働き方改革の記事

2021/09/17|3,667文字

 

今から10年以上も前、平成192007)年1218日に、関係閣僚、経済界・労働界・地方公共団体の代表等からなる「官民トップ会議」で、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」が策定されました。

改めて読み返してみると、政府が推進してきたことの意図、これからさらに強化していく政策が読み取れます。

政府の方針に逆らった経営は、どの企業にとっても得策ではありません。

今一度、この内容を確認してみてはいかがでしょうか。

 

 

仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章

 

我が国の社会は、人々の働き方に関する意識や環境が社会経済構造の変化に必ずしも適応しきれず、仕事と生活が両立しにくい現実に直面している。

 

誰もがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たす一方で、子育て・介護の時間や、家庭、地域、自己啓発等にかかる個人の時間を持てる健康で豊かな生活ができるよう、今こそ、社会全体で仕事と生活の双方の調和の実現を希求していかなければならない。

 

仕事と生活の調和と経済成長は車の両輪であり、若者が経済的に自立し、性や年齢などに関わらず誰もが意欲と能力を発揮して労働市場に参加することは、我が国の活力と成長力を高め、ひいては、少子化の流れを変え、持続可能な社会の実現にも資することとなる。

 

そのような社会の実現に向けて、国民一人ひとりが積極的に取り組めるよう、ここに、仕事と生活の調和の必要性、目指すべき社会の姿を示し、新たな決意の下、官民一体となって取り組んでいくため、政労使の合意により本憲章を策定する。

 

仕事は、暮らしを支え、生きがいや喜びをもたらす。同時に、家事・育児、近隣との付き合いなどの生活も暮らしには欠かすことはできないものであり、その充実があってこそ、人生の生きがい、喜びは倍増する。

 

しかし、現実の社会には、

•安定した仕事に就けず、経済的に自立することができない、

•仕事に追われ、心身の疲労から健康を害しかねない、

•仕事と子育てや老親の介護との両立に悩む

など仕事と生活の間で問題を抱える人が多く見られる。

 

その背景としては、国内外における企業間競争の激化、長期的な経済の低迷や産業構造の変化により、生活の不安を抱える正社員以外の労働者が大幅に増加する一方で、正社員の労働時間は高止まりしたままであることが挙げられる。他方、利益の低迷や生産性向上が困難などの理由から、働き方の見直しに取り組むことが難しい企業も存在する。

 

さらに、人々の生き方も変化している。かつては夫が働き、妻が専業主婦として家庭や地域で役割を担うという姿が一般的であり、現在の働き方は、このような世帯の姿を前提としたものが多く残っている。

 

しかしながら、今日では、女性の社会参加等が進み、勤労者世帯の過半数が、共働き世帯になる等人々の生き方が多様化している一方で働き方や子育て支援などの社会的基盤は必ずしもこうした変化に対応したものとなっていない。また、職場や家庭、地域では、男女の固定的な役割分担意識が残っている。

 

このような社会では、結婚や子育てに関する人々の希望が実現しにくいものになるとともに、「家族との時間」や「地域で過ごす時間」を持つことも難しくなっている。こうした個人、家族、地域が抱える諸問題が少子化の大きな要因の1つであり、それが人口減少にも繋がっているといえる。

 

また、人口減少時代にあっては、社会全体として女性や高齢者の就業参加が不可欠であるが、働き方や生き方の選択肢が限られている現状では、多様な人材を活かすことができない。

 

一方で働く人々においても、様々な職業経験を通して積極的に自らの職業能力を向上させようとする人や、仕事と生活の双方を充実させようとする人、地域活動への参加等をより重視する人などもおり、多様な働き方が模索されている。

 

また、仕事と生活の調和に向けた取組を通じて、「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)」の実現に取り組み、職業能力開発や人材育成、公正な処遇の確保など雇用の質の向上につなげることが求められている。ディーセント・ワークの推進は、就業を促進し、自立支援につなげるという観点からも必要である。

 

加えて、労働者の健康を確保し、安心して働くことのできる職場環境を実現するために、長時間労働の抑制、年次有給休暇の取得促進、メンタルヘルス対策等に取り組むことが重要である。

 

いま、我々に求められているのは、国民一人ひとりの仕事と生活を調和させたいという願いを実現するとともに、少子化の流れを変え、人口減少下でも多様な人材が仕事に就けるようにし、我が国の社会を持続可能で確かなものとする取組である。

 

働き方や生き方に関するこれまでの考え方や制度の改革に挑戦し、個々人の生き方や子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な働き方の選択を可能とする仕事と生活の調和を実現しなければならない。

 

個人の持つ時間は有限である。仕事と生活の調和の実現は、個人の時間の価値を高め、安心と希望を実現できる社会づくりに寄与するものであり、「新しい公共」の活動等への参加機会の拡大などを通じて地域社会の活性化にもつながるものである。また、就業期から地域活動への参加など活動の場を広げることは、生涯を通じた人や地域とのつながりを得る機会となる。

 

(「新しい公共」とは、行政だけでなく、市民やNPO、企業などが積極的に公共的な財・サービスの提供主体となり、教育や子育て、まちづくり、介護や福祉などの身近な分野で活躍することを表現するもの。)

 

仕事と生活の調和の実現に向けた取組は、人口減少時代において、企業の活力や競争力の源泉である有能な人材の確保・育成・定着の可能性を高めるものである。とりわけ現状でも人材確保が困難な中小企業において、その取組の利点は大きく、これを契機とした業務の見直し等により生産性向上につなげることも可能である。こうした取組は、企業にとって「コスト」としてではなく、「明日への投資」として積極的にとらえるべきである。

 

以上のような共通認識のもと、仕事と生活の調和の実現に官民一体となって取り組んでいくこととする。

 

1 仕事と生活の調和が実現した社会とは、「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」である。

具体的には、以下のような社会を目指すべきである。

 

1. 就労による経済的自立が可能な社会

 経済的自立を必要とする者とりわけ若者がいきいきと働くことができ、かつ、経済的に自立可能な働き方ができ、結婚や子育てに関する希望の実現などに向けて、暮らしの経済的基盤が確保できる。

 

2. 健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会

 働く人々の健康が保持され、家族・友人などとの充実した時間、自己啓発や地域活動への参加のための時間などを持てる豊かな生活ができる。

 

3. 多様な働き方・生き方が選択できる社会

 性や年齢などにかかわらず、誰もが自らの意欲と能力を持って様々な働き方や生き方に挑戦できる機会が提供されており、子育てや親の介護が必要な時期など個人の置かれた状況に応じて多様で柔軟な働き方が選択でき、しかも公正な処遇が確保されている。

 

2 このような社会の実現のためには、まず労使を始め国民が積極的に取り組むことはもとより、国や地方公共団体が支援することが重要である。既に仕事と生活の調和の促進に積極的に取り組む企業もあり、今後はそうした企業における取組をさらに進め、社会全体の運動として広げていく必要がある。

 

そのための主な関係者の役割は以下のとおりである。また、各主体の具体的取組については別途、「仕事と生活の調和推進のための行動指針」で定めることとする。

 

取組を進めるに当たっては、女性の職域の固定化につながることのないように、仕事と生活の両立支援と男性の子育てや介護への関わりの促進・女性の能力発揮の促進とを併せて進めることが必要である。

 

(1)企業とそこで働く者は、協調して生産性の向上に努めつつ、職場の意識や職場風土の改革とあわせ働き方の改革に自主的に取り組む。

 

(2)国民の一人ひとりが自らの仕事と生活の調和の在り方を考え、家庭や地域の中で積極的な役割を果たす。また、消費者として、求めようとするサービスの背後にある働き方に配慮する。

 

(3)国民全体の仕事と生活の調和の実現は、我が国社会を持続可能で確かなものとする上で不可欠であることから、国は、国民運動を通じた気運の醸成、制度的枠組みの構築や環境整備などの促進・支援策に積極的に取り組む。

 

(4)仕事と生活の調和の現状や必要性は地域によって異なることから、その推進に際しては、地方公共団体が自らの創意工夫のもとに、地域の実情に応じた展開を図る。

2021/09/05|873文字

 

<トップからの情報発信>

トップから、長時間労働の削減や休暇の取得促進など働き方改革の推進について、明確な情報発信を定期的に行う必要があります。

働き方改革は、管理職が中心となって推進しなければ進みません。

ところが、管理職の中に「労働時間の削減や休暇の増加で業務が滞るのではないか。その場合には、自分が責任を問われたり、負担が増えたりするのではないか」という疑念があったのでは、消極的にならざるを得ません。

トップが、会社の経営課題の一つとして働き方改革を掲げ、朝礼、社内報、電子掲示板など、あらゆるチャネルを活用して発信する必要があります。

また1回だけ発信しても、時間が経てば、社員の中に「まだトップはその気になっているのだろうか。気が変わっていないだろうか」と不安になります。

このことから、情報発信は繰り返し定期的に行わなければなりません。

 

<経営幹部からの情報発信>

トップが働き方改革の推進に向けたメッセージを繰り返し発信していても、役員など経営幹部の意識が変わらなければ社内に浸透しません。

経営幹部が、中期経営計画など全社の経営計画を策定する時に、トップからの情報発信を受けての内容を盛り込み、目標を数値化したうえで全社員に発信する必要があります。

トップの立場からすると、経営幹部にこうした情報発信をさせることで、自ら推進することに対する責任を負わせるということになります。

 

<社外に向けた情報発信>

所定外労働の削減や年次有給休暇の取得増加によって、お取引先やお客様など社外にも影響が出てきます。

こうした影響の原因が働き方改革の推進にあること、働き方改革にどのようなメリットを期待して推進するのかを社外にも示す必要があります。

お取引先に対しては、有能な人材の確保ということが最も説得力を帯びてくるでしょう。

また、お客様に対しては、社員の生活を大切にしたいという思いをアピールすることができます。

働き方改革は、多くの企業が同時に推進し、社会全体で盛り上げなければなりません。

社外に向けた情報発信は、企業の社会的責任を果たすうえでも必要なものです。

2021/08/24|803文字

 

<年次有給休暇の取得促進>

労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持を図るための年次有給休暇は、その取得率が50%前後の水準で推移しています。

こうした現状を踏まえ、有給休暇取得促進のため、1日単位にこだわらない取得が認められるようになっています。

 

<半日単位の取得>

労働者が希望し、会社が同意した場合であれば、半日単位で有給休暇を消化することが認められています。

ただし、「午前中で終わる用事のためなら、1日休まなくても半日有給でいいですね」と会社側から働きかけるような、1日単位での有給休暇の消化を阻害する行為は認められません。

 

<1時間単位の取得>

5日以内なら労使協定を交わすことによって、1時間単位の年次有給休暇取得も可能です。〔労働基準法第39条第4項〕

また、労使協定の定めによって、対象者の範囲を限定することもできます。

この場合には、異動などによって対象者から外れた場合の取り扱いについて、あらかじめ労使で取り決めておく必要があります。

 

<1時間単位なら不安も少ない>

年次有給休暇の取得を申し出るには、労働者の側に次のような不安があります。

・みんなに迷惑がかかるのではないか

・休み明けに忙しくなるのではないか

・職場が年次有給休暇を取得できる雰囲気ではない

・上司が嫌な顔をしそうだ

1時間単位で希望の時間だけ年次有給休暇を取得する場合には、こうした不安も軽減されるでしょう。

 

<解決社労士の視点から>

年次有給休暇を1時間単位で取得できるようにする/しないは、それぞれの会社の自由ですが、法的権利であると思い込んでいる労働者が多いのも事実です。

それほど労働者のニーズが高い一方で、この制度の導入は会社の負担が大きくありません。

働き方改革は、企業が働き手の必要と欲求に応えつつ生産性を向上させる急速な改善だと考えられますから、1時間単位の年次有給休暇の導入は優先順位が高いといえるでしょう。

2021/08/11|1,031文字

 

<顔出ししたくない人の言い分>

オンライン会議で顔出ししたくない人は、次のような主張をします。

オンライン会議に参加する前は、服装や髪型を整え、化粧をしたり、ひげを剃ったり、部屋を片付けたりと、準備に手間と時間がかかります。

参加中は、緊張した姿勢と表情を維持しなければならず、プライベートな空間を社内の人に見られます。

そもそも、会議を行うのに姿を見せる必要はなく、音声だけで話し合えるのではないかと考えます。

 

<顔出しさせたい人の言い分>

一方、オンライン会議で顔出しさせたい人は、次のような主張をします。

会社で会議を行う場合には、出社の時点で服装や髪型が整っているし、化粧やひげ剃りは済ませてあって当然だから、オンライン会議だからといって特別な負担はありません。

会議中に緊張を強いられるのも、オンライン会議に特有のことではありません。

姿を見せることによって、表情やジェスチャーによる一段高いコミュニケーションが可能となります。

そもそも、話し手が熱心に話している時、聞き手がちゃんと聞いているかどうか把握できないのでは困ります。

 

<背景の設定>

プライベートな空間を人目に晒すことが問題であれば、カメラをオフにするのではなく、背景を設定することも可能です。

ただし、テレビ番組や居酒屋の背景では不適切ですから、参加者全員で同じ背景にする、あるいは会社が作成した公式の背景を用いることも考えられます。

 

<リモートハラスメント(リモハラ)>

何とかして顔出しさせたいがために「おいこら!ちゃんと顔を見せろ!」などと暴言を吐くことや、顔出ししないメンバーの会議出席を拒否することは、リモハラとなりますので許されません。

また、他のメンバーが見聞きできる状態での叱責は、それ自体がパワハラとなります。

会議が終了してから、顔出ししなかった理由を確認し、これを踏まえて指導すべきです。

 

<解決社労士の視点から>

社員間で「常識」が対立する場合には、ルールを確定することによって解決します。

就業規則(テレワーク規程、オンライン会議規程)に、オンライン会議での顔出しについて規定を置きます。

顔出しが義務付けられているオンライン会議で、顔出しできない理由がある場合には、参加者から主催者に理由を明らかにして事前の許可を得るという規定も必要でしょう。

また、プライバシー保護の観点から、背景設定を禁止することは望ましくありません。

さらに、パワハラやセクハラについての注意規定を置くこともお勧めします。

2021/08/08|1,259文字

 

<自宅外勤務の発生>

会社が在宅勤務を命じたところ、社員の判断で自宅ではなく、友人宅、カフェ、ホテル、レンタルオフィスなどで業務を行っていたということがあります。

在宅勤務について、詳細な規程があれば、形式的にルール違反ということが多いでしょう。

しかし、大雑把なルールしか無いため、必ずしもルール違反とはいえず、迂闊に指導できないということもあります。

こうしたことでのトラブル発生を防ぐためのポイントを、検討したいと思います。

 

<在宅勤務の趣旨・目的>

在宅勤務を命じたのに、自宅で勤務しないからルール違反であり、指導や懲戒の対象となるというのは少し乱暴です。

やはり、在宅勤務を命じた趣旨・目的を軸に据えて考える必要があります。

まず、育児や介護との両立のために、本人からの希望もあって在宅勤務を命じた場合には、自宅よりも実家での勤務の方が現実的なこともあります。

自宅や実家以外での勤務であっても、配偶者の実家、兄弟の家、介護施設など、そこで業務をこなすことに合理性を見出しうる場合もあります。

つぎに、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、通勤や社内での密を避けるために在宅勤務を導入したのであれば、電車やバスで遠くに出かけて業務を行うのは趣旨に反します。

密になりやすい場所での勤務も同様です。

しかし、近所のホテルやレンタルオフィスであれば、多くの場合には、感染拡大防止の趣旨には反しないことが多いでしょう。

さらに、業務効率化の目的で在宅勤務が行われているのであれば、本人が業務に集中しやすい環境で勤務することが趣旨に適います。

たとえば、学生時代からカフェでの勉強が効率的であったという社員であれば、カフェでの勤務も趣旨に適うわけです。

 

<勤務場所の届出>

会社としては、社員がどこで業務を行っていようとも、きちんと業務が遂行されていれば基本的には問題ありません。

勤務場所は就業規則の必要記載事項でもないですし、労働条件通知書でも、雇入れ直後のものを記載すれば足りますし、将来の就業場所を含め網羅的に明示することも許されています。

しかし、勤務場所により情報漏洩のリスクが高まる、労災発生のリスクが高まる、容易に連絡がつかないなど就業管理が困難になるなどは困りものです。

これらを総合的に考えると、会社が社員に在宅勤務を指示した時点で、社員が自宅以外の場所を勤務場所としたいのであれば申し出てもらう必要がありますし、勤務場所を途中で変更する場合にも申告が必要です。

そして、その勤務場所が実質的な不都合をもたらすものであれば、会社から社員に対して、勤務場所の適正化を求めることができるようにしておくことも必要です。

これらのことから、在宅勤務を命じた場合に、社員が自宅とは異なる就業場所を希望するのであれば、会社への届出を義務付け、その就業場所が実質的な不都合をもたらすのであれば、会社は就業場所の変更を求めることができるルールとし、届出とは異なる場所での業務遂行や届出の懈怠に対しては、懲戒を規定しておくのが合理的だといえるでしょう。

2021/08/04|2,124文字

 

<働き方改革>

働き方改革の定義は、必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革実現会議の議事録や、厚生労働省から発表されている数多くの資料をもとに考えると「企業が働き手の必要と欲求に応えつつ生産性を向上させる急速な改善」といえるでしょう。

 社員は人間ですから、ある程度の時間働き続ければ肉体的精神的疲労が蓄積して効率が低下します。

休憩や休暇によってリフレッシュできれば、体力と気力が回復して生産性が高まります。

適切な労働時間で働き、ほどよく休暇を取得することは、仕事に対する社員の意識やモチベーションを高めるとともに、業務効率の向上にプラスの効果が期待されます。 

これに対し、長時間労働や休暇が取れない生活が常態化すれば、メンタルヘルスに影響を及ぼす可能性も高まりますし生産性は低下します。

また、離職リスクの上昇や、企業イメージの低下など、さまざまな問題を生じることになります。

社員のためだけでなく、企業経営の観点からも、長時間労働の抑制や年次有給休暇の取得促進が得策です。

社員の能力がより発揮されやすい労働環境、労働条件、勤務体系を整備することは、企業全体としての生産性を向上させ、収益の拡大ひいては企業の成長・発展につなげることができます。

 

<長時間労働抑制のための具体的施策リスト>

厚生労働省から「働き方・休み方改善指標」が公表されています。

この中から、長時間労働抑制に向けた働き方の改善を進めるための具体的な施策を抽出すると、次のようになります。

 

項目1:方針・目標の明確化

□経営トップによるメッセージの発信

□経営や人事の方針として長時間労働の抑制を明文化

□全社・部署・個人等での労働時間、残業時間等に関する数値目標の設定

 

項目2:改善推進の体制づくり

□長時間労働の抑制に向けた社内体制の明確化

□労働時間に関する相談窓口の設置

□長時間労働の抑制に関する労使の話し合いの機会の設定

 

項目3:改善促進の制度化

□労働時間・就労場所を柔軟にする制度( フレックスタイム制、朝型の働き方、短時間勤務制度、テレワーク制度、在宅勤務制度等)の導入

□業務繁閑に応じて営業時間を設定

□ノー残業デー、ノー残業ウィーク等、定時退社期間を設定

□勤務間インターバル制度を導入

 

項目4:改善促進のルール化

□残業の多い部下を持つ管理職への指導、改善促進

□部下の長時間労働の抑制を管理職の人事考課に盛り込む

□残業を行う際の手続を厳格化

 

項目5:意識改善

□長時間労働の抑制に関する社員向けや管理職向けの教育・研修を実施

□長時間労働抑制のための周知・啓発

□退勤時刻の終業呼びかけ、強制消灯

 

項目6:情報提供・相談

□労働時間・残業時間を社員各自に通知

□36協定による労働時間の制限を周知

□労働時間制度紹介のパンフレット等を配布

□定期健康診断以外での長時間労働やストレスに関するカウンセリング機会等を提供

 

項目7:仕事の進め方改善

□長時間労働の抑制を目的とした業務プロセスの見直し

□業務計画、要員計画、業務内容の見直し

□長時間労働の抑制を目的とした取引先との関係見直し

 

項目8:実態把握・管理

□社員の働き方や労働時間に関する意識や意向の定期的な把握

□タイムカードやICカード等の客観的な方法により労働時間を管理・把握

□管理職やみなし労働・裁量労働制等の適用者について労働時間を把握

 

これらは、あくまでもチェックリストですから、実際に施策を進めるにあたっては、この順番で進めるわけではありません。

会社の実情に応じて、順番を考えなければなりませんが、項目1:方針・目標の明確化は最優先でしょう。

次に行うべきは、多くの会社では、項目7:仕事の進め方改善だと思います。

仕事のムリ・ムダ・ムラを排除して、本当に必要な仕事だけを抽出する必要があります。

仕事は減らず、社員は減少しているのに、労働時間削減など無理な話です。

習慣的に行っている仕事の中で必要性の低い仕事をやめる、他部署とダブっている仕事はより得意な部署がまとめて行う、会議はやめて誰かに一任する、あるいは、23人の協議に委ねるなど、仕事の分量を減らす工夫も大事です。

 

<解決社労士の視点から>

いきなり労働時間を減らすと言われても、社員ひとり一人の都合があります。

周囲の社員に気を遣って、やむなくダラダラ残業をして、終業時間を合わせていた社員なら、長時間労働抑制は大助かりです。

会社にとっても、人件費の削減となりますから利害が一致します。

それでも、残業代を稼いで生活の糧にしていた社員にとっては深刻です。

高級な外車を買うために残業代を稼いでいたのなら、諦めてもらうことは難しくないのかも知れません。

しかし、実家の親に仕送りをするためであれば、転職や副業を考えるほど深刻な話になりかねません。

また、自分の仕事の出来栄えにこだわりを持っている社員は、「残業代は要らないから、思う存分、残業させてくれ」と思っているかもしれません。

企画やデザインの仕事をしている人には多いパターンです。

そこまで考えて、労働時間の削減をするのはむずかしい、時間と手間をかけられないというのであれば、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ご用命ください。

2021/07/20|842文字

 

<法令等の周知義務>

就業規則の周知義務は広く知られていますが、労働基準法についても同様に周知義務が定められています。〔労働基準法第106条第1項〕

この他、労働安全衛生法第101条第1項、じん肺法第35条の2、最低賃金法第8条にも、それぞれの法令の周知義務が規定されています。

 

<育児休業の周知義務>

現行法では、事業主が労働者本人またはその配偶者の妊娠・出産を知ったときに、育児休業等に関する制度(法令や就業規則に基づく内容)を個別に周知することが努力義務とされています。〔育児介護休業法第21条第1項〕

これが、法改正によって、令和4(2022)年4月1日からは、育児休業等に関する制度を個別に周知することが法的義務となります。〔改正法第21条〕

さらに、育児休業等の取得の意向を確認するための面談等の措置を講じることも、事業主の法的義務となります。

法改正後は、出産する女性従業員だけでなく、配偶者が出産する男性従業員に対しても周知義務を負うことになります。

法改正を知らずに、育児休業の説明を受けた男性従業員は、不安を感じるかもしれません。

来年の4月からは、法改正によって男性従業員にも育児休業制度の説明が行われ、育児休業取得の打診が行われるようになる旨、全社に向けて予め説明しておく必要があるでしょう。

 

<雇用環境整備義務>

法改正によって、周知だけでなく、育児休業を取得しやすい雇用環境を整えるため、事業主には以下の措置のいずれかを講じることが義務付けられるようになります。

・育児休業に係る研修の実施

・育児休業に関する相談体制の整備

・その他省令で定める育児休業に係る雇用環境の整備に関する措置

 

<解決社労士の視点から>

直近では、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、出生率の低下が顕著となる見込みです。

このこともあって、政府による強力な少子化対策は、これからも継続されることでしょう。

企業としては、就業規則の変更に留まらず、社内体制の整備、従業員への周知を積極的に推進する必要があるのです。

2021/06/11|990文字

 

<規制改革>

政府の規制改革推進会議では、次のような項目について、規制改革の具体的な計画が策定されています。

・行政手続の書面・押印・対面の見直し

・オンライン利用の促進

・キャッシュレス化の促進

・地方税等の収納の効率化・電子化

・民間の書面・押印・対面の見直し

・会社設立時の定款認証に係る公証人手数料の引下げ

・雇用保険給付金申請の添付書類の見直し

・居住地以外のハローワークでの給付金手続

 

<雇用・教育の変化>

働き方改革関連でも、次のステップへの方向性が示されています。

現役の労働者の戦力化だけでなく、次世代の労働力の担い手である学生に対する教育改革も策定されています。

 

<オンライン授業・リカレント教育>

・オンライン授業の普及や今後期待されるリカレント教育の実施に向けた観点から、校舎等の施設の在り方・面積等を定めている設置基準について、大学の独自性を考慮した上で、柔軟な対応ができるよう見直しを実施する。(令和3年度検討・結論、結論を得次第速やかに措置)

カレント(current)は英語で「現在通用している」、リカレント(recurrent)は「再発する」「周期的に起こる」という意味です。

リカレント教育は、就業後に必要に応じて行う「社会人の学び直し」で、新しい知識を身に付けることにより、キャリアアップや転職の武器にすることができます。

 

<大学の卒業要件見直し>

・学生が海外大学院等へ進学しやすくできるよう、必要単位を取得した場合には、4年未満であっても卒業できるよう、大学の卒業要件を見直す。(令和3年度検討・結論、結論を得次第速やかに措置)

日本の学校の入学・卒業時期が海外とは異なるため、これに配慮した措置です。

 

<教師の登用>

・多様な外部人材を教師として登用する際の「特別免許状」の発行件数は、いまだ年間200件程度にとどまる。利用促進のため、手続面・要件の見直しを行う。

 

<キャリア形成の促進>

・正社員にとどまらない多様な働き手の自律的・主体的なキャリア形成の促進を主眼に置き、働き手・企業が取り組む事項や人材開発施策に係る諸制度を体系的に示した「リカレントガイドライン」の策定を行う。

キャリア形成が正社員中心となり、非正規社員が置き去りとなる傾向がありました。

同一労働同一賃金の流れもあり、改めて多様な働き手を視野に入れた「リカレントガイドライン」の策定が提言されています。

2021/06/05|1,562文字

 

<人への投資の強化>

令和3(2021)年6月2日、政府の第11回成長戦略会議が開催され、今年度の成長戦略実行計画案と成長戦略フォローアップ案が示されました。

このうち実行計画案の中の第5章「人への投資の強化」には8項目が示され、フォローアップ案ではそれぞれの具体的施策が示されています。

 

1.フリーランス保護制度の在り方

2.テレワークの定着に向けた取組

3.兼業・副業の解禁や短時間正社員の導入促進などの新しい働き方の実現

4.女性・外国人・中途採用者の登用などの多様性の推進

5.人事評価制度の見直しなど若い世代の雇用環境の安定化

6.労働移動の円滑化

7.ギガスクール構想の推進による個別最適な学びや協働的な学びの充実

8.全世代型社会保障改革の方針の実施

 

<テレワークの定着に向けた取組>

ここでは、最も注目される「2.テレワークの定着に向けた取組」について見ていこうと思います。

新型コロナウイルス感染症拡大に伴ってテレワークの導入が一気に進んだものの、労働法違反の事態が多発し、またテレワークを取りやめる企業も少なくないことから、適正な導入・運用・定着を後押しするものです。

フォローアップ案は、次の内容となっています。

 

成長戦略実行計画に基づき、同計画に記載する施策のほか、以下の具体的施策を講じる。

 ・時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方として、テレワークなど新たな働き方の導入・定着を図ることが重要である。政府としては、テレワークの定着に向けて、2021年3月にテレワークガイドラインを改定し、労働時間の把握・管理、健康確保について、

-テレワーク時における労働者の自己申告による労働時間の把握・管理については、自己申告された労働時間が実際の労働時間と異なることを客観的な事実により使用者が認識している場合を除き、労働基準法との関係で、使用者は責任を問われないことを明確化する。

-(中抜け時間があったとしても、)労働時間について、少なくとも始業時刻と終業時刻を適正に把握・管理すれば、労働基準法の規制との関係で、問題はないことを確認する。

-テレワーク時には原則禁止であるとの理解があるテレワークガイドラインの「時間外、休日、深夜労働」について、テレワーク以外の場合と同様の取扱いとする。

-長時間労働者・高ストレス者に対する医師の面接指導については、リモートでの面接指導も企業が柔軟に選択することができる。

こと等の方向性の下、記述を大幅に刷新したところであり、本ガイドラインの内容を分かりやすく紹介したパンフレット等により丁寧な周知を図っていく。

・新型コロナウイルス感染症の感染拡大の防止の観点からも、テレワーク相談センターの設置・運営やテレワーク導入に係る助成等による導入支援を強力に推進する。

・多くの企業が新型コロナウイルス感染症対策としてテレワークを経験したことを踏まえ、良質なテレワークの定着・加速に向けて、テレワーク導入企業に対する評価の仕組みについて新たに検討を行う。また、全国的な導入支援体制の整備、中小企業に対する専門家による無料相談といった支援策を継続するとともに、コミュニケーションやマネジメントといった課題を解決するための ICT ツールの積極的な活用の推進やテレワークを円滑に行うことができる超高速ブロードバンド基盤の整備支援等を行う。

 

令和3(2021)年3月に改定されたテレワークガイドラインは、中抜け時間を含めた労働時間の自己申告を尊重し、時間外・休日・深夜労働を通常勤務と同様に認め、医師のリモート面接指導を可としています。

この周知を図る他、導入支援の協力推進、ICTツールや超高速ブロードバンド基盤の整備支援を行うとしています。

企業に対して、質の高いテレワークの定着を求めていくことになります。

2021/05/24|1,760文字

 

<デジタル改革関連法について>

令和3(2021)年3月、内閣官房IT総合戦略室、デジタル改革関連法案準備室、総務省自治行政局は、「デジタル改革関連法案について」の中で、デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針の骨子を次のように示していました。

・デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会 ~誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化~

・デジタル社会形成の基本原則(1オープン・透明、2公平・倫理、3安全・安心、4継続・安定・強靱、5社会課題の解決、6迅速・柔軟、7包摂・多様性、8浸透、9新たな価値の創造、10飛躍・国際貢献)

 

<デジタル改革関連法の成立>

政府が提出したデジタル改革関連の6法案が令和3(2021)年5月12日に開かれた参議院本会議で採決され、自民・公明の与党のほか日本維新の会などの賛成多数で可決、成立しました。

成立したのは次の6法です。

 

1.デジタル社会形成基本法(令和3(2021)年9月1日施行)

 デジタル社会の形成に関し、基本理念および施策の基本方針、国、地方公共団体および事業者の責務、デジタル庁の設置並びに重点計画の策定について規定(IT基本法は廃止)

 

2.デジタル庁設置法(令和3(2021)年9月1日施行)

 デジタル社会の形成に関する司令塔として、国の情報システム、地方共通のデジタル基盤、マイナンバー、データ利活用等の業務を強力に推進するデジタル庁を設置

 

3.デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律(令和3(2021)年9月1日より順次施行)

 個人情報関係の3法を統合、国家資格に関する事務へのマイナンバーの利用の範囲を拡大、押印・書面手続の見直し、転入地への転出届に関する情報の事前通知

 

4.公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律(公布日から2年以内に施行)

 緊急時の給付金や児童手当などの公金給付に、登録した口座の利用を可能とする

 

5.預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律(公布日から3年以内に施行)

 相続時や災害時に、預貯金口座の所在を国民が確認できる仕組を創設

 

6.地方公共団体情報システムの標準化に関する法律(令和3(2021)年9月1日施行)

 地方公共団体の基幹系情報システムについて、国が基準を策定し、基準に適合したシステムの利用を求める法的枠組みを構築

 

<デジタル・ガバメント実行計画の実現>

これらの法律は、デジタル・ガバメント実行計画(令和2(2020)年12月改定)を実現するためのもので、次の内容が示されていました。

 

1.サービスデザイン・業務改革(BPR)の徹底

 行政のあらゆるサービスをデジタルで完結できるようにする

 

2.一元的なプロジェクト管理の強化等

 デジタル庁の設置も見据え、すべての政府情報システムについて、予算要求前から執行までの各段階における一元的なプロジェクト管理を強化

 

3.国・地方デジタル化指針

 ワンス・オンリー実現のため、社会保障・税・災害の3分野以外での情報連携やプッシュ通知、情報連携アーキテクチャの抜本的見直し、マイナンバーカード機能のスマートフォン搭載、電子証明書の暗証番号再設定等を郵便局でも可能に、個人情報保護法制の見直し、戸籍の読み仮名の法制化など

 

4.行政手続のデジタル化、ワンストップサービス推進等

 書面・押印・対面の見直しに伴う行政手続のオンライン化推進、企業が行う従業員の社会保険・税や法人設立の手続のワンストップサービス推進、法人デジタルプラットフォームの機能拡充による法人等の手続の利便性向上など

 

5.デジタルデバイド対策・広報等の実施

 SNS・動画等によるわかりやすい広報・国民参加型イベントの実施など

 

6.デジタル・ガバメント実現のための基盤の整備

 クラウドサービスの利用検討の徹底、セキュリティ評価制度(ISMAP)の推進、情報セキュリティ対策の徹底・個人情報の保護、業務継続性の確保など

 

7.地方公共団体におけるデジタル・ガバメントの推進

 自治体の業務システムの標準化・共通化の加速、マイナポータルの活用等により地方公共団体の行政手続のオンライン化推進など

2021/05/09|1,959文字

 

<フレックスタイム制のイメージ>

フレックスタイム制では、労働者が日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めるので、その労働者は次のように考えるかも知れないわけです。

朝、目覚めたとき「今日は出勤しようか、それとも休もうか」

起きてから「いつ出勤しようか」

家を出て通勤の途中で「やはり映画を観に行こうか」

会社に到着して仕事を始めてから「やる気が起きないから帰ろう」

しかし、これでは仕事が回りません。

労働基準法が、このような制度を法定した筈がありません。

 

<働き方改革の推進>

平成31(2019)年4月、働き方改革の一環で労働基準法が改正され、フレックスタイム制の清算期間の上限が1か月から3か月に延長されました。

もし、フレックスタイム制が現実離れした使い物にならない制度であれば、廃止されている筈ですが、労働者ひとり一人の事情に応じた多様で柔軟な働き方を自分で選択できるようにするための制度であり、働き方改革の趣旨に適っているため拡充されたのです。

実際、フレックスタイム制は生活と業務との調和が図れる便利な制度です。

 

<労働基準法の規定>

フレックスタイム制に関する労働基準法の規定は次の通りです。

 

第32条の3第1項 使用者は、就業規則その他これに準ずるものにより、その労働者に係る始業及び終業の時刻をその労働者の決定に委ねることとした労働者については、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めたときは、その協定で第二号の清算期間として定められた期間を平均し一週間当たりの労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内において、同条の規定にかかわらず、一週間において同項の労働時間又は一日において同条第二項の労働時間を超えて、労働させることができる。

一 この項の規定による労働時間により労働させることができることとされる労働者の範囲

二 清算期間(その期間を平均し一週間当たりの労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内において労働させる期間をいい、三箇月以内の期間に限るものとする。以下この条及び次条において同じ。)

三 清算期間における総労働時間

四 その他厚生労働省令で定める事項

 

ここで、条文にある「労働者」というのは、単数と複数を区別しない日本語の特性から「労働者たち」という意味であると考えられます。

そうであれば、業務開始時刻と業務終了時刻に使用者が介入してはならないということであって、業務都合と私生活とのバランスを考えつつ、労働者間で相談して決めることは差し支えないわけです。

このように考えても法の趣旨に反しませんし、むしろこのように考えないと運用が極めて困難になってしまいます。

個々の労働者が自分だけの考えで、始業・終業時刻を決めるというのは現実的ではありません。

やはり相談しながら決めることになります。

 

<フレックスタイム制の法的要件>

フレックスタイム制に関する条文は長いですが、法的要件は次のとおりです。

・業務開始時刻と業務終了時刻は労働者たちが決めることにして、これを就業規則などに定めます。

・一定の事項について、会社側と労働者側とで労使協定を交わし、協定書を保管します。

・清算期間が1か月を超える場合には、協定書を労働基準監督署長に届け出る必要があります。〔労働基準法第32条の3第4項→第32条の2第2項〕

 

<フレックスタイム制の運用条件>

上記の法的要件を満たせば、問題なく運用できるというわけではありません。

まず対象労働者は、業務都合と私生活とのバランスを考えて、業務開始時刻と業務終了時刻を自主的に決定できる人に限定する必要があります。

対象者は、特定の部署の全員あるいはその一部とすることもできますし、1人だけにすることもできます。

対象となる労働者が複数であれば、各個人の業務開始時刻と業務終了時刻について協議のうえ決定できるメンバーである必要があります。

また、各個人の業務開始時刻と業務終了時刻は前もって決定し、自部署と関連部署で情報共有する必要があります。

変更があった場合には、タイムリーに情報共有できる必要があります。

無料のスケジュール共有ツールを利用して、スマートフォンでチェックできるようにすれば便利です。

 

<解決社労士の視点から>

まずは、清算期間1か月のフレックスタイム制でワークライフバランスや生産性の向上を目指すことをお勧めします。

上手くいかないときは、対象労働者の中に制度活用の難しいメンバーがいないか、情報共有が不十分ではないかの2点をチェックし、必要に応じ労使協定の内容を見直してはいかがでしょうか。

2021/05/05|760文字

 
YouTube中小企業の働き方改革https://youtu.be/tcSEOgHTnBM

 

<働き方改革の背景>

政府は少子高齢化対策や働き方改革を推進しています。

働き手が減少し、日本の活力が失われることを心配しています。

日本の立場が弱くなれば、新型コロナウイルスワクチンの供給が後回しにされたり、諸外国から領土を侵犯されたりするリスクが大きくなります。

企業のレベルで見れば、慢性的な人手不足と売上減少ということになります。

 

<企業に求められる努力>

各企業には、次のような努力が求められています。

・若者の賃金水準を上げて、結婚・出産・育児ができるようにする。

・限定正社員(多様な正社員)やテレワークなど柔軟な働き方の仕組を導入し、子育てしやすく、高齢者が働きやすくする。

・正社員と非正規社員とを形式的に区分して処遇に差を設けるのではなく、賃金だけでなく福利厚生などを含めた処遇の均等を図る。

 

<中小企業の働き方改革>

採用対象者を、30歳以下の正社員などに限定せず、別の年代、障害者、外国人などに広げ、非正規社員、テレワーク、請負なども視野に入れたいところです。

また、お金をかけずに働き甲斐と働きやすさを向上させたり、求人でうまくアピールする工夫をするなど、知恵を絞ることが必要です。

働き甲斐のポイントは、参加意識、成長できる仕組み、適正な人事評価、公正に競争できる環境です。

働きやすさのポイントは、コミュニケーション、社内ルール作り、法令順守です。

法令に「権利」として規定されていることを、「うちの会社では無理」と言ってしまったら、普通の従業員は去っていきます。

 

 <解決社労士の視点から>

労働者のひとり一人から、働く上での不満や疑問を聞いてとりまとめ、法的観点と実務的観点から改善案を策定しスケジュール化するのが近道です。

こうした専門性の高いことは、信頼できる国家資格者の社会保険労務士(社労士)にご相談ください。

2021/05/02|1,168文字

 
YouTube就業規則がまもれないhttps://youtu.be/wePPDqqRX60

 

<知られざる就業規則>

「就業規則の内容を従業員に知られてしまうと権利を主張される」というような理由で、就業規則のファイルを見つからない所に保管している会社もあります。

しかし、就業規則を周知しないのは労働基準法違反ですし、周知しない就業規則というのは、たとえ所轄の労働基準監督署長への届出をしてあっても効力が無いのです。

そのため、会社から従業員に対して就業規則上の義務を果たすように求めることができませんし、不都合な行為に対してペナルティーを科すこともできないのです。

それでいて、就業規則が無くても、労働者に保障された法的な権利は、従業員から主張されたら会社は拒否できません。

 

<わかってもらえない就業規則>

就業規則というのは、なかなか従業員に見てもらえないものですし、条文の意味を説明しないと理解してもらえないことがあるものです。

かつて、自分の勤務先でふざけた写真を撮ったアルバイトがSNSに投稿した結果、閉店に追い込まれるような事件が相次ぎました。

たとえ、「会社の信用を傷付けた時」という規定が就業規則にあったとしても、アルバイトはその規定の存在を知らないかもしれませんし、知っていても自分の行為がその規定に当てはまるという理解が無かったのでしょうか。

入社と退職が盛んな時代ですし、法改正に合わせた就業規則の改定も頻繁でしょうから、少なくとも年に1回は就業規則の勉強会を繰り返す必要があるでしょう。

 

<ポンコツな就業規則>

政府が少子高齢化対策の継続的な推進や働き方改革に力を入れていますから、人を巡る法改正は毎年必ずと言っていいほど行われています。

これに対応できていない就業規則は多いことでしょう。

こうした流れとは別に、制服を廃止して長年経った今でも「勤務中は制服着用」という規定があったり、全館禁煙なのに「喫煙は定められた場所で」という規定が残っていたりします。

これでは、会社が本気でルールの整備をしていないことが明確ですから、従業員が就業規則を守る気持も薄れてしまいます。

 

<ありえない就業規則>

「セクハラを行ったら懲戒解雇」というありえない規定を見ることがあります。

それでいて、社内にセクハラの定義を定めるルールが無かったり、どのような言動がセクハラに当たるのかについて教育・研修が無かったりします。

セクハラにも程度の差があり、程度の軽いセクハラ行為で一律に懲戒解雇というのは、たとえ就業規則に規定があったとしても無効になります。

「唇、ツヤツヤだね」と言っただけでクビになりうる就業規則というのは恐ろしいです。

 

<解決社労士の視点から>

2年以上変更していない就業規則があれば、社労士のチェックが必要でしょう。

とりあえず必要な変更と届出をして、社内研修を行えば当面は安心です。

その後のことは、社労士と相談して決めれば良いことです。

<高年齢者雇用確保措置>

定年年齢を65歳未満に定めている事業主は、65歳までの安定した雇用を確保するため、「65歳までの定年の引上げ」「65歳までの継続雇用制度の導入」「定年の廃止」のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を実施する義務があります。〔高年齢者雇用安定法第9条〕

「継続雇用制度」とは、雇用している高年齢者を、本人が希望すれば定年後も引き続いて雇用する、「再雇用制度」などの制度をいいます。この制度の対象者は、以前は労使協定で定めた基準によって限定することが認められていましたが、高年齢者雇用安定法の改正により、平成25(2013)年度以降、原則として希望者全員を対象とすることが必要となっています。

なお、継続雇用先は自社のみならずグループ会社とすることも認められています。

 

<高年齢者就業確保措置>

さらに、令和3(2021)年4月1日からは、事業主には70歳までの高年齢者就業確保措置の努力義務が課されています。〔高年齢者雇用安定法第10条の2〕

したがって、定年を70歳未満に定めている事業主、70歳未満の継続雇用制度を導入している事業主は、次のいずれかの措置を講ずるよう努める必要があります。

一、70歳までの定年引上げ

二、定年制の廃止

三、70歳までの継続雇用制度の導入

四、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入

五、70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入

・事業主が自ら実施する社会貢献事業

・事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

このうち、三の継続雇用制度については、特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものが含まれます。

三、四、五の措置をとる場合に、基準を定めて対象者を限定する場合には、労使で十分に話し合うことが求められます。

過半数労働組合があれば、事業主と過半数労働組合との間で十分に協議したうえで、過半数労働組合の同意を得ることが望ましいことになります。

ただし、高年齢者雇用安定法や他の労働関係法令に反する不合理なものは認められません。

特に五の措置をとる場合に、基準を定めて対象者を限定する場合には、事業主の指揮監督を受けることなく業務を適切に遂行する能力や資格、経験があること等、予定される業務に応じて具体的な基準を定めることが必要とされています。

上記の「基準を定めて対象者を限定する場合」の「基準」は、会社に都合よく恣意的に定めることはできません。

対象外とされた従業員から、会社にクレームが入ったり、訴訟を提起されたりのリスクがあります。

以下の点に配慮して基準を定め運用するように心がけましょう。

 

<懲戒解雇の事由>

「懲戒解雇の事由がある場合には再雇用しない」と就業規則に規定されていることがあります。

懲戒も解雇もハードルが高いですから、懲戒解雇となれば、その具体的な事由が就業規則に規定されていなければなりませんし、重ねて指導したにも関わらず改めない、極めて悪質であるなどの事情や、弁明の機会の付与などが求められます。

「再雇用しない理由に使うだけ」と気を緩めてはいけません。

 

<懲戒解雇の先送り>

定年後の再雇用をしない理由として、懲戒解雇の事由を挙げる場合、「そろそろ定年が近いから今すぐ解雇しなくても」と問題を先送りしてきた可能性があります。

定年前に懲戒解雇が正当視されるような事由がある場合、本人が勤務し続けることは、他の従業員にとって迷惑であり、その部署の生産性を低下させてしまいます。

先送りの意識が働いている場合には、定年前に不都合な言動があっても、注意・指導を受けることなく放置される危険も高まります。

定年までの年数が長く、先送りが長期に及んだ場合には、「今まで許されてきたこと」を理由に再雇用を拒否することになり、不当な不意打ちと評価される危険があります。

定年を待たずに解雇するのが、会社や他の従業員のためになります。

 

<客観的な評価基準>

「健康状態が良好でない者」「生産性が低い者」「会社への貢献度が不足する者」のような主観的な判断基準で、再雇用の対象外とすることはできません。

事実の存否を争われた場合に、立証することができないからです。

「定年まで3年間の勤務評定が平均B以上であること」のような基準は、一見すると客観的な基準のように見えます。

しかし、普段の勤務評定が客観的な事実に基づかず、考課者の主観によるところが大きければ、やはり主観的な基準ということになってしまいます。

人事考課は、客観的な指標や事実に基づいて行われる必要があります。

 

YouTube「合理的」の意味

https://youtu.be/E-BgYSjxLZI

 

<基準時の設定>

再雇用の判断について、いつの時点を基準とするかは重要です。

これが明確でなければ、判断基準が無いに等しくなってしまいます。

 

<過去の懲戒>

「出勤停止以上の懲戒が2回以上あった者は再雇用しない」などの基準も、一見すると客観的な基準だと思われます。

しかし、過去の懲戒が適正な手続に従い、有効に行われたことを示す客観的な資料が無い限り、その正当性を争われるリスクがあります。

 

<公平な運用>

特定の従業員について、基準を緩め例外的に再雇用してしまうと、それ以降は、緩い基準で再雇用しない限り不公平が生じてしまいます。

例外的に基準を緩めたい事情があるなら、再雇用の基準をより緻密に修正する必要があります。

2021/04/27|1,332文字

 

<モデル就業規則とは>

常時10人以上の従業員を使用する使用者は、労働基準法第89条の規定により、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署長に届け出なければならないとされています。

就業規則を変更する場合も同様に、所轄の労働基準監督署長に届け出なければなりません。

これを受けて、厚生労働省は就業規則のひな形を公表しています。

これが「モデル就業規則」です。

各企業は「モデル就業規則」の規定例や解説を参考に、各職場の実情に応じた就業規則の作成・変更を行うことができます。

就業規則は、職場の実情に合っていなければ、トラブルの元となってしまうことがあります。

「モデル就業規則」は、規定例だけでなく詳細な解説が施されていますので、これを手がかりにカスタマイズすることになります。

「モデル就業規則」は、法改正などに対応するため、不定期に改定されています。

令和2(2020)年11月には、政府による副業・兼業の推進に応じて改定されました。

このときから、まだ半年も経っていませんが、令和3(2021)年4月に高年齢者雇用安定法の改正を受けて、再び改定版が公開されています。

働き方改革関連法や継続的な少子高齢化対策で、モデル就業規則が頻繁に改定されていることからも明らかなように、企業の就業規則も1年を待たずに改定が必要となっています。

法改正情報を事前に把握して、自社の対応を決定し就業規則に反映させることを怠らないようにしましょう。

 

<高年齢者就業確保措置>

令和3(2021)年4月1日から、事業主には70歳までの高年齢者就業確保措置の努力義務が課されています。〔高年齢者雇用安定法第10条の2〕

したがって、定年を70歳未満に定めている事業主、70歳未満の継続雇用制度を導入している事業主は、次のいずれかの措置を講ずるよう努める必要があります。

一、70歳までの定年引上げ

二、定年制の廃止

三、70歳までの継続雇用制度の導入

四、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入

五、70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入

・事業主が自ら実施する社会貢献事業

・事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

このうち、三の継続雇用制度については、特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものが含まれます。

三、四、五の措置をとる場合に、基準を定めて対象者を限定する場合には、労使で十分に話し合うことが求められます。

過半数労働組合があれば、事業主と過半数労働組合との間で十分に協議したうえで、過半数労働組合の同意を得ることが望ましいことになります。

ただし、高年齢者雇用安定法や他の労働関係法令に反する不合理なものは認められません。

特に五の措置をとる場合に、基準を定めて対象者を限定する場合には、事業主の指揮監督を受けることなく業務を適切に遂行する能力や資格、経験があること等、予定される業務に応じて具体的な基準を定めることが必要とされています。

 

<解決社労士の視点から>

高年齢者の活用については、人材不足に悩む中小企業のほうが進んでいる感があります。

大企業においても、働き方改革の趣旨を踏まえつつ、積極的に高年齢者就業確保措置に取り組み社会的な責任を果たすように努めましょう。

 

YouTube勤務が減った人の社会保険

https://youtu.be/cTqbvdpvhBo

2021/04/18|1,435文字

 

YouTube解決社労士のご紹介

https://youtu.be/qUAFJ0sjnDg

 

<再雇用時の賃金>

正社員が定年に達すると同時に再雇用された場合、年収は何割までダウンしても違法にならないか、世間相場や業界での一般的な水準はどの程度かといった、それ自体あまり意味を持たない質問を受けることがあります。

これは、働き方改革以前から問題とされてきましたが、同一労働同一賃金との関連でクローズアップされています。

 

<長澤運輸事件最高裁判決>

平成30(2018)年6月1日の長澤運輸事件最高裁判決は、まさに定年後再雇用時の賃金引下げが争われた事件に対する司法判断です。

運輸業の会社でトラックの運転手として定年を迎えた労働者が、定年退職とともに有期労働契約の嘱託社員として再雇用されました。

このとき、仕事内容に変更が無いのに、賃金が約2割引き下げられたことによって、正社員との間に不合理な待遇差が発生し、旧労働契約法第20条に違反するとして会社を訴えたのです。

この判決で、最高裁は次のような判断を示しました。

賃金項目が複数ある場合には、項目ごとに支給の趣旨・目的が異なるので、賃金の差異が不合理か否かについては、賃金の総額を比較するだけでなく、その賃金項目の趣旨・目的を個別に考慮すべきである。

精勤手当は欠かさぬ出勤を奨励する趣旨を持つものであり、嘱託社員は正社員と職務内容が同一である以上、皆勤を奨励する必要性に相違はなく、定年の前後で差異を設けることは不合理である。

精勤手当が計算の基礎に含まれる超過手当(時間外労働手当)についても同様である。

これ以外の賃金項目については、それぞれの趣旨・目的から、差異を設けることが不合理ではない。

 

<最高裁判決の趣旨>

令和2(2020)年は、同一労働同一賃金の最高裁判決が5つ出ました。

大阪医科大学事件、メトロコマース事件、それと日本郵便事件が3つです。

これらの裁判でも、改正前の労働契約法20条を巡って争われました。

退職金、賞与、手当、休暇などについて、それぞれの裁判で差異が不合理か否か争われました。

そして、どの判決でも、各項目の支給の趣旨・目的から、その差異が不合理か否か検討され判決が下されたのです。

賞与一つをとっても、企業によって支給の趣旨・目的が異なります。

その趣旨・目的によって、正社員と非正規社員とで支給の差異について、次のように判断が分かれうることになります。

1.非正規社員にも正社員と同額が支給されるべきである。

2.非正規社員にも正社員と同じ基準で支給されるべきである。

3.非正規社員には正社員の支給額の一定割合を支給すべきである。

4.非正規社員には支給しなくても不合理ではない。

大阪医科薬科大学で、非正規社員に賞与を支給しないのは不合理ではないからといって、別の企業でも同じことがいえるとは限らないのです。

 

<解決社労士の視点から>

定年後再雇用時の年収水準そのものについては、最高裁判所が明確な基準を示していません。

各業界で平均的な下げ幅であれば容認されるのだとすると、平均を下回る半数近い企業は不合理だとされかねません。

むしろ、個別の手当等について、定年の前後でその支給に差を設ける場合に、それぞれの趣旨・目的から、不合理ではないかが厳しく審査されることになりました。

ですから、個別の手当等について、不合理といえない範囲で差異を設けた結果、年収が3割減少した、4割減少したというのは容認されることになります。

肝心の基本給については、今後の司法判断の積み重ねによって明らかになっていくものと思われます。

2021/04/15|1,980文字

 

<地方労働行政運営方針の意義>

厚生労働省は、令和3(2021)年4月1日付で「令和3年度地方労働行政運営方針」を策定しました。

各都道府県労働局は、この運営方針を踏まえつつ、各局の管内事情に即した重点課題や対応方針などを盛り込んだ行政運営方針を策定し、計画的な行政運営を図ることにしています。

労働基準監督署の労働基準監督官は、監督指導実施計画に沿って臨検監督(実地調査)を行っていますが、この計画も「行政運営方針」に基づいています。

労働基準行政で優先順位の高いものほど、重点項目の上のほうに記載されていますから、会社の所轄労働基準監督署が監督(調査)に入るとしたら、何を見られるかが把握しやすいといえます。

 

<令和3年度の運営方針の特徴>

労働行政の最大の課題として、長期化する新型コロナウイルス感染症への対応を掲げています。

今後は、新型コロナウイルス感染症が社会経済活動に様々な影響を及ぼす中で、現下の厳しさがみられる雇用情勢と、労働市場の変化の双方に対応した機動的な雇用政策を実施していくこと、人材ニーズに柔軟に対応した人材開発やテレワークなどの多様な働き方の定着などに取り組むとしています。

さらに、構造的な課題の少子高齢化の中で、労働供給の確保や生産性向上等に引き続き取り組む必要があること、人生100年時代を迎え、どのような生き方や働き方であっても安心できる社会を創っていくことも必要なことを確認しています。

このため、働き方改革関連法の着実な施行等が大事であることを強調しています。

年次有給休暇の管理と取得させる義務の履行、時間外労働時間の法的規制の遵守、同一労働同一賃金への対応などが、企業にとっても重点課題となるでしょう。

 

<ウィズ・ポストコロナ時代の雇用機会の確保>

1.雇用の維持・継続に向けた支援

新型コロナウイルス感染症の影響等により休業させられた労働者の雇用の維持・継続のため、雇用調整助成金により事業主を支援し、産業雇用安定助成金により在籍型出向を活用した雇用維持を促進します。

2.業種・地域・職種を越えた再就職等の促進

新型コロナウイルス感染症の影響等による求職者のニーズの多様化に対応するため、ハローワークに新たに専門の相談員を配置する等により、業種、地域、職種を越えた再就職等の支援を行います。

さらに、新型コロナウイルス感染症の影響により離職を余儀なくされ、就労経験のない職業に就く希望者を、一定期間試行雇用する事業主の賃金の一部をトライアル雇用助成金で助成します。

3.非正規雇用労働者の再就職支援

非正規雇用労働者等の早期再就職を支援するため、ハローワークに専門の相談員を配置し、担当者制による求職者の個々の状況に応じた体系的かつ計画的な就職支援の強化を図ります。

また、求職者等に向けた企業の職場情報の提供を行う職場情報総合サイト(しょくばらぼ)や職業の様々な情報が手軽に入手できる職業情報提供サイト(日本版O-NET)を活用し、求人・求職の効果的なマッチングを図ります。

4.女性活躍・男性の育児休業取得等の推進

不妊治療のための休暇制度・両立支援制度の利用促進に取り組む中小企業事業主に対する助成金の利用を促進し、不妊治療を受けやすい職場環境の整備を推進します。

また、女性活躍推進法の行動計画策定義務対象企業が101人以上に拡大されることを踏まえ、中小企業事業主に対する女性活躍推進アドバイザーによる個別支援等を行います。

 

<ウィズコロナ時代に対応した労働環境の整備、生産性向上の推進>

1.「新たな日常」の下で柔軟な働き方がしやすい環境整備

適正な労務環境下での良質なテレワークの普及促進を図るため、テレワーク相談センターによる働き方改革推進支援センターと連携した個別相談対応やセミナーの開催等により、テレワークを実施する中小企業への支援を行います。

また、良質なテレワークを導入・実施し、人材確保や雇用管理改善の観点から効果をあげた事業主への支援(人材確保等支援助成金の支給)を行います。

2.ウィズコロナ時代に安全で健康に働くことができる職場づくり

職場における新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するため、「取組の5つのポイント」やチェックリスト等を活用した職場における感染防止対策の取組を推進するとともに、新型コロナウイルス感染症に係る労災補償については、迅速かつ的確な調査及び決定を行います。

3.雇用形態に関わらない公正な待遇の確保

雇用形態に関わらない公正な待遇の確保に向けて、働き方改革推進支援センターによるワンストップ窓口で、労務管理等の専門家による個別訪問支援等に加え、新たに業種別団体等に対し専門家チームによる支援を実施します。

また、賃金引上げや非正規雇用労働者のキャリアアップを図るため、各種助成金の活用も含めた支援を行います。

 

解決社労士

2021/04/12|1,640文字

 

<ガイドラインの公表>

令和3(2021)年3月26日、内閣官房、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省の連名で「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」が公表されました。

事業者とフリーランスとの取引について、独占禁止法、下請代金支払遅延等防止法、労働関係法令の適用関係と、事業者が遵守すべき事項を明らかにするものです。

 

<フリーランスの定義>

「フリーランス」は、「正社員」「非正規社員」などと同様に、法令用語ではないので定義は様々です。

ガイドラインでの定義は、「実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者」とされています。

国はフリーランスについて、多様な働き方の拡大、ギグ・エコノミーの拡大による高齢者雇用の拡大、健康寿命の延伸、社会保障の支え手・働き手の増加などに貢献することを期待しています。

ここで、ギグ・エコノミーとは、インターネットを通じて短期・単発の仕事を請負い、個人で働く就業形態をいいます。

 

<優越的地位の濫用規制>

取引条件については、基本的に取引当事者間の自主的な判断に委ねられます。

しかし、フリーランスが受注事業者として行う取引については、企業組織である事業者が発注事業者となることが多く、両者間には情報量や交渉力の面で格差があります。

そのため、取引条件がフリーランスに一方的に不利になりやすいものです。

こうした状況は、公正な競争を阻害する恐れがあることから、不公正な取引方法の一つである「優越的地位の濫用」として独占禁止法により規制されます。

発注事業者が多数のフリーランスに対して組織的に不利益を与える場合には、公正な競争を阻害する恐れがあると認められるでしょう。

また、特定のフリーランスに対してしか不利益を与えていないときであっても、その不利益の程度が強い場合や、その行為を放置すれば他に波及するおそれがある場合には、公正な競争を阻害する恐れがあると認められやすいといえます。

なお、下請法と独占禁止法のいずれも適用可能な行為については、通常、下請法が適用されます。

 

<取引条件を明確にする書面の交付>

発注事業者が役務等を委託するに当たり、発注時の取引条件を明確にする書面を交付しない場合や、フリーランスに交付する書面に発注時の取引条件を明確に記載しない場合には、発注事業者は発注後に取引条件を一方的に変更等しやすくなります。

これらの場合、変更等が行われたことを、フリーランス側で明らかにすることが困難な場合もあります。

これを未然に防止するためには、フリーランスが発注時の取引条件を書面で確認できるように発注事業者側で対応をしておくことが必要です。

なお、下請法の規制の対象となる場合には、発注事業者がフリーランスに対して、下請事業者の役務等の提供内容、下請代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項を記載した書面を下請事業者に交付しないときは、下請法第3条で定める親事業者の書面の交付義務違反となります。

 

<独占禁止法(優越的地位の濫用)上問題となる行為類型>

優越的地位の濫用として問題となる行為は、「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に」行われる、独占禁止法第2条第9項第5号イからハまでのいずれかに該当する行為です。

具体的には、次に掲げる12の行為ですが、優越的地位の濫用として問題とならないか慎重に検討したうえで実施に移す必要があります。

 

【優越的地位の濫用となりやすい行為類型】

・報酬の支払遅延

・報酬の減額

・著しく低い報酬の一方的な決定

・やり直しの要請

・一方的な発注取消し

・役務の成果物に係る権利の一方的な取扱

・役務の成果物の受領拒否

・役務の成果物の返品

・不要な商品又は役務の購入・利用強制

・不当な経済上の利益の提供要請

・合理的に必要な範囲を超えた秘密保持義務等の一方的な設定

・その他取引条件の一方的な設定・変更・実施

 

解決社労士

2021/04/10|1,065文字

 

<支払約束や慣行が無い場合>

退職金の支給について、就業規則や労働条件通知書などに規定が無く、支給する慣行も無いのであれば、雇い主側に支払の義務はありません。

しかし規定が無くても、退職金を支給する慣行があれば、その慣行を就業規則や労働条件通知書などに規定することを怠っているだけですから、規定がある場合と同様に支払い義務が発生します。

 

<対象者が限定されている場合>

就業規則などに、「勤続3年を超える正社員に支給する」という規定があれば、勤続3年以下の正社員に支給する必要はありません。

しかし、パート社員など非正規社員に支給する必要性には注意が必要です。

まず、正社員用の就業規則しか無い、就業規則に正社員の明確な定義が無いなどの不備があれば、本人からの請求によって支払わざるを得ないこともあります。

また、令和3(2021)年4月から同一労働同一賃金が全面施行されていますので、賞与支給の趣旨・目的が明確で、正社員以外に支給しない客観的に合理的な理由があるというのでなければ、会社が非正規社員から、特に退職後に訴えられるリスクがあります。

この場合には、未払残業代、パワハラに対する慰謝料、年次有給休暇を取得させなかったことに対する損害賠償など、すべて合わせて請求されるでしょう。

少なくとも、就業規則や労働条件通知書は、法改正を踏まえ社会保険労務士(社労士)のチェックを受けておくことをお勧めします。

 

YouTube「合理的」の意味

https://youtu.be/E-BgYSjxLZI

 

<不支給の例外規定がある場合>

退職金の不支給について、就業規則や労働条件通知書などに規定があって、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当な場合には、例外的に不支給とすることが許される場合もあります。

「規定さえあれば不支給で構わない」ということではありません。

 「会社の承諾なく退職した者には退職金を支給しない」という規定は、その承諾が会社の主観的な判断ですから、客観的に合理的とはいえないでしょう。

 「懲戒解雇の場合は退職金を支給しない」という規定があっても、必ずしも不支給が許されるわけではありません。

退職金を不支給としても良いのは「労働者のそれまでの勤続における功労を抹消するほどの信義に反する行為」があった場合に限られます。

それほどの事情があったわけではないのなら、懲戒解雇そのものが不当解雇となり無効である可能性があります。

 

<解決社労士の視点から>

同一労働同一賃金への対応は簡単ではありません。

本当に退職金を支払わなくても大丈夫かといった専門性の高いことは、信頼できる国家資格者の社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

2021/04/05|1,717文字

 

YouTubeこれって労働時間?

https://youtu.be/2UlD66LICBo

 

<スタートは法定手続から>

フレックスタイム制は、労働基準法の次の規定によって認められています。

この規定に定められた手続を省略して、形ばかりフレックスタイム制を導入しても、すべては違法であり無効となります。

 

第三十二条の三 使用者は、就業規則その他これに準ずるものにより、その労働者に係る始業及び終業の時刻をその労働者の決定にゆだねることとした労働者については、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めたときは、その協定で第二号の清算期間として定められた期間を平均し一週間当たりの労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内において、同条の規定にかかわらず、一週間において同項の労働時間又は一日において同条第二項の労働時間を超えて、労働させることができる。

一 この条の規定による労働時間により労働させることができることとされる労働者の範囲

二 清算期間(その期間を平均し一週間当たりの労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内において労働させる期間をいい、一箇月以内の期間に限るものとする。次号において同じ。)

三 清算期間における総労働時間

四 その他厚生労働省令で定める事項

 

長い条文ですが、ポイントは次のとおりです。

・業務開始時刻と業務終了時刻は労働者が決めることにして、これを就業規則などに定めます。

・一定の事項について、会社側と労働者側とで労使協定を交わし、協定書を保管します。これを労働基準監督署長に提出する必要はありません。

 

<違法な名ばかりフレックス>

上記の法定手続きをせずに、残業時間を8時間分貯めると1日休むことができるというインチキな運用も聞かれます。

この残業時間は、割増賃金の対象となる法定時間外労働でしょうから、25%以上の割増が必要です。

つまり、8時間の残業に対しては、10時間分の賃金支払いが必要です。

( 8時間 × 1.25 10時間 )

だからと言って、残業時間を6時間24分貯めると1日休めるという運用も違法です。

( 6時間24分 × 1.25 8時間 )

計算上はこのとおり正しいのですが、労働基準法が認めていないことを勝手にやってもダメなのです。

 

<フレックスタイム制導入後の違法な運用>

せっかく正しい手続でフレックスタイム制を導入しても、次のような違法な運用が見られます。

・残業手当を支払わない。

・残業時間が発生する月は年次有給休暇を取得させない。

・残業時間を翌月の労働時間に繰り越す。

・業務開始時刻や業務終了時刻を上司など使用者が指定してしまう。

・コアタイムではない時間帯に会議を設定し参加を義務づける。

・18歳未満のアルバイトにフレックスタイム制を適用してしまう。

 

<メリットはあるのか>

導入手続と正しい運用が面倒に感じられるフレックスタイム制ですが、導入手続は最初に1回だけですし、運用は慣れてしまえば問題ありません。

私生活と仕事との調整がしやすくなりますから、生産性の向上が見込めます。

これを誤解して、人件費を削減する仕組だと捉えると上手く機能しません。

 

<活用のポイント>

勤務時間の情報を上手く社内外と共有することが大事です。

また、業務開始時刻と業務終了時刻を自由に決められるとはいえ、労働者個人の好みで決めて良いわけではありません。

仕事のスケジュールや、他部署や取引先などとの連動を考えながら、同僚、関連部署の社員、取引先などと相談しながら決めることになります。

しかし、これをすることによって、他部署や社外とのコミュニケーションも良くなりますし、業務の連動も取りやすくなります。

つまり、生産性の向上につながるわけです。

 

<解決社労士の視点から>

社員数の少ない会社ほど、フレックスタイム制活用のメリットは大きいでしょう。

フレックスタイム制の導入をキッカケに、社員の多機能化を図ることも可能です。

具体的にどうしたら良いのかという専門的なことは、信頼できる国家資格者の社会保険労務士(社労士)にご相談ください。

2021/03/30|1,734文字

 

YouTube労働条件を確認しましょう

https://youtu.be/QzMHmif7cgY

 

<正社員の定義>

法令には「正社員」という言葉の定義がありません。

「正社員」は法律用語ではないのです。

ですから、正社員の定義は会社ごとに独自に定められています。

正社員の明確な定義の無い職場も多数存在します。

 

一般的な正社員のイメージは次のとおりです。

・定年を除き労働契約の期間が定まっていない無期労働契約である。

・時間外労働(早出、残業)に応じる義務がある。

・深夜労働に応じる義務がある。

・勤務地が限定されず転勤に応じる義務がある。

・業務内容が限定されず異動に応じる義務がある。

 

<限定正社員の定義>

正社員の労働条件のうち、一つか複数を欠いている場合を、限定正社員と呼んでいます。

・早出や残業を免除されている。

・深夜労働を免除されている。

・転勤が全くない。または、一部の地域内に限定されている。

・異動が無い。

・1日の所定労働時間が正社員よりも短い。

・週の所定労働日数が正社員よりも少ない。

「その会社の正社員と比較して」という話ですから、正社員の定義が会社ごとに決められている以上、限定正社員の定義も会社ごとに様々です。

 

正社員の所定労働時間が1日8時間で、1週間の所定労働日数が5日という会社が多数派です。

しかし、正社員の所定労働時間が1日6時間半で、1週間の所定労働日数が6日という少数派の会社もあります。

この少数派の会社で、1週間の所定労働日数が5日の正社員は、限定正社員であると認識されます。

出勤日数が一般の正社員よりも限定されているからです。

また、多数派の会社では、1日の所定労働時間が6時間半の正社員は、限定正社員であると認識されます。

勤務時間が一般の正社員に比べて限定されているからです。

 

労働時間と出勤日数の両方が限定されている正社員も、労働時間と出勤日数が限定されているうえさらに、勤務地が関東地方に限定されている正社員もいます。

こうなると、一口に限定正社員と言っても、数多くのパターンがあるわけですから、限定正社員のイメージは統一しにくいといえます。

そのためか、厚生労働省は「多様な正社員」と呼ぶようになっています。

 

<パート社員などとの比較>

労働時間や出勤日数が限定された正社員がいる一方で、同じ職場にパート社員や契約社員と呼ばれる人たちも働いていたりします。

パート社員の中にも、正社員並みの労働時間と出勤日数の人がいる一方で、週1日だけの勤務や、1日3時間の勤務という人もいます。

こうしてパート社員、契約社員の境界線が不明確になっています。

就業規則などで、正社員、パート社員、契約社員などの定義が明確になっていないと、「私にこの規定が適用されないのはおかしい」という主張がされて、トラブルとなることがあります。

就業規則に具体的な定義の無い会社は、速やかに社会保険労務士などに相談して、就業規則を改定しておくよう強くお勧めします。

 

就業規則が無い会社はもっと危険です。

個人ごとに労働条件通知書や雇用契約書などで、労働条件をきちんと定めておかないことが、思わぬトラブルを招いてしまいます。

「何かあったら話し合って決める」と思っていても、トラブルが発生したら話し合いが難しくなりますから、あらかじめ決めておく必要があるのです。

 

<個別契約の時代>

もともと就業規則には、労働条件のうち共通の部分が定められています。

「正社員就業規則」「パート社員就業規則」「アルバイト社員就業規則」という形で、ある程度の区分ができていた昭和時代ならともかく、今は「多様な正社員」がいて、同じ会社の中に労働条件が全く異なるパート社員がいます。

そして、正社員とパート社員、アルバイト社員の区分も不明確になってきています。

 

ここまで来たら、就業規則は正社員、パート社員、アルバイト社員、契約社員などに共通する項目だけを定めて、共通しない項目は、個別の労働契約で確認するというのが現実的です。

 

労働条件の一部を決めず曖昧にしておいたり、口約束だけで文書化せずにいたりしたところ、退職者からとんでもない要求をされたという経験をお持ちの経営者の方は少なくないでしょう。

これからは、個別契約の時代です。

人を雇うにあたって、専門性の高いことは、信頼できる国家資格者の社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2021/03/19|1,009文字

 

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<同一労働同一賃金の性質>

同一労働同一賃金は、働き方改革の一環として取組むべき課題とされています。

そして、企業に義務付けられている内容は、パート有期労働法(正式名称:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)に定められています。

この法律に違反した場合でも、労働基準法のように懲役や罰金といった刑罰が適用されるわけではなく、労働者側から企業側に損害賠償を請求する形で、金銭解決が図られることになります。

しかし、全くペナルティーが定められていないわけではなく、行政罰としての過料が定められていることには注意が必要です。

 

<10万円以下の過料>

労働基準法第15条第1項には、一定の労働条件の明示が定められています。

違反には30万円以下の罰金も定められています。

さらに、パートタイム・有期雇用労働者を雇い入れる際、労働基準法で定める事項のほか、特定事項と呼ばれる4つの項目「昇給の有無」、「退職手当の有無」、「賞与の有無」、「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口」を文書等により明示しなければなりません。〔パート有期労働法第6条第1項、同法施行規則第2条〕

違反には10万円以下の過料が定められています。

4つの特定事項のうち忘れがちなのは、「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口」です。

漏れなく明示するには、厚生労働省が公表している労働条件通知書(有期雇用型)のひな形の最新版を利用するのが良いでしょう。

また「相談窓口」を人事課の担当者など社内の人にすると、非正規労働者からは敬遠され、なかなか相談してもらえず、不満が大きくなって、いきなり弁護士に相談されてしまうということが起こりがちです。

パワハラ、セクハラなどの相談窓口と併せて、社外の専門家として顧問の社会保険労務士を指定したほうが安全です。

 

<20万円以下の過料>

厚生労働大臣から報告を求められ、これに対して報告しない、虚偽の報告をしたという場合には、20万円以下の過料が定められています。

もちろん、いきなり報告を求められることはありません。

事前に労働局長名で「パートタイム・有期雇用労働法に基づく報告の徴収について」という文書が事業主宛に届きます。

その後、所轄の労働基準監督署から、同一労働同一賃金への対応状況についての事情聴取があり、これに基づく行政指導があって、この指導への対応を報告させられるわけです。

 

解決社労士

2021/02/26|1,624文字

 

YouTube解決社労士のご紹介

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<働き方改革の始まり>

安倍晋三前首相は平成28(2016)9月、内閣官房に「働き方改革実現推進室」を設置し働き方改革の取り組みを提唱しました。

 

このタイミングで一億総活躍社会を目標に設定したのは、生産年齢人口(1564歳)がハイペースで減少しているからです。

一億総活躍社会は「50年後も人口1億人を維持し、職場・家庭・地域で誰しもが活躍できる社会」とされています。

日本の人口は減少傾向にあるのですが、それでも50年後に1億人以上を維持したうえで、ひとり一人が活躍できる、言い換えれば社会に貢献できるようにしようということです。

 

<働き方改革3つの課題>

働き方改革を実現するためには次の3つの課題があります。

・長時間労働

・非正規と正社員の格差

・労働人口不足(高齢者の就労促進)

 

企業-労働者間の労働契約の内容は本来自由ですが、弱者である労働者を保護するという要請から、労働基準法などにより企業に様々な制約が課され、労働契約に対して法的な介入がなされています。

働き方改革は、このような労働契約に対する介入ではなく、政府から企業に対する提言の形をとっています。

それは、企業に対して法的義務を課さなくても、企業が積極的に働き方改革を推進しなければ生き残れないので、義務付けるまでもないということなのでしょう。

 

とはいえ、働き方改革には政府が推進すべき内容と企業が取り組むべき内容が混在しています。

より広い視点から、企業が取り組むべき課題を整理すれば、次の3つに集約されると思います。

 

・労働条件の改善 ・労働環境の改善 ・労働生産性の向上

 

これらは、現在の労働市場の実態からすれば、わざわざ政府から言われなくても、企業は積極的に取り組むべき内容です。

 

<労働条件の改善>

給与や賞与が高額であり、労働時間が短くて十分な睡眠が確保でき、休暇も取れるとなれば、働きたい人が押し寄せます。

さらに、教育研修が充実していて人事考課制度が適正であれば、専業主婦やニートも働きたくなって当然です。

これによって、出生率も上がり人口減少にも歯止めがかかるでしょう。

今は、新型コロナウイルスの影響で、期せずして労働時間の減少が生じています。

将来に対する不安も増大していますから、安心して結婚・子育てを考えるどころか、安眠すらできない人々が増えてしまいました。

これから新型コロナウイルスの終息に向かう中で、労働時間の増加を伴わない回復が期待されます。

 

<労働環境の改善>

温度、湿度、明るさ、換気、騒音、スペースの広さ、機械化の充実など物理的な環境も大事ですが、パワハラやセクハラがなくて部下から見てもコミュニケーションが十分と思えるような環境であれば、人が集まって当然でしょう。

採用難の時代でも、労働条件と労働環境が良い職場には、就職希望者が途絶えることはないのです。

新型コロナウイルスの影響で、在宅勤務を中心とするテレワーク導入が進行しました。

必ずしも、自宅の労働環境が良いとは限りませんが、生活とのバランスは取りやすくなっています。

今後も、労働者にとっては通勤の負担がなく、会社にとっては固定費の負担が少ないテレワークは定着することでしょう。

 

<労働生産性の向上>

労働条件や労働環境の改善は、企業にそれなりの余裕がなければできません。

そのためには、労働生産性を向上させ、企業の収益力を高めなければなりません。

しかし、労働生産性を高めるには、労働条件や労働環境を改善して、良い人材を確保し育てなければなりません。

このように、労働条件や労働環境の改善と労働生産性の向上は、鶏と卵の関係にあるのです。

 

<解決社労士の視点から>

以上のことから、働き方改革が企業の生き残りのために必須であること、できるところから少しずつではなく、総合的に同時進行で行うべきことが明らかになったと思います。

どのように計画し推進すべきか、迷うところがあれば、信頼できる国家資格の社労士にご相談ください。

2021/02/15|1,344文字

 

YouTube「合理的」の意味

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<2つの最高裁判決>

令和2(2020)年10月13日、大阪医科薬科大学事件とメトロコマース事件の最高裁判決が出されました。

大阪医科薬科大学事件ではアルバイト職員の賞与が、メトロコマース事件では契約社員の退職金が争われ、どちらも原告に支給する必要は無いという判断が下されました。

この結論については、マスコミが大々的に取り上げましたから、印象に残っている方も多いことでしょう。

しかし、これらの結論は一般論ではなく、どちらも正社員登用制度があり、実際に運用され、登用実績があったという事情が重要な判断要素とされています。

どちらの訴訟でも原告は、正社員の1段階前への登用にチャレンジする試験を受験し、失敗して諦めていたという事情があります。

つまり、正社員登用のチャンスが与えられていたことになります。

 

<均衡待遇・均等待遇>

上記の最高裁判決では、改正前の労働契約法第20条が焦点となりました。

現在は、パート有期労働法(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)が、その内容を引き継ぎ、フルタイムの有期雇用労働者に適用対象が拡大されています。

同法第8条では均衡待遇(不合理な待遇差の禁止)について、1.職務の内容、2.職務の変更の範囲、3.その他の事情が判断要素とされ、待遇の不合理性が判断されます。

また、同法第9条では均等待遇(差別的取扱の禁止)について、1.職務の内容と2.職務の変更の範囲が同じであれば、同等の待遇であることが求められ、差別的取扱が禁止されています。

「1.職務の内容」は、業務内容と責任の程度を指します。

「2.職務の変更の範囲」は、将来にわたって職務内容や配置の変更の範囲を指します。

水平的な職務や部署の変更だけでなく、垂直的な役職の変更なども含まれます。

「3.その他の事情」には、労使慣行や労働組合との折衝内容などが含まれます。

上記2つの最高裁判決では、正社員登用制度の存在や運用実績が、3.その他の事情として考慮されたことになります。

 

<正社員への転換>

パート有期労働法第13条は、通常の労働者への転換について規定しています。

「正社員」という言葉は法律用語ではなく、その定義は各企業に任されています。

このこともあって、パート有期労働法では「通常の労働者」と言っていますが、「正社員」とほぼ同義です。

そして、同法第13条は「事業主は、通常の労働者への転換を推進するため、その雇用する短時間・有期雇用労働者について、次の各号のいずれかの措置を講じなければならない」と規定しています。

その措置とは次の4つです。

1.正社員を募集するときに、募集内容を短時間・有期雇用労働者に周知すること。

2.正社員の配置を新たに行うときに、短時間・有期雇用労働者に応募機会を与えること。

3.短時間・有期雇用労働者向けに、試験制度など正社員登用の措置を講ずること。

4.その他の正社員への転換推進措置を講ずること。

4つの中では、1.の正社員募集内容の周知が最も手軽です。

しかし、同一労働同一賃金との絡みでは、3.の正社員登用制度の構築が有効です。

制度はあるものの形骸化している状態では、会社側に有利に働きませんので、定期的に正社員登用の告知を行い、記録を残しておくなど、その制度が有効であることを示す資料の保管を心がけましょう。

 

解決社労士

2021/01/24|1,014文字

 

YouTubeこれって労働時間?

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<労働時間の定義>

労働時間とは、「労働者が実際に労働に従事している時間だけでなく、労働者の行為が何らかの形で使用者の指揮命令下に置かれているものと評価される時間」と定義されます。

これは、会社ごとに就業規則で決まったり、個人ごとに労働契約で決まったりするのではなく、客観的に決められている定義です。

労働時間に対しては賃金を支払わなければなりません。

 

<喫煙やおしゃべりの時間は労働時間なのか>

それでは、上の労働時間の定義からすると、喫煙やおしゃべりの時間は労働時間になるのでしょうか。

使用者の指揮命令から離れ、自由に喫煙やおしゃべりを許されている時間は、労働時間にはあたりません。

しかし、本当に使用者の指揮命令から離れていれば、労働者が喫煙のために離席してもおしゃべりしても、使用者側である管理職の皆さんは気付かないはずなのです。

管理職の皆さんが「なんだ、またタバコか」「いつまで、おしゃべりしているんだ」と不快に感じるのは、そうした労働者を指揮命令下に置いているからなのです。

ということは、使用者の指揮命令下にあって、労働時間であるにもかかわらず、使用者が喫煙やおしゃべりを黙認している時間ということになります。

したがって、喫煙やおしゃべりの時間を、労働時間から差し引くこと、給与計算のうえで欠勤控除することには無理があるといえるのです。

 

<管理職失格の証し>

「うちの部下は、何度もタバコを吸いに行ったり、おしゃべりしたりする。ああいう時間は、給料を払わなくてもいいのでは?」と言う管理職がいたら、その人は管理職として不適格です。

なぜなら、部下を指揮命令下に置く能力が不足しているからです。

現在は、テレワークが盛んです。

「部下を直接見ていないから指導できない」「その仕事を評価できない」という管理職は、その職責を果たせていないのです。

そういう人は、担当者として実績を上げたとしても、管理能力は無いのですから、専門職やプロフェッショナルとしての処遇をしてあげるべきなのです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

ある管理職から部下のサボりを相談されたら、人事部門は部下の方に目を向けます。

しかし、顧問の社労士であれば、そうした話を持ちかけた管理職に目を向けます。

会社を正しい方向に導くには、第三者である専門家の目が必要であることの一例です。

会社を強くしたい成長させたいと本気で考えるのであれば、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2021/01/23|1,891文字

 

YouTube解決社労士のご紹介

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<在宅勤務の経費負担>

在宅勤務の経費負担については、就業規則や個別の労働契約により定められます。

それが適正かどうかは、各企業の判断に任されていることになります。

令和3(2021)年1月15日、国税庁のホームページに、企業がテレワークを行う従業員に対して費用補助を行う場合の課税取扱いに関する「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係) 」が公表されました。

これは、在宅勤務の経費負担について、国の考えを示していることになりますから、自社の定めが適正であるかを確認する際の重要な資料になると考えられます。

以下項目ごとに、その内容をご紹介します。

 

<在宅勤務手当>

・実費相当額を精算する方法により、企業が従業員に対して支給する一定の金銭については、従業員に対する給与として課税する必要はない。

・毎月定額で支給するなど、返還する必要がない金銭を支給した場合は、給与として課税する必要がある。

 

在宅勤務手当として支給する場合には課税対象となりますが、通常必要な費用を実費精算するに過ぎない場合には、課税対象とはならないわけです。

 

<事務用品等>

・企業が所有する事務用品等を従業員に貸与する場合には、従業員に対する給与として課税する必要はない。

・企業が従業員に事務用品等を支給した場合(事務用品等の所有権が従業員に移転する場合)には、従業員に対する現物給与として課税する必要がある。

 

会社の事務用品を従業員が使用している場合、その種類によっては、貸与か支給かが不明確な物もあります。

ここは、貸与であることを再確認しておけば良いでしょう。

また、従業員が立替払で事務用品を購入した後、その購入費用を精算する場合には、事務用品の所有権は会社に帰属しますから、課税対象とはなりません。

 

<電話料金>

・通話明細書等により確認した業務使用分に係る料金を企業が従業員に支給する場合には、従業員に対する給与として課税する必要はない。

・業務のための通話を頻繁に行う業務に従事する従業員については通話明細書等に代えて、FAQで示す算式(基本使用料・通信料等の月額×その月の在宅勤務日数割合×1/2)により算出したものを、業務使用分として差し支えない。

・基本使用料は、上記算式により算出したものを企業が従業員に支給する場合には、給与として課税しなくて差し支えない。

 

業務で利用した通話料金が、通話明細書等により確認できるのであれば、その料金の実費精算については課税対象とはなりません。

また、業務のための通話を頻繁に行う業務に従事する従業員については、通話明細書等に代えて、基本使用料と通信料等の月額をベースに、その期間の在宅勤務日数割合を掛けたものの半額を、業務使用分として実費精算すれば課税対象とはなりません。

ここで、「業務のための通話を頻繁に行う業務」とは、営業担当や出張サポート担当など、顧客や取引先等と電話で連絡を取り合う機会が多い業務と認められるものをいいます。

 

<インターネットのデータ通信料等>

・基本使用料やデータ通信料などについては、FAQに示す算式(基本使用料・通信料等の月額×その月の在宅勤務日数割合×1/2)により算出したものを企業が従業員に支給する場合には、給与として課税しなくて差し支えない。

 

上記に示す算式によって算出した金額を実費として精算する場合には、課税対象とはならないということです。

業務で利用した通信料等が、明細書等により確認できるのであれば、その料金の実費精算をする場合も課税対象とはなりません。

 

<電気料金>

・基本使用料や電気使用料などについては、FAQに示す算式(基本料金・電気使用料の月額×業務使用床面積割合×その月の在宅勤務日数割合×1/2)により算出したものを企業が従業員に支給する場合には、給与として課税しなくて差し支えない。

 

ここで、「業務使用床面積割合」というのは、「業務のために使用した部屋の床面積」÷「自宅の床面積」をいいます。

電気料金については、実費精算をするのが困難ですが、上記の算式で算出したものを実費扱いできるわけです。

 

<レンタルオフィス代等>

・従業員がレンタルオフィス代等を立替払いし、かつ、領収書等を企業に提出して精算されているものについては、給与として課税する必要はない。

・従業員に金銭を仮払いし、レンタルオフィス代等に係る領収証等を企業に提出し精算した場合も同じ。

 

レンタルオフィスの利用料金については、実費精算を認めるに過ぎないと考えられます。

ただ、レンタルオフィスの利用については、会社の事前承認が原則となるでしょう。

 

解決社労士

2020/12/22|2,411文字

 

YouTubeコロナハラスメント

https://youtu.be/Y0ga4SznnTM

 

<働き方改革>

平成31(2019)年4月に、長時間労働是正を中心とする働き方改革関連法が施行されました。

また、令和2(2020)年4月には、パートタイム・有期雇用労働法が大企業に施行され、労働者の待遇の在り方の見直しが進められています。

しかし、令和2(2020)年2月頃からは、こうした法改正への対応よりも、新型コロナウイルス感染拡大を防止するための対策に追われるようになりました。

これによって、働き方に大きな変化が生じ、働き方改革が一気に進んだ部分もあります。

 

<時差通勤>

令和2(2020)年3月から 4月上旬にかけて時差通勤の取組が拡大されました。

感染拡大を防止するためには、ソーシャルディスタンスが必要とされます。

時差通勤は、満員電車の過密を避ける取組です。

LINEによる全国調査によると、時差通勤を実施した人は2月19日調査で5%だったのが、3月2日調査では19%と増加しました。

緊急事態宣言が発出された4月7日より後の4月16日の調査では、19%のまま維持されています。

また、3月に行われた東京商工会議所による会員企業調査でも、時差通勤の実施企業割合は56.5%と高い数字を示しています。

規模が大きい企業ほど、実施率が高い傾向にありますが、50人未満の企業でも実施率は43.9%を示しています。

4月の調査では、企業数では半数程度、従業員数では2割弱が時差通勤をしていることが示されました。

緊急事態宣言が解除された5月25日以降も、利用者数は増加したものの、8月中旬以降は横ばいの傾向にあります。

これは、時差通勤を利用していた人の一定数が、テレワークや自宅勤務に移行していることが推測されます。

 

<テレワークの拡大>

内閣府個人意識調査によると、テレワーク希望者は39.8%に上り、実際のテレワーク率の34.6%を上回っています。

これは、日常業務の中に、さらにテレワークを取り込みたいという意向が示されていることになります。

一方で、自分の仕事はテレワークに合わない職種だと回答した人が、就業者全体で58.7%いることも事実です。

ただ、テレワーク経験者では、テレワーク未経験者よりも、テレワークに合わないと回答している人の割合が低いので、実際にやってみれば対応可能なことが多いかもしれません。

テレワークの不便な点としては、「社内での気軽な相談・報告が困難」や「画面を通じた情報のみによるコミュニケーション不足やストレス」といった、技術の活用や業務上の工夫では解決が難しいものがある一方、「取引先等とのやり取りが困難(機器、環境の違い等)」や「セキュリティ面での不安」、「テレビ通話の質」など、技術的に改善する余地があるものも多く挙げられています。

また、テレワークの利用拡大が進むために必要なものとして、「社内の打合せや意思決定の仕方の改善」、「顧客や取引先との打合せや交渉の仕方の改善」、「社内外の押印文化の見直し」、「仕事の進捗状況の確認や共有の仕方の改善」といった社内外の慣行を見直すことが必要なものや、「社内システムへのアクセス改善」といった設備投資が必要なもの、「書類のやりとりを電子化、ペーパーレス化」といった両方の変革が必要なものが挙げられています。

 

<労働時間の減少による生活の変化>

働き方改革は、長時間労働の是正等を通じたワーク・ライフ・バランスの改善を目指しています。

令和2(2020)年の前半は、感染症の影響もあり労働時間と通勤時間の両方が減少しています。内閣府個人意識調査(新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査14)によると、労働時間と通勤時間の減少により、家族と過ごす時間が増える傾向にあることが示唆されています。

 

<同一労働同一賃金>

令和2(2020)年 4月より、大企業でパートタイム・有期雇用労働法が施行され、同一労働同一賃金の導入が開始されました。

同一労働同一賃金は、同一企業・団体での「正社員」(無期雇用フルタイム労働者)と「非正規雇用労働者」(パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指しています。

厚生労働省の「毎月勤労統計」によると、令和2(2020)年夏の特別給与(6-7月平均)は、一般労働者が-3.8%と減少し、204,388円となったものの、パートタイム労働者は前年比18.2%と増加し、6,333円となっています。

これは、パートタイム労働者に対しても、賞与が支払われるようになった事業所が増加したことを示唆しています。

しかし、所定内給与の格差是正は、明確な傾向が見られません。

 

※ここまでの参考文献:内閣府 令和2年度年次経済財政報告(経済財政政策担当大臣報告)

 

<コロナ対策と働き方改革>

新型コロナウイルス感染症拡大防止対策により、時差通勤やテレワークの導入が進み、通勤時間を含む労働時間が減少傾向にあります。

これは、必ずしも働き方改革の推進を意図したものではなく、コロナ対策によって、働き方改革の目指す結果が部分的に生じたものと考えられます。

一方で、同一労働同一賃金は、コロナ対策とは別に、意図して取り組まなければ進まない課題ですが、賞与(特別給与)について多少進んだことが示唆されています。

働き方改革の側面から眺める限り、コロナ対策が働き方改革の推進にとってプラスに働いたといえます。

しかし、その裏で、整理解雇、非正規雇用労働者の雇い止め、内定取消、正社員の待遇の不利益変更など、望ましくない動きも見られます。

少子高齢社会で労働力を確保するために、働き方改革の推進という政策が打ち出されたわけですから、雇用の確保を置き去りにして、表面的に働き方改革を追うのは本末転倒です。

助成金の活用や、期間限定の在籍出向を行うことで、雇用を確保しつつ、働き方改革を推進することが企業に求められています。

 

解決社労士

2020/12/07|877文字

 

<しわ寄せ>

働き方改革関連法(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)により改正された労働基準法に規定された、罰則付きの時間外労働の上限規制や年5日の年次有給休暇の確実な取得を始めとする施策が実施される中で、大企業・親事業者での「長時間労働の解消」などの取組が、下請等中小事業者に対する適正なコスト負担を伴わない短納期発注、急な仕様変更、人員派遣の要請、附帯作業の要請などの「しわ寄せ」を生じさせている場合があります。

大企業・親事業者では、社内の発注や調達部署の役員、責任者、担当者等に対して、適正な発注等が行われているか、定期的に確認する必要があります。

 

<振興基準>

平成30(2018)年12月に、下請中小企業振興法第3条第1項の規定に基づく振興基準が改正され、親事業者は、自らの取引に起因して下請事業者が労働基準関連法令に違反することのないよう配慮することや、やむを得ず、短納期または追加の発注、急な仕様変更などを行う場合には下請事業者が支払うこととなる増大コストを負担することなどが新たに盛り込まれました。

振興基準は、下請中小企業の振興を図るため、下請事業者および親事業者のよるべき一般的な基準として、下請中小企業振興法第3条第1項の規定に基づき、経済産業省告示で具体的な内容が定められています。

振興基準は、親事業者と下請事業者の望ましい取引関係を定めており、下請法とは異なり、資本金が自己より小さい中小企業者に対して製造委託等を行う幅広い取引が対象となります。

また、振興基準は、主務大臣(下請事業者、親事業者の事業を所管する大臣)が必要に応じて下請事業者および親事業者に対して指導、助言を行う際に用いられています。

 

<労働時間等設定改善法>

働き方改革関連法により改正され、平成31(2019)年4月1日に施行された労働時間等設定改善法(労働時間等の設定の改善に関する特別措置法)では、他の事業主と取引する場合に、長時間労働につながる短納期発注や発注内容の頻繁な変更を行わないよう配慮することが、事業主の努力義務となっています。

 

解決社労士

2020/11/23|1,297文字

 

<社会的な必要性>

企業内で女性が働く環境は、必ずしも快適ではなく、女性の能力が十分に発揮されていないといわれます。

このことは、次のような統計上の数値にも現れています。

・就業を希望しながらも働いていない女性(就業希望者)は、231万人に上ります。

・女性労働者のうち56.0%が、非正規労働者です。

※以上総務省統計局「令和元年労働力調査」より

・第一子の出産を機に退職する女性は46.9%います。

※国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査」より

国内では、生産年齢人口が長期的に減少傾向にありますので、人材確保の観点から、能力と意欲のある女性の力を活かす必要があります。

また、ニーズの多様化やグローバル化に対応するためにも、人材の多様性を確保するうえで、女性の活用が必須となっています。

 

<女性活躍推進法>

平成27(2015)年9月に女性活躍推進法(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)が制定され、平成28(2016)年4月1日に施行されました。

令和元(2019)年6月には、改正法が公布されています。

この法律は、女性の職業生活における活躍を推進するため、基本原則と国、地方公共団体、一般事業主の責務を明らかにしています。

また、基本方針や一般事業主による行動計画の策定等に関する事項を定めています。

ここで「一般事業主」とは、常時雇用する労働者が301人以上の事業主をいいます。

 

<一般事業主の義務>

一般事業主は、次の1.から4.までを行う義務があります。

 

【一般事業主の義務】

1. 自社の女性の活躍に関する状況の把握、課題分析

2. 1.を踏まえた「一般事業主行動計画」の策定、社内周知、公表

3. 「一般事業主行動計画」を策定した旨の届出

4. 女性の活躍に関する情報の公表

 

一般事業主は、一般事業主行動計画策定にあたって、原則として、「①女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」及び「②職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備」の区分ごとに1つ以上数値目標を設定しなければなりません。(令和2(2020)年4月1日より)

一般事業主は、女性活躍に関する情報公表の強化が求められます。また、女性の活躍推進に関する状況等が特に優良な事業主に対する特例認定制度(プラチナえるぼし)が創設されました。(令和2(2020)年6月1日より)

一般事業主行動計画の策定・届出義務及び自社の女性活躍に関する情報公表の義務の対象が、常時雇用する労働者が301人以上から101人以上の事業主に拡大されます。(令和4(2022)年4月1日より)

 

<実務的観点から>

働き方改革との関連で、女性の活躍推進は今後も政策的に強化されていきます。

一般事業主の義務とされている内容は、多額の経費を必要とするものではありません。

企業としては、形式的に対応するのではなく、充実した内容を伴って対応すべきです。

これによって、せっかく戦力化してきた女性労働者の定着率が向上しますし、採用面でも優位に立つことができます。

なにより、お客様からの評価が上がりますから、優先順位を上げて取り組んでいただきたいと思います。

 

解決社労士

2020/10/18|2,067文字

 

<ダブルワークと労働基準法>

労働基準法には、次の規定があります。

 

【労働基準法第38条第1項:時間計算】

労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。

 

ここで、「事業場を異にする場合」には、事業主を異にする場合をも含む(昭和23(1948)年5月14日付基発第769号通達)とされています。

つまり、労働時間は通算されるのが原則です。

しかし、ダブルワークについては、この規定の解釈について、さまざまな疑義が出されていました。

令和2(2020)年9月1日付で、厚生労働省労働基準局長から都道府県労働局長に宛てられた通達(基発0901第3号)は、こうした疑義のいくつかに答えるものです。

 

<簡便な労働時間管理の方法>

ダブルワーク労働者の時間管理は、理論は分かっていても、具体的にどうすれば良いのか悩んでしまいます。

通達では、こうした疑問に答えるべく、簡便な労働時間管理の方法を示しています。

まず、使用者の悩みを次のように把握しています。

「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方については、上記のとおりですが、例えば、副業・兼業の日数が多い場合や、自らの事業場および他の使用者の事業場の双方で所定外労働がある場合等には、労働時間の申告等や通算管理について、労使双方に手続上の負担が伴うことが考えられます」

 

<管理モデルの枠組み>

通達では、労働時間の申告等や通算管理での労使双方の手続上の負担を軽減し、法に定める最低労働条件が遵守されやすくなる簡便な労働時間管理の方法を「管理モデル」と呼んでいます。

「管理モデルは、副業・兼業の開始前に、その副業・兼業を行う労働者と時間的に先に労働契約を締結していた使用者(以下「使用者A」という)の事業場での法定外労働時間と時間的に後から労働契約を締結した使用者(以下「使用者B」という)の事業場での労働時間(所定労働時間と所定外労働時間)とを合計した時間数が単月100時間未満、複数月平均80時間以内となる範囲内で、各々の使用者の事業場での労働時間の上限をそれぞれ設定し、各々の使用者がそれぞれその範囲内で労働させることにするものです。

また、使用者Aは自らの事業場での法定外労働時間の労働について、使用者Bは自らの事業場での労働時間の労働について、それぞれ自らの事業場での36協定の延長時間の範囲内とし、割増賃金を支払うことにするものです。

これにより、使用者Aも使用者Bも、副業・兼業の開始後には、それぞれあらかじめ設定した労働時間の範囲内で労働させる限り、他の使用者の事業場での実労働時間の把握をせずに法を遵守することが可能となります」

 

<管理モデルの具体的な導入手順>

通達では、管理モデルを導入するにあたっての設定が、次のように規定されています。

「管理モデルは、一般的には、副業・兼業を行おうとする労働者に対して、使用者Aが管理モデルにより副業・兼業を行うことを求め、労働者と使用者Bがこれに応じることによって導入されることが想定されています。

使用者Aの事業場での1か月の法定外労働時間と、使用者Bの事業場での1か月の労働時間とを合計した時間数が単月100時間未満、複数月平均80時間以内となる範囲内で、各々の使用者の事業場での労働時間の上限をそれぞれ設定します。

月の労働時間の起算日が、使用者Aの事業場と使用者Bの事業場とで異なる場合には、各々の使用者は、各々の事業場の労働時間制度での起算日を基に、そこから起算した1か月の労働時間の上限をそれぞれ設定することにしてもかまいません」

 

<管理モデルでの時間外労働の割増賃金の取扱い>

使用者Aは自らの事業場での法定外労働時間の労働について、使用者Bは自らの事業場での労働時間の労働について、それぞれ割増賃金を支払うことになります。

使用者Aが、法定外労働時間に加え、所定外労働時間についても割増賃金を支払うことにしている場合には、使用者Aは、自らの事業場での所定外労働時間の労働について割増賃金を支払うことになります。

時間外労働の割増賃金の率は、自らの事業場での就業規則等で定められた率(2割5分以上の率。ただし、使用者Aの事業場での法定外労働時間の上限に使用者Bの事業場での労働時間を通算して、自らの事業場の労働時間制度における法定労働時間を超える部分が1か月について60時間を超えた場合には、その超えた時間の労働のうち自らの事業場において労働させた時間については、5割以上の率。)としなければなりません。

 

<その他の例外的なことへの対応>

通達には、複数の事業場での法定外労働時間の合計が1か月で80時間を超える場合や、管理モデルの導入後に労働時間の上限を変更する場合、労働者が事業主を異にする3以上の事業場で労働する場合などについても、対応方法が示されています。

しかし、ダブルワーク労働者の過労や混乱を避けるべきことからすると、こうした例外を発生しないように心がけることも、使用者の責務であるといえるでしょう。

 

解決社労士

2020/10/17|2,045文字

 

<ダブルワークと労働基準法>

労働基準法には、次の規定があります。

 

【労働基準法第38条第1項:時間計算】

労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。

 

ここで、「事業場を異にする場合」には、事業主を異にする場合をも含む(昭和23(1948)年5月14日付基発第769号通達)とされています。

つまり、労働時間は通算されるのが原則です。

しかし、ダブルワークについては、この規定の解釈について、さまざまな疑義が出されていました。

令和2(2020)年9月1日付で、厚生労働省労働基準局長から都道府県労働局長に宛てられた通達(基発0901第3号)は、こうした疑義のいくつかに答えるものです。

 

<副業・兼業の確認>

通達は、使用者による副業・兼業の確認について、次のように説明しています。

「使用者は、労働者からの申告等により、副業・兼業の有無・内容を確認します。

その方法としては、就業規則、労働契約等に副業・兼業に関する届出制を定め、既に雇い入れている労働者が新たに副業・兼業を開始する場合の届出や、新たに労働者を雇い入れる際の労働者からの副業・兼業についての届出に基づくこと等が考えられます。

使用者は、副業・兼業に伴う労務管理を適切に行うため、届出制など副業・兼業の有無・内容を確認するための仕組みを設けておくことが望ましいです」

 

<労働時間を通算管理する使用者>

副業・兼業を行う労働者を使用する使用者は、法第38条第1項の規定により、それぞれ、自らの事業場における労働時間と他の使用者の事業場における労働時間とを通算して管理する必要があります。

しかし、他所の事業場における労働時間を、確実に把握することは困難であることから、通達は次のように行うことを説明しています。

「労働時間の通算管理は、自らの事業場における労働時間と労働者からの申告等により把握した他の使用者の事業場における労働時間とを通算することによって行います。

労働者からの申告等がなかった場合には、労働時間の通算は要せず、また、労働者からの申告等により把握した他の使用者の事業場における労働時間が、事実と異なっていた場合でも、労働者からの申告等により把握した労働時間によって通算していれば問題ありません」

つまり、労働者からの申告等により得られる情報の範囲内で管理すれば良いのであって、それ以上に自ら事実を探知してまで確認する必要は無いということです。

 

<基礎となる労働時間制度>

ダブルワーク労働者が働いている他所の事業場の労働時間制度が、自社のものと異なる場合について、通達は次のようにするよう説明しています。

「法第38条第1項の規定による労働時間の通算は、自らの事業場における労働時間制度を基に、労働者からの申告等により把握した他の使用者の事業場における労働時間と通算することによって行います。

週の労働時間の起算日または月の労働時間の起算日が、自らの事業場と他の使用者の事業場とで異なる場合についても、自らの事業場の労働時間制度における起算日を基に、そこから起算した各期間における労働時間を通算します」

 

<通算して時間外労働となる部分>

この部分は、従来からの変更は無く、通達では次のように説明されています。

「原則として、自らの事業場における所定労働時間と他の使用者の事業場における所定労働時間とを通算して、自らの事業場の労働時間制度における法定労働時間を超える部分がある場合は、時間的に後から労働契約を締結した使用者におけるその超える部分が時間外労働となり、その使用者における36協定で定めるところによって計算することになります。

例外的に、原則の所定労働時間の通算に加えて、自らの事業場における所定外労働時間と他の使用者の事業場における所定外労働時間とをその所定外労働が行われる順に通算して、自らの事業場の労働時間制度における法定労働時間を超える部分がある場合は、その超える部分が時間外労働となります」

つまり、原則として、後から雇った使用者が時間外割増賃金を負担しますが、先に雇った使用者でも例外的に時間外割増賃金を負担することがあるわけです。

そして、「各々の使用者は、通算して時間外労働となる時間のうち、自らの事業場において労働させる時間については、自らの事業場における36協定の延長時間の範囲内とする必要があります。

また、各々の使用者は、通算して時間外労働となる時間によって、時間外労働と休日労働の合計で単月100時間未満、複数月平均80時間以内の要件を遵守するよう、1か月単位で労働時間を通算管理する必要があります」

 

<割増賃金の支払>

上記のように労働時間の通算管理を行う主な目的は、時間外割増賃金の支払を適正に行うことにあります。

通達は、割増賃金の支払について、次のように説明しています。

「各々の使用者は、自らの事業場における労働時間制度を基に、他の使用者の事業場における所定労働時間・所定外労働時間についての労働者からの申告等により、

・ まず労働契約の締結の先後の順に所定労働時間を通算し、

・ 次に所定外労働の発生順に所定外労働時間を通算することによって、

それぞれの事業場での所定労働時間・所定外労働時間を通算した労働時間を把握し、その労働時間について、自らの事業場の労働時間制度における法定労働時間を超える部分のうち、自ら労働させた時間について、時間外労働の割増賃金(法第37条第1項)を支払う必要があります。

時間外労働の割増賃金の率は、自らの事業場における就業規則等で定められた率(2割5分以上の率。ただし、所定外労働の発生順によって所定外労働時間を通算して、自らの事業場の労働時間制度における法定労働時間を超える部分が1か月について60時間を超えた場合には、その超えた時間の労働のうち自ら労働させた時間については、5割以上の率。)となります(法第37条第1項)。

 

<実務上のポイント>

ダブルワーク労働者の割増賃金の計算は、やや複雑に思われるかもしれません。

それだけに、未払い賃金が発生する恐れも大きいものです。

通達の内容を踏まえて、適正な賃金支払を行っていただきたいと思います。

 

解決社労士

2020/10/16|1,614文字

 

<ダブルワークと労働基準法>

労働基準法には、次の規定があります。

 

【労働基準法第38条第1項:時間計算】

労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。

 

ここで、「事業場を異にする場合」には、事業主を異にする場合をも含む(昭和23(1948)年5月14日付基発第769号通達)とされています。

つまり、労働時間は通算されるのが原則です。

しかし、ダブルワークについては、この規定の解釈について、さまざまな疑義が出されていました。

令和2(2020)年9月1日付で、厚生労働省労働基準局長から都道府県労働局長に宛てられた通達(基発0901第3号)は、こうした疑義のいくつかに答えるものです。

 

<労働時間が通算されない場合>

今回の通達では、労働基準法第38条第1項の規定による労働時間の通算が行われない場合について、そもそも法が適用されない場合と、法は適用されるが労働時間規制が適用されない場合を、次のように確認しています。

 

・法が適用されない場合

フリーランス、独立、起業、共同経営、アドバイザー、コンサルタント、顧問、理事、監事等

 

・法は適用されるが労働時間規制が適用されない場合(法第41条と第41条の2)

農業・畜産業・養蚕業・水産業、管理監督者・機密事務取扱者、監視・断続的労働者、高度プロフェッショナル制度

 

<労働時間が通算して適用される規定>

通達は、労働時間が通算される規定について、次のように説明しています。

「法定労働時間(法第32条・第40条)について、その適用において自らの事業場における労働時間および他の使用者の事業場における労働時間が通算されます。

時間外労働(法第36条)のうち、時間外労働と休日労働の合計で単月100時間未満、複数月平均80時間以内の要件(同条第6項第2号および第3号)については、労働者個人の実労働時間に着目し、その個人を使用する使用者を規制するものであって、その適用にあたっては、自らの事業場における労働時間および他の使用者の事業場における労働時間が通算されます。

時間外労働の上限規制(法第36条第3項から第5項までおよび第6項(第2号および第3号に関する部分に限る))が適用除外(同条第11項)または適用猶予(法第139条第2項、第140条第2項、第141条第4項または第142条)される業務・事業についても、法定労働時間(法第32条・第40条)についてはその適用において自らの事業場における労働時間および他の使用者の事業場における労働時間が通算されます」

 

<通算されない規定>

通達は、労働時間が通算されない規定について、次のように説明しています。

「時間外労働(法第36条)のうち、法第36条第1項の協定(以下「36協定」という)により延長できる時間の限度時間(同条第4項)、36協定に特別条項を設ける場合の1年についての延長時間の上限(同条第5項)については、個々の事業場における36協定の内容を規制するものであって、それぞれの事業場における延長時間を定めることになります。

また、36協定において定める延長時間が、事業場ごとの時間で定められていることから、それぞれの事業場における時間外労働が36協定に定めた延長時間の範囲内であるか否かについては、自らの事業場における労働時間と他の使用者の事業場における労働時間とは通算されません。

休憩(法第34条)、休日(法第35条)、年次有給休暇(法第39条)については、労働時間に関する規定ではなく、その適用において自らの事業場における労働時間および他の使用者の事業場における労働時間は通算されません」

 

<実務でのポイント>

ダブルワークにおける労働時間の通算は、当事者である労働者から不満が出やすいものです。

労働者から、通達とは異なる見解が主張された場合には、会社から通達の内容を丁寧に説明する必要があります。

 

解決社労士

2020/07/21|885文字

 

<制限の根拠1>

ダブルワークを制限する根拠として、労働契約の存在があります。

労働者は使用者との間に労働契約を交わしていますから、労務提供の義務を負っています。

しかも、疲れてため息をつきながらの勤務では不完全です。

使用者は労働者に対して、健康状態を保ちながらの勤務を求めることができます。

この根拠からすると、他の会社の非常勤取締役としてのわずかな活動や、休日に軽易な労働をしている場合には、こうした兼業を制限できないことになります。

反対に、出勤日に深夜トラックの運転や、深夜2時までバーでアルバイトするなどは、負担が大き過ぎますから制限することに合理性が認められます。

もっとも、公務員であれば、一段上の職務専念義務がありますから、ダブルワークの制限にも法的な根拠があります。

 

<制限の根拠2>

もう一つの根拠として、労働者の職業選択の自由と会社の事業活動の自由との調整があります。

誰にも、公共の福祉に反しない限り、職業選択の自由があります。

つまり、どのような仕事をするかは基本的に自由です。〔日本国憲法第22条第1項〕

一方で、会社にも営業の自由があって、その根拠も職業選択の自由にあります。

そして、両方の自由を調整する原理として「公共の福祉」があるのです。

どちらか片方の自由が優先されてはならず、お互いにバランス良く制限し合うということです。

このことからすると、ライバル会社で副業をすることや、お客様から信頼を求められる社員が性風俗産業でアルバイトをするなどは制限されます。

ましてや違法な副業をすることは許されません。

 

<就業規則の効力>

たとえダブルワークを一切禁止する定めが就業規則にあったとしても、具体的な副業が本業の妨げにならず、本業の会社に不利益を与えないのならば、それは禁止することができません。

禁止の合理的な根拠が無いからです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

就業規則に定めても無効なことや、有効性が制限されることもあります。

もちろん定め方次第ということもあります。

会社を守るためにも、一度、信頼できる社労士に就業規則をチェックさせてはいかがでしょうか。

 

解決社労士

2020/07/13|2,729文字

 

令和2年7月8日、政府は規制改革推進会議を開催し、経済財政運営と改革の基本方針2020(仮称)(原案)を公表しました。

新型コロナウイルス感染拡大の影響を踏まえた内容となっています。

 

<雇用の維持と生活の下支え>

・事業主に対しては、雇用調整助成金についてのオンライン申請の確実な稼働など手続きの簡素化等によるできる限り迅速な支給に加え、休業手当が支払われない中小企業の労働者に対しては、休業前賃金額の一部を休業実績に応じて直接支給する休業支援金の円滑な実行を通じ、雇用の維持に全力を尽くす。

・ニーズの高い職種、成長分野へのマッチングを進めるとともに、優良な職業紹介事業者の明確化等により、医療介護福祉保育等の人材を円滑に確保する。

コロナショックでダメージを受けた事業主・労働者への支援と、医療関係などの人材充実を目指しています。

 

<マイナンバー制度の抜本的改善>

・国民にとって使い勝手の良いものに作り変えるため、抜本的な対策を講ずる。

・2021年に必要な法制上の対応を行い、2022年を目途に、マイナンバーカードを活用して、生まれてから職場等、生涯にわたる健康データを一覧性をもって提供できるよう取り組むとともに、当該データの医療研究等への活用の在り方について検討する。

・マイナンバーカードの公的個人認証の活用により障害者割引適用の際に障害者手帳の提示が不要とできるよう、デジタル対応を推進する。

・在留カードとマイナンバーカードとの一体化について検討を進め、2021年中に結論を得る。

・運転免許証について、海外の事例を踏まえつつ、発行手続やシステム連携の在り方等を含めた検討を開始する。あわせて、自動車検査証および自動車検査登録手続についても、マイナンバーカードを活用した手続の一層のデジタル化の推進に向けて、検討を開始する。

・国税還付、年金給付、各種給付金(国民向け現金給付等)、緊急小口資金、被災者生活再建支援金、各種奨学金等の公金の受取手続の簡素化・迅速化に向け、マイナポータル等を活用し、公金振込口座設定のための環境整備を進める。様々な災害等の緊急時や相続時にデジタル化のメリットを享受できる仕組みを構築するとともに、公平な全世代型社会保障を実現していくため、公金振込口座の設定を含め預貯金口座へのマイナンバー付番の在り方について検討を進め、本年中に結論を得る。

マイナンバー関連のサービス充実による利便性の向上という、従来の方向性が維持されています。

「預貯金口座へのマイナンバー付番」など、賛否の別れる施策については、検討のうえ結論を出すことにしています。

マイナンバーカードに対する不信感や無関心への対応は示されていません。

 

<国・地方を通じたデジタル基盤の標準化の加速>

・行政手続のオンライン化、ワンストップ・ワンスオンリー化を抜本的に進める。

・原則として対面や押印の不要化、申請書類の可能な限りの縮減、法人データ連携基盤(Gビズコネクト)による情報連携等を加速する。特に、雇用調整助成金、運転免許証に係る運転可能期間の延長等について、電子申請等による手続の簡素化・迅速化の一層の促進に取り組む。

・建設業許可の電子申請化など関係手続のリモート化を進める。

密閉、密集、密接を避けて行政手続を行えるよう、急いで体制を整える方針です。

 

<働き方改革>

・労働時間の管理方法のルール整備を通じた兼業・副業の促進など複線的な働き方や、育児や介護など一人一人の事情に応じた、多様で柔軟な働き方を労働者が自由に選択できるような環境を整備し、RPAの活用を含むさらなる生産性向上に向けた好循環を作り出す。あわせて、不本意非正規雇用の解消を図る。

・事業場外みなし労働時間制度の適用要件に関する通知内容の明確化や関係ガイドラインの見直しなど、実態を踏まえた就業ルールの整備に取り組む。

・ジョブ型正社員のさらなる普及・促進に向けた格好の機会と捉え、必要な雇用ルールの明確化や各種支援に取り組む。

・労働者が職務の範囲内で裁量的・自律的に業務を遂行でき、企業側においても、こうした働き方に即した、成果型の弾力的な労働時間管理や処遇ができるよう、裁量労働制について、実態を調査したうえで、制度の在り方について検討を行う。

・フリーランスの適正な拡大を図るため、保護ルールの整備を行う。

働き方改革は、労働力不足を踏まえて、同一労働同一賃金、年次有給休暇の取得促進、長時間労働の抑制、残業の制限などに取り組むものでした。

上記の内容は、新型コロナウイルス感染拡大を防止しつつ労働力を確保できる施策、雇用維持のための施策が中心となっており、大きく様変わりしています。

 

<書面・押印・対面主義からの脱却等>

・すべての行政手続を対象に見直しを行い、原則として書面・押印・対面を不要とし、デジタルで完結できるよう見直す。

・押印についての法的な考え方の整理などを通じて、民民間の商慣行等についても、官民一体となって改革を推進する。

行政手続と民間取引の両方について、対面を不要とすべく、押印の必要性見直しなどが進められます。

 

<最低賃金の引上げ>

・より早期に全国加重平均1,000円になることを目指すとの方針を堅持する。

・今は官民を挙げて雇用を守ることが最優先課題であることを踏まえ、今年度の最低賃金については、中小企業・小規模事業者が置かれている厳しい状況を考慮し、検討を進める。

年々急速に最低賃金が上がっています。

コロナ禍の中、今年の最低賃金は引き上げるべきではないという意見もありますが、全国加重平均1,000円を目指す方針が維持されました。

ただ、雇用の維持の観点から、例年よりは引き上げ幅が縮小される見込みです。

 

<社会的連帯や支え合いの醸成>

・特定技能外国人の受入分野追加は、分野を所管する行政機関が人手不足状況が深刻であること等を具体的に示し、法務省を中心に適切な検討を行う。

・あわせて、技能実習制度について、運用の適正化を行う。

・これらを含めて、施行2年後の制度の在り方に関する見直しの検討を行う。

外国人の受け入れについては、大幅に修正せざるを得ません。

 

<本年度の特徴>

「経済財政運営と改革の基本方針2020」は、本来は年度方針ですから、1年間にわたって取り組むべき内容が示されるはずのものです。

しかし、現在の情勢下では、政府として新型コロナウイルス感染症への対応が喫緊の課題であることから、記載内容を絞り込み、今後の政策対応の大きな方向性に重点を置いたものとなっています。

よく言われるように、新型コロナウイルス感染症拡大が、世界を大きく変えるきっかけとなったことは間違いありません。

 

解決社労士

2020/05/30|1,809文字

 

<パート有期労働法の施行>

働き方改革関連法の一つであるパートタイム・有期雇用労働法の施行により、2020年4月から正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者との不合理な待遇差が禁止されることとなりました。(ただし、中小企業は2021年4月からの適用です)

同じ企業で働く正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者との間に待遇の違いがある場合、あらゆる待遇について、個々の項目ごとに不合理な待遇差の解消が求められます。

待遇差があってはならないのではなく、待遇差の存在とその程度について、客観的に合理的な理由が存在しなければならないということです。

とはいえ、基本給については、それぞれの企業で様々な要素を踏まえて支払われており、各企業間で大きな金額の差があって、その合理性については判断がむずかしいものです。

 

<職務評価を用いた基本給の点検・検討マニュアル>

同一労働同一賃金への対応のための参考資料として、厚生労働省から「職務評価を用いた基本給の点検・検討マニュアル」が発行されています。

すでに基本給の見直し案を策定済の場合には点検ツールとして、これから基本給の見直しを検討する場合にはマニュアルとして、数多くの企業で活用されています。

このマニュアルが、不合理な待遇差を解消する一つの方法として紹介しているのは、職務評価の手法のうちの要素別点数法という方法です。

これは、職務(役割)の内容を、構成要素ごとに点数化し、この点数に従って基本給を決定していくものですから、客観性が示されることで納得が得られやすい方法です。

 

<人事考課との区別>

職務評価の要素別点数法は、正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者の職務(役割)の大きさを比較する方法です。

評価というと、企業内では人事考課が一般的です。

しかし、正社員の考課基準は、将来への期待を含めた能力、会社への帰属感、会社での経験、会社への貢献度など、職務(役割)の大きさを測る指標としては不適切なものが含まれています。

一方、パートタイム労働者・有期雇用労働者の考課基準が不明確な企業もありますし、たとえ明確であっても、正社員とは異なる基準で評価していることが多いものです。

要素別点数法は、正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者を、同じ土俵で職務(役割)の大きさを比較する方法ですから、これまで用いてきた人事考課の基準を流用することはできません。

 

<評価項目のカスタマイズ>

「職務評価を用いた基本給の点検・検討マニュアル」には、評価項目の例として、学習院大学が開発したGEMや国際労働機関(ILO)によるものが紹介されています。

しかし、これらはあくまでも例示です。

例示をそのまま流用してしまうと、自社の実情に合わないものとなる恐れがあります。

各企業には、元々基本給の決定にあたって考慮している要素があります。

これを分析し明確化することによって、基本的な評価項目の軸に据えましょう。

「マニュアル」に示された例は、項目の分類や表現の仕方についての、参考資料として活用できます。

 

<ウェイトのカスタマイズ>

要素別点数法による職務(役割)評価は、職務(役割)評価表を用いて職務(役割)評価ポイントを算出して行います。

職務(役割)評価表は、評価項目、ウェイト、スケールの3要素から構成されています。

このうちウェイトは、各企業の事業特性などに応じた構成要素の重要度を示します。

評価項目ごとのウェイトをどのように設定するかによって、職務(役割)評価ポイントは大きく異なってきます。

ある程度まとまった人数の正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者についてシミュレーションを行い、現在の給与実態と大きく異なるのであれば、評価項目ごとのウェイトを変えてみて、実態に合ったものにしましょう。

このとき、ウェイトのベースを1にすると、上手くいかないことがあります。

少しだけ重点を置きたい項目のウェイトを2にすると、影響度が2倍になってしまうからです。

この場合には、ウェイトのベースを2あるいは3にして調整することをお勧めします。

 

<実務上のポイント>

職務評価の基準を設定するにあたって、まずは、その結果が現状と大きく乖離しないものを作成します。

これをベースに、同一労働同一賃金の観点から、不合理な部分を手直しする形で最終案をまとめると、社内での混乱を招くことなく、納得の得られるものとなるでしょう。

 

解決社労士

2020/04/14|1,024文字

 

<働き方改革の本来の方向性>

少子高齢化(生産労働力人口の減少)による実質的な労働力の不足を補うため、働き方改革によって、労働者の健康回復・増進、仕事と家庭の両立、労働力の掘り起こし、労働力提供期間の延長、労働力提供方法の多様化、非正規のモチベーションアップ、女性活躍などの推進を目指してきました。

 

<新型コロナウイルスによって起きている現象>

ところが、新型コロナウイルス感染症の拡大による経済活動の縮小によって、幅広い業界で労働力の過剰が発生し、使用者からの採用取りやめ、内定取消、派遣切り、雇い止め、解雇、シフト減少、休業命令などが発生しています。

このため、雇用維持、待遇維持、生活維持が新たな課題となっています。

 

<長期的視点での働き方改革>

もともと、働き方改革は短期決戦のキャンペーン的な施策ではありません。

将来を見据えて、あるべき姿を追求し続ける必要があります。

新型コロナウイルス感染症収束後の人手不足発生時には、冷たい態度を示していた企業に労働者が集まらないでしょうから、大企業はこれを避けようとしています。

中には、労働者のことを第一に考え、雇用保険を頼って、苦渋の決断で一斉解雇に踏み切るタクシー会社などもあります。

一方、体力の無い会社は目先のことに精一杯で、労働法違反の行為に走っていることもあります。

これらの動きは、それぞれの企業の将来に大きな影響を与えることでしょう。

長期的な視点に立って、働き方改革の推進を継続する必要があります。

 

<短期的視点での働き方改革>

この状況下で、多くの企業にとって取組みやすい施策としては、労働時間の削減、年次有給休暇の取得率向上、テレワーク、フレックスタイム制などがあります。

この機会に仕組を作っておき、長期的に運用を継続したいものです。

逆に、取組みにくい項目として、非正規社員の待遇を引き上げる形での同一労働同一賃金などがあります。

ここは、企業が取組むにあたって、行政の強力なバックアップが必要だと思います。

 

<新型コロナウイルス感染症の収束>

我々の期待している新型コロナウイルス感染症の収束とは、どういう状態を言うのでしょうか。

はしか、水ぼうそう、インフルエンザ等のように、ワクチンと治療薬によって、大事に至らず免疫が得られるようになる状態なのでしょうか。

素人考えですが、15日サイクルで変異するウイルスのワクチンが開発できるのか、風邪の特効薬が無いのに今回のウイルスの治療薬を開発できるのかという疑問は残ります。

 

解決社労士

2020/03/27|2,810文字

 

<ガイドラインの公表>

令和2年3月18日、厚生労働省が「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン令和2年3月改訂版」を公表しました。

これは、がん、脳卒中などの疾病を抱える方々に対して、会社が適切な就業上の措置や治療に対する配慮を行い、治療と仕事が両立できるようにするためのものです。

ここでは、両立支援を行うための環境整備(実施前の準備事項)について、中心的な部分の概要をご紹介いたします。

 

<事業者による基本方針等の表明と労働者への周知>

衛生委員会等で調査審議を行った上で、事業者として、治療と仕事の両立支援に取り組むに当たっての基本方針や具体的な対応方法等の事業場内ルールを作成し、全ての労働者に周知することで、両立支援の必要性や意義を共有し、治療と仕事の両立を実現しやすい職場風土を醸成します。

会社として、本気で取り組む姿勢を示すことによって、社内での意識を変革することができるようになります。

 

<研修等による両立支援に関する意識啓発>

治療と仕事の両立支援を円滑に実施するため、当事者やその同僚となり得る全ての労働者、管理職に対して、治療と仕事の両立に関する研修等を通じた意識啓発を行います。

人事異動が、全社的など広汎に行われる会社であれば、すべての労働者に対して研修等が必要となります。

これは、事業者による基本方針等の表明を受けて、具体的な内容を伝達する目的で行うものですから、基本方針等の表明からなるべく期間を置かずに実施することが望ましいものです。

 

<相談窓口等の明確化>

治療と仕事の両立支援は、労働安全衛生法に基づく健康診断において把握した場合を除いては、労働者からの申出を原則とすることから、労働者が安心して相談・申出を行えるよう、相談窓口、申出が行われた場合の当該情報の取扱い等を明確にします。

会社から治療と仕事の両立支援について、正式な表明が行われるまでは、多くの労働者が病気を隠して治療しながら就労しているという実態があります。

こうした労働者が、会社に対して支援を求めようとする場合に、相談窓口や担当部署が明確でなければなりません。

また、支援を求めた場合に、どのように対応してもらえるのか、個人の秘密は守られるのかなど、不安要素は多岐に亘りますから、これらを解消する情報の提供も必要です。

 

<休暇制度、勤務制度の整備>

治療と仕事の両立支援においては、短時間の治療が定期的に繰り返される場合、就業時間に一定の制限が必要な場合、通勤による負担軽減のために出勤時間をずらす必要がある場合などがあることから、以下のような休暇制度、勤務制度について、各事業場の実情に応じて検討、導入し、治療のための配慮を行うことが望ましいといえます。

【時間単位の年次有給休暇】

労働基準法に基づく年次有給休暇は、1日単位で与えることが原則です。しかし、労使協定を結べば、1時間単位で与えることが可能となります。ただし、1年で5日分までが上限となります。

【傷病休暇・病気休暇】

事業者が自主的に設ける法定外の休暇で、入院治療や通院のために、年次有給休暇とは別に休暇を付与するものです。取得条件や取得中の賃金の支払いの有無などの処遇についても、事業場ごとに異なります。

大企業の多くが、こうした休暇制度を設けています。

【時差出勤制度】

事業者が自主的に設ける勤務制度であり、始業と終業の時刻を変更することにより、身体に負担のかかる通勤時間帯を避けて通勤するといった対応が可能となります。

新型コロナウイルス感染症の拡大防止を目的として、この制度が利用されましたので、その有効性は確認済みといえます。

【短時間勤務制度】

育児、介護休業法に基づく短時間勤務制度とは別に、事業者が自主的に設ける勤務制度です。療養中・療養後の負担を軽減すること等を目的として、所定労働時間を短縮する制度です。

【在宅勤務(テレワーク)】

事業者が自主的に設ける勤務制度で、パソコンなどの情報通信機器を活用した、場所にとらわれない柔軟な働き方です。自宅で勤務することにより、通勤による身体への負担を軽減することが可能となります。

大企業では、東京オリンピック対策で用意された制度が、新型コロナウイルス感染症の拡大防止を目的として広く利用されました。そのメリット・デメリットは確認済みといえます。

【試し出勤制度】

事業者が自主的に設ける勤務制度であり、長期間にわたり休業していた労働者に対し、円滑な復職を支援するために、勤務時間や勤務日数を短縮した試し出勤等を行うものです。復職や治療を受けながら就労することに不安を感じている労働者や、受入れに不安を感じている職場の関係者にとって、試し出勤制度があることで不安を解消し、円滑な就労に向けて具体的な準備を行うことが可能となります。

 

<労働者から支援を求める申出があった場合の対応手順、関係者の役割の整理>

労働者から支援を求める申出があった場合に円滑な対応ができるよう、労働者本人、人事労務担当者、上司・同僚等、産業医や保健師、看護師等の産業保健スタッフ等の関係者の役割と対応手順をあらかじめ整理しておきます。

 

<関係者間の円滑な情報共有のための仕組みづくり>

治療と仕事の両立のためには、労働者本人を中心に、人事労務担当者、上司・同僚等、産業医や保健師、看護師等の産業保健スタッフ、主治医等が、本人の同意を得た上で支援のために必要な情報を共有し、連携することが重要です。特に、就業継続の可否、必要な就業上の措置及び治療に対する配慮に関しては、治療の状況や心身の状態、就業の状況等を踏まえて主治医や産業医等の医師の意見を求め、その意見に基づいて対応を行う必要があります。このため、医師に労働者の就業状況等に関する情報を適切に提供するための様式や、就業継続の可否、必要な就業上の措置及び治療に対する配慮について医師の意見を求めるための様式を定めておきます。

「様式」は、書式、フォーマットですが、ひな形の他に記入例も作成して示しておき、情報伝達を円滑・確実にしましょう。

 

<両立支援に関する制度や体制の実効性の確保>

治療と仕事の両立支援のための制度や体制を機能させるため、日頃から全ての労働者に対して、制度、相談窓口の周知を行うとともに、管理職に対して、労働者からの申出、相談を受けた際の対応方法や、支援制度・体制について研修等を行います。

管理職向けの研修は、人事考課研修に併せて定期的に繰り返し行うと効果的です。

 

<労使等の協力>

治療と仕事の両立に関して、制度・体制の整備等の環境整備に向けた検討を行う際には、衛生委員会等で調査審議するなど、労使や産業保健スタッフが連携し、取り組むことが重要です。

何でも話し合って決めるというわけにはいきませんが、話し合いにより共通認識が得られれば、制度の円滑な運用に役立つことでしょう。

 

解決社労士

2020/03/15|1,262文字

 

<働き方改革の流れ>

厚生労働省は、「働き方改革実行計画」を踏まえ、副業・兼業の普及促進を図っています。

そして、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を公表し、モデル就業規則の「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定を削除しました。

 

<兼業禁止規定の存在>

働き方改革の流れにもかかわらず、兼業禁止規定が就業規則に残っているケースも多々あります。

こうした規定は、政府の方針に沿うものではありませんが、その存在自体が許されないものではなく、各企業が必要性を認めて残しておくことは問題ありません。

 

<職業選択の自由>

職業選択の自由は、「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」として憲法で保障されています。〔日本国憲法第22条第1項〕

この中の、「公共の福祉」というのは、「他者の人権」のことを指しています。

「公共の福祉に反しない限り」というのは、「他者の人権を侵害しない限り」という意味です。

ですから、労働者が自由に副業・兼業を行えるわけではなく、また、企業が一律に禁止できるわけでもありません。

労働者の副業・兼業の権利が、企業の営業の自由との調整によって、ある程度制限されることもありうることになります。

 

<兼業禁止の合理性>

こうして、企業による兼業禁止や兼業制限に合理性が認められれば、有効性は否定されないということになります。

具体的には、次のような事情があれば、その程度に応じた制限も可能であり、場合によっては、禁止することも許されるということになります。

1.本業に支障が出る場合

兼業のために、遅刻や欠勤が増え、生産性が低下している場合には、本業に支障が出ていることになります。

2.会社の売上が低下する場合

ライバル企業での兼業によって、会社の売上に直接マイナスの影響を及ぼしている場合には、会社の利益が損なわれることが明らかです。

3.ノウハウが流出する場合

会社固有の技術やノウハウが流出している場合にも、会社の利益が損なわれることが明らかです。

4.会社に対する信用を利用する場合

会社の名前や名刺を使って副業を行う場合のように、会社の信用を利用して商売を行う場合には、労働者個人の信用失墜行為が、会社の信用低下を招くことにもなります。

5.違法な仕事をする場合

労働者が、違法薬物を販売するような場合には、会社の信用を失墜させることになります。

 

<懲戒処分が許される場合>

就業規則に兼業や副業の届出義務が規定されているにも関わらず、無届で開始したような場合には、手続違背を理由に厳重注意や譴責処分などの軽い懲戒規定を適用することは可能でしょう。

しかし、就業規則に禁止規定があったとしても、実害の発生が認められないにも関わらず、懲戒解雇や出勤停止処分とすることは、行き過ぎだと思われます。

懲戒処分を行う可能性があるのであれば、不都合が発生する恐れが生じた時点で、まず注意勧告を行なう必要があります。

そして、実害が発生したなら、懲戒処分を検討するという流れにするのが適正な対応となります。

 

解決社労士

 

2020/02/26|1,515文字

 

<労使協定のチェックポイント>

令和2年2月12日、厚生労働省が、派遣労働者の同一労働同一賃金に関するリーフレット「過半数代表者に選ばれた皆さまへ」を公表しました。

このリーフレットは、労使協定方式での過半数労働組合または過半数代表者が、派遣元事業主と労使協定を締結する際のポイントを解説したもので、次の点に関する確認を呼びかける内容となっています。

 

【手続面】

・過半数代表者の選定手続きは適切か

・派遣労働者の意思は反映されているか

・過半数代表者が事務を円滑に遂行できるよう派遣元事業主は配慮しているか

 

よくある失敗としては、過半数代表者の選定にあたって、会社側が関与してしまうということがあります。

会社側が過半数代表者を指名してしまう場合の他、会社側が候補者を数人立てて、その中から投票で選出するなど、必ずしも民主的とはいえない方法で選定すると、その選定が無効となり、労使協定も無効となってしまいます。

派遣労働者の場合には、派遣先が数か所に分かれていて、派遣先の異なる派遣労働者とは面識が無いのは当然のことです。

こうした事情の中で、過半数代表者を選定するわけですし、派遣労働者が一堂に会する機会も限られていますので、メールによる投票などの方法がとられます。

民主的な方法による選定を行うことは当然ですが、これを裏付ける資料の保管も必要です。

 

【協定内容】

・協定の対象となる派遣労働者の範囲は適切か

・職種の選択は適切か

・通勤手当の支払方法について確認したか

・能力・経験調整指数の当てはめは適切か

・一般賃金額と対象従業員の賃金額が同等以上か

・昇給規定などが定められているか

・退職金について、どの方法を選択したか確認したか

 

職種の選択については、悩ましいケースが多いと思います。

同じ職種の中にも、必要な技能や経験が異なるものが含まれていますから、そこに示された一般賃金額の妥当性に疑問を持つことも多々あります。

また、一人の派遣労働者が、複数の職種にまたがっている場合もあります。

これらの疑問に答える資料は、今のところ厚生労働省からも十分に提供されているわけではありません。

令和2年度については、ある程度手探りで、不合理とならないように注意しつつ、労使協定の内容を定めるしかないのが実情でしょう。

 

<協定への記載が必要な事項>

派遣労働者について、労使協定方式をとった場合の労使協定に、特に必要な項目として、次のものが掲げられています。

 

□ 派遣労働者の職務の内容、成果、意欲、能力または経験などを公正に評価して賃金を決定すること

□「労使協定の対象とならない待遇」(労働者派遣法第40条第2項の教育訓練および同法第40条第3項の福利厚生施設)および「賃金」を除く待遇について、派遣元事業主に雇用される通常の労働者(派遣労働者を除く)との間で不合理な相違がないこと

□ 派遣労働者に対して段階的・計画的な教育訓練を実施すること

□ その他の事項

   ・有効期間(2年以内が望ましい)

   ・労使協定の対象となる派遣労働者の範囲を派遣労働者の一部に限定する場合はその理由

   ・特段の事情がない限り、一の労働契約の期間中に派遣先の変更を理由として、協定の対象となる派遣労働者であるか否かを変えようとしないこと

 

派遣先が大企業で賃金水準が高ければ、派遣先均等・均衡方式をあてはめ、零細企業で賃金水準が低ければ労使協定方式をあてはめるといった恣意的な運用をすれば、派遣元事業主の人件費は軽減されることになります。

しかし、こうした運用は明らかに不合理であって、派遣労働者に不利であることから、「その他の事項」の2つ目と3つ目に注意的に掲げられているわけです。

 

解決社労士

2020/02/10|1,108文字

 

令和2年2月6日、厚生労働省と経済産業省(中小企業庁)の合同による働き方改革対応合同チームが創設され、第1回目の会合が行われました。

 

<令和2年度からの取組み>

令和2年度からの取組みが、次のように示されています。

 

●労働基準監督署による中小企業への相談支援

●働き方改革推進支援センターによる支援の拡充

 ・同一労働同一賃金への取組支援として、新たに専門家自ら直接企業を訪問し、課題に対応するプッシュ型支援を実施

 ・同一労働同一賃金等に関する専門家向けの集合研修を実施

 ・各働き方改革推進支援センターが行ってきた、企業支援の取組を基に取組事例集を作成し、横展開を図る

●よろず支援拠点による支援の拡充

●働き方改革推進支援助成金(仮称)の拡充

 ・「時間外労働等改善助成金」を「働き方改革推進支援助成金(仮称)」に改称し、「労働時間短縮・年休促進支援コース」を新設

 ・「勤務間インターバル導入コース」と「労働時間短縮・年休促進支援コース」において、賃金加算要件を創設

●キャリアアップ助成金の拡充

 ・賃金規定の増額改定を行う事業主向けのコースについて、一定幅の増額改定を行った場合の加算措置を拡充

●生産性革命推進事業

 ・複数年にわたって中小企業の生産性向上を継続的に支援し、設備投資、IT導入、販路開拓等の支援を一体的かつ機動的に実施

●各種政府広報による同一労働同一賃金の周知

 

<働き方改革派遣専門家>

中小企業・小規模事業者等が、働き方改革の意義を十分に理解し、前向きに取組むことが重要であるため、47都道府県に「働き方改革推進支援センター」が設置され、①長時間労働の是正、②同一労働同一賃金の実現、③生産性向上による賃金引上げ、④人手不足の緩和などの労務管理に関する課題に対応しています。

就業規則や賃金制度等の見直し方などについて、技術的な相談支援を行っています。

●窓口相談や企業の取組事例や労働関係助成金の活用方法等に関するセミナーの実施

●労務管理などの専門家が事業所への個別訪問などにより、36協定届・就業規則作成ツールや業種別同一労働同一賃金マニュアル等を活用したコンサルティングの実施

●各地域の商工会議所・商工会・中央会・市区町村等への専門家派遣による相談窓口への派遣

 

この中の、「労務管理などの専門家」は、「働き方改革派遣専門家」といいます。

現在は、各企業が「働き方改革推進支援センター」に希望を出すと、働き方改革派遣専門家が指名されて、個別の訪問相談を行う形がとられています。

これは、アウトリーチ型支援と呼ばれるものです。

来年度からは、新たに専門家自ら直接企業を訪問し、課題に対応するプッシュ型支援を実施することになる予定です。

解決社労士

2020/01/13|1,423文字

 

<労働者派遣法の改正>

2020年4月1日から、派遣労働者の同一労働同一賃金の実現に向けた改正労働者派遣法が施行されます。

改正点は次の3点です。

1.不合理な待遇差をなくすための規定の整備

2.派遣労働者の待遇に関する説明義務の強化

3.裁判外紛争解決手続(行政ADR)の規定の整備

 

<不合理な待遇差をなくすための規定の整備>

次の①または②の待遇決定方式により公正な待遇が確保されます。

①【派遣先均等・均衡方式】派遣先の通常の労働者との均等・均衡待遇

②【労使協定方式】一定の要件を満たす労使協定による待遇

2020年4月1日をまたぐ労働者派遣契約であっても、この日から適用されます。

 

【派遣先均等・均衡方式】

「均等待遇」は、職務内容と異動の範囲が同じであれば、差別的取扱いが禁止されるものです。「平等待遇」ともいえます。

「均衡待遇」は、職務内容、異動の範囲、その他の事情の違いを考慮して不合理な待遇差を禁止するものです。「公平待遇」ともいえます。

 

【労使協定方式】

労使協定に定めるのは、次のような事項です。

① 協定の対象となる派遣労働者の範囲

② 賃金決定方法(同種業務の一般労働者の平均的な賃金額以上、職務の内容等が向上した場合に改善)

③ 職務の内容などを公正に評価して賃金を決定すること

④ 賃金以外の待遇決定方法(派遣元の通常の労働者(派遣労働者除く)との間で不合理な相違がない)

⑤ 段階的・体系的な教育訓練を実施すること

⑥ 有効期間 など

 

次のような場合には、【労使協定方式】は適用されず、【派遣先均等・均衡方式】が適用されます。

・協定を書面で締結していない場合

・協定に必要な事項が定められていない場合

・協定で定めた事項を遵守していない場合

・過半数代表者が適切に選出されていない場合

 

<派遣先企業が講ずべき措置>

 

(1) 派遣先から派遣元への比較対象労働者の待遇等に関する情報提供

労働者派遣契約を締結する前に、派遣先から派遣元に対し、比較対象労働者の待遇などに関する情報を提供しなければなりません。

つまり、情報提供をせず、派遣元との間で労働者派遣契約を締結することはできません。

 

(2) 教育訓練の実施・福利厚生施設の利用機会の付与・情報提供

派遣元の求めに応じて、派遣労働者に対しても業務の遂行に必要な能力を付与するための教育訓練を実施するなどの義務があります。

食堂・休憩室・更衣室は、利用の機会を与える義務があります。物品販売所、病院、診療所、浴場、理髪室、保育所、図書館、講堂、娯楽室、運動場、体育館、保養施設などの施設は、利用に関する便宜供与を講ずるよう配慮する義務があります。

派遣元の求めに応じて、派遣先の労働者に関する情報、派遣労働者の業務遂行状況などの情報を提供するなど必要な協力をするように配慮する義務があります。

 

<裁判外紛争解決手続(行政ADR)の規定の整備>

派遣労働者と派遣先との間で、次の事項に関してトラブルとなった場合には、「都道府県労働局長による助言・指導・勧告」や「紛争調整委員会による調停」を求めることができます。この制度は無料で利用することができ、調停等の内容が公にされないため、プライバシーが保護されます。また、これらを求めたことを理由として、派遣先は派遣労働者に対して不利益な取扱いをしてはならないこととされています。

① 業務の遂行に必要な能力を付与するための教育訓練の実施

② 食堂、休憩室、更衣室の利用の機会の付与

 

解決社労士

2019/12/29|1,404文字

 

<就職氷河期世代>

就職氷河期世代は、2000年前後に大学を卒業した世代、あるいは、1990年代半ばから2000年代前半に社会に出た世代といわれます。

現在は、40歳前後が中心の、雇用環境が厳しい時期に就職活動を行った世代であり、希望する就職ができず、現在も、不本意ながら不安定な仕事に就いている、無職の状態にあるなど、様々な課題に直面している人たちがいます。

 

<就職氷河期世代支援プログラムの基本認識>

現在のプログラムは、令和元(2019)年6月21日の閣議決定に基づいています。

一億総活躍社会を目指す中で、取り残されがちなこの世代を支援するプログラムです。

希望する労働条件とのギャップ、実社会での経験不足等就職氷河期世代が抱える固有の課題や今後の人材ニーズを踏まえつつ、個々人の状況に応じた支援により、同世代の活躍の場をさらに広げられるよう、地域ごとに対象者を把握した上で、具体的な数値目標を立てて3年間で集中的に取り組むものです。

支援対象としては、正規雇用を希望していながら不本意に非正規雇用で働く者、就業を希望しながら様々な事情により求職活動をしていない長期無業者、社会とのつながりを作り、社会参加に向けてより丁寧な支援を必要とする者など、100万人程度が見込まれています。

3年間の取組により、現状よりも良い処遇、そもそも働くことや社会参加を促す中で、同世代の正規雇用者については、30万人増やすことを目指すものとされています。

 

<施策の方向性>

相談、教育訓練から就職まで、切れ目のない支援という施策の方向性が示されています。

 

【きめ細かな伴走支援型の就職相談体制の確立】

・支援対象者が相談窓口を利用する流れづくり

・ハローワークに専門窓口を設置、専門担当者のチーム制によるきめ細かな伴走型支援

・地方自治体の無料職業紹介事業を活用したマッチングの仕組みを横展開

 

【受けやすく、即効性のあるリカレント教育の確立】

・仕事や子育て等を続けながら受講でき、正規雇用化に有効な資格取得等に資するプログラム、短期間での資格取得と職場実習等を組み合わせた「出口一体型」のプログラム、人手不足業種等の企業等のニーズを踏まえた実践的な人材育成プログラム等の整備

・「出口一体型」のプログラムや民間ノウハウを活用した教育訓練

・職場実習を職業訓練受講給付金の給付対象とし、受講を支援

 

【採用企業側の受入機会の増加につながる環境整備】

・採用選考を兼ねた「社会人インターンシップ」の推進

・各種助成金の見直し等による企業のインセンティブ強化

・採用企業や活躍する個人、農業分野などにおける中間就労の場の提供等を行う中間支援の好事例の横展開

 

<民間ノウハウの活用>

就職相談、教育訓練・職場実習、採用・定着の全段階について、専門ノウハウを有する民間事業者に対し、成果連動型の業務委託を行い、ハローワーク等による取組と車の両輪で、必要な財源を確保し、取組を加速するものとしています。

 

<令和2年度概算要求>

就職氷河期世代支援プログラム関連予算について、令和2(2020)年度は、1,344億円の概算要求がされています。

しかし、このプログラム自体が、3年間の集中支援プログラムとされていて、長期にわたって継続することは予定されていません。

企業としては、このプログラムによる下支えがある期間中に、就職氷河期世代の採用と教育を強化することが得策です。

 

解決社労士

2019/12/19|965文字

 

<過労死認定のむずかしさ>

過労死の可能性が疑われる場合でも、次のような疑問が湧いてきます。

・本当に過労が原因で亡くなったのだろうか

・仕事ではなくプライベートに疲労の原因があったのではないか

・平均的な人ならば耐えられる労働なのに弱かったのではないか

ですから、過労死が疑われる労働時間の基準が全くないのでは、企業は対策に悩んでしまいます。

また、亡くなった人の遺族も過労死を主張できるか迷ってしまいます。

 

<残業時間の基準>

「1か月の残業時間が100時間を超えた場合、または、直近2~6か月の平均残業時間が80時間を超えた場合」という基準が、次のように多く用いられてきました。

・「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」(平成13年12月12日付基発第1063号厚生労働省労働基準局長通達)

・「心理的負荷による精神障害の認定基準について」(平成23年12月26日付基発1226第1号厚生労働省労働基準局長通達)

・ハローワークで雇用保険給付手続きをした場合に自己都合退職ではなく会社都合退職として特定受給資格者となる基準

 

<労働時間の基準>

ここで「残業時間」というのは、法定労働時間である1日8時間、1週40時間を基準としています。

ですから、1か月30日で計算すると、

30日 ÷ 7日 = 4.28週

40時間 × 4.28週 = 171時間

これを超える時間が「残業時間」となります。

ということは、1か月271時間の労働時間(171時間+100時間)が過労死ラインとなります。

また、直近2~6か月で平均251時間の労働時間(171時間+80時間)も過労死ラインとなります。

 

<現在の時間外労働の上限規制>

上記の過労死ラインが基準として定着していたところ、母子家庭の母親が休日の出勤を繰り返すことにより過労死するという、痛ましい事件が発生したことをきっかけに、「1か月の残業時間が100時間を超えた場合、または、直近2~6か月の平均残業時間が80時間を超えた場合」という基準の「残業時間」に「休日出勤」が加えられて、現在の時間外労働の上限規制の基準となっています。

一見して分かりにくい時間外労働の上限規制基準は、医学的な見地からの基準に、裁判での基準が加味されたことによって、定められたものなのです。

 

解決社労士

2019/12/14|537文字

 

人材不足の折、まだまだこれからの活躍が期待される女性の活用は、企業にとって死活問題です。

しかし、いざ着手しようとすると、他社の状況が気になるものです。

厚生労働省では、女性の活躍推進状況に関する情報を一元化した「女性の活躍推進企業データベース」というサイトを開設しています。

 

1.採用した労働者に占める女性労働者の割合

2.採用における男女別の競争倍率、または採用における競争倍率の男女比(男性の倍率を1としたときの女性の倍率)

3.労働者に占める女性労働者の割合

4.男女の平均継続勤務年数の差異または男女別の採用10年前後の継続雇用割合

5.男女別の育児休業取得率

6.1月当たりの労働者の平均残業時間

7.雇用管理区分ごとの1月当たりの労働者の平均残業時間

8.年次有給休暇の取得率

9.係長級にある者に占める女性労働者の割合

10.管理職に占める女性労働者の割合

11.役員に占める女性の割合

12.男女別の職種または雇用形態の転換実績

13.男女別の再雇用または中途採用の実績

14.データの対象

15.データ更新時点

16.備考欄

17.自由記述欄

18.公共調達資格情報

 

↓女性の活躍推進企業データベース

https://positive-ryouritsu.mhlw.go.jp/positivedb/

 

 解決社労士

2019/12/05|855文字

 

令和元(2019)年12月3日、厚生労働省は11月の「過重労働解消キャンペーン」の一環として10月27日(日)に実施した「過重労働解消相談ダイヤル」の相談結果をまとめ公表しました。

今回の無料電話相談「過重労働解消相談ダイヤル」には、合計で269件の相談が寄せられました。相談内容としては、下記概要のとおり、「長時間労働・過重労働」に関するものが90件(33.4%)と一番多く、次いで「賃金不払残業」が69件(25.6%)、「休日・休暇」が31件(11.5%)、「パワーハラスメント」が29件(10.7%)となりました。

これらの相談のうち、労働基準関係法令上、問題があると認められる事案については、相談者の希望を確認した上で労働基準監督署に情報提供を行い、監督指導を実施するなど、必要な対応を行っています。

 

【相談結果の概要】

相談件数  合計269

■主な相談内容

(件数は相談内容ごとに計上。括弧内は相談件数269件に対する割合。

 なお、1件の相談に対して複数の相談内容が含まれることもあるため、

 総合計が100%になりません。)

   長時間労働・過重労働    90件(33.4%)

   賃金不払残業               69件(25.6%)

   休日・休暇                31件(11.5%)

■相談者の属性 (括弧内は相談件数269件に対する割合)

   労働者         180件(66.9%)

   労働者の家族        53件(19.7%)

   その他         20件(7.4%)

■主な事業場の業種 (括弧内は相談件数269件に対する割合)

      商業                  32件(11.8%)

    保健衛生業            32件(11.8%)

    製造業                28件(10.4%)

 解決社労士

2019/12/03|1,482文字

 

<同一労働同一賃金の法制化>

パートタイム・有期雇用労働法により、令和2(2020)年4月1日から、同じ企業で働く正社員と短時間労働者・有期雇用労働者との間で、賞与、手当、休暇などあらゆる待遇について、不合理な差を設けることが禁止されます。

事業主は、短時間労働者・有期雇用労働者から、正社員との待遇の違いやその理由などについて、説明を求められた場合には、説明しなければなりません。

ただし中小企業には、令和3(2021)年4月1日から法律が適用されます。

 

<取組手順>

厚生労働省では、次の手順で取り組むことを推奨しています。

 

手順1 労働者の雇用形態を確認する。
手順2 待遇の状況を確認する。
手順3 待遇に違いがある場合、違いを設けている理由を確認する。
手順4 手順2と手順3で待遇に違いがあった場合、その違いが「不合理ではない」ことを説明できるように整理しておく。
手順5 「法違反」が疑われる状況からの早期の脱却を目指す。
手順6 改善計画を立てて取り組む。

 

特に、手順4までは、早めの取り組みが求められます。

 

<手順1>

社内の労働者のうち、対応が求められる労働者の範囲を確認します。

正社員、契約社員、アルバイトなどの名称や定義は、会社独自のものであって、法令による区分ではありません。

フルタイム労働者よりも勤務時間の短い短時間労働者と、労働契約の期間に満了日が設定されている有期雇用労働者が対象です。

 

<手順2>

短時間労働者・有期雇用労働者のそれぞれの区分ごとに、賞与、手当、福利厚生などの待遇について、正社員(フルタイムの無期雇用労働者)との違いを確認します。

これは、項目ごとに一覧表の形でまとめると良いでしょう。

 

<手順3>

待遇の違いが、働き方や役割などの違いに見合った「不合理ではない」ものと言えるか確認します。

待遇の違いを設けている理由を文書化してみます。このとき、労働者に説明することを意識して、理解・納得できるものとします。

待遇の違いと働き方や役割などの違いとで、バランスが取れていることの説明ができている必要があります。

「パートだから」「将来の役割期待が異なるため」など、主観的・抽象的な理由ではなく、客観的・具体的な理由であることが求められています。

 

<手順4>

短時間労働者・有期雇用労働者の契約形態別に、正社員との待遇に違いがある部分について、その違いが「不合理ではない」と説明できるように整理します。

これを元に、労働者から説明を求められた場合に使用する、「待遇の違いの内容と理由」の説明書を準備します。

 

<手順5>

以上の手順の中で、待遇の違いが「不合理ではない」と言い難い項目がある場合には、改善に向けた検討が必要となります。

改善が必要な部分については、会社側の意向だけで改善を進めるのではなく、労働者側の意見を聞くことも必要です。

また、手当等の改善をするための原資など、予め考慮・検討しておくこともあります。

 

<手順6>

改善内容が明確になったなら、これを計画化し、計画的に改善を進めます。

改善内容について、社員が情報を共有してからスタートすることが望ましいわけですから、早めに着手し、余裕をもったスケジュールで取り組めるようにしましょう。

 

<前提として>

ここまでの手順は、職務内容(業務内容と責任の程度)と人事異動の範囲が、正社員とは異なる短時間労働者・有期雇用労働者を前提としています。

職務内容と人事異動の範囲が同じであれば、すべての待遇について、正社員と同等にしなければ不合理な差別を生じうることになります。

この点についても、忘れないようにしましょう。

 

解決社労士

2019/10/23|1,254文字

 

<新聞の報道>

日本経済新聞は、令和元(2019)年10月22日朝刊の1面トップで、「セブン、時短店を容認 深夜休業に指針 来月まず8店 24時間モデルに転機」と伝えています。

株式会社セブン-イレブン・ジャパンが、営業時間を短縮した時短営業を本格的に実施すると発表したそうです。

コンビニは人手不足や最低賃金の上昇で24時間営業がしにくくなり、出店が減少し閉店が増加する傾向にあります。

今後は、効率化に向けた見直しを迫られます。

 

<昔と今>

セブン-イレブンが日本に誕生したとき、営業時間は午前7時から午後11まででした。だからこそ、セブン-イレブンという名称になったわけです。

お店は住宅地の近くにありましたし、スーパーマーケットの開店前や閉店後も便利に利用できました。

最近では、24時間営業の店舗がほとんどですし、住宅地に近い店舗が閉店し、駅に新しい店舗が誕生するという傾向が顕著でした。

 

<会社の立場>

会社としては、営業時間の短縮により売上が減少するのは困ります。

ライバル店にお客様を取られてしまうこともあるでしょう。

そのライバル店が、近くのセブン-イレブンであれば複雑な話になってしまいます。

会社としては、今後も24時間営業を原則とする方針です。

 

<店長の立場>

営業時間を短縮して売上が減少すれば、店長の収入も減少します。

しかし、店長は経営者の立場にあるとされ、労働基準法その他労働法の保護が及びません。

働き方改革も対象外ですから、家庭生活と仕事とのバランスを取るのも大変です。

何より、健康を害してしまっては元も子もありません。

こうして営業時間の短縮を強く希望する店長が現われるようになりました。

 

<店員の立場>

新人は、多くの場合、最低賃金に近い時給から働き始めます。

それでも、慢性的な人手不足により、採用のハードルは高くありません。

特に、午後10時から翌日午前5時までは、労働基準法の定める25%の深夜割増がありますから、とりあえず収入を得るには手軽なイメージがあります。

しかし、人手不足の深刻化によって、日中の仕事でも賃金の高い求人が出るようになりました。

やがて、思ったほど楽ではないと感じた店員は、別の職種に転職していきました。

 

<お客様の立場>

働き方改革によって、労働時間の短縮が進んでいることもあり、一般のサラリーマンがスーパーマーケットで買い物をして帰るのも自然なことです。

賃金の減少傾向による節約志向の拡大も進んでいますから、スーパーマーケットで少しでも安い商品を購入しようとするのも当たり前です。

 

<コンビニの転換期>

これまでの急成長を考えると、コンビニ各社が自らのスタンスを崩したくないのも分かります。

しかし、店長、店員、お客様は、確実に働き方改革の影響を受けています。

店長は、労働法の保護を受けられないことに不満と不安を感じています。

店員には、転職しやすい環境が整いつつあります。

お客様は、プライベートの時間が増えて、必ずしも便利さ(コンビニエンス)を追求しなくなってきています。

こうしたことから、コンビニ業界全体が転換期にあると考えられます。

 

解決社労士 柳田 恵一

2019/10/22

 

全国社会保険労務士会連合会では、令和元(2019)年4月から、国の委託事業である「働き方改革推進支援事業」を実施しています。

 

連合会が行っている事業は、都道府県ごとに設置されている「働き方改革推進支援センター」に申し込まれた相談案件に対して、社労士などの労務管理の専門家(派遣専門家)が個別企業を訪問して相談に応じる事業(出張相談)と中小企業団体や市区町村、労働局等が設置した相談窓口で相談に応じる事業(窓口相談派遣)です。

連合会が委嘱している派遣専門家は1,768名(うち社労士は1,615名)であり、全国津々浦々の企業や相談窓口で、毎日大勢の社労士等が相談事業に従事しています。〔9月24日現在〕

 

連合会の「働き方改革推進支援本部」(全国センター)では、職員15名体制(10月にさらに8名程度の増員を行う予定)で、連日、出張相談を希望する企業や相談窓口と派遣専門家との日程調整、派遣専門家への謝金、旅費等の支払い、厚労省など関係機関との調整などに当たっています。

 

企業からの出張相談の申込みも徐々に増加しており、派遣専門家の出番はさらに増加することが予想されます。

本事業は、今年度も来年度も厚生労働省の最重点事業に位置付けられています。

 

↓ 表をクリックすると別画面が開きます ↓

 

働き方改革推進支援センター

2019/10/18|1,870文字

 

<同一労働同一賃金の説明>

「同一労働同一賃金」という言葉を素直に読めば、「同じ仕事をしている人には同じ賃金を支払う」という意味に取れます。

ところが、同一労働同一賃金について、厚生労働省は次のように説明しています。

 

【同一労働同一賃金とは】(厚生労働省ホームページより)

同一労働同一賃金の導入は、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。同一企業内における正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消の取組を通じて、どのような雇用形態を選択しても納得が得られる処遇を受けられ、多様な働き方を自由に選択できるようにします。

 

「同じ仕事をしている」というキーワードは現れず、雇用形態間の不合理な待遇差を問題視しています。

 

<法律の規定>

また、同一労働同一賃金に関わる労働契約法第20条は、次のように規定しています。

 

【期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止】

第二十条 有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

 

こちらにも、「同じ仕事をしている」というキーワードは現れず、有期契約と無期契約とで不合理な待遇差はいけないと言っています。

 

厚生労働省の説明と労働契約法第20条を合わせると、契約形態や雇用期間の有無の違いによって、不合理な待遇差があってはならないと言っているのです。

 

<働き方改革関連法>

「パートタイム労働法」は、法改正により「パートタイム・有期雇用労働法」となり、令和2(2020)年4月1日から施行(中小企業は令和3(2021)年4月1日から適用)されます。

短時間労働者だけでなく、フルタイム有期雇用労働者も法の対象に含まれることになりました。そのため、法律の名称も、「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(略称「パートタイム・有期雇用労働法」)に変わります。

この中には、「同じ仕事をしている」場合についての規定があります。

 

【通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止】

第九条 事業主は、職務の内容が通常の労働者と同一の短時間・有期雇用労働者(第十一条第一項において「職務内容同一短時間・有期雇用労働者」という。)であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるもの(次条及び同項において「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」という。)については、短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならない。

 

つまり、「同じ仕事をしている」のであれば、正社員、パート社員、契約社員という違いにかかわらず、待遇を差別せず平等にしなさいとしています。

ここでやっと「同一労働同一賃金」という言葉に対応する規定が現れました。

一方で、労働契約法第20条に相当する規定も、そのまま残されています。

 

<同一労働同一賃金の意味>

こうして見ると、「同一労働同一賃金」という言葉には、次の2つの意味が含まれていることがわかります。

 

均等待遇 = 職務、責任、異動の範囲、その他の事情が同じであれば、同じ待遇にする。

均衡待遇 = 職務、責任、異動の範囲、その他の事情が違えば、その違いに応じてバランスの取れた待遇にする。

 

均等待遇は、同じ仕事なら同じ待遇にするという「平等」の考え方です。

均衡待遇は、違う仕事なら違いに応じた合理的な待遇にするという「公平」の考え方です。

「平等」と「公平」を両方含む概念は、「公正」でしょう。

だとすれば、「同一労働同一賃金」は「公正待遇」と呼んだ方がわかりやすいでしょう。

各企業は、不平等や不公平の無い「公正待遇」の実現を目指して変革を遂げるよう迫られているのです。

 

解決社労士 柳田 恵一

<労働経済白書>

厚生労働省は、令和元(2019)年9月27日の閣議で「令和元年版労働経済の分析」(「労働経済白書」)を報告し公表しました。

「労働経済白書」は、一般経済や雇用、労働時間などの現状や課題について、統計データを活用して分析する報告書です。

今回の「労働経済白書」では、人手不足下における「働き方」について、「働きやすさ」と「働きがい」の観点から分析が行われています。

 

<白書の主なポイント>

厚生労働省は、白書の主なポイントを次のようにまとめています。

 

【白書の主なポイント】

・多くの企業が人手不足を緩和するために、求人条件の改善や採用活動の強化などの取り組みを強化している一方で、「働きやすさ」や「働きがい」を高めるような雇用管理の改善などについては、さらに取り組んでいく必要がある。

 

・「働きやすさ」の向上が定着率などを改善し、「働きがい」の向上が定着率に加え、労働生産性、仕事に対する自発性、顧客満足度などさまざまなアウトカムの向上につながる可能性がある。

 

・「働きがい」を高める取り組みとしては、職場の人間関係の円滑化や労働時間の短縮などに加えて、上司からの適切なフィードバックやロールモデルとなる先輩社員の存在を通じて、将来のキャリア展望を明確化することが重要である。

 

・質の高い「休み方」(リカバリー経験)が疲労やストレスからの回復を促進し、「働きがい」を高める可能性があり、仕事と余暇時間の境目をマネジメントする能力(バウンダリー・マネジメント)を高めていくことが重要である。

 

<第1のポイント 雇用管理の改善>

人手不足に対処するため、採用条件を良くしたり、募集採用活動に多額の経費をかけたりする企業は多いといえます。

「とにかく採用しなければ」という切実な思いの現われでしょう。

しかし、入社後の労働環境の改善、教育訓練の充実、キャリアアップの道筋の明確化、達成感を自覚できる人事考課制度の構築などには、手付かずということもあります。

せっかく苦労して採用した人材が、快適に働くことも、将来を見通すことも、充実感を得ることもできないのであれば、その心は会社から離れてしまいます。

採用することだけに重点を置くのではなく、採用後に定着してもらうための努力が求められているということです。

 

<第2のポイント 定着率と生産性の向上>

労働環境の改善により定着率は向上します。

これに加えて「働きがい」の向上は、モチベーションを向上させますから、意欲的な労働を誘発し、自分で考えて働くようになり、お客様にも喜ばれるという効果をもたらします。

自分で考えて行ったことの結果が評価されたり、お客様から感謝の言葉を戴いたりすれば、これがまたモチベーションを向上させて、らせん階段を駆け上がるような良い循環をもたらします。

 

<第3のポイント 働きがい向上の方法>

「働きがい」を高めるために、人間関係の円滑化や労働時間の短縮に取り組むべきだとしています。

会社の一方的な施策で、単純に労働時間を短縮すると、人間関係を良好に保つためのコミュニケーションの時間も減ってしまいます。

労働時間の短縮にあたっては、労使の話し合いや、労働者からの提案に基づいて行うことがポイントとなるでしょう。

上司からのフィードバックというのは、「上司から部下への指示 → 部下が業務を行う → 部下から上司に報告」までで止まってしまわず、「→ 上司から部下への評価・指導」という流れが続くことをいいます。

「ここは、自分で考えて行動できて良かった。ここは、こうすればもっと良くなった」という話が、上司から部下へのフィードバックとして行われていれば、部下の「働きがい」やモチベーションは向上します。

さらに、模範となる先輩社員を具体的に示せば、新人たちは自分が将来どうなっているべきかが分かり、将来のキャリア展望が明確になります。

実際には、模範となる先輩社員の自覚が高まり、最も成長するのではないでしょうか。

 

<第4のポイント 休み方改革>

完全に仕事から離れ、心身ともにリフレッシュできる時間を確保することによって、体力・気力・能力の高まった状態で仕事に取り組むことができます。

存分に能力を発揮できる状態での勤務は、とても気持ちの良いものであり、「働きがい」が感じられるものです。

これを可能にするためには、会社が従業員をきちんと休ませることが必要です。

年次有給休暇の取得促進の他、勤務間インターバル制度の活用もあります。

より具体的に、仕事の持ち帰りの禁止、プライベートの時間に仕事の連絡を取ることの禁止など、ルールを設定して、労使ともに遵守することが必要になってくるでしょう。

 

2019.10.07. 解決社労士 柳田 恵一

<ジタハラとは>

仕事と生活のバランスが取れるようにし、生産性を向上させるため、働き方改革の一環として、労働時間の削減が推進されています。

ところが、会社によって労働時間が短縮されるのは、労働者にとって苦痛であり、嫌がらせであると感じている人たちがいます。

これが、労働時間短縮ハラスメント(ジタハラ)です。

 

<ジタハラの具体的な被害>

ジタハラを主張する人たちは、次のようなものを被害として挙げています。

正社員では残業手当が減少し、パート社員では労働時間や勤務日数が減少することによって収入が減少します。仕事を急いで全力でこなすことから、ストレスは増加し、人間関係やチームワークも悪化します。現場での指導も不十分になりますから、仕事の完成度も低下します。ケアレスミスも増えます。こうして、従業員のモチベーションが低下し、退職者が増加します。

こなし切れない仕事は、自宅に持ち帰って行うこともあります。自宅での仕事ぶりは見えませんから、評価の対象にはなりません。いきおい人事考課が機能しなくなり、適材適所が困難となる恐れもあります。

一部の企業では、未払残業が発生します。残業手当が支給されない管理職に業務が集中することもあります。毎日残業し、休日も出勤する管理職の姿は、憧れの対象にはなりませんから、昇進を目指して努力するということも減ってしまいます。

一番困るのは、労働時間の短縮がお客様に対するサービスの低下をもたらし、お客様が離れてしまい、業績が低迷することではないでしょうか。

他にも、取引先との商談が減ったり、夜間の連絡が取れなくなったりの不都合が発生します。

 

これほど多くの不都合があるのなら、労働時間の短縮をしてはいけないのでしょうか。

これらは、政府の主導する働き方改革の弊害なのでしょうか。

ジタハラの問題を解決するには、次のような対策が必要です。

 

<副業・兼業の奨励>

労働時間の短縮により収入が減る場合でも、これを補うための副業や兼業が奨励されているのであれば、あとは労働者側の努力次第という説明も可能です。

そもそも職業選択の自由がある以上、プライベートの時間に本業とは別の仕事をするのは労働者の勝手というのが原則です。

もちろん、本業に支障が出たり、企業秘密が漏えいされたり、会社に損害を与えるようなことは許されません。

副業・兼業を許可制にするのは行き過ぎで、せいぜい届出制に留めるべきだと思います。

次のモデル就業規則最新版(平成31(2019)年3月版)を参考に、社内規定を整備してはいかがでしょうか。

 

(副業・兼業)

第68条  労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。

2 労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行うものとする。

3 第1項の業務に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場合には、会社は、これを禁止又は制限することができる。

① 労務提供上の支障がある場合

② 企業秘密が漏洩する場合

③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合

④ 競業により、企業の利益を害する場合

 

<労働者の主体性>

年次有給休暇について、会社が時季指定義務を果たすには、労働者の意向を汲んで行うことになっています。

ところが労働時間の短縮となると、殆どの場合に、その手段が会社からの押し付けになっていないでしょうか。

労働者に主体性を持たせ、創意・工夫による時間短縮を任せなければ、モチベーションが低下するのは当然です。

労働時間の短縮について労使の話し合いの場を持つ、キャンペーン的に労働者のアイデアを募って、成果の上がったアイデアは表彰するなど、労働者に主体性を持たせる方法はたくさんあります。

 

<お客様・お取引先への説明>

ただ単純に「閉店時間を早めます」「定休日を設けます」というのでは、不便になりますから、お客様の心は離れて当然です。

たとえば、スーパーマーケットのサミットは、今年から元日だけでなく1月2日も休業日としています。

その説明は、次のとおりです。

 

~働き方改革の一環として1月2日を休業いたします~

弊社の事業ビジョンとなる「サミットが日本のスーパーマーケットを楽しくする」の実現に向け、お客様やお取引先を大切にすることはもちろん、それを実現するために社員の働き方を見直します。直接お客様と接する店舗の社員が家族・親族と過ごせる時間を増やし、社員一人ひとりがリフレッシュすることで、1月3日から更にお客様にご満足いただける売場・商品・サービスを実現します。また、3日からの営業となることで、弊社のお取引先様の負担を少なくしていきます。

 

こうした説明を受けて「けしからん」と思う人などいないでしょう。

きちんと説明すれば、会社のファンを増やすきっかけにもなるのです。

お客様やお取引先が納得してしまえば、従業員も営業時間や労働時間の短縮を批判できないものです。

 

<正攻法の重視>

労働時間の短縮の手段としては、人員増、社員教育、システム化が王道です。

こうした正攻法を軽んじて、ノー残業デー、20時以降は消灯など、小手先の手段に走っていないでしょうか。

仕事と生活のバランスをとる、柔軟な働き方を選択できるようにするなど、働き方改革の本来の目的は労働者目線です。

いつの間にか、残業代削減など会社目線の施策が推進されていないでしょうか。

これはもはや、働き方改革ではなくなっています。

 

何のための働き方改革かという基本に立ち返って、労働時間の短縮に取り組むことが必要なのです。

 

2019.10.01. 解決社労士 柳田 恵一

<ポータルサイトの開設>

令和元(2019)年9月6日、厚生労働省が「トラック運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト」を開設しました。

ポータルサイト( portal site )とは、ウェブ上の様々なサービスや情報を集約して簡単にアクセスできるようにまとめたものです。

このポータルサイトは、貨物を運送するトラック運転者の長時間労働の現状や、その改善に向けた取組、施策などを、広く国民、荷主企業、トラック運送事業者に向けて知らせるために開設されたものです。

 

「トラック運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト」のURL

 https://driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/

 

 

 以下簡単にご紹介させていただきます。

 

<長時間労働解消に向けて>

トラック運転者は、他業種の労働者と比べて、長時間労働となっているのが実態です。

その背景には、荷主や配送先の都合により、長時間の荷待ち時間(貨物の積み込みや荷下ろしの順番を待つ時間)や、手荷役(手作業での貨物の積み込みや荷下ろし)が発生するなど、貨物運送における取引慣行などからトラック運送事業者の努力だけでは改善が困難な問題が存在しています。

このため、トラック運転者の長時間労働を改善していくためには、荷主企業とトラック運送事業者の双方が歩み寄り、そして協力しあって、取引環境の適正化に取り組むことが必要不可欠です。

 

<ホワイト物流推進運動との連携>

このポータルサイトでは、国土交通省が開設している「『ホワイト物流』推進運動ポータルサイト」と連携しつつ、荷主企業とトラック運送事業者の双方に役立つ情報を提供していきます。

 

「『ホワイト物流』推進運動ポータルサイト」のURL

https://white-logistics-movement.jp/

 

<主なコンテンツ(内容)>

ポータルサイトは以下の構成となっていて、コンテンツは順次公開されていきます。

 

(1)国民向け

トラック運転者の仕事を知るための情報や、トラック運転者の長時間労働改善のために「国民にできること」や「やって欲しいこと」に関する情報など。

また、トラック運転者の1日の仕事の様子を撮影した動画などを追加予定。

 

(2)企業向け

 荷主企業とトラック運送事業者の双方に向けたコンテンツを提供します。

ア 簡単自己診断

 荷主企業やトラック運送事業者が貨物運送の現状に関するチェックシートに回答することにより、トラック運転者の労働時間削減に向けて自社の取り組むべき課題を抽出できるウェブ診断ツールを提供します。この機能は今年12月頃にポータルサイトで公開する予定です。

 

イ サッと解決よろず相談

 荷主企業やトラック運送事業者がトラック運転者の労働時間の改善を進める中で直面する悩み(改善策の進め方や改善策の発想法など)への対応策をQ&A形式で提供します。

 

ウ 情報いろいろ宝箱

 荷主企業やトラック運送事業者がトラック運転者の労働時間改善を進める上で有用な好事例を紹介する動画のほか、ハンドブック・ガイドライン・手引きなどを提供します。

 

(3)セミナーの案内

厚生労働省では、今年10月から来年3月にかけて、トラック運転者の労働時間短縮の進め方のノウハウを広く荷主企業やトラック運送事業者に周知するセミナーを、全国47都道府県で全50回開催する予定です。

このポータルサイトではセミナーのご案内をしており、セミナーへのオンラインでの申し込みができます。

なお、セミナーの詳細については、会場が確定した段階で別途報道発表する予定です。

 

2019.09.12. 解決社労士 柳田 恵一

<個人的な残業禁止令>

日中ダラダラと効率の悪い仕事をしていながら、夕方になると調子が上がって業務に集中する人もいます。

これによって長時間の残業が発生しているのなら、生活リズムの個性を認めて午後からの出勤にするという方法もあるでしょう。

中には、残業手当が欲しくて時間外に頑張っている人もいます。

しかし、いわゆる生活残業になってしまっていると、適正な人事考課基準が運用されている会社では、生産性の低い社員であると評価され、昇進・昇格・昇給が遅れますから、長い目で見れば、収入が少なくなってしまいます。

上司が面談して、こうしたことを説明すべきですし、どうしても今の収入を増やしたい事情があるのなら、仕事を多めに割り振ることも考えられます。

お付き合い残業というのもあります。

同期社員間や同じ部署の社員間で、仕事の早い人が遅い人を待つ形で、一緒に帰るのが習慣になることもあります。

この場合には、全員が定時で帰れるようにする方向で、仕事の配分や役割を見直すべきです。

このように、それぞれの事情に応じた対応を取るべきなのですが、残業の発生に合理的な理由が見出せない社員に対しては、残業の禁止を命じなければならないこともあります。

 

<集団的な残業禁止令>

全社で、あるいは一部の部署で、残業禁止とされることもあります。

特定の曜日や給料日だけノー残業デーと決めることもあります。

働き方改革の一環で、残業時間の削減を試みてもなかなか進まないので、「残業禁止」という施策も増えてきました。

 

<残業禁止令の本質>

就業規則に残業の根拠規定が置かれます。

「業務の都合により、所定労働時間を超え、又は所定休日に労働させることがある」といった規定です。

「労働させることがある」という表現から解かるように、「使用者側から労働者に対して、時間外労働や休日労働をさせることがある」という意味です。

具体的には、使用者から個別に残業命令が出た場合や、「クレームが発生した場合には、所定労働時間を超えても、一次対応と報告を完了するまでは勤務を継続すること」のような条件付きの残業命令がある場合に、そうした事態が発生すると残業が行われるということになります。

このことから残業禁止令の本質を考えると、「使用者側から残業命令は出さない。条件付きの残業命令はすべて撤回する」という内容になります。

 

<残業する権利>

残業禁止令が出されると、残業手当が減って収入が減る、あるいは業務が溜まっていくことによる不安が増大するなど、労働者側に不利益が発生します。

これは、労働者の残業する権利の侵害ではないかという疑問も湧いてきます。

しかし、残業が使用者側から労働者への命令によって行われる性質のものである以上、労働者から会社に残業を権利として主張することはできないでしょう。

判例では、労働者から使用者に対して就労請求権が認められることも稀です。つまり、会社が給与を支払いながら労働者の出勤停止を命じた場合に、労働者から会社に対して働かせるよう求めることは、特殊な事情が無ければ認められていません。

ましてや、労働者から会社に残業させるよう求める権利は認められないわけです。

 

<残業禁止令の弊害>

残業禁止となると、収入減少や持ち帰り仕事の発生などにより、社員のモチベーションは大いに低下します。

また、残業時間ではなく残業手当の削減という、目的をはき違えた方向に進んでしまうと、管理職へのシワ寄せが発生し、管理職が過重労働に陥り心身に障害を来すこともあります。

こうなると、一般社員がその会社で管理職に昇進することを敬遠し、将来の構図を描けなくなれば、転職者が多数出てしまいます。

残業禁止という最終手段に出る前に、業務や役割分担の見直しや機械化・IT化などの正攻法によって、残業の削減を目指していきましょう。

 

2019.08.17. 解決社労士 柳田 恵一

<請負とは>

「請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる」〔民法第632条〕

請負では、注文者が請負人に細かな指示を出すことなく、すべてお任せして、完成した仕事を受け取るわけです。

彫刻家に芸術作品の制作を依頼するのは、この請負にあたります。

 

<雇用とは>

「雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる」〔民法第623条〕

雇用では、雇い主が労働者に業務上の指示を出し、労働者がこれに従って労働に従事します。

正社員、パート、アルバイトなどの労働が雇用にあたります。

 

<区別の基準>

請負では、仕事を受けるかどうかが自由です。しかし、雇用では正当な理由なく拒めません。

請負では、いつ、どこで作業するかが、基本的には自由です。しかし、雇用では、時間と場所を拘束されます。

請負では、作業に必要な車両、機械、器具などを請負人が負担します。しかし、雇用では、雇い主の貸与する物を使い、雇い主が経費を負担します。

他にも具体的な区別基準はあるのですが、決して契約書のタイトルが区別の基準になるわけではありません。

 

<名ばかり請負>

雇用では、労働基準法、最低賃金法、労災保険法などの労働法により、労働者が保護されます。

ところが、請負では請負人がこれらによる保護を受けません。

また、雇用であれば、解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とされます。〔労働契約法第16条〕

ところが、請負では請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができます。〔民法第641条〕

反対の立場から見ると、何か仕事をしてもらう場合、雇用ではなくて請負にした方が、仕事をさせる側の負担が少ないことになります。

雇用契約の場合、労働者が保護されているというのは、使用者側から見ると、規制や負担が大きいということになるからです。

そこで、本当は雇用なのに、雇い主が請負だと言い張って、労働者に不利な扱いをしてしまう場合があります。これが、名ばかり請負(偽装請負)です。

あるいは、最初は請負契約だったのに、注文者から請負人に対して、あれこれ具体的な指示が出るようになって、途中から雇用契約になった場合に、それでも扱いは請負契約のままという場合もあります。これも、名ばかり請負です。

 

<ニセ働き方改革>

働き方改革というのは、労働者のニーズを踏まえた改革です。

しかし、たとえ労働者が望んだとしても、使用者側がこれに応ずることが労働者の不利になり、違法になることが多くあります。

たとえば、労働者から「手取り収入を増やしたいので社会保険には入りたくない」という要望があって、会社がこれに応じて健康保険や厚生年金の加入(資格取得)手続きを怠ったとします。

もちろんこれは違法ですが、この場合には、病気で長期入院した場合の補償も無いですし、将来受け取る年金額も減ってしまいます。

最近では、中小企業ばかりでなく、大企業でも「働き方改革」「労働者のニーズ」という言い訳で、名ばかり請負を進める動きが出てきています。

社長の権限が強大で、あるいはパワハラが強烈で、誰も違法性を指摘できないのでしょうか。

こうしたニセ働き方改革の出現によって、働き方改革そのものが悪者にされたり、働き方改革の弊害だとされることがあるのは非常に残念です。

 

2019.08.13. 解決社労士 柳田 恵一

 

令和元(2019)年7月23日、内閣府が経済財政白書を取りまとめ公表しました。

この中で、多様な人材の活躍について、分かりやすくまとめられています。

 

<多様な人材の意味>

多様な人材(ダイバーシティ)とは、広義では、性別や国籍、雇用形態など統計的に表されるものだけではなく、個々人の価値観など統計では表されない深層的なものも含まれます。

狭義では、基本的には前者の統計等で表される多様性、つまり性別、国籍(外国人労働者)、年齢(65歳以上の雇用者等)、働き方(限定正社員等)、キャリア(中途・経験者採用)、障害者といった属性について対象とします。

 

<多様性の状況>

多様性を見る尺度としては、企業などでの従業員や役員に占める「多様な構成員」の割合や人数の変化を用います。

平成30(2018)年に、こうした多様な人材がどの程度の規模で労働市場に存在しているかというと、雇用者全体としては5,936万人であり、その内訳としては、役員330万人、生産年齢人口(15~64歳)の男性正社員2,275万人、女性正社員1,099万人、男性非正社員480万人、女性非正社員1,283万人、65歳以上の雇用者469万人となっています。

また、男性管理職111万人・女性管理職18万人、転職者315万人、外国人労働者146万人、障害者48万人となっています。

 

<多様な人材の活躍>

多様な人材の活躍については、人数や割合等だけで判断することには限界があることにも注意しなければなりません。

それは、ダイバーシティが存在すること(一定割合の多様性が存在すること)と、その多様な人材がそれぞれの能力を活かして活躍できている状態(インクルージョン)とは必ずしも一致しないためです。

例えば、女性割合が50%である企業でも、男女が平等に扱われていない企業や、適材適所になっていない人事配置を行っている企業などでは、多様な人材が活躍しているとはいえません。

 

ここまで、経済財政白書からの抜粋です。

 

<インクルージョン>

インクルージョンは「包括」「包含」「一体性」というのが本来の意味です。

「組織内の誰にでもビジネスの成功に参画・貢献する機会があり、それぞれに特有の経験やスキル、考え方が認められ、活用されていること」などと説明されています。

インクルージョンは、ダイバーシティをより発展させた新しい人材開発のあり方であるという説明も良く目にします。

様々な違いのある人々(ダイバーシティ)を、同じ職場に平等に受け入れた後は、一緒に働くのであっても、一人ひとりの個性が活かされ独自能力を最大限に発揮できるよう、個性に応じて公平に扱うことを、インクルージョンと言うのでしょう。

 

<平等と公平>

平等とは、人々の共通する属性に着目して同じ扱いをすることにより、妥当な結論を導く考え方です。

公平とは、人々の異なった属性に着目して違った扱いをすることにより、妥当な結論を導く考え方です。

同じ人間として平等な採用をし、それぞれの個性に応じた公平な処遇をすることによって、一人ひとりが能力を最大限に発揮し企業と共に成長しようというのが、多様な人材の活躍の目的だといえるでしょう。

 

2019.07.26. 解決社労士 柳田 恵一

<定額残業代の導入>

割増賃金の基礎となる賃金から、一定の時間(基準時間)に相当する定額残業代を算出します。このとき、割増率が法定の基準を下回らないことと、最低賃金を下回らないことが必要です。

割増賃金の基礎となる賃金から除外できる手当は、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金の7つに限定されています。〔労働基準法第37条第5項〕

これらの手当は、労働の量とは無関係に福利的に支給されるものとして、除外することが認められているのです。ですから、これらに該当するかどうかは、手当の名称ではなく、その性質に基づいて判断されます。

この割増賃金の基礎となる賃金から定額残業代を算出した計算方法について、労働者ひとり一人に実額で説明します。文書をもって説明し、制度の導入について同意を得ておくのが基本です。

定額残業代の計算が誤っていたり、割増率が法定の基準を下回っていたり、最低賃金法違反があったり、労働者への説明が不十分であったりすると、制度そのものが無効とされます。

この場合、労働基準監督署の監督が入ったり、労働審判が行われたりすると、定額残業代を含めた総額を基準として残業代を計算し、さかのぼって支払うことになるのが一般です。

残業代の二重払いが発生しますから、会社にとって予定外の出費となります。このように、導入の失敗は大きなリスクとなります。

 

<定額残業代の運用>

定額残業代を導入しても、労働時間は適正に把握する必要があります。なぜなら、基準時間を上回る時間の残業手当や、計算に含まれない法定休日出勤手当、深夜手当は、毎月計算して支給しなければならないからです。

もちろん、残業が基準時間を下回っても、その分定額残業代を減額することはできません。そんなことをしては「定額」残業代ではなくなってしまいます。

誤った運用をしてしまった場合のリスクは、誤った導入をした場合と同じです。

 

<働き方改革と定額残業代>

働き方改革の推進によって残業時間が減少し、自分の時間が増えたものの、手取り収入が減ってしまったという不満が聞かれます。

この点、定額残業代は良い仕組みです。

労働者にとっては、残業が少なくても定額残業代が保障されていますし、会社にとっては人件費が安定します。

しかし、それだけではありません。

残業が少なくても定額残業代が保障されているのですから、労働者は早く仕事を終わらせてプライベートを充実させようとします。そのためには、自主的に学んだり、仕事の手順を工夫したり、会社に言われるまでもなく努力します。これによって生産性が向上するのは、会社にとっても大きなメリットです。

こうした自己啓発や自己研鑽が期待できない場合であっても、仕事による疲労の蓄積が無い分だけ、生産性が上がると考えられます。

 

<上手に活用しましょう>

定額残業代は、ブラックな制度のように思われていました。

今でも、ハローワークで求人票に定額残業代の表示をすることについては、窓口で慎重すぎる態度を示されてしまいます。

これは、誤った制度導入や運用があまりにも多いため、悪い印象を持たれてしまっているからでしょう。

定額残業代を正しく活用し、そのメリットを最大限に活かすには、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2019.07.21. 解決社労士 柳田 恵一

<厚生労働白書>

令和元年7月09日、厚生労働省は、当日の閣議で「平成30年版厚生労働白書」(平成29年度厚生労働行政年次報告)を報告し、これを一般に公表しました。

「厚生労働白書」は、厚生労働行政の現状や今後の見通しなどについて、広く国民に伝えることを目的にとりまとめられたもので、平成30年版は、平成13年(2001年)の「厚生労働白書」発刊から数えて18冊目となります。

平成30年版厚生労働白書は2部構成となっています。

例年異なるテーマでまとめている第1部では「障害や病気などと向き合い、全ての人が活躍できる社会に」と題し、誰もが地域で役割を発揮し居場所を持ち、「包摂(ほうせつ)」される社会を実現するための視点を提示しています。

 

<今回の白書の概要>

 

【第1部】

テーマ「障害や病気などと向き合い、全ての人が活躍できる社会に」

障害や病気を有する方などに焦点を当て、障害の特性や病状などの事情に応じ、就労や社会参加を通じて自分らしく生きることができる社会の実現に向け、現状や国民の意識、事例の分析を整理しています。そのうえで、全ての人が活躍できる社会の実現に向けた方向性を示しています。

 

【第2部】

テーマ「現下の政策課題への対応」

子育て、雇用、年金、医療・介護など、厚生労働行政の各分野について、最近の施策の動きをまとめています。

 

<一億総活躍社会>

少子高齢化と人口減少という、これまでに経験したことのない危機に対処するため、政府は、「ニッポン一億総活躍プラン」(2016(平成28)年6月閣議決定)において、女性も男性も、お年寄りも若者も、一度失敗を経験した方も、障害や難病のある方も、家庭で、職場で、地域で、あらゆる場で、誰もが包摂され活躍できる「一億総活躍社会」を目指すこととした。

一億総活躍社会、すなわち、全ての人が包摂される社会が実現できれば、安心感が醸成され、将来の見通しが確かになり、消費の底上げ、投資の拡大にもつながる。

また、多様な個人の能力の発揮による労働参加率向上やイノベーションの創出が図られることを通じて、経済成長が加速することが期待される。

この一億総活躍社会を実現するためには、障害者、難病患者、がん患者等が、希望や能力、障害や疾病の特性等に応じて最大限活躍できる環境を整備することが必要である。

病気や障害などを有していても、自己の能力を最大限に発揮し、個性を活かして生きていけるようにすることは、本人の人生の充実という観点から大切である。

そして、働くことを始めとする社会参加の意欲のある人誰もが、その能力を発揮できるような環境づくりを行うことは、社会保障の支え手を増やす観点からも、我が国の経済活力の維持にとっても重要である。

人生において病気や障害などを有する可能性は誰にでもある中で、様々な選択肢が用意され、それを支える仕組みがあることが、多様な人々が「支え手」「受け手」という関係を超えて支え合い、多様性を尊重し包摂する社会、誰もが安心して暮らせる社会の実現につながる。

 

少子高齢化と人口減少により、このままでは日本経済も社会そのものも、先細りになってしまう恐れがあります。

政府あるいは政治の力だけでは、どうすることもできません。

国民の一人ひとりが経済活動や社会活動に積極的に参加し、日本全体を盛り上げていく必要があります。

また、こうしたことを通じて、一人ひとりが生きがいを感じ、活き活きと暮らしていくことにつながります。

 

2019.07.15. 解決社労士 柳田 恵一

<年次有給休暇を取得させる義務>

年次有給休暇は、労働者の所定労働日数や勤続年数などに応じた法定の日数以上を与えることになっています。

与えるというのは、年次有給休暇を取得する権利を与えるということです。

かつては、実際に労働者の方から「この日に年次有給休暇を取得します」という指定が無ければ、使用者の方から積極的に取得させる義務は無かったのです。

 

ところが、平成31(2019)年4月1日から、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うことになりました。

つまり、年次有給休暇が新たに付与される日数が10日以上の労働者に対しては、年次有給休暇のうち5日以上について、基準日から1年以内の期間に労働者ごとにその取得日を指定しなければなりません。

これには例外があって、労働者の方から取得日を指定した日数と、労使協定によって計画的付与がされた日数は、年5日から差し引かれます。

結局、基準日から次の基準日の前日までの1年間で、年次有給休暇の取得について、次の3つの合計が5日以上となる必要があります。

 

・労働者からの取得日の指定があって取得した年次有給休暇の日数

・労使協定により計画的付与が行われた年次有給休暇の日数

・使用者が取得日を指定して取得させた年次有給休暇の日数

 

<就業規則に必要な規定>

年次有給休暇など法定の休暇だけでなく、会社で設けている休暇については就業規則に必ず定めることが必要です。

年次有給休暇については、新たに取得日を指定してでも取得させる義務が発生したわけですから、これも就業規則に定めなければなりません。

その職場の就業規則により、また前後関係から、表現の違いはあるものの内容的には次のようになります。

 

【新たに規定する内容】

年次有給休暇が新たに10日以上与えられた従業員に対しては、従業員があらかじめ請求する時季だけでなく、付与日から1年以内に、その従業員の有する年次有給休暇日数のうち5日について、会社が従業員の意見を聴取し、その意見を尊重した上で、あらかじめ時季を指定して取得させる。

ただし、従業員があらかじめ請求する時季に年次有給休暇を取得した場合、および労使協定を結んで計画的に休暇取得日を決定した場合には、その取得した日数分を5日から控除する。

 

<働き方改革との関係>

年次有給休暇の取得率は、平均50%前後で伸び悩んできました。

こうした事態を解消するために、働き方改革の一環で、使用者に年次有給休暇の取得日を指定させてでも、取得率を向上させようということです。

働き方改革というのは、働き手の不安を解消し満足度を高めるための多面的な改革ですから、会社が従業員の意見を聴取し、その意見を尊重した上で進めることが必要です。

残業が減った分だけ給料が減り、残業手当の付かない役職者に仕事が集中するのは、働き方改革の弊害だと言われますが、進め方を誤った結果にすぎません。

年次有給休暇の取得についても、働き方改革の本質から外れない運用を心がけましょう。

 

2019.07.12. 解決社労士 柳田 恵一

<労働時間該当性の基準の明確化>

令和元(2019)年7月1日、厚生労働省労働基準局長が都道府県労働局長に、医師の研鑽に係る労働時間に関する考え方についての通達を発しました。

業務の傍ら、医師の自らの知識の習得や技能の向上を図るために行う学習、研究等「研鑽」については、労働時間に該当しない場合と該当する場合があります。

医師の的確な労働時間管理の確保等の観点から、医師の研鑽について、労働時間該当性の判断の基本的な考え方、明確化のための手続、環境整備について示されています。

 

<所定労働時間内の研鑽の取扱い>

所定労働時間内に、医師が、使用者に指示された勤務場所(院内等)で研鑽を行う場合については、その研鑽に係る時間は、当然に労働時間となります。

 

<所定労働時間外の研鑽の取扱い>

所定労働時間外に行う医師の研鑽は、診療等の本来業務と直接の関連性なく、かつ、業務の遂行を指揮命令する職務上の地位にある上司の明示・黙示の指示によらずに行われる限り、在院して行う場合であっても、一般的に労働時間に該当しません。

一方、その研鑽が、上司の明示・黙示の指示により行われるものである場合には、これが所定労働時間外に行われるものであっても、または診療等の本来業務との直接の関連性なく行われるものであっても、一般的に労働時間に該当します。

所定労働時間外に、医師が行う研鑽については、在院して行われるものであっても、上司の明示・黙示の指示によらずに、自発的に行われるものもあります。この場合の労働時間該当性の判断基準は、研鑽の類型ごとに、その判断の基本的考え方が示されています。

 

⑴ 一般診療における新たな知識、技能の習得のための学習

ア 研鑽の具体的内容

例えば、診療ガイドラインについての勉強、新しい治療法や新薬についての勉強、自らが術者等である手術や処置等についての予習や振り返り、シミュレーターを用いた手技の練習等が考えられる。

イ 研鑽の労働時間該当性

業務上必須ではない行為を、自由な意思に基づき、所定労働時間外に、自ら申し出て、上司の明示・黙示による指示なく行う時間については、在院して行う場合であっても、一般的に労働時間に該当しないと考えられる。

ただし、診療の準備又は診療に伴う後処理として不可欠なものは、労働時間に該当する。

 

⑵ 博士の学位を取得するための研究及び論文作成や、専門医を取得するための症例研究や論文作成

ア 研鑽の具体的内容

例えば、学会や外部の勉強会への参加・発表準備、院内勉強会への参加・発表準備、本来業務とは区別された臨床研究に係る診療データの整理・症例報告の作成・論文執筆、大学院の受験勉強、専門医の取得や更新に係る症例報告作成・講習会受講等が考えられる。

イ 研鑽の労働時間該当性

上司や先輩である医師から論文作成等を奨励されている等の事情があっても、業務上必須ではない行為を、自由な意思に基づき、所定労働時間外に、自ら申し出て、上司の明示・黙示による指示なく行う時間については、在院して行う場合であっても、一般的に労働時間に該当しないと考えられる。

ただし、研鑽の不実施について就業規則上の制裁等の不利益が課されているため、その実施を余儀なくされている場合や、研鑽が業務上必須である場合、業務上必須でなくとも上司が明示・黙示の指示をして行わせる場合は、当該研鑽が行われる時間については労働時間に該当する。

上司や先輩である医師から奨励されている等の事情があっても、自由な意思に基づき研鑽が行われていると考えられる例としては、次のようなものが考えられる。

・ 勤務先の医療機関が主催する勉強会であるが、自由参加である

・ 学会等への参加・発表や論文投稿が勤務先の医療機関に割り当てられているが、医師個人への割当はない

・ 研究を本来業務とはしない医師が、院内の臨床データ等を利用し、院内で研究活動を行っているが、当該研究活動は、上司に命じられておらず、自主的に行っている

 

⑶ 手技を向上させるための手術の見学

ア 研鑽の具体的内容

例えば、手術・処置等の見学の機会の確保や症例経験を蓄積するために、所定労働時間外に、見学(見学の延長上で診療(診療の補助を含む。下記イにおいて同じ。)を行う場合を含む。)を行うこと等が考えられる。

イ 研鑽の労働時間該当性

上司や先輩である医師から奨励されている等の事情があったとしても、業務上必須ではない見学を、自由な意思に基づき、所定労働時間外に、自ら申し出て、上司の明示・黙示による指示なく行う場合、当該見学やそのための待機時間については、在院して行う場合であっても、一般的に労働時間に該当しないと考えられる。

ただし、見学中に診療を行った場合については、当該診療を行った時間は、労働時間に該当すると考えられ、また、見学中に診療を行うことが慣習化、常態化している場合については、見学の時間全てが労働時間に該当する。

 

<労働時間該当性を明確化するための手続及び環境整備>

研鑽の労働時間該当性についての基本的な考え方は、上記に示されているとおりですが、各事業場での研鑽の労働時間該当性を明確化するためには、一定の手続とその適切な運用、環境が確保されなければなりません。

そこで通達は、次に掲げる事項に取り組むよう医療機関等に周知することを求めています。

 

⑴ 医師の研鑽の労働時間該当性を明確化するための手続

医師の研鑽については、業務との関連性、制裁等の不利益の有無、上司の指示の範囲を明確化する手続を講ずること。

例えば、医師が労働に該当しない研鑽を行う場合には、医師自らがその旨を上司に申し出ることとし、当該申出を受けた上司は、当該申出をした医師との間において、当該申出のあった研鑽に関し、

・ 本来業務及び本来業務に不可欠な準備・後処理のいずれにも該当しないこと

・ 当該研鑽を行わないことについて制裁等の不利益はないこと

・ 上司として当該研鑽を行うよう指示しておらず、かつ、当該研鑽を開始する時点において本来業務及び本来業務に不可欠な準備・後処理は終了しており、本人はそれらの業務から離れてよいこと

について確認を行うことが考えられる。

 

⑵ 医師の研鑽の労働時間該当性を明確化するための環境の整備

上記⑴の手続について、その適切な運用を確保するため、次の措置を講ずることが望ましいものであること。

ア 労働に該当しない研鑽を行うために在院する医師については、権利として労働から離れることを保障されている必要があるところ、診療体制には含めず、突発的な必要性が生じた場合を除き、診療等の通常業務への従事を指示しないことが求められる。また、労働に該当しない研鑽を行う場合の取扱いとしては、院内に勤務場所とは別に、労働に該当しない研鑽を行う場所を設けること、労働に該当しない研鑽を行う場合には、白衣を着用せずに行うこととすること等により、通常勤務ではないことが外形的に明確に見分けられる措置を講ずることが考えられること。手術・処置の見学等であって、研鑚の性質上、場所

や服装が限定されるためにこのような対応が困難な場合は、当該研鑚を行う医師が診療体制に含まれていないことについて明確化しておくこと。

イ 医療機関ごとに、研鑽に対する考え方、労働に該当しない研鑽を行うために所定労働時間外に在院する場合の手続、労働に該当しない研鑽を行う場合には診療体制に含めない等の取扱いを明確化し、書面等に示すこと。

ウ 上記イで書面等に示したことを院内職員に周知すること。周知に際しては、研鑽を行う医師の上司のみではなく、所定労働時間外に研鑽を行うことが考えられる医師本人に対してもその内容を周知し、必要な手続の履行を確保すること。

また、診療体制に含めない取扱いを担保するため、医師のみではなく、当該医療機関における他の職種も含めて、当該取扱い等を周知すること。

エ 上記⑴の手続をとった場合には、医師本人からの申出への確認や当該医師への指示の記録を保存すること。なお、記録の保存期間については、労働基準法第109条において労働関係に関する重要書類を3年間保存することとされていることも参考として定めること。

 

医師に限らず、担当業務をこなすのに必要な学習が、勤務先の指導・教育・研修では足りない場合には、自学自習しなければならないこともあります。

この自学自習の時間が、本来の労働時間ではない場合でも、過労死の原因を判断するにあたっては、労働時間に含めて計算されることがあります。

会社が労働者の自己研鑽・自己啓発に頼りすぎると、万一の事故があった場合には、責任が重いということを意味します。

 

2019.07.10. 解決社労士 柳田 恵一

 

<新通達による基準変更>

令和元(2019)年7月1日、厚生労働省労働基準局長より都道府県労働局長に新たな通達が出されました。

医師等の宿日直の特性を踏まえ、許可基準の細目を定めたものです。

これをもって、昭和24(1949)年3月22日付基発第352号「医師、看護婦等の宿直勤務について」は廃止されました。

医療法第16条には「医業を行う病院の管理者は、病院に医師を宿直させなければならない」と規定されていますが、その宿直中の勤務の実態が次に該当すると認められるものについてのみ、労働基準法施行規則第23条の許可が与えられるようになりました。

 

労働基準法施行規則第23条

(宿直又は日直勤務)

 

第二十三条 使用者は、宿直又は日直の勤務で断続的な業務について、様式第十号によつて、所轄労働基準監督署長の許可を受けた場合は、これに従事する労働者を、法第三十二条の規定にかかわらず、使用することができる。

 

労働基準法第32条

(労働時間)

 

第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。

○2 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

 

<新基準の内容>

医師等の宿日直勤務については、次に掲げる条件の全てを満たし、かつ、宿直の場合は夜間に十分な睡眠がとり得るものである場合には、労働基準法施行規則第23条の許可を与えるよう取り扱います。

 

⑴ 通常の勤務時間の拘束から完全に解放された後のものであること。

 

⑵ 宿日直中に従事する業務は、一般の宿日直業務以外には、特殊の措置を必要としない軽度の又は短時間の業務に限ること。例えば、次に掲げる業務等をいう。

・ 医師が、少数の要注意患者の状態の変動に対応するため、問診等による診察等(軽度の処置を含む。以下同じ。)や、看護師等に対する指示、確認を行うこと

・ 医師が、外来患者の来院が通常想定されない休日・夜間(例えば非輪番日であるなど)において、少数の軽症の外来患者や、かかりつけ患者の状態の変動に対応するため、問診等による診察等や、看護師等に対する指示、確認を行うこと

・ 看護職員が、外来患者の来院が通常想定されない休日・夜間(例えば非輪番日であるなど)において、少数の軽症の外来患者や、かかりつけ患者の状態の変動に対応するため、問診等を行うことや、医師に対する報告を行うこと

・ 看護職員が、病室の定時巡回、患者の状態の変動の医師への報告、少数の要注意患者の定時検脈、検温を行うこと

 

⑶ 上記⑴、⑵以外に、一般の宿日直の許可の際の条件を満たしていること。

 

<割増賃金が発生する場合>

宿日直中に従事する業務には、特殊の措置を必要としない軽度の又は短時間の業務に限られ、通常の勤務時間と同態様の業務は含まれません。

例外的に、通常の勤務時間と同態様の業務に従事することがあった場合には、その時間について労働基準法第37条の割増賃金が支払われることになります。

 

<宿日直の許可ができないケース>

宿日直に対応する医師等の数について、宿日直の際に担当する患者数との関係やその病院等に夜間・休日に来院する急病患者の発生率との関係等からみて、通常の勤務時間と同態様の業務に従事することが常態であると判断されるものについては、宿日直の許可を与えることができません。

 

人の生命を預かる医師等が、過重労働によって、自らの生命や健康を脅かされることのないように、働き方改革が進められつつあります。

 

2019.07.09. 解決社労士 柳田 恵一

令和元(2019)年6月25日、厚生労働省と国土交通省が、貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律の荷主関連部分について、7月1日から施行することを発表しました。

貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律には、トラックドライバーの働き方改革を進め、コンプライアンスが確保できるよう、荷主に対する国土交通大臣による働きかけ等の規定が新設されています。

 

<法改正の背景>

トラック運送事業ではドライバー不足が深刻化しており、ドライバーの長時間労働の是正等の働き方改革を進め、コンプライアンスが確保できるようにする必要があります。

こうした状況を踏まえ、昨年、①規制の適正化、②事業者が遵守できる事項の明確化、③荷主対策の深度化、④標準的な運賃の公示制度の導入を内容とする貨物自動車運送事業法(平成元年法律第83号)の改正が行われました。

今般、このうち、③の荷主関連部分について施行し、荷主の理解・協力のもとで働き方改革・法令遵守を進めることができるようにするための取組を一層推進します。

 

<荷主関連部分の概要>

改正貨物自動車運送事業法のうち、令和元(2019)年7月1日より施行される③の荷主関連部分の概要は次の通りです。

 

(1)荷主の配慮義務の新設

 荷主は、トラック運送事業者が法令を遵守して事業を遂行できるよう、必要な配慮をしなければならないこととする責務規定を新設。

(2)荷主への勧告制度の拡充

 荷主勧告制度の対象に、貨物軽自動車運送事業者が追加されるとともに、荷主に対して勧告を行った場合には、その旨を公表することを法律に明記。

(3)違反原因行為をしている疑いがある荷主に対する国土交通大臣による働きかけ等の規定の新設(令和5年度末までの時限措置)

①国土交通大臣は、「違反原因行為」(トラック運送事業者の法令違反の原因となるおそれのある行為)をしている疑いのある荷主に対して、荷主所管省庁等と連携して、トラック運送事業者のコンプライアンス確保には荷主の配慮が重要であることについて理解を求める「働きかけ」を行う。

②荷主が違反原因行為をしていることを疑うに足りる相当な理由がある場合等には、「要請」や「勧告・公表」を行う。

③トラック運送事業者に対する荷主の行為が独占禁止法違反の疑いがある場合には、「公正取引委員会に通知」する。

 

違反原因行為の例:荷待ち時間の恒常的な発生、非合理な到着時刻の設定、重量違反等となるような依頼等

 

↓こちらのパンフレットもご参照ください。

https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000520823.pdf

 

2019.07.01. 解決社労士 柳田 恵一

令和元(2019)年5月29日、女性活躍推進法等の一部を改正する法律が成立し、6月5日に公布されました。

 

<女性活躍推進法の内容>

女性活躍推進法に基づき、国・地方公共団体、301人以上の大企業は、(1)自社の女性の活躍に関する状況把握・課題分析、(2)その課題を解決するのにふさわしい数値目標と取組を盛り込んだ行動計画の策定・届出・周知・公表、(3)自社の女性の活躍に関する情報の公表を行わなければなりません(300人以下の中小企業は努力義務)。

また、行動計画の届出を行い、女性の活躍推進に関する取組の実施状況が優良な企業については、申請により、厚生労働大臣の認定を受けることができます。認定を受けた企業は、厚生労働大臣が定める認定マークを商品などに付することができます。

 

<優良企業の認定(「えるぼし」認定)>

行動計画の策定・届出を行った企業のうち、女性の活躍に関する取組の実施状況が優良な企業については、申請により、厚生労働大臣の認定を受けることができます。

認定の申請は、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)で受け付けています。

認定を受けた企業は、厚生労働大臣が定める認定マークを商品などに付することができます。この認定マークを活用することにより、女性の活躍が進んでいる企業として、企業イメージの向上や優秀な人材の確保につながるなどといったメリットがあります。

 

<女性活躍推進法の改正内容>

1 一般事業主行動計画の策定義務の対象拡大

 一般事業主行動計画の策定・届出義務及び自社の女性活躍に関する情報公表の義務の対象が、常時雇用する労働者が301人以上から101人以上の事業主に拡大されます(施行:公布後3年以内の政令で定める日)。

2 女性活躍に関する情報公表の強化

 常時雇用する労働者が301人以上の事業主は、情報公表項目について、

  (1)職業生活に関する機会の提供に関する実績

  (2)職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備に関する実績

 の各区分から1項目以上公表する必要があります(施行:公布後1年以内の政令で定める日)。

3 特例認定制度(プラチナえるぼし(仮称))の創設

 女性の活躍推進に関する状況等が優良な事業主の方への認定(えるぼし認定)よりも水準の高い「プラチナえるぼし(仮称)」認定を創設します(施行:公布後1年以内の政令で定める日)。

 

<両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)>

女性活躍推進法の施行に先駆けて取り組む事業主は、助成金の受給をご検討ください。

女性活躍推進法に沿って、一般事業主行動計画の策定・公表等を行った上で、行動計画に盛り込んだ取組内容を実施し、数値目標を達成した事業主に助成金が支給されます。

行動計画等の公表は「女性の活躍推進企業データベース」上で行う必要があります。

 

【助成金の種類と支給金額】

●加速化Aコース
行動計画に盛り込んだ取組内容を2つ以上実施(=「取組目標」を達成)した場合に支給
支給額:38万円〈48万円〉(1事業主1回限り)
対象事業主:常時雇用する労働者が300人以下の事業主

●加速化Nコース
行動計画に盛り込んだ取組内容を実施し、行動計画に盛り込んだ数値目標を達成した場合に支給
支給額:28.5 万円〈36万円〉(1事業主1回限り)
47.5万円〈60万円〉(女性管理職比率が15%以上に上昇した場合のみ)
対象事業主:常時雇用する労働者が300人以下の事業主

※〈〉内は、生産性要件を満たした場合の支給額。

 

2019.06.24. 解決社労士 柳田 恵一

<公務員の場合>

公務員が得る報酬の財源は税金ですから、重い職務専念義務が課されています。

ですから、ほとんどの場合はダブルワーク禁止です。

親から相続したマンションを経営して収入を得ているのがダブルワークにあたるという理由で、辞めさせられるという実例もありました。

 

<民間企業の場合>

民間企業では、会社が給与を支払っています。

ですから、社員が自社の職務に専念しなかったり、ダブルワークをしたりということに対して、厳しい態度を取る必然性はありません。

 

<ダブルワークの理由>

ダブルワークを希望する人の大半は、今の収入では足りないので、別に収入を得るために別の仕事をしなければならないと言います。

こうした人たちは、会社が給料を上げてくれれば、ダブルワークの必要などないと考えています。

しかし中には、別の仕事もしてみたい、家業を手伝いたい、別の分野で自分の能力を高めたい、将来の独立に向けて準備したいなど考えている人もいます。

働き方改革の流れで、政府は副業・兼業を推奨していますから、ダブルワークを希望する人は今後も増えるでしょうし、企業も対応を迫られています。

 

<ダブルワーク禁止の理由>

会社としては、社員が別の会社で働くと、体力・精神力を消耗して疲れてしまい、自分の会社で充分な働きができないのではないかという不安があります。実際にそうなるケースが多いものです。

また、社員がライバル会社で働いたら、会社の機密が漏れるかもしれません。ただ、これは会社の重要な情報を握る立場にある人限定で考えればよいことです。社員一般にあてはまる話ではありません。

むしろ、女性社員が性風俗店でアルバイトしたら、会社の評判が落ちるのではないか、さらには男性社員でも違法カジノでアルバイトしたら、摘発されたとき自分の会社の名前もマスコミに報道されるのではないか。

こうした不都合が発生することを恐れて、会社としてはダブルワークを禁止したいのです。

モデル就業規則の最新版(平成31(2019)年3月版)は、次のように規定しています。これを参考に、社内規定を調えてはいかがでしょうか。

 

【副業・兼業】

第68条  労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。

2 労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行うものとする。

3 第1項の業務に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場合には、会社は、これを禁止又は制限することができる。

① 労務提供上の支障がある場合

② 企業秘密が漏洩する場合

③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合

④ 競業により、企業の利益を害する場合

 

<ダブルワーク禁止の有効性>

就業規則で「ダブルワーク禁止」としたり、社員に「ダブルワークしません」という念書を提出してもらったりした場合、これらは有効なのでしょうか。

基本的には、憲法が職業選択の自由を保障していますから、原則として効力が無いということになります。

では、就業規則や労働条件通知書にダブルワークをした場合の懲戒処分や解雇の規定を置いたら、その効力はどうなのでしょうか。

この場合には、ダブルワークのすべてについて有効になるというわけではありません。

実際に有効とされるためには、次の2つの条件をクリアする必要があります。

 

・具体的なダブルワークの中身が会社に大きな不都合をもたらし、懲戒処分や解雇をすることについて、客観的な合理性が認められること

・懲戒処分や解雇をすることについて、社会一般の常識から考えても仕方のないケースだといえること

 

これらの条件は、労働契約法第15条・第16条によるものです。

 

<留学生の場合>

ちなみに留学生の場合には、勉強のために入国しているのですから、アルバイトなどの活動は、本来の入国目的とは異なるということで制限されています。

留学生は資格外活動許可を受けた場合に限り、アルバイトを行うことができます。一般的に、アルバイト先が風俗営業または風俗関係営業が含まれている営業所でないことを条件に、1週28時間以内を限度として勤務先や時間帯を特定することなく、包括的な資格外活動許可が与えられます。また、在籍する大学などの長期休業期間は、1日8時間以内に延長されます。

そして、資格外活動の許可を受けずに、あるいは条件を超えてアルバイトに従事した場合は、不法就労となります。

ですから、夏休みなど長期休暇を除けば、留学生がダブルワークをするというのは難しいでしょう。

 

2019.06.09. 解決社労士 柳田 恵一

<パート・有期法への改正>

パート法は、パート・有期法に改正されました。

施行日は、令和2(2020)年4月1日ですが、今から対応が必要です。

なお、中小企業では令和3(2021)年4月1日施行です。

 

【正式名称】

パート法 = 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

パート・有期法 = 短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律

 

旧法では、フルタイム以外の労働者だけが対象です。

新法では、有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者が対象となります。

 

区分

無期

有期

派遣

フルタイム

通常の労働者

新法対象者

新法対象者

フルタイム以外

新法対象者

新法対象者

新法対象者

 

ここで通常の労働者とは、定年以外に雇用期間が限定されない無期雇用で、フルタイム勤務の労働者ですから、「正社員」と呼ばれるのが一般です。

 

<事業主の説明義務>

新法には、事業主の説明義務が規定されています。

 

【パート・有期法第14条第2項】

事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、当該短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由並びに第六条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならない。

 

説明は、事業主が新法対象者を雇い入れた後、本人から求められたときに行うことになります。

説明内容は、主に待遇の相違の内容とその理由です。

事実に反する嘘の説明はできませんし、不合理な説明もダメです。

理解しうる説明であることが必要ですが、必ずしも納得してもらうことまでは必要ありません。

 

<慶弔休暇の性質>

慶弔休暇は、自分自身や近親者の慶事(結婚・出産)、近親者の弔事(葬式)の際に取得できる休暇のことです。これについては、労働基準法などに規定がありません。法定外の特別な休暇です。

そのため、慶弔休暇の内容については、各企業で自由に定められてきました。

しかし、正社員など一般の労働者のみに慶弔休暇を与えていたり、パート・有期労働者に対して一般の労働者よりも少ない日数の慶弔休暇を与えていたりすれば、その内容と理由について説明を求められうることになったわけです。

説明を求めたことに対して、不利益な取扱いをすることは禁止されています。〔パート・有期法第14条第3項〕

ですから、不快な思いをさせないように配慮する必要があります。

 

<慶弔休暇に差を設ける合理的な理由>

会社に全く慶弔休暇の制度が無いとしても、これは違法ではありません。

あくまでも、正社員など一般の労働者のみに慶弔休暇を与えていたり、パート・有期労働者に対して一般の労働者よりも少ない日数の慶弔休暇を与えていたりすれば、その内容と理由に合理性があるかという形で問題とされるのです。

これは、働き方改革の一内容である同一労働同一賃金の視点からの規制です。

慶弔休暇の必要性については、所定労働日数が正社員など一般の労働者と同じであれば、パート・有期労働者であっても否定のしようがありません。

また、勤続年数や1日の所定労働時間、役職などによって、その必要性に違いが生ずることもほとんどありません。

ですから、正社員など一般の労働者のみに慶弔休暇を与えていたり、パート・有期労働者に対して、一律に一般の労働者よりも少ない日数の慶弔休暇を与えていたりすれば、合理的な理由を見出すのは困難でしょう。

 

<企業の取るべき対応>

週所定労働日数が2~3日であれば、結婚式や葬式などが出勤日と重なる可能性は低いでしょう。それだけ、慶弔休暇を与える必要性も低くなります。

慶弔による休みが必要になった場合には、勤務日の振替で対応することを原則とし、対応し切れないときに慶弔休暇を与える制度にすることは、決して不合理ではありません。

これは、有期雇用・無期雇用による差別でもなく、1日の所定労働時間による差別でもありません。同一労働同一賃金の趣旨に反してはいないのです。

しかし、これを理由に、一部の従業員の慶弔休暇が減るのであれば不利益変更となります。この場合には、個別の同意を得るなどの対応が必要となります。

実態を把握するために従業員への聞き取り調査を行い、顧問の社会保険労務士などと相談しながらうまく対応しましょう。

 

2019.05.28. 解決社労士 柳田 恵一

<パート・有期法への改正>

パート法は、パート・有期法に改正されました。

施行日は、令和2(2020)年4月1日ですが、今から対応が必要です。

なお、中小企業では令和3(2021)年4月1日施行です。

 

【正式名称】

パート法 = 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

パート・有期法 = 短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律

 

旧法では、フルタイム以外の労働者だけが対象です。

新法では、有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者が対象となります。

 

区分

無期

有期

派遣

フルタイム

通常の労働者

新法対象者

新法対象者

フルタイム以外

新法対象者

新法対象者

新法対象者

 

ここで通常の労働者とは、定年以外に雇用期間が限定されない無期雇用で、フルタイム勤務の労働者ですから、「正社員」と呼ばれるのが一般です。

 

<事業主の説明義務>

新法には、事業主の説明義務が規定されています。

 

【パート・有期法第14条第2項】

事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、当該短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由並びに第六条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならない。

 

説明は、事業主が新法対象者を雇い入れた後、本人から求められたときに行うことになります。

説明内容は、主に待遇の相違の内容とその理由です。

事実に反する嘘の説明はできませんし、不合理な説明もダメです。

理解しうる説明であることが必要ですが、必ずしも納得してもらうことまでは必要ありません。

 

<退職金支払の理由>

もし、正社員など一般の労働者のみに退職金を支給しているのであれば、退職金支払の有無と理由について説明が必要になります。

説明を求めたことに対して、不利益な取扱いをすることは禁止されています。〔パート・有期法第14条第3項〕

ですから、不快な思いをさせないように配慮する必要があります。

さて、退職金支払の一般的な理由としては、次のようなものが挙げられます。

 

【退職金支払の一般的な理由】

長期雇用を前提とした無期契約労働者に対する福利厚生を手厚くし、人材の確保・定着を図るため。

 

正社員など通常の労働者以外は、すべて2~3年で退職しているという実態があれば、こうした理由で退職金を支給するのは合理性があります。

しかし、多くの企業では、有期雇用労働者が契約の更新を繰り返して、相当長期にわたり働いているのではないでしょうか。

 

<正社員だけに退職金が支給される合理的な理由>

次のような制度であれば、正社員など通常の労働者だけに退職金が支給されるのは、合理的な理由があるということになります。

 

正社員など無期・フルタイムの労働者には、賃金の後払い、長年の功労に対する報償として退職金を支給する。

一方、新法対象者であるパート・有期労働者に対しては、退職金が無いことを前提として、退職金引当金に相当する額を賃金に上乗せして支給している。

そのため、職務の内容、職務の内容や配置の変更の範囲、その他の事情が同等であれば、無期・フルタイムの労働者よりも、新法対象者の方が賃金の時間単価が高い。

 

<企業の取るべき対応>

現在のところは裁判でも、「一般論として、長期雇用を前提とした無期契約労働者に対する福利厚生を手厚くし、有為な人材の確保・定着を図るなどの目的をもって無期契約労働者に対しては退職金制度を設ける一方、本来的に短期雇用を前提とした有期契約労働者に対しては退職金制度を設けないという制度設計をすること自体が、人事政策上一概に不合理であるということはできない」とされています。

また、同一労働同一賃金ガイドラインには、退職金についての具体的な記述がありません。

ですから、賃金の時間単価の違いや、勤続年数の実態を踏まえ、正社員など無期・フルタイムの労働者のみに退職金制度を設けることの合理性を検討し、不合理な部分があれば修正する、そして、裁判例の動向を踏まえつつ定期的な修正を行っていくことになります。

しかし、退職金の原資には限りがありますから、一部の従業員の退職金が減るのであれば不利益変更となります。この場合には、個別の同意を得るなどの対応が必要となります。

長期的な展望に立ち、顧問の社会保険労務士などと相談しながらうまく対応しましょう。

 

2019.05.25. 解決社労士 柳田 恵一

 

<パート・有期法への改正>

パート法は、パート・有期法に改正されました。

施行日は、令和2(2020)年4月1日ですが、今から対応が必要です。

なお、中小企業では令和3(2021)年4月1日施行です。

 

【正式名称】

パート法 = 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

パート・有期法 = 短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律

 

旧法では、フルタイム以外の労働者だけが対象です。

新法では、有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者が対象となります。

 

区分

無期

有期

派遣

フルタイム

通常の労働者

新法対象者

新法対象者

フルタイム以外

新法対象者

新法対象者

新法対象者

 

ここで通常の労働者とは、定年以外に雇用期間が限定されない無期雇用で、フルタイム勤務の労働者ですから、「正社員」と呼ばれるのが一般です。

 

<事業主の説明義務>

新法には、事業主の説明義務が規定されています。

 

【パート・有期法第14条第2項】

事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、当該短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由並びに第六条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならない。

 

説明は、事業主が新法対象者を雇い入れた後、本人から求められたときに行うことになります。

説明内容は、主に待遇の相違の内容とその理由です。

事実に反する嘘の説明はできませんし、不合理な説明もダメです。

理解しうる説明であることが必要ですが、必ずしも納得してもらうことまでは必要ありません。

 

<賞与支払の理由>

もし、正社員など一般の労働者のみに賞与を支給しているのであれば、賞与支払の有無と理由について説明が必要になります。

説明を求めたことに対して、不利益な取扱いをすることは禁止されています。〔パート・有期法第14条第3項〕

ですから、不快な思いをさせないように配慮する必要があります。

さて、賞与支払の一般的な理由としては、次のようなものが挙げられます。

 

【賞与支払の一般的な理由】

会社の利益の分配、功労報償、生活補償、従業員の意欲向上、長期雇用への期待

 

これらの理由で賞与を支払っているのなら、正社員など通常の労働者に限定して賞与を支払っているのは不合理ですから、改めなければなりません。

なぜなら、会社の利益の分配、功労報償、生活補償、従業員の意欲向上、長期雇用への期待は、全従業員に共通ですから、一部の従業員に限定して賞与を支払うことは、客観的に合理的な説明がつかないのです。

もっとも、正社員など通常の労働者以外は、すべて2~3年で退職しているという実態があれば、「長期雇用への期待」という理由も合理性が認められます。

しかし、多くの企業では、有期雇用労働者が契約の更新を繰り返して、相当長期にわたり働いているのではないでしょうか。

 

<正社員だけに賞与が支給される合理的な理由>

次のような制度であれば、正社員など通常の労働者だけに賞与が支給されるのは、合理的な理由があるということになります。

 

正社員など無期・フルタイムの労働者だけが、半期に一度上司と面接して目標を設定し、この目標の達成度に応じて賞与が支給される。ただし、達成度が基準に達しないほど低ければ、職能等級が低下するなどによって、基本給も下がってしまうという待遇上の不利益が発生する。そして、新法対象者であるパート・有期労働者は、こうした仕組みの対象外であるから、時給が下がるようなことはない。

 

<企業の取るべき対応>

すでに賞与支給の理由が明確となっていて、一部の従業員だけに支給されているのであれば、その合理性を検討します。

客観的な合理性が無いのであれば、全従業員に同じ基準で賞与を支給することになります。

しかし、賞与の原資には限りがありますから、一部の従業員の賞与が減るのであれば不利益変更となります。個別の同意を得るなどの対応が必要となります。

実際には、賞与支給の趣旨があやふやなことも多いものです。

この場合には、顧問の社会保険労務士などと相談してうまく対応しましょう。

 

2019.05.22. 解決社労士 柳田 恵一

<規制改革推進会議の動き>

令和元(2019)年5月10日、政府の規制改革推進会議が「働き方の多様化に資するルール整備について」を公表し、兼業・副業により複数の職場で働く人たちの労働時間管理について、現行制度の見直しを検討することを明らかにしました。

厚生労働省は、「働き方改革実行計画」を踏まえ、副業・兼業の普及促進を図るために、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を公表しましたが、大きな進捗が見られません。

この理由として、伝統的な日本の働き方に基づき、厳密な時間管理を求める旧来の労働法の制約が大きいのではないかと考えられています。

「働き方の多様化に資するルール整備について」では、改善の方向性が次のように示されています。

 

<副業・兼業の促進>

厚生労働省は、平成30(2018)年1月にモデル就業規則を改定し、届出により副業・兼業ができることを原則としました。

しかし、大半の企業は副業・兼業を原則禁止とする立場を変えていません。

 

<割増賃金の問題>

この理由の一つとして、複数の事業場での労働時間を通算し、合計の労働時間に対して、法定時間外労働の割増賃金の支払いが求められることが考えられます。

その根拠は、昭和22(1947)年に定められた労働基準法第38条です。

実際には、主たる勤務先の使用者が副業・兼業先での労働時間を通算するのは困難であり、労働者の自己申告を前提としても、この困難は解消されません。

また、法定時間外労働は「後から結ばれた労働契約」で発生するという解釈に基づき、副業での使用者が割増賃金を支払うことになっています。

ところが、法定労働時間の趣旨は、同一の使用者が過度に時間外労働に依存することを防止することにあり、現在の解釈は適切ではない面もあります。

 

<労働者保護の観点>

副業・兼業について労働時間を通算するとなると、労働者が法定時間外労働への制約を避けるため届出を怠ったり、業務委託(請負・委任)など雇用類似の「非雇用型」へと逃避したりする可能性があります。

これでは、労働者を保護するための労働基準法などが適用されないなど、望ましくない現象が生じてしまいます。

 

<健康管理の観点>

EU諸国では、労働者の健康確保のための時間規制と割増賃金制度とを切り離していて、副業・兼業で労働時間を通算する場合にも、割増賃金制度を適用していません。労働者の健康管理に焦点をあてて労働時間管理を行おうとしています。

日本では、これまで割増賃金制度が長時間労働を抑制するものとして機能してきました。しかし、労働者が自ら選択する副業・兼業の場合には、割増賃金制度適用のために、異なる事業主間で労働時間を通算するという解釈は見直すことが適当ではないかと考えられます。

 

<規制改革推進会議の提言>

労働時間の把握・通算を行う趣旨・目的を再定義し、以下の対応を行うべきではないか。

 

①上記の解釈の根拠となる1948年の通達を改定し、労働時間の通算規定は同一事業主の範囲内でのみで適用し、自己の自由な選択に基づき働く労働者を雇用する、他の事業主には適用しないこと

②主たる事業主は健康確保のための労働時間把握に努めるものとすること

 

<提言の妥当性>

複数の事業場での労働時間を通算するというのは、決して現実的な話ではありません。

ほとんどの企業は、ダブルワークとなることを知っていながら採用した従業員について、他の事業場と連絡を取り合って労働時間を管理してはいません。

労働時間の通算についての労働基準法第38条を意識する企業は、ダブルワークとなる応募者を採用したがりませんから、応募者もダブルワークとなることを隠して採用されようとします。

また、働き方改革の観点から、健康管理を理由とする労働時間の管理や時間外労働の制限が導入されるようになってきました。

これらのことから、上記の提言は、極めて妥当だと思われます。

 

2019.05.16. 解決社労士 柳田 恵一

<調査の概要>

平成31(2019)年4月26日、厚生労働省が「ホームレスの実態に関する全国調査」の結果を公表しました。

この調査は、「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」などに基づき、ホームレスの自立の支援等に関する施策の策定や実施に役立てるため、毎年1月に、各自治体の協力を得て行っているものです。

調査の対象となるホームレスは「都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいる者」なので、調査方法は巡回による目視調査です。

なお、福島県の大熊町と双葉町は、震災の影響で調査の対象外となっています。

 

<ポイント>

同調査は、ポイントを次のように示しています。

 

1.ホームレスが確認された地方公共団体は、275市区町村であり、前年度と比べて25市区町村(▲9.1%)減少している。

2.確認されたホームレス数は、4,555人(男性4,253人、女性171人、不明131人)であり、前年度と比べて422人(▲8.5%)減少している。

3.ホームレス数が最も多かったのは東京都(1,126人)である。次いで多かったのは大阪府(1,064人)、神奈川県(899人)である。

 なお、東京都23区及び指定都市で全国のホームレス数の約4分の3を占めている。

4.ホームレスが確認された場所の割合は、前年度から大きな変化は見られなかった。

 (「都市公園」22.7%、「河川」30.3%、「道路」18.7%、「駅舎」5.2%、「その他施設」23.1%)

 

<ホームレス減少の原因>

この調査によると、少なくともこの5年間はホームレスが減少しています。

東京都が家の無い人(住所が無い人)の就労支援を強化したことや、人手不足の影響もあるでしょう。

中小企業でも、住所が無い人に積極的に住居を手配したうえで採用するという動きが見られます。

一億総活躍ですから、ホームレスがいない日本にしなければなりません。

 

2019.04.28. 解決社労士 柳田 恵一

<具体的な事例>

いままでパート・アルバイトに仕事の指示を出し指導をしてきた課長が部長に昇進し、その下で働いていた正社員が課長に昇進します。

ところが、課長に昇進した正社員は、勤務中、毎日のように居眠りする姿を見られていて、パート・アルバイトの失笑を買っていた人物でした。

自分たちと似たり寄ったりの仕事をしていたように見えた正社員が、居眠りをしていたのに自分たちの上に立つというのは、どうにも納得がいきません。

これを放置しておくと、パート・アルバイトが新課長を信頼できず、その指示・指導に素直に従わないことによって、生産性が大幅に低下してしまうかも知れません。

 

<立場による意識の違い>

時間給で働くパート・アルバイトは、どの時間を切り取っても一定の成果を上げるように意識して働いています。

ボーッとしていることは許されず、トイレに行くのにも遠慮して急いでいます。

ましてや、堂々と居眠りなどできません。

一方、月給制で働く正社員は、より長期的な視点で成果を出そうとします。改善を求められるのは主に正社員ですし、結果を残さなければ、賞与の支給額や将来の出世にも影響します。

パート・アルバイトが仕事を終え帰宅した後も、正社員は残って多岐にわたる仕事をこなしているために、疲れがたまって居眠りが出るということもあるでしょう。

こうした意識の違いから、不信感が生まれるというのは、ごく自然なことなのです。

 

<納得のいく説明>

会社の中での正社員とパート・アルバイトの職務や責任の違い、そしてこれらを理由とする待遇の違いについては、きちんとした説明が必要です。

「働き方改革関連法」により、令和2(2020)年4月から、正社員と非正規社員との間の不合理な待遇差が禁止されることとなります。

(ただし、中小企業は令和3(2021)年4月から適用です)

この法律に対応し、「正規」と「非正規」の不合理な待遇差を埋めていくことはもちろん、社内で理解できる説明が行われる必要があります。

これらを怠らなければ、労働者の間には公正に評価されているとの納得感が生じますし、納得感は労働者が働くモチベーション向上につながります。

また、求職者からは魅力ある職場と評価され、離職率の低下とあいまって、人材の確保につながります。

 

<説明できない場合>

なかには、正社員と非正規社員との間の待遇差を合理的に説明できない職場もあります。

どのように説明の仕方を工夫してみても、うまい説明が見つからないとすれば、それは不合理な待遇差の存在が疑われます。

不合理な待遇差を禁止する「パートタイム・有期雇用労働法」の施行までは、まだ1年近くありますが、今から不合理な実態の解消を進めておく必要があります。

 

2019.04.16.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

複雑な案件や専門性の高い業務には、30名を擁する働き方改革研究会の選抜チームで対応しております。

<所定労働日数についての勘違い>

「所定」は「定まる所」つまり「決めたこと」「決まっていること」ですから、所定労働日数というのは就業規則や労働契約で決められている労働日数です。

月給制の人について、1か月の所定労働日数がある場合、これを下回ったら欠勤控除が必要で、これを上回ったら休日出勤手当が必要だという勘違いが起こりやすいようです。

 

<所定労働日数の意味>

所定労働日数は、月給の時間単価を計算するのに必要です。

月給を月間所定労働時間で割って時間給を計算し、時間外労働1時間当たりの賃金を、時間給 × 1.25などとして計算します。

この場合、月間所定労働時間 = 1日の所定労働時間 × 月間所定労働日数で計算されるのが一般です。

 

<月間所定労働日数を決めるときの端数>

就業規則に従って、カレンダーで年間の休日数を数え365日から引いて年間の労働日数を確定します。

うるう年と平年でも違いますし、同じ平年でも日曜日と祝日の重なる回数などによって変動があります。

そして、月間所定労働日数 = 年間の労働日数 ÷ 12 の計算式によって、月間所定労働日数を決めることが多いと思います。

このとき、22.51日、23.16日など、端数が出るのが通常です。

こうした場合に、切り上げると月給の時間単価は安くなり、切り捨てると高くなります。今までの運用実績があるのなら、切り上げると厳密には不利益変更となりますので、切り捨てるのが無難です。

月間所定労働日数に小数点以下の端数があっても、給与計算には困らないのですが、一般には整数で決められています。

 

<所定労働日数を決めなくても大丈夫か>

賃金が時間給の場合や、月給制でも労使協定を交わしてフレックスタイム制を使っていれば、賃金計算には困りません。

しかし、所定労働日数が決まっていないと、年次有給休暇の付与日数が決まりません。

 

労働基準法で、年次有給休暇の付与日数は次の【図表1】のとおりです。週所定労働日数が4日以上で、週所定労働時間が30時間以上の場合には、週所定労働日数が5日以上の欄が適用されます。

 

【図表1】

週所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年

6月

2年

6月

3年

6月

4年

6月

5年

6月

6年

6月以上

5日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日以上

5日未満

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日以上

4日未満

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日以上

3日未満

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日以上

2日未満

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

これは法定の日数ですから、就業規則にこれと異なる規定があれば、労働者に有利である限りそれに従います。

【図表1】の中の週所定労働日数は、一般には「4日」「3日」などと表示されていますが、たとえば「4日」というのは「4日以上5日未満」という意味です。

月間所定労働日数さえ決まっていれば、週所定労働日数は次の計算式で求められます。

週所定労働日数 = 月間所定労働日数 × 12か月 ÷ 52週

こうして求められた週所定労働日数を、【図表1】に当てはめて年次有給休暇の日数を確定することができます。

 

会社によっては、所定労働日数を年間で決めている場合もあります。

この場合、次の【図表2】が用いられます。

 

【図表2】

年間所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年

6月

2年

6月

3年

6月

4年

6月

5年

6月

6年

6月以上

217日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

169~216日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

121~168日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

73~120日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

48~72日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

所定労働日数を半年間で決めているのなら2倍し、3か月間で決めているのなら4倍すれば良いのです。

 

結論として、所定労働日数が全く決まっていないとすると、年次有給休暇の日数が確定しません。

これでは、平成31(2019)年4月1日から、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うことになったのに、対応できないので困ったことになってしまいます。

やはり、明確に確定することが求められているのです。

 

2019.04.07.解決社労士

<所定労働日数についての勘違い>

「所定」は「定まる所」つまり「決めたこと」「決まっていること」ですから、所定労働日数というのは就業規則や労働契約で決められている労働日数です。

月給制の人について、1か月の所定労働日数がある場合、これを下回ったら欠勤控除が必要で、これを上回ったら休日出勤手当が必要だという勘違いが起こりやすいようです。

 

<所定労働日数の意味>

所定労働日数は、月給の時間単価を計算するのに必要です。

月給を月間所定労働時間で割って時間給を計算し、時間外労働1時間当たりの賃金を、時間給 × 1.25などとして計算します。

この場合、月間所定労働時間 = 1日の所定労働時間 × 月間所定労働日数 で計算されるのが一般です。

 

<所定労働日数を決めなくても大丈夫か>

賃金が時間給の場合や、月給制でも労使協定を交わしてフレックスタイム制を使っていれば、賃金計算には困りません。

しかし、所定労働日数が決まっていないと、年次有給休暇の付与日数が決まりません。

 

労働基準法で、年次有給休暇の付与日数は次の【図表1】のとおりです。週所定労働日数が4日以上で、週所定労働時間が30時間以上の場合には、週所定労働日数が5日以上の欄が適用されます。

 

【図表1】

週所定

労働日数

勤 続 期 間

6月

1年

6月

2年

6月

3年

6月

4年

6月

5年

6月

6年

6月以上

5日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日以上

5日未満

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日以上

4日未満

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日以上

3日未満

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日以上

2日未満

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

これは法定の日数ですから、就業規則にこれと異なる規定があれば、労働者に有利である限りそれに従います。

【図表1】の中の週所定労働日数は、一般には「4日」「3日」などと表示されていますが、たとえば「4日」というのは「4日以上5日未満」という意味です。

月間所定労働日数さえ決まっていれば、週所定労働日数は次の計算式で求められます。

週所定労働日数 = 月間所定労働日数 × 12か月 ÷ 52週

こうして求められた週所定労働日数を、【図表1】に当てはめて年次有給休暇の日数を確定することができます。

 

会社によっては、所定労働日数を年間で決めている場合もあります。

この場合、次の【図表2】が用いられます。

 

【図表2】

週あたり

労働日数

年間所定

労働日数

勤 続 期 間

6月

1年

6月

2年

6月

3年

6月

4年

6月

5年

6月

6年

6月以上

5日

217日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日

169日から

216日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日

121日から

168日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日

73日から

120日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日

48日から

72日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

所定労働日数を半年間で決めているのなら2倍し、3か月間で決めているのなら4倍すれば良いのです。

 

結論として、所定労働日数が全く決まっていないとすると、年次有給休暇の日数が確定しません。

これでは、平成31(2019)年4月1日から、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うことになったのに、対応できないので困ったことになってしまいます。

やはり、明確に確定することが求められているのです。

 

2019.04.06.解決社労士

<基本の残業制限>

会社は従業員に、1日実働8時間を超えて働かせてはなりません。また、日曜日から土曜日までの1週間で、実働40時間を超えて働かせてはなりません。〔労働基準法第32条〕

この制限に違反すると、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。〔労働基準法第119条〕

ですから、基本的にこの制限を超える残業は「違法残業」ということになります。

 

<従来からある違法残業>

しかし会社は、労働組合や労働者の過半数を代表する者と書面による協定を交わし、これを労働基準監督署長に届け出た場合には、協定の定めに従って1日8時間を超え、また週40時間を超えて従業員に働かせても罰せられないのです。

このことが、労働基準法第36条に規定されているため、ここで必要とされる協定のことを三六協定と呼んでいます。

三六協定についての適正な手続きを怠ることによって、発生しやすくなる違法残業には次のようなものがあります。

 

1.三六協定の届出をせずに行う残業

2.三六協定届に署名した労働者代表の選出手続きが不適切であった場合の残業

3.三六協定の有効期限が切れた後の残業

4.三六協定で定めた上限時間を超える残業

 

ここでいう「残業」は、すべて1日8時間、週40時間の法定労働時間を超えての残業を意味します。

上に示した違法残業のうち、1.~3.は形式的な不備によって発生します。

これが、従来型の違法残業の特徴です。

 

<新しい違法残業>

これまでは、三六協定の適正な届出をしていれば、労働基準監督署から行政指導を受けることはあっても、法律による上限が定められていなかったため、違法になることはありませんでした。

ところが、働き方改革の一環で労働基準法が改正され、平成31(2019)年4月1日からは残業時間の上限が設けられます。中小企業については、1年間の猶予が与えられ、令和2(2020)年4月1日からの適用となります。とはいえ、たった1年間の猶予ですから、今から急いで対応する必要があります。

 

【労働基準法による残業の上限】

原則 = 月45時間かつ年360時間(1日あたり約2時間)臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合であっても、

・年720時間以内

・休日労働の時間と合わせて複数月平均80時間以内

・休日労働の時間と合わせて月100時間未満

ただし、月45時間を超えられるのは年6回までという制限があります。

複数月平均80時間以内というのは、過去2か月、3か月、4か月、5か月、6か月のどの平均も80時間以内ということです。

 

このように、新型の違法残業は形式的な不備よりも、労働時間の管理を失敗することによって発生することが多くなります。

これが新型の違法残業の特徴です。

 

<適用猶予・除外の事業・業務>

実態を踏まえ、上限規制の適用が5年間猶予されるものとして、自動車運転の業務、建設事業、医師があります。これらは、すぐには長時間労働を解消できないと見られるため、5年間だけ猶予が与えられています。

また、新技術・新商品等の研究開発業務では、医師の面接指導、代替休暇の付与等の健康確保措置を設けた場合には、時間外労働の上限規制が適用されません。

 

2019.03.31.解決社労士

<就業規則の内容>

企業の就業規則には、次の3つの内容が織り込まれています。

 

・労働条件の共通部分

・職場の規律

・法令に定められた労働者の権利・義務

 

どの規定が3つのうちのどれにあてはまるのか、一見しただけではわかりません。また、一つの条文に複数の内容が含まれていることもあります。

 

<特定の従業員への手当支給>

たとえば、自由参加の社内行事でケガをした従業員が、公共の交通機関では通勤が困難で、家族が自家用車で送り迎えをするようになったとします。

このとき、会社が恩恵的に出勤1日につきいくらという手当を支給しても、就業規則には違反しません。

ただ、今後も時々発生しうることで、その会社の多数の従業員に共通する労働条件だと判断されるなら、就業規則に定めておくべきでしょう。

またたとえば、人事部門の従業員が社会保険労務士の資格をとって、業務に直接役立てている場合に、こうしたことがその会社にとって初めてのことであれば、就業規則にない資格手当を支給しても就業規則には違反しません。

もし、こうした資格手当の制度を新たに設けたのであれば、その会社にとって多数の従業員に共通する労働条件となりますから、就業規則に定めるべきこととなります。

 

<就業規則の権利保障機能>

就業規則に「従業員が結婚したときは、祝金3万円を支給する」と規定されているのに、特定の従業員だけ手続きをしても支給されないのは、就業規則違反となります。

これは、就業規則で定められた共通の労働条件のはずなのに、特定の従業員だけ対象外としているからです。

反対に、会社が特定の従業員に、就業規則には規定のないプラスアルファのことをしても、その従業員に対しては、就業規則違反が問題とはなりません。

就業規則は、それぞれの従業員に対して、最低限の権利を保障する機能を果たしているわけです。

 

<同一労働同一賃金>

日本の「同一労働同一賃金」は、仕事ぶりや能力が適正に評価され、意欲をもって働けるよう、同じ企業内で正規雇用労働者(正社員、無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。

たとえば、就業規則に通勤手当の規定が無い会社で、正社員だけに通勤手当が支給されている場合には、同一労働同一賃金に反する可能性が高いといえます。

なぜなら、通勤手当は通勤にかかる費用をまかなうのが目的ですから、正社員とその他の従業員とでその必要性に差が無いからです。

それにもかかわらず、正社員だけに支給するのは、不平等であり不合理なわけです。

これに対して、正社員だけに転居を伴う人事異動があり、転居による住宅費の負担を考慮して、正社員だけに住宅手当を支給するのは、公平であり合理的であって同一労働同一賃金の考え方に反していないことになります。

この場合、住宅手当が就業規則に規定されていないのであれば、正社員のみに支給されていることではなく、正社員の労働条件の共通部分であるにもかかわらず、就業規則に定めて所轄の労働基準監督署長に届出をしていないことが労働基準法違反となります。

 

<同じ雇用形態でも>

同一労働同一賃金は、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の待遇の公平・平等についての考え方です。

しかし、正規雇用労働者同士、非正規雇用労働者同士でも、一部の従業員だけに手当を支給すること、あるいは金額の異なる手当を支給することが、不公平・不平等となることもあります。

現に支給されている手当については、その手当支給の目的を再確認し、その目的に照らして不公平・不平等が発生していないかを確認し改善することが必要です。

この場合、不公平感・不平等感の有無について、従業員に聞き取り調査を行うことで、改善の方向性が見えてくると思います。

 

2019.03.29.解決社労士

<九州での導入>

国や地方自治体が進める公共工事の週休2日制が、平成31(2019)年度から九州全県で導入されることになりました。

導入が遅れていた福岡県で2月から、佐賀県で3月から導入されていて、熊本県でも4月から導入される予定です。

熊本県では、熊本地震からの復旧復興が優先されてきましたが、将来の担い手確保のためにも週休2日制の必要性が認識されたようです。

 

<工期長期化への対応>

国土交通省によれば、熊本県での試行が始まれば、全都道府県で週休2日工事が導入されることになります。

九州各県では、休日の増加で工期が長くなり、企業にとって現場事務所代などの経費増となることになります。

これに配慮し、4週間で6日以上の休日を確保して工事を終えた企業に対し、工事費の数%の増額補正などを行うそうです。

 

<建設業の特質>

悪天候の中では作業を進められないなどの理由から、休日を少なめに設定して工事の計画を立てることが常態化しています。

しかも、建設業の許認可の対象となる業種の大まかな分類でも、次の29種類があり、どれか1つの工程が滞ると、他の工程も遅れるという関係にあります。

 

1. 土木一式工事業

2. 建築一式工事業

3. 大工工事業

4. 左官工事業

5. とび・土工工事業

6. 石工事業

7. 屋根工事業

8. 電気工事業

9. 管工事業

10. タイル・レンガ工事業

11. 鋼構造物工事業

12. 鉄筋工事業

13. 舗装工事業

14. しゅんせつ工事業

15. 板金工事業

16. ガラス工事業

17. 塗装工事業

18. 防水工事業

19. 内装仕上工事業

20. 機械器具設置工事業

21. 熱絶縁工事業

22. 電気通信工事業

23. 造園工事業

24. さく井工事業

25. 建具工事業

26. 水道施設工事業

27. 消防施設工事業

28. 清掃施設工事業

29. 解体工事業 (平成28年6月1日新設)

 

こうしたことなどから、建設業の労働時間は全産業平均に比べて年間300時間以上長く、重大な労災事故も発生しやすく、人手不足も特に深刻化しています。

 

<建設業の働き方改革>

時間外労働時間の上限規制は、建設業の場合には5年間猶予されます。

だからといって、これから5年近くの間、長時間労働を放置してはなりません。

このことについては、働き方改革の推進を指導している厚生労働省も注意を呼びかけています。

建設業では、この5年間の猶予期間中に、労働時間削減の手を尽くさなければ、5年後に工事を受注できなくなる事態も予想されます。

将来を見据えての働き方改革には、真剣に取り組んでいただきたいものです。

 

2019.03.19.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

大きな案件や専門性の高い業務には、30名を擁する働き方改革研究会の選抜チームで対応しております。

<残業時間の上限の法的規制>

所轄の労働基準監督署長に三六協定届さえ提出しておけば、あまり制限がなされていなかった時間外労働ですが、働き方改革関連法の施行によって上限が設定されます。

時間外労働時間の上限は、1か月では45時間、1年では360時間となっています。

また、三六協定に特別条項がある場合でも、上限が定められることになり、1か月では100時間、1年では720時間となります。

もっとも、上限規制が適用されない業種もあります。

自社についてはどうなのか、働き方改革関連法が施行される前にご確認ください。

 

<働き方改革関連法施行後の基準>

「特別条項」適用の有無にかかわらず、法定労働時間の上限が定められます。

適用されるのは大企業の場合は2019年4月から、中小企業の場合は2020年4月からです。

特別条項なしの場合、1か月では45時間、1年では360時間という基準が、法律で定められて法的拘束力を持つようになります。

さらに、この上限を超える労働をさせた使用者には、罰則を科すことで強制力を持たせます。

特別条項ありの場合、労使協定に特別条項がある場合にも適用される上限が法律で定められます。

時間外労働時間の限度は、1年では720時間、1か月では100時間となります。

ただし、1か月45時間を超えることができるのは、1年間に6か月までとなります。

これらの条件に加えて、次の条件を守ることが定められます。

過去2か月、3か月、4か月、5か月、6か月で平均した法定労働時間が、休日労働の時間を含め80時間以内であること。それぞれの月に、1か月で休日労働の時間を含め100 時間未満であること。

改正前の法律では、休日労働を含まずに計算していました。

改正後は、休日労働の時間を含めて計算します。

ただし、特別条項にあてはまらない労働時間の計算を行う場合には、休日労働の時間はこれまで通り含みません。

 

<上限規制の適用されない業種>

次の業務については、法改正後も当面の間、上限規制が適用されません。

新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務工作物の建設等の事業

自動車の運転業務

医師

厚生労働省の定める業務

 

2019.03.11.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

複雑な案件や専門性の高い業務は、30名を擁する働き方改革研究会の選抜チームでご依頼を受けております。

<よくある誤解>

フレックスタイム制は、一定の期間についてあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、労働者が日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることのできる制度です。

この意味が誤解されていると思います。

従業員の一人ひとりが、「気が向いた時に出勤して、帰りたくなったら帰る」のであれば、仕事が回らなくなります。

こんな制度を、労働基準法が定めるはずがありません。

 

<フレックスタイム制の公式説明>

フレックスタイム制については、厚生労働省が次のように説明しています。

 

フレックスタイム制のもとでは、あらかじめ働く時間の総量(総労働時間)を決めた上で、日々の出退勤時刻や働く長さを労働者が自由に決定することができます。

 

フレックスタイム制を導入するためには、就業規則その他これに準ずるものにより、始業及び終業の時刻を労働者の決定に委ねる旨を定める必要があります。

 

この一方で、次のような説明もあります。

 

フレックスタイム制は始業・終業時刻の決定を労働者に委ねる制度ですが、使用者が労働時間の管理をしなくてもよいわけではありません。 実労働時間を把握して、適切な労働時間管理や賃金清算を行う必要があります。

 

<労働者という言葉の意味>

まず「使用者」の意味ですが、これについては労働基準法第10条に規定があります。

 

この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。

 

「すべての者をいう」ですから、社長1人ではありません。

この条文の「事業主」とは、個人事業なら事業主ですし、会社なら会社そのものです。「事業の経営担当者」とは、代表者、取締役、理事などです。

「その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者」の中に、人事部長や労務課長などが含まれることも明らかです。

 

一方で、「労働者」というのも、労働者一人ひとりを指しているのではなく、使用者に対置される意味での労働者です。つまり、社内の労働者全体であり、「労働者たち」という意味です。

 

この理解のもとで、ここまでに出てきた話の中の「労働者」を「労働者たち」に言い換えると、次のようになります。

 

フレックスタイム制は、一定の期間についてあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、労働者たちが日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることのできる制度です。

 

フレックスタイム制のもとでは、あらかじめ働く時間の総量(総労働時間)を決めた上で、日々の出退勤時刻や働く長さを労働者たちが自由に決定することができます。

 

フレックスタイム制を導入するためには、就業規則その他これに準ずるものにより、始業及び終業の時刻を労働者たちの決定に委ねる旨を定める必要があります。

 

「労働者」と「労働者たち」とで何が違うかというと、「労働者」ならば一人ひとりの自由な考えということになるのに対して、「労働者たち」ということになると、「労働者」がお互いに話し合って決めるということになります。

つまり、仕事の効率を考え、仕事に支障が出ないように、協議のうえ日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めるということです。

 

<働き方改革の面で>

使用者は、労働者一人ひとりに対して、出勤日や始業・終業時刻を指定することができません。しかし、当然のことですが、仕事の指示を出すことはできます。

労働者側は、使用者側から指示された仕事を効率よく成し遂げるために、労働者同士で協議して出勤日や始業・終業時刻を決めることになります。

こう考えると、フレックスタイム制は、仕事の効率が向上する制度であることがわかります。

 

働き方改革は、労働者の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現することで、成長と分配の好循環を構築し、働く人一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指しています。

フレックスタイム制も、働き方改革の趣旨に適合した制度ですから、今回の法改正では、労働時間の調整を行うことのできる期間が延長されました。これによってより柔軟な働き方の選択が可能となったわけです。

 

2019.03.09.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

大きな案件や専門性の高い業務は、30名を擁する働き方改革研究会の選抜チームでご依頼を受けております。

2019年2月26日、日本政策金融公庫総合研究所が「中小企業の雇用・賃金に関する調査」結果を発表しました。

これは、2018年10-12月期の特別調査の結果です。

以下、枠内は、この調査結果をそのまま引用しています。

 

【正社員の過不足感】

・2018年12月において、正社員が「不足」と回答した企業割合は、全業種計で60.8%となり、前年(58.0%)から2.8ポイント上昇した。「適正」は34.5%、「過剰」は4.7%となった。業種別にみると、運送業、建設業、情報通信業などで「不足」と回答した割合が高くなっている。

 

「正社員」というのは、法律用語ではありませんから法令には定義がありません。

各企業が独自の定義を定めていたり、あいまいにされていたり、定義が無かったりというのが実態です。

ですから、この調査の中の「正社員」には様々な雇用形態が含まれています。

「限定正社員」「多様な正社員」と呼ばれる人たちも含まれるでしょう。

とはいえ典型的なのは、フルタイム勤務で人事異動を受け入れ簡単には辞めない社員というイメージでしょうか。会社にとって都合よく働いてくれる人材です。

こうした人材が不足している場合に、社外から調達するよりは、社内で育てた方が安上がりで安全です。会社のニーズに合った育て方もできます。

非正規社員を育てて正社員に転換する動きは、働き方改革の推進というだけでなく、企業にとって合理的な行動なのです。

 

【正社員の増減】

・2018年12月に正社員数を前年から「増加」させた企業割合は32.1%、「減少」させた企業割合は19.5%となった。前年と比べると、「増加」は1.3ポイント上昇、「減少」は0.8ポイント上昇した。業種別にみると、情報通信業、運送業、製造業などで「増加」と回答した割合が高くなっている。

 

全体で正社員が増加していることになります。

社会全体で「正社員」が増加しなければ、「増加」させた企業割合が「減少」させた企業割合を大きく上回ることはありません。

やはり、非正規社員を育てて正社員に転換する動きが盛んなのでしょう。

 

【正社員の昇給】

・2018年12月に正社員の給与水準を前年から「上昇」させた企業割合は、57.4%となり、前年(54.5%)から2.9ポイント上昇した。賃上げ企業割合は、2年連続で上昇となった。上昇の背景をみると、「自社の業績が改善」(36.2%)の割合が最も高く、次いで「採用が困難」(25.4%)となっている。2019年についても51.8%の企業が「上昇」すると回答している。

 

大手企業を中心に推進されている働き方改革の本質は、必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革に関する現在までの動向をもとに考えると、その本質は「働き手の不安を解消し満足度を高めるための多面的な施策により、労働生産性( 付加価値額 / 実労働時間 )を向上させる変革」といえるでしょう。

それぞれの企業にとっては、「働き方の効率と社員の向上心を高めて、企業の利益を伸ばす改革」ともいえます。

長期的に見れば企業の安定と成長を促す施策ばかりですが、目先にとらわれると企業の負担が強く意識されますので、関係法律の整備により政府が推進する形がとられています。

中小企業であっても、従業員の希望を少し叶えて、会社の利益を伸ばす作戦であることを納得し、積極的に働き方改革に取り組まなければなりません。

 

さて、「採用が困難」で昇給した場合には、一時的かもしれませんが企業の業績が悪化する恐れがあります。

やはり「自社の業績が改善」されたので、社員への還元として昇給を実施するというのが、望ましい形です。

やり方としては、会社の業績の推移を社員に説明し、生産性が上がってきたので昇給するのだということを念押ししておくのが良いでしょう。この説明をきちんとしておけば、社員はさらに発奮するでしょうし、危機感を失いません。

 

場合によっては、生産性の向上に期待して前倒しで昇給するという方法もあります。

たとえば、残業時間を減らしてもらう代わりに、基本給を上げて、収入が減らないようにするやり方です。

このとき、残業の減らない社員については、賞与支給の人事考課で低い評価が与えられ、賞与支給額が低額になることで調整されるでしょう。

 

2019.03.08.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

大きな案件や専門性の高い業務は、30名を擁する働き方改革研究会の選抜チームでご依頼を受けております。

<セブンイレブンの動き>

コンビニエンスストアの最大手セブンイレブン・ジャパンが、長年続いた24時間営業の見直しを検討しています。

人手不足で店員の確保が難しいなどを理由に、営業時間の短縮を希望するオーナーが増加していることなどに配慮してのことです。

 

<かつての営業時間>

その昔、セブンイレブンの営業時間は午前7時から午後11時までが基本で、まさにセブンイレブンでした。

しかし、実験的に一部の店舗を24時間営業にしたところ、昼間の売り上げも増えたなどの理由で、24時間営業が標準になっていきました。

 

<他のコンビニでは>

2007年にはローソンが、試験的に一部店舗で営業時間の短縮を行ったところ、昼間も含めて売り上げが減り、その店舗のオーナーから24時間営業へ戻すよう要望が出たそうです。

2017年には、ファミリーマートでも24時間営業の見直しが検討されました。

しかし、どちらの店舗も24時間営業が続いています。

 

<働き方改革の流れ>

現在では、働き方改革が推進されていて、2019年4月からは働き方改革関連法が施行されます。

たしかに、働き方改革の本質は必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革に関する現在までの動向をもとに考えると、その本質は「働き手の不安を解消し満足度を高めるための多面的な施策により、労働生産性( 付加価値額 / 実労働時間 )を向上させる変革」といえます。

それぞれの企業にとっては、「働き方の効率と社員の向上心を高めて、企業の利益を伸ばす改革」ともいえます。

長期的に見れば企業の安定と成長を促す施策ばかりですが、目先にとらわれると企業の負担が強く意識されますので、関係法律の整備により政府が推進する形がとられています。

中小企業であっても、従業員の希望を少し叶えて、会社の利益を伸ばす作戦であることを納得し、積極的に働き方改革に取り組まなければなりません。

 

<ロイヤルホストの取組み>

深夜時間帯の仕事については、求人広告を出しても応募者が少ないのが現状です。

こうした中で、ロイヤルホストは2017年から24時間営業をやめて、客単価の増加に成功し、生産性が向上したそうです。

店員が少ないレストランでは、何かとお客様が待たされることになり、どうしてもサービスが低下してしまいます。十分なサービスが提供できない時間帯の営業を、思い切ってやめた方が、お店の評判も向上することでしょう。

ただ、ロイヤルホストの場合は、24時間営業をやめるとともに商品の品質を高める作戦で、高品質なパスタやステーキの提供を同時に開始しています。

 

<予想される展開>

今後は、一部の店舗で実験的に営業時間の変更をかけてみて、上手くいけば他店でも同様にするという動きが盛んになりそうです。

しかし、働き方改革は、働く人たちが、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で選択できるようにするための改革でもあります。深夜時間帯に働きたい、早朝でなければ働けないという人々がいる以上、このニーズを満たすため、深夜営業や24時間営業なども残しておく必要があるわけです。

ですから、過重労働につながるという短絡的な判断で、24時間営業が消えることはないでしょう。

 

2019.03.04.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

大きな案件や専門性の高い業務は、30名を擁する働き方改革研究会の選抜チームでご依頼を受けております。

<休日>

労働基準法には、休日について次の規定があります。

 

第三十五条 使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも一回の休日を与えなければならない。

○2 前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。

 

つまり、日曜日から土曜日までの1週間で1日の休日を与えるか、4週間ごとに4日の休日を与えればよいということになります。

正社員、パート、アルバイトなどの区分にかかわらず、週6日勤務は違法ではありません。

 

<労働時間>

一方で、労働基準法には、労働時間について次の規定があります。

 

第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。

○2 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

 

つまり、労働時間には上限があって、日曜日から土曜日までの1週間で40時間、1日について8時間が限界ということになります。

 

労働時間とは、「労働者が実際に労働に従事している時間だけでなく、労働者の行為が何らかの形で使用者の指揮命令下に置かれているものと評価される時間」と定義されます。

これは、会社ごとに就業規則で決まったり、個人ごとに労働契約で決まったりするのではなく、客観的に決められている定義です。

 

週6日勤務の場合でも、1日6時間の勤務であれば、週36時間の勤務になりますから適法です。1日6時間40分であれば、6日間でちょうど40時間です。

また、週のうち5日は7時間勤務、1日は5時間勤務とすれば、週40時間の勤務になりますから、これも適法ということになります。

 

<特例事業場の例外>

事業場の規模が10人未満の、次の業種は、1週 44 時間、1日 8 時間となります。〔労働基準法第40条〕

この事業場を「特例事業場」といいます。

 

【特例事業場】

商業(卸小売業、理美容業など)

映画演劇業(映画の製作の事業を除く)

保健衛生業(診療所、歯科医院、社会福祉施設など)

接客娯楽業(旅館、飲食店など)

 

<職種による例外>

次の職種は、労働時間のほか、休憩、休日に関する労働基準法の規定は適用されません。

 

農業、畜産業、水産業従事者

管理監督者(イメージとしては取締役に近い仕事をしています)

機密の事務を取り扱う者(秘書など)

監視断続的労働、宿日直勤務を行う者で、労働基準監督署長の許可を受けた者

 

<三六(さぶろく)協定による例外>

労使の合意に基づく手続きによって、週40(44)時間を超える勤務を可能にしたり、例外的に週7日勤務する場合があるという取り決めをしたりすることができます。

労働基準法第36条第1項に規定があるので、三六協定と呼ばれます。

 

【労働基準法第36条第1項】

第三十六条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この項において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによって労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。ただし、坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務の労働時間の延長は、一日について二時間を超えてはならない。

 

この法定の手続きを取らずに残業させると、「違法残業」となります。

三六協定には最長でも1年間の有効期限があります。

期限切れの状態で残業が発生しても「違法残業」です。

もちろん、三六協定の上限を超える残業も違法です。

 

<年次有給休暇>

年次有給休暇の付与日数は、1週間の所定労働日数、1週間の所定労働時間、勤続年数によって決まります。

これを示す表には、週6日の欄が書かれていないこともありますが、週6日勤務の労働者には、週5日の欄が適用されます。

 

<就業規則にも注意>

パートやアルバイトに適用される就業規則に、「週5日までの勤務」という規定がある場合には、これによる制限を受けますから週6日勤務はできません。

会社として必要ならば、法定の手続きを経て、就業規則を変更する必要があります。

 

<働き方改革との関係>

働き方改革の本質は、必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革に関する現在までの動向をもとに考えると、その本質は「働き手の不安を解消し満足度を高めるための多面的な施策により、労働生産性( 付加価値額 / 実労働時間 )を向上させる変革」といえるでしょう。

それぞれの企業にとっては、「働き方の効率と社員の向上心を高めて、企業の利益を伸ばす改革」ともいえます。

中小企業であっても、従業員の希望を少し叶えて、会社の利益を伸ばす作戦であることを納得し、積極的に働き方改革に取り組まなければなりません。

 

会社からの強制で週6日勤務にすることは、働き方改革とは逆の方向に進むことになります。

しかし、労働者側の都合で週6日勤務を希望し、会社がこれを認める形ならば働き方改革の推進になります。

子育て中で朝遅めの出勤、夕方早めの退勤の方が、都合が良いという人もいます。

家が近くて出勤が苦にならないとか、満員電車を避けて通勤したいとか、1日の勤務時間が短いパート・アルバイトなので勤務日数を増やしたいとか、様々なニーズに応えるのは働き方改革の流れに沿ったものとなります。

 

2019.03.03.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

大きな案件や専門性の高い業務は、30名を擁する働き方改革研究会の選抜チームでご依頼を受けております。

働き方改革関連法により、1か月の時間外労働についての基準やチェックポイントが複雑になります。

基本的なものを、以下にまとめましたので参考にしてください。

 

<45時間>(1年単位の変形労働時間制では42時間)

□三六協定の「臨時的に限度時間を超えて労働させることができる場合」に該当しない時間外労働をしそうな社員はいないか。

□三六協定の「臨時的に限度時間を超えて労働させることができる月数」を超えて時間外労働をしそうな社員はいないか。

□三六協定に定めた健康確保措置の必要は発生しそうか。

 

<60時間>

□60時間以上の時間外労働に5割以上の割増賃金を支払っているか(中小企業は2023年4月から)。

 

<80時間>

□時間外労働と休日労働の時間を合計して、過去2か月、3か月、4か月、5か月、6か月それぞれの平均が80時間を超えそうな社員はいないか。

□時間外労働が80時間を超えた場合に、その社員と産業医に速やかに知らせているか。

 

<100時間>

□時間外労働と休日労働の時間を合計して100時間を超えそうな社員はいないか。

 

人事部門ではなく、現場でチェックしないと間に合わない項目もあります。

罰則の適用対象とならないように、現場に周知徹底することが必要です。

 

2019.03.02.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

大きな案件や専門性の高い業務は、30名を擁する働き方改革研究会の選抜チームで受任しております。

<ポイント還元を巡る問題>

2019年2月26日、公正取引委員会が、ネット通販大手のアマゾンジャパンを調査する方針を固めたそうです。

アマゾンジャパンでは、5月23日に1%ポイント還元を導入する予定ですが、これはポイント還元の費用を出品者の負担とするものです。

アマゾンジャパンが、出品者に対する優越的地位を濫用して、出品者との契約を一方的に変更するのであれば、独占禁止法に触れる可能性があります。

出品者の負担で、アマゾンジャパンが利益を得るというのは、弱い者いじめになるのではないかということです。

もちろん、アマゾンジャパンが自分の負担でポイント還元を行うのであれば、こうした問題は発生しません。

 

<残業削減を巡る問題>

働き方改革の一環で、残業削減が進んでいます。

会社が一方的に、全社員に命じて残業時間を減らさせた場合には、残業手当も減ります。

これで業務の停滞が無く、売上が低下しないのであれば、会社の社員に対する優越的地位を濫用して、社員の負担で会社が利益を得る形になります。

アマゾンジャパンの出品者であれば、商品の価格をわずかに上げて対応できるのかもしれません。

しかし、社員は自分の基本給を少し上げて対応することなどできません。

 

<働き方改革の本質>

そもそも働き方改革とは何なのか、必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革に関する現在までの動向をもとに考えると、その本質は「働き手の不安を解消し満足度を高めるための多面的な施策により、労働生産性( 付加価値額 / 実労働時間 )を向上させる変革」といえるでしょう。

それぞれの企業にとっては、「働き方の効率と社員の向上心を高めて、企業の利益を伸ばす改革」ともいえます。

長期的に見れば企業の安定と成長を促す施策ばかりですが、目先にとらわれると企業の負担が強く意識されますので、関係法律の整備により政府が推進する形がとられています。

中小企業であっても、従業員の希望を少し叶えて、会社の利益を伸ばす作戦であることを納得し、積極的に働き方改革に取り組まなければなりません。

 

<現実的な対応>

社員が逃げ出さないようにするための現実的な対応としては、次のようなものがあります。

 

・残業削減の指示とともに基本給を一律増額する。

・残業代が削減された実績を踏まえて賞与に生産性向上手当を上乗せする。

 

こうしたことは、中小企業でも現に行われています。

働き方改革が進まない会社から、働き方改革が正しく進んでいる会社へと、労働者の移動が盛んになっているように思われます。

実際、働き方改革が正しく進んでいる会社では、「人手不足」という言葉がピンと来ません。

求人広告を出せば、すぐに多くの応募者が連絡してきます。

すでに「人手不足」が発生している会社では、働き方改革への取組みを急いだほうが良いと思います。

 

2019.03.01.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

大きな案件や専門性の高い業務は、30名を擁する働き方改革研究会の選抜チームで受任しております。

<働き方改革>

働き方改革の定義は、必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革に関する現在までの動向をもとに考えると、その本質は「働き手の不安を解消し満足度を高めるための多面的な施策により、労働生産性( 付加価値額 / 実労働時間 )を向上させる変革」といえるでしょう。

それぞれの企業にとっては、「働き方の効率と社員の向上心を高めて、企業の利益を伸ばす改革」ともいえます。

長期的に見れば企業の安定と成長を促す施策ばかりですが、目先にとらわれると企業の負担が強く意識されますので、関係法律の整備により政府が推進する形がとられています。

中小企業であっても、従業員の希望を少し叶えて、会社の利益を伸ばす作戦であることを納得し、積極的に働き方改革に取り組まなければなりません。

 

<主体的な取り組み>

法改正によって義務付けられ、追われるように働き方改革に取り組むというのでは、主体性に欠けます。

これでは、長期的に見て会社の利益や生産性を向上させる働き方改革が思うように進みません。

働き方改革には、法令に規定されていなくても、企業の個性に応じて取り組めることが数多くあります。

ここでは、「偏りの解消」がキーワードとなる取り組みについて、いくつかご紹介させていただきます。

 

<年次有給休暇取得率の偏り解消>

年次有給休暇の取得率については、同じ部署の社員間でもバラツキがあるものです。

特に取得率の低い社員に着目して、本人や周囲の人から聞き取りを行い、原因を明らかにして偏りを解消しましょう。

本人の信念によるものであれば、頭を切り替えてもらいます。

周囲から仕事を押し付けられているのなら、役割分担を見直します。

効率の悪いやり方で業務をこなしている部分があれば、その業務が得意な社員の指導によって自己流を解消してもらいます。

これは、残業が特定の社員に偏っている場合にも当てはまります。

 

<評価基準の偏り解消>

賞与や昇給の査定では、会社に対する貢献度が高い、技能が優れているなどの理由で、高く評価される社員と、そうではないために低く評価される社員がいます。

そして評価の低い社員は、今後の昇給や昇進を期待できなくなり、意欲的に働けなくなることがあります。このような社員が多ければ、会社全体の生産性も低下してしまいます。

標準考課以下の社員の比率が高いのであれば、すぐにでも評価基準の見直しが必要です。

また、市場動向や取引環境、消費者のニーズなどは、絶えず変化していますから、評価基準も3年に1回は見直しが必要なはずです。

見直しの際には、社員からの聞き取り調査を行ってはいかがでしょうか。

「あなたは、会社にどこを評価して欲しいですか」という質問をぶつけます。

この投げかけだけでも、社員の意識が変わってくることでしょう。

また、人事考課基準で評価されない項目で会社に貢献し、能力を発揮した社員については、表彰制度の活用をお勧めします。表彰の対象者だけでなく、他の社員のモチベーションが上がるように運用するのがポイントです。

 

<経験や知識の偏り解消>

「この仕事は○○さんじゃないとできない」と言われることがあります。

「この仕事」のボリュームが大きくなれば、「○○さん」は長時間労働に陥ります。また、突発的に「この仕事」が発生すれば、「○○さん」は年次有給休暇の取得を取り消す場合もあるでしょう。

たしかに、芸術家が作品を制作する場合には、個性が求められます。

しかし、会社の中で個性が要求される仕事は、それほど多くはありません。

ですから経験や知識を共有し、業務を標準化・平準化することによって、「○○さん」の他に「この仕事」をこなせる社員を増やせば良いのです。

資格が無いとできない仕事もあります。この場合にも、多くの社員に資格を取得させる施策を行えば対応できます。

頼りになる「○○さん」も、永久に会社にいるわけではありません。いなくなる時のことを考えて早めに手を打ちましょう。

 

<働き方改革で得られる利益の偏り解消>

働き方改革は、長期的には会社に利益をもたらします。

しかし、たとえば残業時間を削減して残業代が減れば、会社の利益が増えて、社員の収入が減るといった事態も想定されます。

これでは、社員が働き方改革を推進する気にはなれません。

残業代が減って、売上が減らないのであれば、生産性が向上したわけですから、社員に「業務効率化手当」を支給するなどして、利益の偏りを解消する必要があります。

全社員一律ではなく、残業時間の削減が著しかった部署には、より多額の手当を支給してはいかがでしょうか。

 

2019.02.20.解決社労士

<正社員への転換>

短時間・有期雇用労働者として働き始めると、なかなか正社員にはなれないという実態があり、正社員として働くことを希望していても、そのチャンスに恵まれず、やむを得ず短時間・有期雇用労働者として働いている人もいます。

このような状況は、労働者個人の働く意欲の維持、キャリア形成の観点からも問題ですし、会社にとっても社会にとっても損失となっていると考えられます。

しかし、短時間・有期雇用労働者の正社員への転換について、具体的にどうすべきなのかは、必ずしも明確ではありませんでした。

これを明確にするため、2020年4月1日に施行される改正「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」に先立ち、2019年1月30日に詳細な通達が出されています。

ここでは、この通達に沿って、正社員への転換について確認したいと思います。

 

<事業主の義務>

この法律の第13条は、正社員(通常の労働者)への転換を推進する措置を事業主に義務付けています。

これは、同じ職場で正社員に転換することを前提としていて、子会社など別の職場に移るとともに正社員に転換するようなケースを想定していません。〔法第3条第1項〕

ただし、短時間・有期雇用労働者の正社員としてのキャリア形成を支援する等の観点から、他の職場で正社員への転換を推進する措置を併せて実施することは望ましいとされています。

また、例えば、短時間労働者から有期雇用フルタイム労働者への転換制度を設け、さらに有期雇用労働者には正社員への転換制度が設けられているような、複数の措置の組み合わせにより正社員への転換の道が確保されている場合も本条の義務の履行と考えられます。

さらに、勤務地、職務内容、勤務時間などが限定され、ライフスタイル等に応じた働き方が可能な「多様な正社員」への転換を推進するのも、本条の義務の履行と考えられます。

 

<具体的な措置>

具体的には次のような措置を講ずることが求められています。

 

【求められる措置】

イ 正社員の募集を行う場合に、業務の内容、賃金、労働時間その他の事項を、採用を予定している職場の短時間・有期雇用労働者に周知すること。

ロ 正社員の配置を新たに行う場合に、その職場の短時間・有期雇用労働者にも、その配置の希望を申し出る機会を与えること。

ハ 正社員への転換のための試験制度を設けること。

ニ この他、正社員として必要な能力を取得するための教育訓練を受ける機会を確保するための必要な援助を行う等、通常の労働者への転換を推進するための措置を講ずること。

 

イは、正社員を募集しようとするときに、企業外からの募集と併せて、その雇用する短時間・有期雇用労働者に対しても募集情報を周知することにより、正社員への応募の機会を付与するものです。もちろん、最終的に採用するかどうかは、公正な採用選考である限り事業主の判断に委ねられます。

また、他の企業で実績を有する者等をヘッドハンティングする場合など、個人的資質に着目して特定の個人を正社員として採用するような場合には、この措置の対象外となります。

ロは、企業外に正社員の募集を出す前に、企業内の短時間・有期雇用労働者に配置の希望を申し出る機会を与えるものです。つまり、優先的な応募機会の付与をいいます。「社内公募」制度のようなものも、これに該当します。もちろん、優先的な採用まで義務付けるものではありません。

ハは、短時間・有期雇用労働者を対象として、正社員への転換のための試験制度を事業所内に設けるものです。一定以上の勤続年数や、その職務に必要な特定の資格の保有を条件とすることも可能です。しかし、対象者がほとんど存在しないような厳しい条件を設定するのは、ハの措置を取ったとはいえません。

ニの「必要な援助」としては、自ら教育訓練プログラムを提供することのほか、他で提供される教育訓練プログラムの費用の経済的な援助や、参加するための時間的な配慮を行うことなどが考えられます。

 

<義務の履行にはならない措置>

この法律で事業主に義務付けられている措置は、制度として行われるものであることが求められています。

従って、次のような措置では義務の履行にはなりません。

 

【不適切な措置】

・合理的な理由なく、事業主の恣意により正社員の募集情報を周知するときとしないときがあるような場合。

・転換制度を規程にするなど客観的な制度とはせずに、事業主の気に入った人物を正社員に転換するような場合。

 

なお、長期間にわたって正社員に転換された実績がない場合には、転換を推進するための措置を講じたとはいえない可能性があり、周知のみで応募はしにくい環境になっているなど、措置が形骸化していないかを検証しなければなりません。

 

2019.02.18.解決社労士

<待遇の相違の合理性>

短時間・有期雇用労働者について、正社員など通常の労働者と全く同じ、または一部同じであっても、所定労働時間が短いから、あるいは期間の定めがある労働契約を締結しているからというだけで、待遇が低く抑えられているのは不合理です。

そして、待遇の相違の合理性を判断する際の考慮要素として、「職務の内容」、「職務の内容及び配置の変更の範囲(有無を含む。)」、「その他の事情」が法定されています。

しかし、具体的なケースについて、「職務の内容及び配置の変更の範囲」の同一性をどのように判断すべきか、必ずしも明確ではありませんでした。

これを明確にするため、2020年4月1日に施行される改正「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」に先立ち、2019年1月30日に詳細な通達が出されています。

ここでは、この通達に沿って、どのような場合に「職務の内容及び配置の変更の範囲」が違うといえるのか、その判断基準について確認したいと思います。

 

<「職務の内容及び配置の変更の範囲」を考慮する理由>

現在の我が国の雇用システムでは、長期的な人材育成を前提として人事制度が構築されていることが多いといえます。

このような人材活用の仕組み、運用等に応じて待遇の違いが生じることも合理的であると考えられます。

法は、このような実態を前提として、人材活用の仕組み、運用等を、均衡待遇を推進する上での考慮要素または適用要件の一つとして位置付けています。

 

<「職務の内容及び配置の変更」の意味>

「職務の内容の変更」には、「配置の変更」によるものと、上司等からの業務命令によるものがあります。

また、「配置の変更」とは、人事異動等によるポスト間の移動を指し、結果として職務の内容の変更を伴う場合もあれば、伴わない場合もあります。

こうして、「職務の内容の変更」と「配置の変更」は、重複して生じることがあります。

 

<「職務の内容及び配置の変更の範囲」の意味>

これらの変更の「範囲」とは、変更により経験する職務の内容や配置の広がりを指すものです。

そして、「範囲」の同一性を判断するにあたっては、一つ一つの職務の内容や配置の変更の態様が同様であることまでは求めません。

例えば、一部の部門に限って人事異動の可能性がある人と、全部門にわたって人事異動の可能性がある人とでは、「配置の変更の範囲」が異なることになるので、「職務の内容及び配置の変更の範囲」(人材活用の仕組み、運用等)が同一であるとはいえません。

ただし、これまで転勤等がなかったという人でも、例えば、同じ職務に従事している他の短時間・有期雇用労働者の集団には転勤等があるといった「可能性」についての実態を考慮して判断することになります。

 

<「職務の内容及び配置の変更の範囲」の同一性判断の手順>

「職務の内容」が同一であると判断された、正社員など通常の労働者と、短時間・有期雇用労働者を対象として行うことになります。

まず、①短時間・有期雇用労働者について、「配置の変更」に関して、正社員など通常の労働者と転勤の有無が同じかどうかを比較します。

次に、②転勤が双方ともあると判断された場合には、全国転勤の可能性があるのか、エリア限定なのかといった転勤により移動が予定されている範囲を比較します。

さらに、③転勤が双方とも無い場合、または双方ともあってその範囲が「実質的に」同一であると判断された場合には、事業所内における職務の内容の変更の態様について比較します。

最後に、④ここまで同じであれば、職務の内容の変更により経験する可能性のある範囲も比較し、その異同を判断します。

上記①から④までのどの時点で異なっていても、「職務の内容及び配置が通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲内で変更されることが見込まれない」と判断することになります。

 

<説明資料として>

短時間・有期雇用労働者から「同一労働同一賃金に反するのではないか」という疑問を提示された場合には、人事異動の見込みが同一ではないことなどを会社が説明しなければなりません。

上記の判断手順に従って、「職務の内容及び配置の変更の範囲」の同一性を確認しておくことは、こうした場合の説明資料を準備しておくことにもなります。

 

2019.02.09.解決社労士

<均等待遇と均衡待遇>

均等待遇は、職務内容等が同じなので同じ待遇にするという意味で、平等の理念に基づきます。

平等の理念は、人々の共通する属性に着目して同じ扱いをすることにより、妥当な結論を導く考え方です。

また均衡待遇は、職務内容等の違いに応じて異なる待遇にするという意味で、公平の理念に基づきます。

公平の理念は、人々の異なった属性に着目して違った扱いをすることにより、妥当な結論を導く考え方です。

待遇の違いの大きさが、職務内容等の違いの大きさに比例して合理的に決定されること、つまりバランスが取れていることから、「均衡」待遇と呼ばれます。

働き方改革で、「同一労働同一賃金」が言われていますが、ガイドラインや指針などから明らかなように、均等待遇だけでなく均衡待遇もその内容に含まれています。

 

<均衡待遇の前提>

均衡待遇は、職務内容等が異なっていることを前提としています。

しかし、具体的に何がどう違っていれば、「職務内容等が異なる」と判断して良いか、必ずしも明確ではありませんでした。

これを明確にするため、2020年4月1日に施行される改正「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」に先立ち、2019年1月30日に詳細な通達が出されています。

ここでは、この通達に沿って、どのような場合に職務内容等が違うといえるのか、その判断基準について確認したいと思います。

 

<基本的な考え方>

短時間・有期雇用労働者について、正社員など通常の労働者と全く同じ、または一部同じであっても、所定労働時間が短いから、あるいは期間の定めがある労働契約を締結しているからというだけで、待遇が低く抑えられているのは不合理です。

そして、待遇の相違の合理性を判断する際の考慮要素として、「職務の内容」、「職務の内容及び配置の変更の範囲(有無を含む。)」、「その他の事情」が、法第8条に規定されています。

 

<職務の内容の同一性を判断する手順>

法に示された「職務の内容」とは、「業務の内容とその業務に伴う責任の程度」をいいます。

これは、労働者の就業の実態を表す要素の中で最も重要なものです。

そして「業務」とは、職業上継続して行う仕事であり、「責任の程度」とは、業務に伴って行使するものとして付与されている権限の範囲・程度等をいいます。

 

「職務の内容」が同一といえるためには、まず業務の種類が同一でなければなりません。これは、『厚生労働省編職業分類』の細分類を目安として比較し、この時点で異なっていれば、「職務内容が同一でない」ということになります。

 

次に、比較対象となる通常の労働者と短時間・有期雇用労働者の職務を、業務分担表、職務記述書等により個々の業務に分割し、その中から「中核的業務」をそれぞれ抽出します。「中核的業務」とは、ある労働者に与えられた職務に伴う個々の業務のうち、その職務を代表する中核的なものを指します。

これは以下の基準に従って、総合的に判断されます。

 

【中核的業務】

① 与えられた職務に本質的または不可欠な要素である業務

② その成果が事業に対して大きな影響を与える業務

③ 労働者本人の職務全体に占める時間的割合・頻度が大きい業務

 

こうして抽出された「中核的業務」を比較し、同じであれば、業務の内容は「実質的に同一」と判断され、明らかに異なっていれば「異なる」と判断されます。

 

最後に、両者の職務に伴う責任の程度が「著しく異なって」いないかをチェックすることになります。

このチェックにあたっては、以下のような事項について比較します。

 

【責任の程度】

① 授権されている権限の範囲(単独で契約締結可能な金額の範囲、管理する部下の数、決裁権限の範囲等)

② 業務の成果について求められる役割

③ トラブル発生時や臨時・緊急時に求められる対応の程度

④ ノルマ等の成果への期待の程度

⑤ 上記の事項の補助的指標として所定外労働の有無及び頻度

 

例えば管理する部下の数が一人でも違えば「責任の程度が異なる」と判断するのではなく、責任の程度の差異が「著しい」といえるものであるかどうかを見なければなりません。

なお、いずれも役職名等外見的なものだけで判断せず、実態を見て比較することが必要です。

 

以上の判断手順を経て、「業務の内容」と「責任の程度」の両方について、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者とが同一であると判断された場合が、「職務の内容が同一である」ということになります。

 

<説明資料として>

短時間・有期雇用労働者から「同一労働同一賃金に反するのではないか」という疑問を提示された場合には、職務の内容が同一ではないことなどを会社が説明しなければなりません。

上記の判断手順に従って、職務の内容の同一性を確認しておくことは、こうした場合の説明資料を準備しておくことにもなります。

 

2019.02.08.解決社労士

<一斉休業の実例>

回転ずし最大手の「あきんどスシロー」は、2019年2月5日と6日の2日間、ほぼ全店に当たる約500店舗を一斉休業するそうです。

広報によると「お客さまや関係者への影響を最小限に抑えつつ、働きやすい環境づくりにつなげたいという思いで一斉休業の形をとることにした」そうです。

また、2019年の元日は、外食チェーンの他、百貨店や大手スーパーマーケットチェーンでも、一斉休業にする動きが目立ちました。

各企業とも、休業により店舗の売り上げは減少するものの、それ以上のメリットがあるといいます。

働き方改革を推進していること、従業員のためを思っていることをお客様にアピールできるというのです。

たしかに、こうした一斉休業は、お客様にも納得していただきやすいことでしょう。

 

<年次有給休暇の計画的付与制度>

年次有給休暇の付与日数のうち、5日を除いた残りの分については、労使協定を結べば、計画的に休暇取得日を設定することができます。これを年次有給休暇の計画的付与制度といいます。

この制度はもともと、企業・事業場を一斉に休みにできる、あるいは一斉に休みにした方が効率的な業態について、全従業員に対して同一の日に年次有給休暇を与えることを想定しています。

たとえば製造部門など、操業を止めて全従業員を休ませることのできる事業場などで活用されてきました。

働き方改革の進む中で、この制度が、飲食業や小売業でも活用されるようになってきたようです。

 

<一歩進んだ特別休暇制度>

一斉休業を行うにあたって、年次有給休暇の計画的付与制度の活用を考えた場合に、入社したばかりで年次有給休暇が付与されていない従業員がいるときは、有給の特別休暇を与えるのが一般です。

一方で、すでに年次有給休暇を取得していて残日数が不足する従業員に、この特別休暇を与えるのは考えものです。ほとんど年次有給休暇を取得していない従業員は、特別休暇を与えられないわけですから、不公平が生じてしまいます。とはいえ、一斉休業の日を欠勤扱いにするわけにもいきません。

気前よく全従業員に特別休暇を与えるか、一斉休業の社内告知を1年以上前にしておくなどの対応が必要となります。

 

 

普段、年次有給休暇を取得できない従業員ほど、一斉休業は嬉しいものです。

大手企業で盛んになりつつある一斉休業ですが、中小企業で行った場合の効果はさらに大きいのではないでしょうか。

 

2019.02.05.解決社労士

<所定労働日数についての勘違い>

「所定」は「定まる所」つまり「決めたこと」「決まっていること」ですから、所定労働日数というのは就業規則や労働契約で決められている労働日数です。

月給制の人について、1か月の所定労働日数がある場合、これを下回ったら欠勤控除が必要で、これを上回ったら休日出勤手当が必要だという勘違いが起こりやすいようです。

 

<所定労働日数の意味>

所定労働日数は、月給の時間単価を計算するのに必要です。

月給を月間所定労働時間で割って時間給を計算し、時間外労働1時間当たりの賃金を、時間給 × 1.25などとして計算します。

この場合、月間所定労働時間 = 1日の所定労働時間 × 月間所定労働日数で計算されるのが一般です。

 

<所定労働日数を決めなくても大丈夫か>

賃金が時間給の場合や、月給制でも労使協定を交わしてフレックスタイム制を使っていれば、賃金計算には困りません。

しかし、所定労働日数が決まっていないと、年次有給休暇の付与日数が決まりません。

 

労働基準法で、年次有給休暇の付与日数は次の【図表1】のとおりです。週所定労働日数が4日以上で、週所定労働時間が30時間以上の場合には、週所定労働日数が5日以上の欄が適用されます。

 

【図表1】

週所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年 6月 2年 6月 3年 6月 4年 6月 5年 6月 6年 6月以上
5日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日以上 5日未満

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日以上 4日未満

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日以上 3日未満

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日以上 2日未満

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

これは法定の日数ですから、就業規則にこれと異なる規定があれば、労働者に有利である限りそれに従います。

【図表1】の中の週所定労働日数は、一般には「4日」「3日」などと表示されていますが、たとえば「4日」というのは「4日以上5日未満」という意味です。

月間所定労働日数さえ決まっていれば、週所定労働日数は次の計算式で求められます。

週所定労働日数 = 月間所定労働日数 × 12か月 ÷ 52週

こうして求められた週所定労働日数を、【図表1】に当てはめて年次有給休暇の日数を確定することができます。

 

会社によっては、所定労働日数を年間で決めている場合もあります。

この場合、次の【図表2】が用いられます。

 

【図表2】

年間所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年 6月 2年 6月 3年 6月 4年 6月 5年 6月 6年 6月以上
217日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

169~216日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

121~168日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

73~120日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

48~72日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

所定労働日数を半年間で決めているのなら2倍し、3か月間で決めているのなら4倍すれば良いのです。

 

結論として、所定労働日数が全く決まっていないとすると、年次有給休暇の日数が確定しません。

これでは、平成31(2019)年4月1日から、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うことになるのに、対応できないので困ったことになってしまいます。

やはり、明確に確定することが求められているのです。

 

2019.01.26.解決社労士

<雇用対策法の改正>

平成30(2018)年7月6日、雇用対策法が「労働政策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」へと改正されました。

この改正は、働き方改革を推進するために行われたものです。

 

<働き方改革>

働き方改革の定義は、必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革に関する現在までの動向をもとに考えると「働き手の不安を解消し満足度を高めるための多面的な施策により、労働生産性( 付加価値額 / 実労働時間 )を向上させる変革」といえるでしょう。

長期的に見れば企業の安定と成長を促す施策ばかりですが、目先にとらわれると企業の負担が強く意識されますので、関係法律の整備により政府が推進する形がとられています。

中小企業であっても、ここは従業員の希望を少し叶えて、会社の利益を伸ばす作戦であることを納得し、積極的に働き方改革に取り組まなければなりません。

 

<旧法と新法の目的の違い>

旧法も新法も、その目的をそれぞれの第1条に示しています。

太字が変更部分です。

 

【旧法の目的】

第一条 この法律は、国が、少子高齢化による人口構造の変化等の経済社会情勢の変化に対応して、雇用に関し、その政策全般にわたり、必要な施策を総合的に講ずることにより、労働市場の機能が適切に発揮され、労働力の需給が質量両面にわたり均衡することを促進して、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、これを通じて、労働者の職業の安定と経済的社会的地位の向上とを図るとともに、経済及び社会の発展並びに完全雇用の達成に資することを目的とする。

 

【新法の目的】

第一条 この法律は、国が、少子高齢化による人口構造の変化等の経済社会情勢の変化に対応して、労働に関し、その政策全般にわたり、必要な施策を総合的に講ずることにより、労働市場の機能が適切に発揮され、労働者の多様な事情に応じた雇用の安定及び職業生活の充実並びに労働生産性の向上を促進して、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、これを通じて、労働者の職業の安定と経済的社会的地位の向上とを図るとともに、経済及び社会の発展並びに完全雇用の達成に資することを目的とする。

 

<新法にあらわれた新しい目的>

新法にあらわれた新しい目的には、次の3つが示されています。

 

① 労働者の多様な事情に応じた雇用の安定

② 職業生活の充実

③ 労働生産性の向上を促進

 

①の「雇用の安定」は、雇用契約の継続として一応客観的に測定できるものの、それが「労働者の多様な事情に応じた」ものといえるかは、労働者の主観的な判断により評価が変わってきます。

また、②の「職業生活の充実」も労働者の主観次第ということになります。

ですから、企業が新法に対応するためには、まず労働者の意見を聴いたうえで、具体的な施策を策定する必要があります。

この法律に限らず、働き方改革では「働き手の不安を解消し満足度を高めるための多面的な施策」が求められていますから、労働者の不安や不満を把握するために、その意見を聴くことが前提となるのは当然のことです。

これに対して、③の「労働生産性」は客観的な指標ですから、定期的に確認して施策にフィードバックすれば足ります。

この労働生産性の算出式にはいくつかありますが、現在の働き方改革は、長時間労働の是正や年次有給休暇の取得を推進していますので、端的に次のものを基準にすると良いでしょう。

 

 労働生産性 = 付加価値額 / 実労働時間

 

つまり、1か月など一定の期間内の付加価値額を、その期間内の労働者全体の実労働時間で除したものを、労働生産性の指標に用いることになります。

 

2019.01.23.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

大きな案件や専門性の高い業務は、30名を擁する働き方改革研究会の選抜チームで受任しております。

<パートタイム・有期雇用労働法の施行>

平成31(2019)年1月16日、厚生労働省が「パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書」等を公表しました。

パートタイム・有期雇用労働法は、2020年4月1日から施行(中小企業は2021年4月1日から適用)されます。

短時間労働者だけでなく、フルタイム有期雇用労働者も法の対象に含まれることになりました。そのため、法律の名称も、「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(略称「パートタイム・有期雇用労働法」)に変わります。

 

<働き方改革との関係>

これはもちろん、働き方改革の一環です。

「働き方改革」という言葉は、よく目にするようになりましたが、その定義は必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革実現会議の議事録や、厚生労働省から発表されている数多くの資料、そして現在までの動向をもとに考えると「働き手の不安を解消し満足度を高めるための多面的な施策により、労働生産性( 付加価値額 / 実労働時間 )を向上させる変革」といえるでしょう。

有期雇用の労働者は、雇用契約の終了について不安がありますし、パートタイムと同様に正社員との待遇差に疑問や不満を抱えていることがあります。

これを解消すれば、長い目で見たときに企業の利益を向上させることになるのですが、目先のことだけを考えたり、自社が単独で行うことを考えたりすると、躊躇してしまいます。

そこで、法令によって一斉に変革を実施し、公正に労働者の不安と不満の解消を図ろうというのが働き方改革関連法の役割だと考えられます。

 

<同一労働同一賃金>

同一労働同一賃金の導入は、同一企業・団体での正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。

同一企業内での正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消の取組を通じて、どのような雇用形態を選択しても納得が得られる処遇を受けられ、多様な働き方を自由に選択できるようにします。

同一企業・団体での正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で、待遇差が存在する場合に、どのような待遇差が不合理なものであり、どのような待遇差は不合理なものでないのか、原則となる考え方と具体例を示したものとして、「同一労働同一賃金ガイドライン」が公表されています。

 

<取組手順書の役割>

「同一労働同一賃金ガイドライン」は考え方を示すものですから、各企業がどのように同一労働同一賃金に取り組み、パートタイム・有期雇用労働法に対応すべきかについては示されていません。

そのため、「パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書」が公表され、各企業がこれに沿って進めていけるようにしたものです。

この取組手順書に沿って社内の制度の点検を行い、自社の状況が法の内容に沿ったものかを把握し、点検の結果、制度の改定の必要があれば、法の施行までに改定の準備を進めることができます。

 

<パートタイム・有期雇用労働法の2つの柱>

この法律には、次の2つの大きなポイントがあります。取組手順書の活用にあたって、この2つの柱を外さないよう、常に注意しましょう。

 

【不合理な差別の禁止】

同じ企業で働く正社員と短時間労働者・有期雇用労働者との間で、基本給や賞与、手当などあらゆる待遇について、不合理な差を設けることが禁止されます。

 

【説明義務】

事業主は、短時間労働者・有期雇用労働者から、正社員との待遇の違いやその理由などについて説明を求められた場合は、説明をしなければなりません。

 

2019.01.22.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

大きな案件や専門性の高い業務は、30名を擁する働き方改革研究会の選抜チームで受任しております。

<労働基準局長の通達>

平成30(2018)年12月28日、厚生労働省労働基準局長から都道府県労働局長あてに、働き方改革を推進するための関係法律整備に関する法律による改正後の労働安全衛生法関係の解釈について、指針となる通達が出されました。

医師による面接指導について、主なものは次のような内容となっています。

 

<医師による面接指導の対象となる労働者の基準>

新安衛則第52 条の2第1項の規定では、時間外・休日労働時間が1月当たり80 時間を超えた場合(かつ、当該労働者が疲労の蓄積の認められる者である場合)に面接指導の対象となります。所定労働時間が1週間当たり40 時間に満たない事業場では、この所定労働時間ではなく、1週間当たり40 時間の法定労働時間を基準として算定することになります。

 

<労働者への労働時間に関する情報の通知>

労働者に通知する「当該超えた時間に関する情報」とは、時間外・休日労働時間数を指し、通知対象は、その超えた時間が1月当たり80 時間を超えた労働者です。この通知は、疲労の蓄積が認められる労働者の面接指導の申出を促すものであり、「当該超えた時間に関する情報」のほか、面接指導の実施方法・時期等の案内を併せて行うことが望ましいとされます。

事業者は、新安衛則第52 条の2第2項の規定により、1月当たりの時間外・休日労働時間の算定を毎月1 回以上、一定の期日を定めて行う必要があり、その時間が1月当たり80 時間を超えた労働者に対して、その超えた時間を書面や電子メール等により通知する方法が適当とされます。ただし、給与明細に時間外・休日労働時間数が記載されている場合には、これをもって「当該超えた時間に関する情報」の通知としても差し支えありません。なお、「当該超えた時間」の算定後、速やか(おおむね2週間以内)に通知する必要があります。

労働者が自らの労働時間に関する情報を把握し、健康管理を行う動機付けとする観点から、時間外・休日労働時間が1月当たり80 時間を超えない労働者から、労働時間に関する情報について開示を求められた場合には、これに応じることが望ましいとされます。

 

<労働時間の状況の把握>

新安衛法第66 条の8の3に規定する「労働時間の状況」の把握とは、労働者の健康確保措置を適切に実施する観点から、労働者がいかなる時間帯にどの程度の時間、労務を提供し得る状態にあったかを把握するものです。事業者が「労働時間の状況」を把握する方法としては、原則として、タイムカード、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間(ログインからログアウトまでの時間)の記録、事業者(事業者から「労働時間の状況」を管理する権限を委譲された者を含む。)の現認等の客観的な記録により、労働者の労働日ごとの出退勤時刻や入退室時刻の記録等を把握しなければなりません。なお、「労働時間の状況の把握」は、労働基準法施行規則(昭和22年厚生省令第23号)第54条第1項第5号に掲げる賃金台帳に記入した労働時間数をもって、それに代えることができます。ただし、労基法第41 条各号に掲げる者(管理監督者等)並びに労基法第38条の2に規定する事業場外労働のみなし労働時間制が適用される労働者並びに労基法第38条の3第1項および第38条の4第1項に規定する業務に従事する労働者(裁量労働制の適用者)については、この限りではないものとされます。

面接指導の要否については、休憩時間を除き1週間当たり40 時間を超えて労働させた場合の超えた時間(時間外・休日労働時間)により判断することとされていますが、個々の事業場の事情により、休憩時間や食事時間を含めた時間により、労働時間の状況を把握した場合には、その時間をもって、面接指導の要否を判断することとしてもかまいません。

なお、労働時間の状況を把握しなければならない労働者には、裁量労働制の適用者や管理監督者も含まれます。

 

<やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合>

労働時間の状況の把握方法について、「やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合」としては、例えば、労働者が事業場外において行う業務に直行または直帰する場合など、事業者の現認を含め、労働時間の状況を客観的に把握する手段がない場合があり、この場合に該当するかは、その労働者の働き方の実態や法の趣旨を踏まえ、適切な方法を個別に判断します。

ただし、労働者が事業場外で行う業務に直行または直帰する場合でも、例えば、事業場外から社内システムにアクセスすることが可能であり、客観的な方法による労働時間の状況を把握できる場合もあるため、直行または直帰であることだけを理由として、自己申告により労働時間の状況を把握することは、認められません。

また、タイムカードによる出退勤時刻や入退室時刻の記録やパーソナルコンピュータの使用時間の記録などのデータがある場合や事業者の現認によりその労働者の労働時間を把握できるのに、自己申告だけで労働時間の状況を把握することは、認められません。

 

<労働時間の状況を自己申告により把握する場合>

労働時間の状況を自己申告により把握する場合には、その日の労働時間の状況を翌労働日までに自己申告させる方法が適当とされます。

なお、労働者が宿泊を伴う出張を行っているなど、労働時間の状況を労働日ごとに自己申告により把握することが困難な場合には、後日一括して、それぞれの日の労働時間の状況を自己申告させることとしても差し支えありません。

ただし、このような場合であっても、事業者は、新安衛則第52条の2第2項および第3項の規定により、時間外・休日労働時間の算定を毎月1回以上、一定の期日を定めて行う必要があるので、これを遵守できるように、労働者が出張の途中であっても、その労働時間の状況について自己申告を求めなければならない場合があることには、留意する必要があります。

 

2019.01.19.解決社労士

<労働基準局長の通達>

平成30(2018)年12月28日、厚生労働省労働基準局長から都道府県労働局長あてに、働き方改革を推進するための関係法律整備に関する法律による改正後の労働安全衛生法関係の解釈について、指針となる通達が出されました。

産業医の役割強化について、主なものは次のような内容となっています。

 

<産業医の権限の具体化>

産業医が労働者の健康管理等を行うために必要な情報を労働者から収集する方法としては、作業場等を巡視する際などに、対面により労働者から必要な情報を収集する方法のほか、事業者から提供された労働時間に関する情報、労働者の業務に関する情報等を踏まえて選定した労働者を対象に、職場や業務の状況に関するアンケート調査を実施するなど、文書により労働者から必要な情報を収集する方法等があります。

労働者が産業医に提供した情報の内容等がその労働者の同意なしに、事業者、人事担当者、上司等に伝達されることは、適正な情報の取扱い等が阻害されることとなります。そのため、産業医は、労働者の健康管理等を行うために必要な情報を収集しようとする際には、その情報の収集対象となった労働者に人事上の評価・処遇等について、事業者が不利益を生じさせないようにしなければなりません。また、事業者は、産業医がその情報を収集する際の具体的な取扱い(対象労働者の選定方法、情報の収集方法、情報を取り扱う者の範囲、提供された情報の取扱い等)について、あらかじめ、衛生委員会または安全衛生委員会で審議し、決定しておくことが望ましいといえます。

「労働者の健康を確保するため緊急の必要がある場合」とは、保護具等を使用せずに、有害な化学物質を取り扱うことにより、労働災害が発生する危険のある場合のほか、熱中症等の徴候があり、健康を確保するため緊急の措置が必要と考えられる場合などが含まれます。

 

<産業医等に対する健康管理等に必要な情報の提供>

事業者が産業医等に提供する労働者の健康管理等を行うために必要な情報のうち、「休憩時間を除き1週間当たり40 時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間(以下「時間外・休日労働時間」という。)が1月当たり80 時間を超えた労働者の氏名、当該労働者に係る当該超えた時間に関する情報」について、対象となる労働者がいない場合でも、「該当者がいない」という情報を産業医に情報提供する必要があります。

また、「労働者の業務に関する情報であって産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要と認めるもの」には、①労働者の作業環境、②労働時間、③作業態様、④作業負荷の状況、⑤深夜業等の回数・時間数などのうち、産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要と認めるものが含まれます。なお、必要と認めるものについては、事業場ごとに、あらかじめ、事業者と産業医とで相談しておくことが望ましいとされます。さらに、健康管理との関連性が不明なものについて、産業医等から求めがあった場合には、産業医等に説明を求め、個別に確認することが望ましいとされます。

事業者が産業医等に情報を提供する方法としては、書面による交付のほか、磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録して提供する方法や電子メールにより提供する方法等があります。産業医等に提供した情報については、記録・保存しておくことが望ましいとされます。

 

<労働者からの健康相談に適切に対応するために必要な体制の整備等>

労働者が産業医等による健康相談を安心して受けられる体制を整備するために、事業者は産業医による健康相談の申出の方法(健康相談の日時・場所等を含む。)、産業医の業務の具体的な内容、事業場における労働者の心身の状態に関する情報の取扱方法を、労働者に周知させる必要があります。

また、労働者数50 人未満の事業場については、新安衛法第101 条第3項に基づき、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識を有する医師または保健師(医師等)を選任した事業者は、労働者に周知させるように努めなければなりません。

周知方法としては、各作業場の見やすい場所に掲示等するほか、書面により労働者に通知すること、イントラネット等により労働者がその事項の内容に電子的にアクセスできるようにすることなどが適当です。

なお、保健指導、面接指導、健康相談等は、プライバシーを確保できる場所で実施できるように、配慮するとともに、その結果については、心身の状態の情報指針に基づき事業場ごとに策定された取扱規程により、適切に取り扱う必要があります。

 

2019.01.18.解決社労士

<労働基準局長の通達>

平成30(2018)年12月28日、厚生労働省労働基準局長から都道府県労働局長あてに、働き方改革を推進するための関係法律整備に関する法律による改正後の労働基準法関係の解釈について、指針となる通達が出されました。

年5日以上の年次有給休暇の確実な取得について、主なものは次のような内容となっています。

 

<使用者による時季指定>

使用者による時季指定は、必ずしも基準日からの1年間の期首に限られず、その期間の途中に行うこともできます。

 

<使用者による時季指定の対象となる労働者>

「有給休暇の日数が十労働日以上である労働者」は、基準日に付与される年次有給休暇の日数が10労働日以上である労働者をいいます。

年次有給休暇の比例付与の対象者となる労働者であって、今年度の基準日に付与される年次有給休暇の日数が10労働日未満の労働者については、前年度繰越分の年次有給休暇を合算して10労働日以上となったとしても、「有給休暇の日数が十労働日以上である労働者」には含まれません。

 

<半日・時間単位での時季指定・取得>

労働者の意見として、半日単位の年次有給休暇の取得の希望があった場合には、時季指定を半日単位で行ってもかまいません。

半日単位の時季指定も、労働者が半日単位で取得した年次有給休暇も、0.5日としてカウントされます。

しかし、時季指定を時間単位で行うことはできませんし、労働者が時間単位で年次有給休暇を取得しても「年5日以上の年次有給休暇」にはカウントされません。

 

<前年度から繰り越された年次有給休暇>

「年5日以上の年次有給休暇」は、当年度の基準日に付与された年次有給休暇でも、前年度からの繰越分の年次有給休暇でもかまいません。

 

<時季変更の可否>

使用者が指定した時季を、労働者の意見を尊重することによって変更することはできます。

 

<年5日を超える時季指定>

労働者の時季指定権を確保するため、5日を超える日数を指定することはできません。

 

<時季指定後に労働者が自ら年次有給休暇を取得した場合>

当初使用者が行った時季指定は、使用者と労働者との間で特別な取決めをしていない限り、当然に無効となるものではありません。

 

<就業規則の規定>

休暇に関する事項は、就業規則の絶対的必要記載事項であるため、使用者が時季指定を実施する場合は、時季指定の対象となる労働者の範囲や時季指定の方法等について、就業規則に定めておく必要があります。

 

2019.01.17.解決社労士

<労働基準局長の通達>

平成30(2018)年12月28日、厚生労働省労働基準局長から都道府県労働局長あてに、働き方改革を推進するための関係法律整備に関する法律による改正後の労働基準法関係の解釈について、指針となる通達が出されました。

時間外労働の上限規制について、主なものは次のような内容となっています。

 

<時間外・休日労働協定(三六協定)の対象期間と有効期間>

「対象期間」とは、労働基準法36条の規定により労働時間を延長し、または休日に労働させることができる期間をいい、1年間に限るものであり、三六協定でその起算日(期間の初日)を定めることによって特定されます。

「有効期間」とは、その協定が効力をもつ期間をいうもので、対象期間が1年間に限られることから、有効期間は最も短い場合でも原則として1年間になります。

なお、三六協定で1年間を超える有効期間を定めた場合の「対象期間」は、その「有効期間」の範囲内で、三六協定で定める「対象期間」の起算日(期間の初日)から1年ごとに区分した各期間となります。

 

<1日、1か月、1年以外の期間についての協定>

1日、1か月、1年以外の期間について延長時間を定めることもできますが、その期間について定めた延長時間を超えて労働させた場合には、労働基準法32条に違反することになってしまいます。

 

<限度時間を超える協定の効力>

法定の限度時間、法定の延長時間の上限、法定の月数の上限を超えている三六協定は、全体として無効になります。

 

<対象期間の途中での破棄・再締結>

対象期間の途中で三六協定を破棄・再締結し、対象期間の起算日を当初の三六協定から変更することは、原則として認められない。

やむを得ず行う場合には、新旧両協定を遵守しなければならない。

 

<限度時間を超えて労働させる必要がある場合>

「通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合」とは、全体として1年の半分を超えない一定の限られた時期に、一時的・突発的に業務量が増える状況等により限度時間を超えて労働させる必要がある場合をいいます。

そのうえで、具体的にどのような場合を協定するかについては、労使当事者が事業や業務の態様等に即して自主的に協議し、可能な限り具体的に定める必要があります。

 

2019.01.16.解決社労士

<働き方改革の目的>

働き方改革が目指しているのは、豊かでゆとりある生活の実現です。

社員も会社もイキイキ満足している状態です。

 

<働き方改革に取り組む会社>

長時間労働の抑制と年次有給休暇取得率の向上に取り組んでいる会社の社員は、疲れが残りませんから生産性が向上します。

お取引先やお客様から見ても、健康的でやる気があることは直感できます。

会社としても、優秀な人材の育成、確保、定着が容易になります。

こうしたことから、会社のイメージがアップするのは自然な流れです。

 

<労働時間等見直しガイドライン>

厚生労働省告示の労働時間等見直しガイドライン(労働時間等設定改善指針)は、平成18(2006)年3月31日に制定され、6回の改正を経て、最新版の平成30(2018)年10月30日改正版は、平成31(2019)年4月1日から施行されます。

この基本的な考え方は、次のように示されています。

 

●仕事のしかたを見直して、労働時間を短縮しましょう

 労働者が健康で充実した生活を送れるよう、労働時間を短縮して生活時間を十分確保する。

(所定外労働時間の削減)(年次有給休暇の取得促進)

 

●働く意欲を高めるために、労働者一人ひとりの様々な事情へ対応しましょう

 労働時間等の設定の改善にあたって、労使による話し合いの体制を整備する。

 労働者一人ひとりの健康と生活に関する様々な事情を踏まえて、ここに対応する。

 

●社員全員のワーク・ライフ・バランスの実現のために、経営者が率先して取り組みましょう

 経営者は労働時間等について積極的に理解を深め、自らが主導して、職場の環境を変えるための意識改革や柔軟な働き方の実現に取り組む。

 

<NG社員>

社内に次のような社員がいたのでは、魅力の無い会社になっているかも知れません。

・毎日遅くまで仕事をして、心身ともに疲れている。

・休日に休めず、家族と過ごすことができない。

・仕事の予定が立てられなくなり、計画的に有休が取れない。

 

働き方改革に取り組めない会社はありません。

働き方改革に取り組まない会社は、規模にかかわらず、平成の次の時代を乗り越えるのが困難です。

なぜなら、働き手を確保できないからです。

今年(2019年)の4月に法律によって強制されるのではなく、自発的に働き方改革に取り組むことを強くお勧めします。

 

2019.01.11.解決社労士

<労働施策基本方針>

平成30(2018)年12月28日、「労働施策基本方針」が閣議決定されました。

「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」では、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにするために必要な労働に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針を定めなければならないこととされています。

これに基づき、厚生労働省では、労働政策審議会労働施策基本方針部会での議論を踏まえ、労働施策基本方針を取りまとめました。この方針には、働き方改革実行計画に規定されている施策を中心とし、労働施策に関する基本的な事項、その他重要事項などが盛り込まれています。

厚生労働省は、今後、この方針に基づき、誰もが生きがいを持ってその能力を最大限発揮することができる社会の実現に向けて取り組んでいくとしています。

 

この労働施策基本方針の中では、一企業が取り組むには無理のある課題が次のように説明されています。

枠内は原文をそのまま引用したものです。

 

【商慣行の見直しや取引条件の適正化】

特に、中小企業等においては、発注者からの著しく短い期限の設定や発注内容の頻繁な変更に応えようとして長時間労働になる傾向にあることから、商慣行の見直しや取引条件の適正化を進めることが重要である。そのため、労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(平成4年法律第90号)に基づき、著しく短い期限の設定及び発注内容の頻繁な変更を行わないよう配慮し、事業者の取引上必要な配慮が商慣行に浸透するよう、関係省庁が連携して必要な取組を推進する。加えて、国等が行う契約においても「平成30年度中小企業者に関する国等の契約の基本方針」(平成30年9月7日閣議決定)に基づき、物件等の発注に当たっては、早期の発注等の取組により平準化を図り、適正な納期・工期を設定するよう配慮する。 また、労働基準関係法令違反の背景に、極端な短納期発注等に起因する下請代金 支払遅延等防止法(昭和31年法律第 120 号)等違反が疑われる事案について、厚生労働省から公正取引委員会や中小企業庁に通報する制度の強化を図る。

 

ここに掲げられている事項は、確かに国の力を借りなければ到底実現できないことでしょう。

しかし、たとえば取引先との間で、夜8時以降の電話やファックス送信はしないという取り決めをするだけでも、かなり時間外労働を削減することができます。「夜8時以降の電話やファックスはできない」と意識するだけでも、仕事の進め方が変わってくるでしょう。

また、土日の納品や工事は受けないという思い切った見直しも考えられます。納品を受ける側にも、工事の立会いをする側にも、休日出勤が発生するかも知れません。売り上げが減少するリスクもありますが、社員の定着率向上などの良い効果が期待できます。

 

【生産性向上による労働条件の改善】

労働条件の改善を実現するためには、生産性の向上が重要である。しかし、中小企業等は、大企業と比べ、資本が脆弱で効率化に向けた設備投資が困難である場合が多いことから、賃金引上げや経営力の向上につながるような、生産性向上に資する設備投資等に対する支援を行う。また、働き方改革推進支援センターにおいて、商工会、商工会議所、中小企業団体中央会等と連携して、好事例や支援策を提示するなど、丁寧な相談・支援に努める。

 

人海戦術あるいは労働集約と呼ばれる人手に頼るやり方は、昭和時代であれば美化されている業界も多かったと思います。

しかし、平成時代に入ってからは、こうした業界で働くことを若者が拒み、女性や高齢者がついて行けなくなって、極端な人手不足に苦しむようになってしまいました。

ここから脱却するためには、機械化、IT化などが必須となりますが、中小企業では初期投資が困難であるため、商工会議所などとの連携が必要となるわけです。

 

【働くことについての教育】

AI等の技術革新や働き方の変化も踏まえつつ、若者に働く意義や労働市場の実態の理解を促す等の教育は、適性・能力に応じた就職の実現の基盤であり、各個人・ 経済活動全体の生産性向上にも資する重要な意義を有するものである。このため、学校から職場への移行を円滑にするため、文部科学行政と厚生労働行政の連携強化を図り、学校段階において職場見学やセミナー、インターンシップ等による職業意識啓発等の取組を積極的に推進する。また、多様な就業形態が増加する中で、労働関係法令や各種ルールについて知ることは、労働関係の紛争や不利益な取扱いの未然の防止に役立つとともに、働き方を選択する上で重要であるため、 高校生などの若年者に対して、労働関係法令や社会保障制度に関する教育を推進する。

 

偏差値教育は昭和時代の末期にピークを迎え、その後はゆとり教育に移行したのですが、これもまた見直されています。

少子高齢化で労働力人口が減少しているうえに、働ける年齢層の人々がニートになってしまっては、働き手が不足するのは目に見えています。

こうした事態を防ぐため、学校教育の中でも、働くことについて積極的に学ばせることになっています。

 

2019.01.07.解決社労士

<労働施策基本方針>

平成30(2018)年12月28日、「労働施策基本方針」が閣議決定されました。

「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」では、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにするために必要な労働に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針を定めなければならないこととされています。

これに基づき、厚生労働省では、労働政策審議会労働施策基本方針部会での議論を踏まえ、労働施策基本方針を取りまとめました。この方針には、働き方改革実行計画に規定されている施策を中心とし、労働施策に関する基本的な事項、その他重要事項などが盛り込まれています。

厚生労働省は、今後、この方針に基づき、誰もが生きがいを持ってその能力を最大限発揮することができる社会の実現に向けて取り組んでいくとしています。

 

この労働施策基本方針の中では、長時間労働の是正が次のように説明されています。

枠内は原文をそのまま引用したものです。

 

【長時間労働の実態】

我が国においては、年間総実労働時間数は減少傾向にあるが、いわゆる正社員等については、依然として長時間労働の実態がみられる。長時間労働を是正し、労働者が健康の不安なく、働くモチベーションを高め、最大限に能力を向上・発揮することを促進することが重要であるため、次の施策を実施する。

 

「長時間労働」の実態があると言われても、同業他社との比較で、自社が殊更に長時間労働であるとは認識できません。

あくまでも、諸外国との比較で労働時間が長過ぎるということが指摘されています。

しかも日本企業では、同じ成果を上げるのに、より長時間の労働を投入しなければならない、つまり労働生産性が低いことが指摘されています。

 

【長時間労働是正の方法】

まず、長時間労働を是正し、労働者の健康確保やワーク・ライフ・バランスの実現を図るため、働き方改革関連法第1条による改正後の労働基準法(昭和22年法律 第49号)に新たに設けられた時間外労働の上限規制及び年次有給休暇の時季指定の仕組みや、働き方改革関連法第4条による改正後の労働安全衛生法(昭和47年法律 第57号)に新たに設けられた労働時間の状況把握及び産業医・産業保健機能の強化のための仕組み等について、労働基準法及び労働安全衛生法の趣旨の周知徹底及び履行確保に努めるとともに、時間外労働について可能な限り労働時間の延長を短くするよう、必要な助言及び指導を行う。また、年次有給休暇を円滑に取得できるよう、その環境整備に向けた取組を行う。さらに、勤務間インターバル制度の普及促進に向けた取組を推進する。具体的には、都道府県労働局から企業・団体への働きかけを行う等、全国的に長時間労働対策の推進及び年次有給休暇の取得促進に取り組むほか、労働基準監督機関においては、長時間労働の事業場への監督指導の徹底等の対応を行う。

 

長時間労働を是正する方法として、時間外労働の規制、この前提となる労働時間の適正な把握、年次有給休暇の取得促進、更には、長時間労働の弊害を防止するためにも勤務間インターバル制度、産業医の機能強化と活用が掲げられています。

一方で、この「労働施策基本方針」の中の「働き方改革の推進に向けた基本的な考え方」には、「こうした働き方改革に向けた労働施策の推進や各企業における働き方改革の実施においては、労使の十分なコミュニケーションをその基盤とするとともに、働く人の視点に立つことが重要である。」という基本中の基本が掲げられています。

こなし切れない仕事を抱えた社員に残業を禁止したり、長時間の残業をして残業手当を稼がなければ生活が成り立たない給与であったり、取得したくない日に年次有給休暇を強制したりということでは、働き方改革の目的は果たされません。

働き方改革は、「社員満足度向上により、労働意欲と健康状態を回復させて、労働生産性を高める急速かつ多面的な施策」といえるでしょう。労働生産性を高めるために人件費を削減、あるいは従業員の手取り額を減らすことは、明らかに社員満足度を低下させますから、働き方改革にはなりません。

長時間労働の是正にあたっても、労使の十分なコミュニケーションが基盤となることは言うまでもありません。

 

【労働基準監督制度】

また、労働基準監督制度の適正かつ公正な運用を確保することにより、監督指導に対する企業の納得性を高め、労働基準法等関係法令の遵守に向けた企業の主体的な取組を効果的に促すこととし、そのための具体的な取組として、監督指導の実施に際し、全ての労働基準監督官がよるべき基本的な行動規範を定めるとともに、重大な違法案件について指導結果を公表する場合の手続をより一層明確化する。なお、 重ねて改善を促しても是正されないもの、違法な長時間労働により過労死等を生じさせたもの、違法な長時間労働により重大な結果を生じさせたものなど重大・悪質な場合は、書類送検を行うなど厳正に対処する。労働基準監督官が行う監督指導など労働基準監督署の運営に関する苦情について、 メールや郵便など多様な形で受け付けることができるようにするほか、監察官制度を活用し、問題があった場合には厳正に指導等を行うなどにより、監督指導の適正な実施及び公正かつ斉一的な権限行使を徹底する。

 

労働基準監督官は、人数が絶対的に不足していますし、企業の監督指導に必要な教育研修を行うのも大変だと思われます。

その一方で、監督指導を受けた企業が、「何かおかしい。釈然としない」という感触を持ったとしても、苦情を言うべき場合に該当するかしないかは社会保険労務士などの専門家に相談したうえでないと、苦情が単なる言い掛かりとなりかねません。

労働基準監督署の監督指導やその予告があった場合には、なるべく早く社会保険労務士にご相談いただくことをお勧めします。

 

2019.01.06.解決社労士

<労働施策基本方針>

平成30(2018)年12月28日、「労働施策基本方針」が閣議決定されました。

「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」では、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにするために必要な労働に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針を定めなければならないこととされています。

これに基づき、厚生労働省では、労働政策審議会労働施策基本方針部会での議論を踏まえ、労働施策基本方針を取りまとめました。この方針には、働き方改革実行計画に規定されている施策を中心とし、労働施策に関する基本的な事項、その他重要事項などが盛り込まれています。

厚生労働省は、今後、この方針に基づき、誰もが生きがいを持ってその能力を最大限発揮することができる社会の実現に向けて取り組んでいくとしています。

 

この労働施策基本方針の中では、働き方改革が次のように説明されています。

 

【働き方改革の必要性】

誰もが生きがいを持ってその能力を最大限発揮することができる社会を創るためには、働く人の視点に立ち我が国の労働制度の改革を行い、企業文化や風土を変え、働く一人一人が、より良い将来の展望を持ち得るようにすることが必要である。

働き方改革の推進は、多様な働き方を可能とすることにより、自分の未来を自ら創っていくことができる社会を実現し、意欲ある人々に多様なチャンスを生み出すものであり、同時に企業の生産性や収益力の向上が図られるものである。人々が豊かに生きていく社会の実現のためには、働き方改革を着実に推進することが求められる。

 

【働き方改革の推進に向けた基本的な考え方】

我が国の労働制度と働き方においては、長時間労働や、非正規雇用労働者の待遇等に関する問題に加え、女性や高齢者等の労働参加に関する課題や、育児や介護等と仕事の両立に関する課題、中高年齢者等の転職・再就職に関する課題、中小企業等における人材確保等に関する課題など様々な課題が存在する。

働き方改革は、こうした問題や課題を解決することにより、労働参加率の向上に加え、労働者のモチベーションを高めるとともに、生産性の向上にもつながるものである。また、働き方改革によって生まれる生産性向上の成果を働く人に分配することにより、賃金の上昇と需要の拡大を通じた成長と分配の好循環を実現し、国民一人一人の生活の向上を目指すものである。

労働施策総合推進法は、国が、労働施策を総合的に講ずることにより、経済社会情勢の変化の中で、労働者の多様な事情に応じた雇用の安定及び職業生活の充実並びに労働生産性の向上を促進して、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにすることにより、労働者の職業の安定と経済的社会的地位の向上を実現し、経済及び社会の発展並びに完全雇用の達成に資することを目的としている。

また、労働施策総合推進法の基本的理念として、職業生活の全期間を通じた、労働者の職業の安定への配慮に加え、労働者は、職務の内容及び職務に必要な能力、経験その他の職務遂行上必要な事項の内容が明らかにされ、並びにこれらに即した評価方法により能力等を公正に評価され、当該評価に基づく処遇を受けることその他の適切な処遇を確保するための措置が効果的に実施されることにより、その職業の安定が図られるように配慮されるものとすることを、新たに掲げたところである。

このような労働施策総合推進法の目的及び基本的理念を踏まえ、本方針に労働施策に関する基本的事項等を定めることにより、都道府県や市町村等の地方公共団体とも連携を図りつつ、働き方改革の実現に向けて労働施策を総合的に推進する。

こうした働き方改革に向けた労働施策の推進や各企業における働き方改革の実施においては、労使の十分なコミュニケーションをその基盤とするとともに、働く人の視点に立つことが重要である。

なお、公務員についても、働き方改革の実現に向けた取組の推進に努める。

 

【労働施策基本方針に基づく働き方改革の推進】

働き方改革の実現に向けて、本方針において示した基本的な考え方や中長期的な方向性に基づき、労働施策を総合的かつ継続的に推進する。

本方針に基づく施策の推進に当たっては、労働政策審議会に置く各分科会の意見を踏まえ、必要なKPI の設定を行い、PDCAサイクルを回すことにより、各施策の実効性を確保しつつ、実施するものである。

働き方改革の意義等を示すものとしての本方針の性格に照らし、経済及び雇用情勢に加え、実行計画のフォローアップの状況や本方針に定める諸施策の実施状況に応じて、変更の必要性があると判断した場合は、本方針を見直すものとする。

 

2019.01.05.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

大きな案件や専門性の高い業務は、30名を擁する働き方改革研究会の選抜チームで受任しております。

<労働基準法第1条>

労働基準法第1条には、労働条件の原則が定められています。

法令の第1条には、その法令の目的が掲げられていることが多く、この条文も労働基準法全体の目的を示しているとみることができます。

 

【労働条件の原則】

第一条 労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。

2 この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。

 

この条文を素直に読めば、「人たるに値する生活を営むための必要」というのは、人間らしい生活をするのに必要な収入が得られることを意味しているでしょう。

また、「労働条件を低下させる」というのは、賃金の実質的な時間単価を低下させることを意味するものと考えられます。

このことからすると、時間外労働や休日労働は割増賃金となりますから、労働者が希望して積極的に残業や休日出勤を行い、より多くの賃金を獲得するのは労働基準法第1条と矛盾するものではないでしょう。

ところが、労働基準法は改正され、平成31(2019)年4月1日から一部の事業・業務と中小企業を除いて、残業時間の上限規制が行われます。

生活費を残業手当に頼っていた労働者にとって、この法改正は「労働条件を低下させる」ことにならないのか、「人たるに値する生活を営むための必要」を満たさなくなるのではないかという不安をもたらし兼ねないものです。

 

<憲法との関係>

労働基準法が制定されたのは、日本国憲法第27条第2項の規定を受けてのことです。

 

第二十七条 2 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。

 

また、労働基準法第1条が「人たるに値する生活」と言っているのは、日本国憲法第25条第1項の「健康で文化的な最低限度の生活」を受けてのことでしょう。

 

第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

 

第二次世界大戦が終わったのが昭和20年、日本国憲法の公布が昭和21年、労働基準法の公布が昭和22年です。この当時、「人たるに値する生活」「健康で文化的な最低限度の生活」という言葉の解釈として、経済的な側面が中心になったのは当然のことでしょう。

 

<働き方改革との関係>

過労死、過労自殺、メンタルヘルス不調といった問題がクローズアップされ、過重労働や長時間労働の予防が急務となっています。

割増賃金さえきちんと支払えば、企業が労働者をどれだけ働かせても問題ないとは考えられない時代になりました。長時間労働は解消されなければなりません。

しかし残業手当が減って、労働者の賃金の時間単価が減ったのでは、労働基準法第1条第2項が労働関係の当事者に「労働条件を低下させてはならない」と命じていることに違反してしまいます。この条文は、労働関係の当事者である使用者と労働者の両方に、労働条件の向上を図るように努めなさいと言っているのですから、労使で話し合って、労働時間を減少させつつ売上や利益が減少しないように工夫することが求められています。

このように、労働基準法第1条の「人たるに値する生活」「労働条件」の意味合いは、経済的な側面だけでなく、社会的な側面や健康的な側面に拡大されてきたとみることができるでしょう。

 

2019.01.02.解決社労士

<働き方改革の目指すもの>

「働き方改革」は、働く人たちが、個人的な事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」できるようにするための改革です。

日本が直面する「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」、「働く人たちのニーズの多様化」などの課題に対応するためには、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境をつくることが必要です。

働く人の置かれた個人的な事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現することで、成長と分配の好循環を構築し、働く人一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指します。

 

<年5日の年次有給休暇の確実な取得>

年次有給休暇は、働く人の心身のリフレッシュを図ることを目的として、原則として、労働者が請求する時季に与えることとされています。

しかし、同僚への気兼ねや請求することへのためらい等の理由から、取得率が低調な現状にあり、年次有給休暇の取得促進が課題となっています。

このため、労働基準法が改正され、2019年4月から、全ての企業で、法律上年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者(管理監督者を含む)に対して、年次有給休暇の日数のうち年5日については、使用者が時季を指定して取得させることが義務付けられました。

 

2018.12.30.解決社労士

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