設業では、提出漏れが多いため監督が入りやすいでしょう。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

長時間労働の是正と最低賃金の順守は、取締役など経営者を除く従業員全員の適正な労働時間把握がベースとなっています。

経営者ではない役職者を、管理監督者扱いにして残業代を支払わず、労働時間の管理もしていない会社は、大規模な是正を求められることになるでしょう。

会社の意図するところを適法に実施するためにも、労災手続きを速やかにするためにも、ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.04.10.解決社労士

<制限の根拠1

ダブルワークを制限する根拠として、労働契約の存在があります。

労働者は使用者との間に労働契約を交わしていますから、労務提供の義務を負っています。しかも、疲れてため息をつきながらの勤務では不完全です。使用者は労働者に対して、健康状態を保ちながらの勤務を求めることができます。

この根拠からすると、他の会社の非常勤取締役としてのわずかな活動や、休日に軽易な労働をしている場合には、こうした兼業を制限できないことになります。

反対に、出勤日に深夜トラックの運転や、深夜2時までバーでアルバイトするなどは、負担が大き過ぎますから制限することに合理性が認められます。

 

<制限の根拠2

もう一つの根拠として、労働者の職業選択の自由と会社の事業活動の自由との調整があります。

誰にも、公共の福祉に反しない限り、職業選択の自由があります。つまり、どのような仕事をするかは基本的に自由です。〔日本国憲法221項〕

一方で、会社にも営業の自由があって、その根拠も職業選択の自由にあります。

そして、両方の自由を調整する原理として「公共の福祉」があるのです。どちらか片方の自由が優先されてはならず、お互いにバランス良く制限し合うということです。

このことからすると、ライバル会社で副業をすることや、お客様から信頼を求められる社員が性風俗産業でアルバイトをするなどは制限されます。ましてや違法な副業をすることは許されません。

 

<就業規則の効力>

たとえダブルワークを一切禁止する定めが就業規則にあったとしても、具体的な副業が本業の妨げにならず、本業の会社に不利益を与えないのならば、それは禁止することができません。禁止の合理的な根拠が無いからです。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

就業規則に定めても無効なことや、有効性が制限されることもあります。もちろん定め方次第ということもあります。

会社を守るためにも、一度、信頼できる社労士に就業規則をチェックさせてはいかがでしょうか。

 

2017.03.12.解決社労士

<公務員の場合>

公務員が得る報酬の財源は税金ですから、特に職務専念義務が重いのです。

ほとんどの場合、ダブルワーク禁止です。親から相続したマンションを経営して収入を得ているのがダブルワークにあたるという理由で、辞めさせられるという実例もありました。

 

<民間企業の場合>

会社では、会社が給与を支払っているのですから、社員が職務に専念しなかったり、ダブルワークをしたりということに対して、すべて大目に見ることもできるわけです。

 

<なぜダブルワークしたいのか?>

ダブルワークを希望する人の大半は、今の収入では足りないので、別に収入を得るために別の仕事をしなければならないと言います。会社が給料を上げてくれれば、ダブルワークの必要などないと言うのです。

中には別の仕事もしてみたい人、家業を手伝っていたり引き継いで行っている人もいますが少数派です。

 

<なぜダブルワーク禁止なのか?>

会社としては、社員が別の会社で働くと、体力・精神力を消耗して疲れてしまい、自分の会社で充分な働きができないのではないかという不安があります。実際にそうなるケースが多いものです。

また、社員がライバル会社で働いたら、会社の機密が漏れるかもしれません。ただ、これは会社の重要な情報を握る立場にある人限定で考えればよいことです。社員一般にあてはまる話ではありません。

むしろ、女性社員が性風俗店でアルバイトしたら、会社の評判が落ちるのではないか、さらには男性社員でも違法カジノでアルバイトしたら、摘発されたとき自分の会社の名前もマスコミに報道されるのではないか。

こうした不都合が発生することを恐れて、会社としてはダブルワークを禁止したいのです。

 

<ダブルワーク禁止の有効性>

それでは就業規則でダブルワークを禁止したり、社員に「ダブルワークしません」という念書を出してもらったりした場合、有効なのでしょうか。

基本的には、憲法が職業選択の自由を保障していますから、原則として効力がないということになります。

では、就業規則や労働条件通知書にダブルワークをした場合の懲戒処分や解雇の規定を置いたら、その効力はどうなのでしょうか。

この場合には、ダブルワークのすべてについて定めたとしても、すべてが有効になるわけではありません。

実際に有効とされるためには次の2つの条件をクリアする必要があります。

  • 具体的なダブルワークの中身が会社に大きな不都合をもたらし、懲戒処分や解雇をすることについて、客観的な合理性が認められること
  • 懲戒処分や解雇をすることについて、社会一般の常識から考えても仕方のないケースだといえること

これらは、労働契約法15条と16条の規定によるものです。

 

<留学生の場合>

ちなみに留学生の場合には、勉強のために入国しているのですから、本来の目的と違うアルバイトなどの活動は制限されています。

留学生は資格外活動許可を受けた場合に限り、アルバイトを行うことができます。一般的に、アルバイト先が風俗営業または風俗関係営業が含まれている営業所でないことを条件に、1週28時間以内を限度として勤務先や時間帯を特定することなく、包括的な資格外活動許可が与えられます。また、在籍する大学などの長期休業期間は、1日8時間以内に延長されます。

そして、資格外活動の許可を受けずに、あるいは条件を超えてアルバイトに従事した場合は、不法就労となります。

ですから、夏休みなど長期休暇を除けば、留学生がダブルワークをするというのは難しいでしょう。

 

2016.04.29.