セクハラの記事

2021/10/13|1,951文字

 

パワハラの定義https://youtu.be/Mdh36sSuu2o

 

<パワハラの定義の法定>

令和2(2020)年6月1日、労働施策総合推進法(正式名称:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律)が改正され、パワハラの定義が法定されました。

これをきっかけに、就業規則やハラスメント防止規程の見直しをした企業は多数に上ります。

しかしハラスメント対策は、セクハラ対策→パワハラ対策→マタハラ対策の順に進んだ企業も多いことから、社内規程が継ぎ接ぎだらけになっている恐れがあります。

また、社内規程の運用をする中で、新たに意識されるようになった問題も増えてきています。

これを機会に、ハラスメント防止に関する社内規程を、再度見直していただけたらと思います。

 

<セクハラ対策>

企業内でのセクハラ問題がクローズアップされた当初は、主に男性の女性に対するものが取り沙汰されていました。

やがて、女性の男性に対するセクハラが問題視されるようになり、現在では同性間のセクハラ防止が求められるようになっています。

もし社内規程の中に「異性」という言葉が含まれているならば、同性間のセクハラ防止が十分な内容となっているか確認することをお勧めします。

また、かつてはセクハラの直接の対象者の保護が重視されていましたが、今では周囲にいる従業員の被害や就業環境を害することが強く認識されています。

被害者は、決して行為の直接の相手方だけではないという視点からの規定となっているか、社内規程の内容を見直すことが必要です。

 

<パワハラ対策>

パワハラ対策については、法改正もあり、厚生労働省等の資料も充実していますので、企業の社内規程も完成度の高い内容に改正されているものと思われます。

労働施策総合推進法には、「労働者は、優越的言動問題に対する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる前条第一項の措置に協力するように努めなければならない」と規定されています。〔第30条の3第4項〕

ですから、パワハラ問題に対する関心と理解を高め、パワハラ行為を行わないように注意し、企業のパワハラ対策に協力するといった労働者の義務についても、社内規程に定めておきたいものです。

 

<マタハラ対策>

マタハラ対策についても、多くの企業で社内規程が充実していることでしょう。

ただ少子化対策は、政府が強力に推進し続けていますし法改正も盛んです。

これらに合わせた更新が行われているか、3か月に1回程度はチェックしましょう。

また、男性が育児休業に関連した制度を利用しようとしたとき、これに対して行われるハラスメント(パタハラ)についても、社内規程の充実が必要です。

 

<企業内相談窓口の運用>

相談者から得られたプライベートな情報については、相談者の許諾の範囲内での利用が許されます。

・誰のどのような情報であるかを明かさずに改善に役立ててほしい

・事実関係について誰の話か特定できないような形で情報を活用してほしい

・誰と誰についての話か公表してもかまわない など

相談窓口の趣旨に反しない限り、相談者の意向を尊重するルールとしたいです。

ただし、加害者にもプライバシー権がありますので、「公表」には加害者の同意が必要となることもあります。

また、加害者からの相談もあります。

「自分のした言動の相手方から『ハラスメントだ』と言われたが理解できない」のような相談です。

こうした場合の対応についても、企業内相談窓口が行うのか、どのように行うのかについてルールを定めておかないと、相談を受けた担当者が対応に困ります。

さらに、相談窓口に対するクレームも発生します。

これにどう対応するかのルールも必要です。

いきあたりばったりの対応では、社内での信頼を失ってしまいます。

 

<包括的・横断的規定>

ハラスメント対策が必要なのは、セクハラ、パワハラ、マタハラに限られません。

被害者が働けなくなったり退職したりすれば、企業にとって大きなダメージとなるのは、他のハラスメントでも同様です。

モデル就業規則第15条のような「第12条から前条までに規定するもののほか、性的指向・性自認に関する言動によるものなど職場におけるあらゆるハラスメントにより、他の労働者の就業環境を害するようなことをしてはならない」といった、すべてのハラスメントを禁止する規定が必要でしょう。

また、労働施策総合推進法には「業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより」ということが明示されています。〔前掲の第30条の3第4項〕

つまり、業務上必要かつ相当な範囲内の言動は、パワハラに該当しないということです。

これは、すべてのハラスメントに共通の内容ですので、パワハラのみについて規定するのではなく、共通の総論的な部分に規定するのがお勧めです。

2021/10/01|1,461文字

 

雇止めの有効性https://youtu.be/CVFw3w5uRGA

 

<成長しないパート社員>

複数のパート社員を雇用していると、自ずからその働きぶりに違いが出てきます。

パート社員にも人事考課制度があって、評価により昇給が異なる職場では、収入にも差が出てきます。

さらに、フルタイムや正社員への登用制度があれば、その差は歴然としてきます。

成長が遅く、後輩に追い抜かれているパート社員については、雇い続けることへの疑問が生じ、「契約の更新をやめて、別の人を新たに採用したほうが良いのではないか」と考えるようになるかもしれません。

 

<雇止めの有効要件>

契約を更新しないで雇止めするのは、解雇の一種ですから、解雇予告期間を置いたり解雇予告手当を支払ったりの必要があります。〔労働基準法第20条〕

また、一定の場合に「使用者が(労働者からの契約延長の)申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす」という抽象的な規定があります。〔労働契約法第19条〕

成長しないことを理由に雇止めをするには、この条文の中の「客観的に合理的な理由」というのが特に問題となります。

なぜなら、成長しないことを理由に時給を据え置くことは客観的に合理的でありうるのですが、時給を下げること、ましてや雇止めをすることは、合理的な理由があるとは言い難いからです。

 

<契約更新の条件が示されている場合>

労働条件通知書には、契約更新の有無、更新する/しない場合の条件を明示することになっています。

たとえば、職能ランクや職務ランクが設定されていて、半年以内に一定のランクに到達することが契約更新の条件となっていて、成長に必要な研修や指導も行われているとします。

これにもかかわらず、本人の意欲不足など個人的な事情で一定のランクに到達しなかった場合には、雇止めも「合理的な理由」があることになります。

これは、採用時にこうしたことを具体的に説明しておけば、労働契約の内容となっているものと考えられます。

 

<最低賃金との関係で>

たとえば東京都では、2011年10月の最低賃金は837円でした。

これが、2021年10月からは1,041円になっています。

実に24%の上昇です。

2年前に、成長を期待して時給1,000円で採用したパート社員について、全く成長が見られず、周囲の負担となっていて、これからの成長が期待できないとしても、雇っているからには1,041円以上の時給でなければ違法になるわけです。

会社としては、こうした事態を避けたいわけですから、契約更新の条件を設定する場合、「最低賃金を下回るような職能ランク・職務ランクに該当する場合には契約を更新しない」という内容も加えておくべきでしょう。

 

<解決社労士の視点から>

「成長しないこと」を理由に雇止めを検討する場合には、自己責任が前提となっています。

つまり、家庭に解消し難いトラブルが続いていて業務に集中できない、休日に体力を消耗するボランティア活動を長時間行っていて勤務中にスタミナ切れになる、そもそも自分の業務に関心が持てないなど、本人に責任のあることで「成長しないこと」が前提となっています。

しかし、パワハラやセクハラ、指導不足などがあって、「成長しないこと」の責任が会社側にもある場合には、安易に雇止めができません。

やはり、契約更新などの機会をとらえた定期面談や聞取り調査の結果から、「成長しないこと」の原因を探っておくことが必要になってきます。

2021/09/04|1,914文字

 

<テレワークを導入しなかった理由>

新型コロナウイルス感染症の拡大前には、テレワークの実施に消極的な企業も多く、政府が働き方改革の一環で推奨していたにも関わらず、特に中小企業では導入が広がりませんでした。

これについては、次のようなことが理由として掲げられています。

 

・業種や職種がテレワークに不向き

・コミュニケーションをとることが難しい

・人材教育やマネジメントが難しい

・情報セキュリティの不安がある

・各従業員の出退勤や休憩時間の把握が困難

・出社しなければできない業務がある

・社内規定が整備されていない

・環境整備のための予算が無い

・正社員以外の従業員が多い

・従業員に持ち運びできるPCが与えられていない

・同居家族の協力が得られない

・仕事とプライベートの区別がつきにくい

・労災への対応がよく分からない

・経営層の理解が無い

・管理職にIT苦手意識が強い

 

こうしてみると、テレワークの実施を諦める決定的な理由があるわけではなく、心理的なハードルが高いように思えます。

 

<テレワークを導入した理由>

従来から、テレワークが推奨される理由としては、主に生産性の向上が挙げられています。

この他にも、次のようなことが理由として掲げられています。

 

・従業員の移動時間の短縮

・従業員の通勤による疲労の軽減

・非常時の事業継続を可能にする

・上司などの目を気にせず業務に集中できる

・育児や介護との両立を可能にする

・遠方に転居しても勤務を続けられる

 

こうした理由に加えて、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、次のような理由も加わって、一気にテレワークの導入が進みました。

 

・社内でのクラスター発生の防止

・通勤による従業員の感染の防止

・勤務中の長距離移動による感染拡大の防止

・密な状態で食事をとることによる感染拡大の防止

・新型コロナウイルスの感染が拡大しても事業継続を可能にする

 

今まで、できない理由を並べてテレワークに消極的であった企業の多くが、一度はテレワークに取り組んでみるという動きが盛んになりました。

中には、オフィスの縮小や移転を行った企業も見られました。

これによって、大幅な経費の削減も可能となりました。

 

<テレワークをやめた理由>

積極的にテレワークに取組んでみた結果、当初認識していた「テレワークを導入しなかった理由」を改めて痛感することとなった企業が多かったようです。

また、ペーパーレス化の進んでいない企業では、書類を会社にしか保存していないから、稟議書に捺印が必要だから、といった紙の書類への対応で出勤せざるを得ない状況は、マスコミにも大きく取り上げられました。

このこともあって、政府は捺印省略を一気に進めたのですが、民間企業での対応は思うように進んでいません。

さらに、当初は新型コロナウイルスに対する恐怖から、テレワークを強く希望していた従業員も、いざ導入してみると、通信費、光熱費、消耗品費だけでなく、新しい机、椅子、パソコンなどの負担についてのルールが不明確で、経済的な負担が大きくなったり、残業代が減少したり、通勤手当が支給されなくなったりと、収入も減るなど不利益を痛感するようになりました。

すべての従業員がテレワークの対象となるわけではなく、一部の従業員に限られるため、不公平感を払拭できない、特に派遣社員についてはテレワークの実施が困難であるという問題も指摘されました。

 

<隠された理由>

テレワークをやめた理由として、企業に対するアンケートでクローズアップされないものとして、リモートワークハラスメント(リモハラ)があります。

これは、テレワークあるいはリモートワークでは、距離感を錯覚したりコミュニケーションの取り方が従来と異なったりすることにより、新たなハラスメントの発生や増強が起こるものです。

特に、1対1でのリモート対応では密室化するわけですから、ハラスメント発生の危険が高まります。

ハラスメントで怖いのは「慣れ」です。

マスコミで取り上げられるハラスメントは、かなり深刻な人権侵害であることが多いのですが、発生した組織内では、徐々にエスカレートし「慣れ」によって、何とも思わなくなっているという恐ろしさがあります。

テレワークで発生した「慣れ」は、出勤しても残りますので、従業員の感覚の変化には注意する必要があるでしょう。

 

<解決社労士の視点から>

新型コロナウイルス感染症拡大への対応で、企業がテレワークを拡大したのに対応して、政府は前倒しでオンライン化を進めました。

一度は諦めたテレワークであっても、態勢を整えて再チャレンジする価値があります。

また、テレワークだけでなく、業務のオンライン化を進めるチャンスでもあります。

2021/08/21|1,443文字

 

<セクハラの公式定義>

セクシュアルハラスメント(セクハラ)とは、職場において、性的な冗談やからかい、食事やデートへの執拗な誘い、身体への不必要な接触など、意に反する性的な言動が行われ、拒否したことで不利益を受けたり、職場の環境が不快なものとなることをいいます。

対価型セクハラとは、労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応(拒否や抵抗)により、その労働者が解雇、降格、減給等の不利益を受けることをいいます。

セクハラ行為に拒否の態度を示したら不利益を受けたという形です。

環境型セクハラとは、労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等その労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることをいいます。

セクハラ行為があったため落ち着いて仕事ができず生産性が低下したという形です。

 

<労働者の意に反する性的言動>

セクハラの加害者は相手の受け取り方次第という言い逃れをしたがります。

たしかに、セクハラの定義の中の「労働者の意に反する性的言動」のうちの「意に反する」というのが、相手の主観だけを基準に認定されるのであれば、この主張は正しいことになります。

しかし、相手の感覚を基準にすれば、「声がセクハラだった」「目つきがセクハラだった」など、セクハラとなりうる行為の範囲が不当に広がってしまいます。

これでは、相手の目を見て話すこともむずかしく、業務に支障を来してしまいます。

そこで実際には、相手の被害者意識も参考としつつ、具体的な事情から、相手の性格は抜きにして、年齢や立場などが同じ人であれば、「意に反する性的言動」であったかどうかを考えます。

つまり、相手の主観と客観的な事情の両方を基礎として、セクハラの成否を判断するのです。

たとえば相手が、性的言動について極端に敏感であったり、鈍感であったりすれば、これを修正して平均的なところで判断します。

ただし、相手が敏感であることを知りつつ、あえて性的言動に及んだような場合には、「意に反する性的言動」であったと認定されます。

このように考えないと、被害者は救われませんし、加害者は故意に行っているわけですから言い訳できる立場にないからです。

このように、セクハラ行為の有無を認定するには、行為者とその相手との関係や、それぞれの性格も把握する必要があります。

結論として、セクハラは相手の受け取り方次第という言い逃れは許されないことになります。

 

<会社のセクハラ対応>

こうして見てくると、セクハラの成否を判断するのは簡単ではないことが分かります。

それにもかかわらず、就業規則にセクハラの禁止規定があり懲戒規定があることを理由に、安易に懲戒処分まで行われてしまうのは、行為者本人にとっても会社にとっても不幸です。

反対に、セクハラ被害があったにもかかわらず、会社がきちんと対応しないのでは、社員からの信頼を失い退職者が増えたり、会社の評判が落ちたりします。

会社が本気でセクハラを防止するには、就業規則にきちんとした規定を設け、充実した社員教育を実施することが必要となります。

社員教育では、セクハラの定義・構造の理解、具体例を踏まえた理解の深化を図りましょう。

この他、人事考課制度の適正な運用や、適性を踏まえた人事異動が、セクハラから社員と会社を守ってくれます。

そして、具体的な事例が発生したとき、その対応に迷ったら、守秘義務を負った専門家である社会保険労務士へのご相談をお勧めします。

2021/08/11|1,031文字

 

<顔出ししたくない人の言い分>

オンライン会議で顔出ししたくない人は、次のような主張をします。

オンライン会議に参加する前は、服装や髪型を整え、化粧をしたり、ひげを剃ったり、部屋を片付けたりと、準備に手間と時間がかかります。

参加中は、緊張した姿勢と表情を維持しなければならず、プライベートな空間を社内の人に見られます。

そもそも、会議を行うのに姿を見せる必要はなく、音声だけで話し合えるのではないかと考えます。

 

<顔出しさせたい人の言い分>

一方、オンライン会議で顔出しさせたい人は、次のような主張をします。

会社で会議を行う場合には、出社の時点で服装や髪型が整っているし、化粧やひげ剃りは済ませてあって当然だから、オンライン会議だからといって特別な負担はありません。

会議中に緊張を強いられるのも、オンライン会議に特有のことではありません。

姿を見せることによって、表情やジェスチャーによる一段高いコミュニケーションが可能となります。

そもそも、話し手が熱心に話している時、聞き手がちゃんと聞いているかどうか把握できないのでは困ります。

 

<背景の設定>

プライベートな空間を人目に晒すことが問題であれば、カメラをオフにするのではなく、背景を設定することも可能です。

ただし、テレビ番組や居酒屋の背景では不適切ですから、参加者全員で同じ背景にする、あるいは会社が作成した公式の背景を用いることも考えられます。

 

<リモートハラスメント(リモハラ)>

何とかして顔出しさせたいがために「おいこら!ちゃんと顔を見せろ!」などと暴言を吐くことや、顔出ししないメンバーの会議出席を拒否することは、リモハラとなりますので許されません。

また、他のメンバーが見聞きできる状態での叱責は、それ自体がパワハラとなります。

会議が終了してから、顔出ししなかった理由を確認し、これを踏まえて指導すべきです。

 

<解決社労士の視点から>

社員間で「常識」が対立する場合には、ルールを確定することによって解決します。

就業規則(テレワーク規程、オンライン会議規程)に、オンライン会議での顔出しについて規定を置きます。

顔出しが義務付けられているオンライン会議で、顔出しできない理由がある場合には、参加者から主催者に理由を明らかにして事前の許可を得るという規定も必要でしょう。

また、プライバシー保護の観点から、背景設定を禁止することは望ましくありません。

さらに、パワハラやセクハラについての注意規定を置くこともお勧めします。

2021/08/07|988文字

 

生理休暇を取るなはパワハラか?https://youtu.be/HlJnw71_t0E

 

<セクハラの公式定義>

セクシュアルハラスメント(セクハラ)とは、職場において、性的な冗談やからかい、食事やデートへの執拗な誘い、身体への不必要な接触など、意に反する性的な言動が行われ、拒否したことで不利益を受けたり、職場の環境が不快なものとなることをいいます。

「対価型セクハラ」とは、労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応(拒否や抵抗)により、その労働者が解雇、降格、減給等の不利益を受けることをいいます。

「環境型セクハラ」とは、労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等その労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることをいいます。

 

<定義の修正>

上記の公式定義からは、実害のあったことがセクハラ成立の条件であるかのように思われます。

しかし、企業はセクハラ発生の防止に努めなければなりませんし、セクハラ行為を行った社員に対して懲戒処分を行いたいと思っても、会社が実害の発生を証明できなければ断念せざるを得ません。

このことから、私は「職場の人間関係や職場環境で性について平穏に過ごす自由を侵害しうる行為」という定義を推奨しています。

セクハラの加害者は「本人の受け取り方次第」という言い逃れをしたがりますが、この定義であれば、それはできない話です。

被害者の感情とは無関係に客観的に認定されますから。

 

<密室型セクハラの特殊性>

部屋の中に加害者と被害者だけがいる状態で行われたセクハラは、他のハラスメントと同様にその立証が極めて困難です。

セクハラがあったということが、真実であったとしても、これを客観的に認定するのは、ほとんど不可能ではないでしょうか。

反対に、セクハラをでっち上げることも簡単な状況であるといえます。

 

<企業の取るべき対応>

密室型セクハラを防止するためには、それが起こらないためのルールを設定し、社員に教育し、ルールの順守を求めることが必要です。

たとえば、男女1名ずつで会議室や応接室には入らない、自動車に乗車しないなどのルールです。

さらに、LGBTに配慮するのであれば、性別にかかわりなく密室に2名でこもることを禁止しなければなりません。

少し厳しいルールのような気もしますが、2名で密室に入る必要性は滅多に発生しません。

社員と会社を守るためには、必要なことではないでしょうか。

2021/08/06|830文字

 

社員が社内で、あるいは、お取引先やお客様からセクハラを受けたなら会社は毅然とした態度を示しましょう。

 

<ハラスメント対策>

セクハラはハラスメントの一種ですから、客観的に見れば人権侵害です。

そして、直接の相手だけではなく、その行為を見聞きした人にも恐怖感や不快感を与える形で被害を及ぼします。

ハラスメント対策の目的は、従業員の中から被害者も加害者も出さないことです。

対策の柱は、「ハラスメントは卑劣で卑怯な弱い者いじめ。絶対に許さない」という経営者の宣言と、社内での定義を明確にして社員教育を繰り返し行うことです。

その効果は、労働力の確保、労働環境の維持、生産性の向上、定着率の向上、応募者の増加、会社の評判の上昇と幅広いものです。

 

<形式面でのハラスメント対策>

目的は、会社がハラスメント防止に取り組んでいることの証拠を残しておくことです。

対策の柱は、就業規則などで定義を明確に文書化しておくこと、教育実績の保管、相談窓口の設置(できれば社外)です。

その効果は、被害者からの損害賠償請求額の減少などです。

 

<社員とは限らない加害者>

多くのセクハラは、社員同士で問題となります。

これを放置することは、会社にとって明らかにマイナスですから、積極的な対応をすることに躊躇する理由はありません。

しかし、お取引先の社員からのセクハラであれば、今後の取引関係を考えて、事なかれ主義に走ってしまう危険があります。

こうした場合には、社長自らお取引先に出向いてセクハラの事実を確認し、事実があれば取引関係を解消する毅然とした態度が必要です。

お取引先も理解を示さざるを得ませんし、社員は会社の態度に共感するでしょうし、こうした情報が外部に漏れても批判は生じにくいものです。

長い目で見れば、会社にとってのプラスが大きいといえます。

このことは、お客様からのセクハラについても、全く同じことが言えます。

むしろ、これを放置することは、他のお客様が離れていく原因となるのではないでしょうか。

2021/07/23|1,139文字

 

<アウティング>

本人の了解を得ずに、性的マイノリティ(少数者)であることを暴露することをアウティングと呼ぶようになりました。

性的指向(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル)や性自認(トランスジェンダー)をカミングアウトして、自分を偽らずに生きたいと思っている人もいます。

しかし、他人から否定的な態度をとられ、人間関係が崩れてしまう恐れも大きく、なかなかカミングアウトしやすい環境は整っていません。

こうした中で、本人の意思によらず秘密を暴露されてしまうのは、大きな精神的ダメージとなり、精神疾患を発症する原因ともなります。

 

<個人の法的責任>

性的指向や性自認の個人情報は、病歴や健康状態と同じく非常にセンシティブな個人情報です。

アウティングを行った人は、アウティングされた人からプライバシー侵害等を理由として、不法行為による損害賠償を求められる可能性があります。

損害賠償の中身は、基本的には慰謝料です。

しかし、精神疾患を発症した場合には治療費も含まれますし、勤務できなくなれば失われた収入も含まれます。

万一自殺すれば、遺族から多額の賠償金を請求されることにもなります。

 

<企業の法的責任>

企業は、従業員が生命・身体等の安全を確保しつつ働けるよう必要な配慮をする義務(安全配慮義務)を負っています。

この義務の中には、アウティングが行われないようにする義務が含まれます。

つまり、個人情報をその内容に応じて必要な範囲内の社員だけで共有する、性的マイノリティやプライバシーの保護について社員教育を定期的に行うなどの配慮が求められています。

また、アウティングが業務の中で行われたのであれば、企業が使用者責任を負うこともあります。

これらの場合にも、アウティングされた人や遺族からの損害賠償請求が行われうることになります。

 

<就業規則での対応>

モデル就業規則の最新版(令和3(2021)年4月版)は、次のように規定しています。

 

【その他あらゆるハラスメントの禁止】

第15条  第12条から前条までに規定するもののほか、性的指向・性自認に関する言動によるものなど職場におけるあらゆるハラスメントにより、他の労働者の就業環境を害するようなことをしてはならない。

 

この中の「性的指向・性自認に関する言動によるものなど職場におけるあらゆるハラスメント」には、アウティングが含まれると解釈すべきです。

より明確にするのであれば、次のように規定することも考えられます。

 

【その他あらゆるハラスメントの禁止】

第15条  第12条から前条までに規定するもののほか、性的指向・性自認の暴露やこれらに関する言動によるものなど職場におけるあらゆるハラスメントにより、他の労働者の就業環境を害するようなことをしてはならない。

2021/05/02|1,168文字

 
YouTube就業規則がまもれないhttps://youtu.be/wePPDqqRX60

 

<知られざる就業規則>

「就業規則の内容を従業員に知られてしまうと権利を主張される」というような理由で、就業規則のファイルを見つからない所に保管している会社もあります。

しかし、就業規則を周知しないのは労働基準法違反ですし、周知しない就業規則というのは、たとえ所轄の労働基準監督署長への届出をしてあっても効力が無いのです。

そのため、会社から従業員に対して就業規則上の義務を果たすように求めることができませんし、不都合な行為に対してペナルティーを科すこともできないのです。

それでいて、就業規則が無くても、労働者に保障された法的な権利は、従業員から主張されたら会社は拒否できません。

 

<わかってもらえない就業規則>

就業規則というのは、なかなか従業員に見てもらえないものですし、条文の意味を説明しないと理解してもらえないことがあるものです。

かつて、自分の勤務先でふざけた写真を撮ったアルバイトがSNSに投稿した結果、閉店に追い込まれるような事件が相次ぎました。

たとえ、「会社の信用を傷付けた時」という規定が就業規則にあったとしても、アルバイトはその規定の存在を知らないかもしれませんし、知っていても自分の行為がその規定に当てはまるという理解が無かったのでしょうか。

入社と退職が盛んな時代ですし、法改正に合わせた就業規則の改定も頻繁でしょうから、少なくとも年に1回は就業規則の勉強会を繰り返す必要があるでしょう。

 

<ポンコツな就業規則>

政府が少子高齢化対策の継続的な推進や働き方改革に力を入れていますから、人を巡る法改正は毎年必ずと言っていいほど行われています。

これに対応できていない就業規則は多いことでしょう。

こうした流れとは別に、制服を廃止して長年経った今でも「勤務中は制服着用」という規定があったり、全館禁煙なのに「喫煙は定められた場所で」という規定が残っていたりします。

これでは、会社が本気でルールの整備をしていないことが明確ですから、従業員が就業規則を守る気持も薄れてしまいます。

 

<ありえない就業規則>

「セクハラを行ったら懲戒解雇」というありえない規定を見ることがあります。

それでいて、社内にセクハラの定義を定めるルールが無かったり、どのような言動がセクハラに当たるのかについて教育・研修が無かったりします。

セクハラにも程度の差があり、程度の軽いセクハラ行為で一律に懲戒解雇というのは、たとえ就業規則に規定があったとしても無効になります。

「唇、ツヤツヤだね」と言っただけでクビになりうる就業規則というのは恐ろしいです。

 

<解決社労士の視点から>

2年以上変更していない就業規則があれば、社労士のチェックが必要でしょう。

とりあえず必要な変更と届出をして、社内研修を行えば当面は安心です。

その後のことは、社労士と相談して決めれば良いことです。

2021/03/19|1,009文字

 

YouTube労働条件を確認しましょう

https://youtu.be/QzMHmif7cgY

 

<同一労働同一賃金の性質>

同一労働同一賃金は、働き方改革の一環として取組むべき課題とされています。

そして、企業に義務付けられている内容は、パート有期労働法(正式名称:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)に定められています。

この法律に違反した場合でも、労働基準法のように懲役や罰金といった刑罰が適用されるわけではなく、労働者側から企業側に損害賠償を請求する形で、金銭解決が図られることになります。

しかし、全くペナルティーが定められていないわけではなく、行政罰としての過料が定められていることには注意が必要です。

 

<10万円以下の過料>

労働基準法第15条第1項には、一定の労働条件の明示が定められています。

違反には30万円以下の罰金も定められています。

さらに、パートタイム・有期雇用労働者を雇い入れる際、労働基準法で定める事項のほか、特定事項と呼ばれる4つの項目「昇給の有無」、「退職手当の有無」、「賞与の有無」、「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口」を文書等により明示しなければなりません。〔パート有期労働法第6条第1項、同法施行規則第2条〕

違反には10万円以下の過料が定められています。

4つの特定事項のうち忘れがちなのは、「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口」です。

漏れなく明示するには、厚生労働省が公表している労働条件通知書(有期雇用型)のひな形の最新版を利用するのが良いでしょう。

また「相談窓口」を人事課の担当者など社内の人にすると、非正規労働者からは敬遠され、なかなか相談してもらえず、不満が大きくなって、いきなり弁護士に相談されてしまうということが起こりがちです。

パワハラ、セクハラなどの相談窓口と併せて、社外の専門家として顧問の社会保険労務士を指定したほうが安全です。

 

<20万円以下の過料>

厚生労働大臣から報告を求められ、これに対して報告しない、虚偽の報告をしたという場合には、20万円以下の過料が定められています。

もちろん、いきなり報告を求められることはありません。

事前に労働局長名で「パートタイム・有期雇用労働法に基づく報告の徴収について」という文書が事業主宛に届きます。

その後、所轄の労働基準監督署から、同一労働同一賃金への対応状況についての事情聴取があり、これに基づく行政指導があって、この指導への対応を報告させられるわけです。

 

解決社労士

2021/03/09|1,443文字

 

YouTubeコロナハラスメント

https://youtu.be/Y0ga4SznnTM

 

<生理休暇取得の権利>

「使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない」と規定され、これに違反すると30万円以下の罰金という罰則もあります。〔労働基準法第68条、第120条第1号〕

つまり、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を取るのは権利であり、使用者に当たる人がこれを妨げれば、それは労働基準法違反の犯罪ということになります。

ここで「使用者」には、個人事業なら事業主、会社なら会社そのもの、代表者、取締役、理事、人事部長、労務課長などが含まれます。〔労働基準法第10条〕

 

<パワハラとは>

パワハラは、職場での力関係に基づく嫌がらせです。

年齢、経験年数、能力、地位、権限、人気などのパワーを持った人が、自分から見てある側面で「劣る」と思える相手に対して、主に指導の名目で嫌がらせをします。

多少不快感や損害を与えたとしても、指導に伴うものはある程度仕方がないという勘違いが多発しています。

 

<パワハラになるかならないかの基準>

生理日の就業が著しく困難な女性が生理休暇を取得しようとした時に、「仕事を優先しろ」「使えない」などの発言をすることは、明らかにパワハラです。

また、無限定に漠然と「お前は生理休暇なんか取るな」と発言した場合には、生理日の就業が著しく困難な場合を含めて生理休暇の取得を妨げる発言ですから、権利の侵害でありパワハラになります。

 

これに対して、普通に勤務することが困難ではない程度の苦痛を伴う生理を理由に生理休暇を取得することや、生理中であることそのものを理由に生理休暇を取得することは、労働基準法も認めていません。

ですから、生理中の女性が朝から普通に勤務していて、お天気が良いので午後から遊びに行くため「生理休暇を取得したい」と言ったのなら、これに対して「今日は生理休暇を取るな」という指導は正当なものであり、パワハラにはならないのが一般です。

 

実際には、生理の苦痛は本人にしかわからないでしょう。

上司としては、女性から「生理休暇を取得したい」という申し出があれば、これを拒否できないことになります。

ただ、生理休暇を取得しておきながら、レジャー施設に出かけて絶叫マシンで楽しんでいる様子がSNSなどにアップされたら、不正に生理休暇を取得したものとして、懲戒処分の対象となりうるというのも事実です。

この辺りについては、女性社員に対する教育指導が必要でしょう。

 

<セクハラにもあたる場合>

セクハラは、性的なことについての嫌がらせです。

職場に限らず、性的なことに対する興味が特に強い人がいます。こうした人が、「いたずら」「からかい」のつもりで「嫌がらせ」をするとセクハラになるのですが、本人は道徳に反しないと思っているので、反省することなく繰り返します。

 

生理休暇について言えば、「生理の周期から考えて今日休暇を取るのはおかしい」「その歳で生理休暇を申し出るのは変だ」などという発言はセクハラになります。

これは、相手の人格の尊厳を無視して、踏み込みすぎた発言となるからです。

 

<解決社労士の視点から>

生理休暇など労働者の権利についての知識習得は従業員任せにはできません。

会社が教育研修を実施する義務を負っています。

また、パワハラ、セクハラ、マタハラについては教育だけでなく、就業規則などにその定義を明らかにし、懲戒処分の対象とすることも必要です。

こうした専門性の高いことは、信頼できる国家資格者の社労士にご相談ください。

2020/11/01|1,043文字

 

<直接の被害者への悪影響>

直接の被害者はセクハラを受けたことにより、その職場にいられなくなり退職することになったり、再就職が困難になったりします。

対人恐怖症など心理的後遺症が残り、長期にわたって回復しないこともあります。

企業としては、最終的には金銭解決を図るしかないのですが、被害者の一生を補償できるわけではありません。

 

<他の従業員への悪影響>

セクハラ行為を直接受けた従業員だけでなく、セクハラ行為を見聞きした従業員も被害者です。

ですから、直接の被害者が加害者を許したとしても、他の従業員に対する関係で、決して許されるわけではないのです。

従業員の勤労意欲低下と、職場秩序の乱れが生じます。

 

<企業全体への悪影響>

直接・間接の被害者の退職による戦力ダウンだけでなく、職場全体の生産性低下につながります。

組織力が適正に活かされなくなり、効率的な運営ができなくなります。

企業イメージの低下により、顧客も取引先も離れていきますし、金融機関からの評価も下がります。

もちろん被害者への損害賠償による金銭的損失も発生します。

 

<加害者への悪影響>

信用の失墜は職場に留まりません。

顧客や取引先に対する信用も失われます。

何より、家族からの信頼が失われるのが大きな打撃です。

被害者に取り返しのつかない傷を負わせたことが、被害者にとっても一生の傷となります。

加害者が会社から十分な教育を受けていなかったため、軽い気持で行為に及んでしまったというケースもあります。

こうなると、セクハラの加害者も会社との関係では被害者でもあります。

 

<セクハラの性質>

業務上必要なセクハラ行為というものはありません。

この点、会社の意向を受けて行った注意指導が、パワハラになってしまうことがあるのとは、全く事情が違っています。

仕事をするうえで、全く必要性が認められず、百害あって一利なしというのがセクハラの性質です。

何としても、阻止しなければなりません。

 

<セクハラの予防>

まず、就業規則などにセクハラの客観的な定義を明示することです。

これと併行して、セクハラについての社員教育をきちんとすることです。

また、セクハラの相談窓口を設けることです。

この相談窓口は、外部の第三者的な立場であることが望ましいのです。

そうでなければ、被害者も加害者も相談しにくいですし、社内の人が担当では客観的に対応できない必然性があります。

就業規則も社員教育も、そして相談窓口も、まとめて信頼できる社労士(社会保険労務士)に依頼してはいかがでしょうか。

 

解決社労士

2020/10/25|778文字

 

<従業員から>

従業員からの申し出により労働問題とされやすいのは、パワハラ、セクハラ、労働条件の不利益変更です。

これらは、従業員からの申し出があったとき、経営者が判断に困り、適切な対応ができないでいるうちに、社内で解決しきれない労働問題に発展することがあります。

会社に落ち度が無いという自信があれば、所轄の労働基準監督署に確認して、従業員に説明すれば良いでしょう。

そうでなければ、何かアクションを起こす前に、なるべく早く信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

<訴訟や労働審判への発展>

退職者からの、残業代請求、不当解雇、退職に伴う請求がメインです。

どう考えても円満退職だった退職者の代理人弁護士から、内容証明郵便が届いてビックリというパターンです。

在職中は会社に遠慮して言えなかった不平不満が、退職後に爆発するのですから意外性があります。

退職者ご本人にその気が無くても、ご家族やお知り合いの中には労働法に詳しい方がいらっしゃいます。

そして、この方が労働者の権利を強く主張すると、退職者が同調して会社に請求することもあります。

 

<複合的な形になるもの>

退職者から未払残業代の請求がある場合、パワハラによる慰謝料請求が加わったりします。

セクハラの被害者が退職させられ、加害者が会社に残り、これを不満とした退職者からの慰謝料請求に、未払残業代の請求が加わったりします。

パワハラの加害者として退職させられた人から、不当解雇を主張され、賃金、賞与、慰謝料を請求されることもあります。

権利の侵害を感じた退職者が弁護士に依頼すると、弁護士は依頼人に事実を確認し、これを法的に構成し、できる請求をすべてすることになります。

依頼人と弁護士との契約は、委任契約ですから、医師が治療にベストを尽くすのと同じように、弁護士も依頼人の権利実現にベストを尽くすわけです。

 

解決社労士

2020/08/30|897文字

 

<セクハラは犯罪になることがある>

社内でセクハラを受けたなら、その行為は強制わいせつ罪にあたる可能性があります。〔刑法第176条〕

わいせつ行為には、普通の人であれば嫌がるような行為すべてが含まれます。

たとえば、相手が嫌がっているのにもかかわらず、服を脱がせたり、キスをしたり、身体に触る行為は、全てわいせつ行為にあたります。

社長が行為者であれば、自由な意思で同意しているとは認められにくい場合が多いでしょう。

拒んだらクビにされると思い、仕方なく耐えている状態は、暗黙の脅迫がある状態ともいえます。

一般の社員が行為に及んだ場合よりも、犯罪の成立が肯定されやすいことになります。

 

<行為者の民事責任>

被害者に対して不法行為責任を負います。〔民法第709条〕

つまり、損害賠償責任を負うのです。

ここは、セクハラ行為者が社長でも他の従業員でも同じです。

 

<会社の民事責任>

会社も不法行為責任を負います。〔民法第44条第1項〕

まともに働ける環境を提供していないといえる場合なら、債務不履行責任も負います。〔民法第415条〕

「社長=会社」ではありませんから、社長がセクハラを行った場合には、会社も社長も責任を負います。

 

<被害者が取るべき行動>

・セクハラ行為の記録や証拠を残す。

・同じ行為者からのセクハラ被害者がいれば協力し合う。

・労働相談情報センターなどに相談する。

社長がセクハラを行う人物である場合、その権限の強さから、被害者が複数である可能性は高いでしょう。

一人では心細いですが、被害者が協力し合うことによって、解決しやすくなります。

また、セクハラの問題は、第一に社内で解決するのが原則です。

しかし、セクハラの相談窓口や担当者は、被害者の味方に付いてくれないかもしれません。

早めに社外の相談窓口に相談することをお勧めします。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

本気でセクハラ、パワハラ、マタハラなどを防止したい会社なら、相談窓口は社外の専門家に委託して、社内でもみ消されないようにするのではないでしょうか。

ハラスメントに限らず、働いている人たちの相談窓口として、信頼できる社労士をご検討ください。

 

解決社労士

2020/04/27|1,601文字

 

<日本語では>

英語のハラスメント(harassment)は、日本語の「いやがらせ」にあたります。

「いやがらせ」は、相手に対して、わざと不快感や損害を与える行為で、道徳に反するものを言います。

「いたずら」も近い意味を持ちます。

しかし、「いたずら」は第三者が見たときに笑えることもあるのですが、「いやがらせ」は道徳に反するので笑えません。

 

<セクシャルハラスメント>

これは「セクハラ」と略されることが多い「性的なことについてのいやがらせ」です。

職場に限らず、性的なことに対する興味が特に強い人がいます。

こうした人が、「いたずら」のつもりで「いやがらせ」をするとセクハラになるのですが、本人は道徳に反しないと思っているので、反省することなく繰り返します。

また職場では、部下が上司に対して愛想よく、従順で素直です。

これは立場上当然なのですが、上司が勘違いして部下から好かれていると思い込むことがあります。

上司は、部下が自分に魅力を感じ恋愛感情を抱いていると勘違いすることによって、その部下に対して、ある程度は性的な言動をすることも許されるだろうと思い込んでしまいます。

そして、対象となった部下は、立場上、その気が無いことをハッキリと言い出せずに、限界を超えるところまで従い耐えることになります。

セクハラは、業務上、全く必要の無い行為です。

加害者は、「コミュニケーションのために必要」などという勘違い発言をすることもありますが、これは社内教育の不足を示しています。

 

<パワーハラスメント>

これは「パワハラ」と略されることが多い「力関係に基づくいやがらせ」です。

年齢、経験年数、能力、地位、権限、人気などのパワーを持った人が、自分から見てある側面で「劣る」と思える相手に対して、主に指導の名目で「いやがらせ」をします。

多少不快感や損害を与えたとしても、指導に伴うものはある程度仕方がないという勘違いがあります。

職場では、上司と部下、先輩と後輩の関係で多く見られます。

社長対その他の社員という形で、社員が結託して社長にパワハラを行うこともあります。

怖いことに、セクハラを伴うパワハラも見られます。

それでも、行為者は自分の行為を許されていると思い込んでいます。

1つの行為の中に、必要な側面と、許されない側面が含まれているので、許されない側面に問題があるという理解が必要です。

 

<会社など使用者の責任>

職場で、セクハラ、パワハラ、マタハラ、その他のハラスメントが起きないよう、使用者がしっかり管理しなければなりません。

働いている人たちは、労働契約によって働いています。

雇い主の「働いてください。給料を支払います」という意思と、労働者の「働きます。給料を支払ってください」という意思の合致によって、労働契約が成り立っています。

ですから、会社側は労働者がきちんと働ける環境を整える義務を負っています。

また、労働者もきちんと働ける環境を侵害しない義務を負っています。

つまり、労働者がハラスメントをしない義務を負っているのと同じく、会社側もハラスメントを防止する義務を負っています。

万一、ハラスメントが発生すれば、その行為者と会社の両方が責任を負います。

ここでのポイントは、見つけ次第対応することだけが会社の義務ではなく、発生しないように、十分な教育を繰り返すことも会社の義務だということです。

この義務は特別なことではなく、労働契約の性質から当然のことなのです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

ハラスメントをなくすには、まず経営者の「許さない」という意志の表明が大切です。

これが無くては、何も始まりません。

そして教育と、相談窓口の設置が必須となります。

教育についても、相談窓口についても、社内で間に合わせるよりは社外の専門家に委託したほうが、はるかに効果的です。

ぜひ、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

解決社労士

そもそも会社の中で、性的な言動は仕事に全く必要ないのです。そんなもの潤滑油の働きもしません。徹底的に排除すべきです。

 

<セクシュアルハラスメントとは>

相手に不快感を与える性的な言動は、その相手の性別に関係なく、また、直接的な身体接触によるものだけではなく、言葉によって行われるものも、セクシュアルハラスメントとなります。

「相手の性別に関係なく」というのは、男性同士でも女性同士てもダメなものはダメということです。

さらに、わいせつな行為を強要したり、相手の名誉や社会的信用を傷つけたりすれば、犯罪として刑法上の責任が問われることがあります。〔刑法第176条、第230条など〕

そして、被害者に対する損害賠償責任を発生させることにもなります。〔民法第709条〕

男女雇用機会均等法では、職場の中でセクシュアルハラスメントの被害が発生しないよう、事業主が積極的に予防措置と事後対応を取ることを義務付けています。

防止すべきものとされているセクシュアルハラスメントは、性的な要求を拒否したことなどを理由に、職場で不利益な取扱いをする「対価型」だけでなく、性的な言動などによって職場環境を悪くする「環境型」のセクシュアルハラスメントも含まれます。

 

<事業主の責任>

事業主は、このようなセクシュアルハラスメント行為に対して厳正に対処すること、被害を受けたときの相談窓口があることなどについて、あらかじめ管理職を含む労働者に知らせておき、もし被害の申出があったら、適切な調査と対応をすることが義務付けられています。

このように職場でのセクシュアルハラスメントは、「個人の問題」では済まないものです。

適切な対応を怠った事業主に対しては、国の行政機関(労働局など)による助言・指導などが行われます。

 

<被害者の権利>

被害者は加害者に損害賠償を請求できるだけではなく、雇い主に対しても、加害者の使用者として、あるいは被害者本人への適切な環境整備を怠った義務違反として、損害賠償を請求することができます。〔民法第715条、第415条〕

セクシュアルハラスメントについては、事業主の責任を踏まえて、社内で解決することが望ましいといえます。

ですから、まずは社内の相談窓口や上司に相談することです。

もちろん、上司からの被害であれば、上司の上司に相談すべきです。

しかし、セクシュアルハラスメント問題について、会社が適切な対処をしてくれないときは、国の行政機関(東京労働局雇用均等室)や専門家(弁護士、社労士)などに相談してください。

特に、被害者が退職させられる異動させられるというのは不当な扱いなのですから、被害者を増やさないためにも無理のない範囲で行動していただけたらと思います。

 

2019.10.05. 解決社労士 柳田 恵一

<処罰しないで>

セクハラやパワハラの直接の被害者から「加害者を処罰しないでほしい」という申し出があった場合には、どのように対応したら良いのでしょうか。

被害を受けたその瞬間には大きなショックを受けたものの、後で冷静になってから、自分にも落ち度があったのではないか、ハラスメントとは言い切れないのではないかなどと考えが変わり、自分のせいで相手が懲戒処分を受けたら申し訳ないという気持ちになることもあるのです。

 

<ハラスメントの被害者>

さて、セクハラやパワハラの被害者とは誰でしょうか。

セクハラは、職場で性的な冗談やからかい、食事やデートへの執拗な誘い、身体への不必要な接触など、意に反する性的な言動が行われ、拒否したことで不利益を受けたり、職場の環境が不快なものとなることをいいます。

パワハラは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えられたり、職場環境を悪化させられる行為をいいます。

こうしてみると、職場環境が悪化し不快なものとなることによって、直接行為を受けた人だけでなく、その行為を見聞きした人も被害者になるということが分かります。

たとえば、店長が店員を殴り、その場に他の店員がいたのなら、その場に居合わせた店員全員がパワハラの被害者です。

 

<被害者の同意>

被害者の同意があったから許されるというのは、セクハラやパワハラが密室で行われ、加害者と被害者だけが事実を知っていて、他の人は見聞きしていないという状況が前提となるでしょう。

多くの人が事実を見聞きしていながら、全員がセクハラやパワハラに同意しているというのは、容易には考えられないことです。しかし、事後の承諾であれば、ありえないことではありません。

 

<懲戒処分の目的>

そもそも懲戒処分の主な目的としては、次の3つが挙げられます。

 

【懲戒処分の主な目的】

1.懲戒対象者への制裁

懲戒対象となった社員に反省を求め、その将来の言動を是正しようとする。

 

2.企業秩序の回復

会社に損害を加えるなど不都合な行為があった場合に、会社がこれを放置せず懲戒処分や再教育を行う態度を示すことによって、他の社員が納得して働けるようにする。

 

3.再発防止と労働者の安心

社員一般に対してやって良いこと悪いことの具体的な基準を示し、みんなが安心して就業できる職場環境を維持する。

 

こうしてみると、被害者から「処罰しないで」という申し出があり、ある程度被害者からの事後承諾があったとしても、懲戒処分の必要がなくなるわけではありません。

それでも、懲戒対象者への制裁の必要性は低くなりますし、企業秩序の侵害や労働者の不安は少なかったと評価できるでしょう。

ただ、再発防止の観点からはセクハラやパワハラを見逃すことができません。いつも被害者の事後承諾が得られるとは限らないからです。

 

<企業の取るべき対応>

最新版(平成31(2019)年3月版)のモデル就業規則には、次の規定があります。

 

(懲戒の事由)

第64条 2 労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。ただし、平素の服務態度その他情状によっては、第51条に定める普通解雇、前条に定める減給又は出勤停止とすることがある。

 

直接の被害者から「加害者を処罰しないでほしい」という申し出があったことは、この規定の中の「その他情状」に該当する事実です。

ですから、直接の被害者の申し出があったからといって、不問に付するというのではなく、情状の一つとして考慮し、場合によってはより軽い懲戒にすることもあるというのが、企業の取るべき対応だと考えられます。

 

2019.07.23. 解決社労士 柳田 恵一

<個別労働紛争解決制度>

個別労働紛争というのは、労働関係に関する事項についての、個々の労働者と事業主との間の紛争のことです。

これを解決する最終手段としては、裁判制度があります。しかし、これには多くの時間と費用がかかってしまいます。また、感情的なしこりが残るものです。

そこで、職場慣行を踏まえた円満な解決を図るため、都道府県労働局では、無料で個別労働紛争の解決援助サービスを提供しています。

さらに、個別労働紛争の未然防止、迅速な解決を促進することを目的として、「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」が施行され、次の制度が用意されています。

・総合労働相談コーナーにおける情報提供・相談

・都道府県労働局長による助言・指導

・紛争調整委員会によるあっせん

このうち「あっせん」については、社会保険労務士のうち、特定社会保険労務士(「特定」の付記を受けた社会保険労務士)が代理人となることができます。

 

<平成30(2018)年度の状況>

令和元(2019)年6月26日、厚生労働省は「平成30年度個別労働紛争解決制度の施行状況」をとりまとめ公表しました。

これによると、「いじめ・嫌がらせ」に関する民事上の個別労働紛争の相談件数が過去最高となっています。「民事上」というのは、金銭解決や社員としての地位確認などのことを指しています。「刑事上」であれば、犯罪としての側面についての相談ですから、主に警察が対応することになります。

「個別労働紛争解決制度」は、個々の労働者と事業主との間の労働条件や職場環境などをめぐるトラブルを未然に防止し、早期に解決を図るための制度ですが、厚生労働省は、今回の施行状況を受けて、総合労働相談コーナーに寄せられる労働相談への適切な対応に努めるとともに、助言・指導及びあっせんの運用を的確に行うなど、引き続き、個別労働紛争の未然防止と迅速な解決に向けて取り組んでいくとしています。

 

【平成30年度個別労働紛争解決制度の施行状況のポイント】

1. 総合労働相談件数、助言・指導の申出件数、あっせん申請の件数いずれも前年度より増加。

 総合労働相談件数は111万7,983件で、11年連続で100万件を超え、高止まり

 ・総合労働相談件数111万7,983件(前年度比1.2% 増)

 →うち民事上の個別労働紛争相談件数26万6,535件(同 5.3% 増)

 ・助言・指導申出件数9,835件(同7.1% 増)  

 ・あっせん申請件数5,201件(同 3.6% 増)

2. 民事上の個別労働紛争の相談件数、助言・指導の申出件数、あっせんの申請件数の全てで、「いじめ・嫌がらせ」が過去最高

 ・民事上の個別労働紛争の相談件数では、82,797件(同14.9%増)

 ・助言・指導の申出では、2,599件(同15.6%増)

 ・あっせんの申請では、1,808件(同18.2%増)

 ※いずれも過去最高の件数

 

<相談件数増加の意味>

いじめ・嫌がらせの相談が増えたということは、必ずしも実際にいじめ・嫌がらせの件数が増えたということを意味するものではありません。

むしろ、次のような原因が考えられるでしょう。

 

・相談件数の増加により、心理的に相談しやすくなってきた。

・パワハラ、セクハラなど個別のハラスメントについて、その内容が明確になってきた。

・ハラスメントについての知識が普及してきた。

・ハラスメント対策について、企業間の格差が大きくなってきた。

 

企業間の格差が大きくなってきたというのは、自分と同様のハラスメントを受けている人が、よその会社では適切に対応されているのに、自分の会社では対応してもらえないという形で実感されます。

企業によるハラスメント対策の情報は、ネットで簡単に入手できるようになってきています。

 

<企業にとって最低限の対策>

就業規則の中に、各ハラスメントの分かりやすい定義があって、全従業員が理解しているという前提が無ければ、その職場には確実にハラスメントが存在することでしょう。

なぜなら、被害者は会社に被害を申し出ることができませんし、ハラスメント行為者に対して、自信をもって注意できる人もいないからです。

また、ハラスメントの禁止規定と行為に対する懲戒規定が無ければ、注意されてもやめないのは仕方のないことです。問題社員にとって居心地の悪い会社にしなければ、問題社員は増えていってしまいます。

さらに、ハラスメントを受けたと思っている従業員の相談窓口が無ければ、いよいよ耐えられなくなった従業員は退職を申し出て、ハラスメント行為者と会社、場合によっては取締役を訴えることもあります。個人情報の保護や、被害の申し出を容易にする観点から、できれば社外の専門家を相談窓口にすることをお勧めします。

 

2019.07.03. 解決社労士 柳田 恵一

<ストレスの連鎖>

殺人事件や傷害事件が発生すると、警察は加害と被害の内容、両者間の因果関係を解明し、その一環として加害の動機を明らかにします。

しかし、動機となった「ストレス発散」のストレスの原因までは追究しません。

ひょっとしたら、加害者もまた誰かにいじめられていて、そのストレスを発散するために事件が起きたのかもしれません。

しかし、加害者の負っていたストレスまでは配慮しません。

ストレスとその発散は連鎖します。どこかで連鎖を止めないと、最後には弱者に大きな被害が生じます。

あくまでも例え話ですが、次のようなストレスとその発散の連鎖があったとします。

金融機関→社長→部長→課長→一般社員(弱者)

(上の連鎖の)課長→妻→息子→息子の同級生(弱者)

ある会社の社長が、金融機関から大きなストレスを与えられることで、社内では、ストレスのはけ口が、弱い一般社員に及びます。これがパワハラです。

一方で、その会社の課長が、そのストレスを家庭に持ち込み、息子がそのストレスを学校に持ち込むとイジメの原因になります。

もしも、ここで部長がストレスに耐え、課長にぶつからなければ、ストレスの連鎖が止まることになります。

 

<ストレスチェックの目的>

ストレスチェックというのは、ストレスについての質問票に、労働者が選択肢の中から選ぶ形で回答を記入し、それを集計・分析することで、ストレスがどのような状態にあるのかを調べる簡単な検査です。

労働者が50 人以上の事業所では、2015 年12 月から毎年1回、この検査を労働者に対して実施することが義務付けられました。〔労働安全衛生法66条の10〕

定期健康診断と同様に、契約期間が1年未満の労働者や、所定労働時間が通常の労働者の4分の3未満の短時間労働者は法的義務の対象外です。

労働者が自分のストレスの状態を知ることで、ストレスをためすぎないように対処したり、ストレスが高い状態の場合には医師の面接を受けて助言をもらったり、会社側に仕事の軽減などの措置を実施してもらったり、職場の改善につなげたりすることで、「うつ」などのメンタルヘルス不調を未然に防止するのが目的です。

決して、ストレスに弱い労働者を発見して退職を勧奨したり、降格の根拠を見つけたりするためのものではありません。むしろ、こうしたことが無いように、充分な配慮が求められています。

結局、ストレスチェックの目的はストレスがたまりやすい職場を発見し、これを改善することにあると思います。

 

<ストレスがたまりにくい職場>

すべては、コミュニケーションによる解決が可能だと思います。

上の「→」で結ばれた間に、ストレスの原因となったことについて、具体的な情報の伝達があればストレスの連鎖は止まります。

なぜ怒っているのか、不安なのか、その原因についての説明が大事です。

会社の中で、ストレス発散と思われるパワハラなどを本気で防ぎたいのであれば、コミュニケーションの仕組みを見直すことが有効です。

「みんなで飲みに行って話し合えばわかりあえる」という昭和時代ではなくなりました。あくまでも勤務時間帯に使える仕組みを構築しましょう。

 

2019.04.22. 解決社労士 柳田 恵一

<セクハラとは>

セクハラに関する厚生労働省の説明は、次のようにむずかしいものです。

 

セクシュアルハラスメントの略で、「職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否するなどの対応により解雇、降格、減給などの不利益を受けること(対価型)」または「性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に悪影響が生じること(環境型)」をいいます。

 

これによると、労働者が「不利益を受けること」あるいは「悪影響が生じること」という実害の発生が、セクハラ成立の条件のようにも見えます。しかし、企業としてはセクハラを未然に防止したいところです。

ですから、「不利益を受ける恐れ」や「悪影響が生じる恐れ」があれば、セクハラの成立を認めるべきでしょう。

 

<教育不足>

このように、セクハラの説明がむずかしいと、行為者に対して「あなたのしたことはセクハラです」と言ったところで納得されません。

これでは、反省を求めることもできません。

行為者の言い分を聞いているうちに、「あるいは被害を訴えている人の思い違いではないか」とさえ感じかねません。

これは、行為者も対応する人も、何がセクハラに当たるのかについて理解が不足しているからです。

会社がセクハラの定義を定め、具体的な事例を示しながら繰り返し研修を実施しなければ、理解は進まないでしょう。

 

<懲戒処分>

会社としては、セクハラの訴えがあり、事実が確認されたなら、行為者に対する懲戒を考えざるを得ません。

まさか、被害者を移動させたり退職させたりというわけにはいきません。

そんなことをしたら、ネット社会の今、会社の評判は地に落ちてしまいます。

さて、モデル就業規則の最新版(平成30(2018)年1月版)は、次のように規定しています。

 

(セクシュアルハラスメントの禁止)

第13条 性的言動により、他の労働者に不利益や不快感を与えたり、就業環境を害するようなことをしてはならない。

 

もちろん、懲戒処分をするには、就業規則の懲戒規定が具体的に対象としている行為であることが条件となります。

就業規則に規定の無いことや、規定があっても理解されないことで懲戒処分をされたのでは、たまったものではありません。

こんなことをされた社員は、会社に対して慰謝料を含め損害賠償の請求をするのも当然です。

それだけに、就業規則の懲戒規定は、誰にでもわかるように具体的なものでなければなりません。

また、懲戒規定は禁止規定を前提にしています。

禁止規定の表現が抽象的であれば、別途、入社時と定期の研修会などが必要になります。

あるいは、従業員の誰が読んでも、どのような行為がセクハラになるのかが、わかる内容にしておかなければなりません。

 

<会社の義務>

結局のところ、会社としては次のことを怠っていれば、責任を果たしたことにはなりません。

 

・セクハラの定義を明らかにする。

・具体例を示し全従業員にセクハラについての教育を定期的に繰り返す。

・就業規則にセクハラの禁止を規定する。

・就業規則にセクハラの懲戒処分を規定する。

 

<結局セクハラとは>

ある行為があって、その様子をビデオ撮影したとします。それを見た家族、恋人、友人が、性的な面で不快感を示すなら、それはセクハラです。

たとえ行為者が、自分自身の主観で納得できないとしても、その行為を見た第三者が不快に思うのであれば、セクハラの疑いは晴れないことになります。

我々が仕事をするうえで、人に接する場合、その人の家族や友人が見たら不快に思うことは無いのかということを、常に意識して行動しなければなりません。

 

2019.03.06.解決社労士

<セクハラ>

セクシュアルハラスメントの略で、「職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否するなどの対応により解雇、降格、減給などの不利益を受けること(対価型)」または「性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に悪影響が生じること(環境型)」をいいます。これが厚生労働省による説明です。

これによると、労働者が「不利益を受けること」あるいは「悪影響が生じること」という実害の発生が、セクハラ成立の条件のようにも見えます。しかし、企業としてはセクハラを未然に防止したいところです。

 

<企業の責任>

法令により、企業にはセクハラ対策が義務付けられています。〔男女雇用機会均等法11条〕

従業員からセクハラ被害の申し出があれば、企業は誠実に対応しなければなりませんから、被害の申し出を受け付けるための窓口を設置する義務もあります。

就業規則にセクハラの禁止規定と、これに対応する懲戒規定も必要になります。

 

<就業規則にセクハラの定義>

まず就業規則にセクハラの定義を定めなければ、従業員には何が禁止されているのか不明確ですし、それらしき行為があっても確信が持てなければ、誰も注意することができないのですから被害者は救われません。

「自分の言動が、セクハラとなるかどうかわからない。要は、相手の受け取り方次第なので、ハッキリしない」というのが加害者側の理屈でしょう。

これを許さないためには、「自分と相手との間柄を前提として、客観的に見て、相手や周囲の社員が性的な意味合いを感じ不快に思う言動」はセクハラに該当するというような具体的で明確な定義が必要なのです。

社内での相手に対する言動が、周囲の社員にとって、あるいは、相手の家族にとって、性的な意味合いで不快感を与えていれば、セクハラになると思います。

 

<セクハラ発生のメカニズム>

そもそも部下や後輩が自分に対して従順で素直で協力的なのは、自分に好意を寄せているからではなくて、立場上、仕方が無いからです。決して、二人の間柄が、仕事上の立場を超えたわけではありません。ここを勘違いしている方が、セクハラに走っているように思います。

セクハラ防止のための教育研修の内容には、このセクハラ発生のメカニズムも加える必要があるでしょう。

 

<企業として必要な対策>

セクハラに限らず、パワハラでもマタハラでも、ハラスメント対策としては、次のことが必要です。

・ハラスメントは許さないという経営者からのメッセージ

・就業規則の懲戒処分に関連規定を置く

・実態を把握するための体制と仕組みの整備

・社員教育

・再発防止措置

・相談窓口の設置

この中で、相談窓口としては、厚生労働省が社会保険労務士など社外の専門家を推奨しています。なぜなら、社内の担当者や部門では、被害者が申し出をためらいますし、被害拡大やもみ消しの恐れもあるからです。

まずは、経営者がハラスメントの問題を重くとらえ理解し、社内に「許さない」というメッセージを発信するのが第一歩です。

 

<社外での解決>

法は、企業に対して自主的解決を求めています。〔男女雇用機会均等法15条〕

しかし、被害者の申し出にもかかわらず、企業が納得のいく対応をしてくれない、また、企業としてはきちんと対応したのに、被害者が納得してくれないという場合には、労働局に申請して紛争調整委員会に調停をしてもらうことができます。

調停では、委員会から具体的な事情を踏まえた和解案が提示されます。

双方がこれに従えば、一件落着ですが、そうでなければ訴訟に発展することもあります。

特定社会保険労務士は、この調停での一方当事者の代理人となる資格を持っています。

ハラスメントの防止策や社員教育から、万一紛争に発展した場合の解決まで、社内でまかなえない部分については専門家である社会保険労務士にご用命ください。

 

2018.12.25.解決社労士

<労働政策審議会>

平成30(2018)年11月19日、労働政策審議会雇用環境・均等分科会(旧雇用均等分科会)で、女性の活躍の推進のための対策及びパワーハラスメント防止対策等についての審議が行われ、配布資料も公開されています。

労働政策審議会は、労働政策について審議を行う委員会です。厚生労働省に置かれている審議会のひとつで、厚生労働大臣の諮問機関ですから、ここでの審議が労働関係法令の改正案に反映されます。労働政策審議会に関する情報を把握することにより、今後の政府の動きや企業の取り組むべき課題を先取りすることができます。

 

<セクハラ防止対策の実効性向上>

これについては、4項目に分けて総論が述べられています。枠内は原文をそのまま引用したものです。

 

【セクハラ対策の必要性】

セクシュアルハラスメントは許されない行為であり、あってはならないもの。セクシュアルハラスメントを受けた労働者が相談を行い易くするとともに、二次被害を防止するため、労働者がセクシュアルハラスメントに関する相談を行ったことを理由として不利益取扱いが行われないよう徹底することが必要。

 

セクシュアルハラスメントは、「職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否するなどの対応により解雇、降格、減給などの不利益を受けること(対価型)」または「性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に悪影響が生じること(環境型)」をいいます。これが厚生労働省による説明です。

これによると、労働者が「不利益を受けること」あるいは「悪影響が生じること」という実害の発生が、セクハラ成立の条件のようにも見えます。しかし、企業としてはセクハラを未然に防止したいところです。

ましてや、セクハラ被害者が会社の窓口に相談したところ、情報が社内に漏れてしまい、被害が拡大するという二次被害の発生は確実に防止しなければなりません。二次被害が一度でも発生すれば、怖くて会社の窓口に相談できなくなりますから、セクハラ被害が更に拡大する恐れが生じてしまいます。できれば、社会保険労務士のような社外の専門家を相談窓口にすることをお勧めします。

 

【社外からのセクハラ、社外へのセクハラ】

社外の労働者からセクシュアルハラスメントを受けた場合や、社外の者に対してセクシュアルハラスメントを行った場合の対応をより一層明確化し、取組を徹底することが必要。

 

多くのセクハラ対策は、被害者と加害者の両方が社員の場合を想定しています。

実際、多くのハラスメントは社員同士で問題となります。

これを放置することは、会社にとって明らかにマイナスですから、積極的な対応をすることに躊躇する理由はありません。

 

しかし、お取引先の社員からのセクハラであれば、今後の取引関係を考えて、事なかれ主義に走ってしまう危険があります。

社員が被害者となった場合には、社長自らお取引先に出向いてハラスメントの事実を確認し、事実があれば取引関係を解消する毅然とした態度が必要です。

お取引先も理解を示さざるを得ませんし、社員は会社の態度に共感するでしょうし、こうした情報が外部に漏れても批判は生じにくいものです。

長い目で見れば、会社にとってのプラスが大きいといえます。

 

反対に、社員からお取引先に対するセクハラの疑いが生じたら速やかに事実を確認し、真実であったなら、社長自らお取引先に出向いてハラスメントの事実について報告とお詫びをする必要があります。

 

加害者・被害者が社内に留まらなくても、客観的に見れば人権侵害(嫌がらせ)であることに変わりはありません。

多くの場合、慰謝料を含めた損害賠償請求の対象となりますし、内容によっては犯罪となり刑法で罰せられることもあります。

ですから、これを防止すべきこと、万一発生したら善処すべきことに差異はありません。

 

取引先との間で発生するセクハラを定義すると、次のようになるでしょう。

「性的言動により、取引先の労働者に不利益や不快感を与えたり、就業環境を害するようなこと」

念のため、就業規則に規定しておきたいところです。

また、社員を守るため、取引先からのセクハラが疑われる事実があれば、上司や社内の相談窓口に報告する義務も規定すべきです。

どちらも、社員と会社を守るための規定ですから、ぜひ就業規則に加えておくことをお勧めします。

 

【企業の取組】

セクシュアルハラスメント防止対策の実効性向上に加え、男女雇用機会均等法に沿った雇用管理の実現やポジティブ・アクションの推進に向けて、企業の実効性ある取組を促すことが必要。

 

今後、労働政策審議会では、各企業での男女雇用機会均等法に沿った雇用管理の実現やポジティブ・アクションの推進に関する実効性ある取組を促すため、社内でその業務を担当する労働者(男女雇用機会均等推進者)について、選任するよう努めることを法律に規定してはどうか、その推進者の役割に、女性活躍推進法に基づく行動計画策定や情報公表の取組の推進も加えてはどうかということが議論される予定です。

 

ポジティブ・アクション (positive action)は、肯定的差別(positive discrimination)と肯定的措置(affirmative action)を組み合わせた和製英語です。

このうち肯定的措置(affirmative action)というのは、弱者集団の不利な現状を把握し、歴史的経緯や社会環境を踏まえて是正するという改善措置を指します。

弱者集団については、民族、人種、出身などによる差別が問題となるのですが、日本では特に女性差別が問題とされ、厚生労働省が中心となって女性の活躍や男女格差解消を推進しています。

具体的な肯定的措置としては、就職や昇進での特別な採用枠の設置や試験点数の割り増しなどの直接的な優遇措置があります。

 

【法律による対応】

セクシュアルハラスメントは許されない行為であるという趣旨を明確にする観点から、法律でセクシュアルハラスメントを禁止すべきという意見がある一方、そうした規定を設けることについては、民法等他の法令との関係の整理や違法となる行為の要件の明確化等の課題があることから中長期的に検討することが必要との意見がある中で、どのように考えるか。

 

パワハラは、次の2つが一体となって同時に行われるものです。

・業務上必要な叱責、指導、注意、教育、激励、称賛など

・業務上不要な人権侵害行為(犯罪行為、不法行為)

行為者は、パワハラをしてやろうと思っているわけではなく、会社の意向を受けて行った注意指導などが、無用な人権侵害を伴っているわけです。

 

しかしセクハラは、業務上不要な人権侵害行為(犯罪行為、不法行為)が単独で行われるケースが多く、行為者が会社の意向を受けて行うこともありません。

会社にとって有益な部分は無いのですから、セクハラは徹底的に排除すべきです。むしろ、セクハラの徹底排除が会社にとって有益です。

 

セクハラ行為は、刑法上の犯罪であって刑事事件とされたり、民法上の不法行為であって損害賠償の請求対象となったりします。

また、セクハラに耐えられず退職の申し出をした場合には、民事上その意思表示の有効性が問題となります。

ですから、刑法にセクハラ罪というものを新設したり、民法にセクハラ関係の規定を加えたりしなくても、現状の法令で十分対応できるのです。

ただ、こうしたことを分かりやすくするのが難しいのです。

今のところは、専門家に具体的な事情を明らかにして相談するのが現実的な対応だと思われます。

 

2018.11.24.解決社労士

<懲戒処分の時効>

懲戒処分について、消滅時効期間を定める法令はありません。

会社の就業規則にも「○年以上経過した事実に対する懲戒処分は行わない」などの規定は無いでしょう。

ただ、懲戒処分は労働契約に付随するものですから、次に示す民法の基本原則が適用されます。

 

(基本原則)第一条 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。

2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。

3 権利の濫用は、これを許さない。

 

つまり、いくら会社に懲戒権があるからといって、ずいぶん前の事実について懲戒処分を行うことは、不誠実でもあり権利の濫用ともなりうるので許されません。

 

<懲戒と刑罰>

刑事訴訟法には、公訴時効についての規定があります。

犯罪が終わってから、一定期間を過ぎると検察官が公訴を提起できなくなります。

会社による懲戒処分は、国家権力による刑罰とは違いますが、その目的は共通しています。

 

【懲戒処分の目的】

・懲戒対象となった社員に反省を求め、その将来の言動を是正しようとすること。・会社に損害を加えるなど不都合な行為があった場合に、会社がこれを放置せず懲戒処分や再教育を行う態度を示すことによって、他の社員が納得して働けるようにすること。

 

何が許され何が許されないのか社員一般に対して基準を示し、みんなが安心して就業できる職場環境を維持するためには、就業規則の懲戒規定が具体的でわかりやすいことが必要です。

そうでなければ、懲戒対象者が処分に納得せず、会社を逆恨みすることもあります。これでは、懲戒処分の目的が果たされません。

社会保険労務士に報酬を支払ってでも、それぞれの会社にピッタリの就業規則を作る必要があることは、懲戒規定だけを考えても明らかです。

 

<実際の公訴時効期間>

セクハラについて見ると、現在の刑事訴訟法では次のように規定されています。

30年 ― 強制性交等致死罪、強制わいせつ致死罪

15年 ― 強制性交等罪

3年 ― 名誉毀損罪、暴行罪、過失致傷罪、脅迫罪

1年 ― 侮辱罪、軽犯罪法違反罪

しかも、一部の公訴時効期間は、平成16(2004)12月の刑事訴訟法改正により、延長されています(翌年1月1日施行)。

こうしてみると、被害者が亡くなったような重大なケースを除き、20年前のセクハラで懲戒処分を行うというのは、懲戒権の濫用となる可能性が高いでしょう。

 

<時代背景からすると>

日本でセクハラという言葉が使われるようになったのは1980年代半ばだとされています。

しかし、男女雇用機会均等法が改正され、性的嫌がらせへの会社の配慮についての規定が置かれたのが平成9(1997)年です。

20年前というと、行為者がセクハラについての社員教育を受けていなかった可能性が高く、また、就業規則にもセクハラに対する懲戒処分の規定が無かった可能性があります。

行為の当時、就業規則に規定が無かったのならば、後から新たに規定ができても、これを根拠に懲戒処分をすることはできません(不遡及の原則)。

 

2018.09.28.解決社労士

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