犯罪被害者休暇を設けましょう

2021/09/02|1,087文字

 

<犯罪による被害>

犯罪には侵害される「利益」があり、刑法などはその「利益」を守るために刑罰を規定しています。

この「利益」は、保護法益などと呼ばれています。

しかし、犯罪によって侵害される利益は、法令によって保護が予定されている利益にとどまりません。

たとえば、窃盗罪の被害者は財産上の利益を奪われるだけでなく、盗まれたものに対する愛着心や、被害に遭ったショックなどにより、精神的な被害も受けています。

 

<二次被害>

このように犯罪の被害者は、二次被害を受けています。

犯罪の被害者となったことによる精神的ショックや身体の不調、医療費の負担や失業による経済的損失、捜査協力や裁判に関わることによる精神面や時間の負担、うわさ話などによる精神的な被害など、その範囲は広範に及びます。

こうしたことにより、欠勤が発生したり、仕事の能率が低下することは、容易に想定されるのですが、こうした不利益から社員を守れるのは会社しかありません。

 

<犯罪被害者休暇の必要性>

犯罪被害者の方々が仕事を続けられるようにするため、被害回復のための休暇制度の導入が求められます。

年次有給休暇の取得だけでは日数が足りないかもしれませんし、入社後半年未満などで年次有給休暇が無い社員は欠勤になってしまいます。

実際に出勤できなくなる事情としては、警察への届出、事情聴取、証拠提出、病院での受診、弁護士との相談・打合せ、裁判への出廷・傍聴などがあります。

特に裁判となると、年に10回以上法廷が開かれるなど、被害者の負担は大きいものです。

なにより、本人に責任の無いことで、たまたま犯罪の被害者となり、勤務が困難となったことにより、会社が貴重な人材を失うというのは避けなければなりません。

会社に犯罪被害者休暇の制度を設けて、こうした事態を防ぎましょう。

 

<就業規則の規定例>

(犯罪被害者休暇)

第●条 会社は、犯罪の被害を受けた従業員の心身の回復を図り、早期に通常の業務に専念できるようにすることを目的として、  日を限度に有給の休暇を与える。

2 前項の休暇は、従業員が次の理由により止むを得ず勤務できない場合に、これを与えるものとする。

・犯罪の被害を受けたことによる心身の治療のための通院

・犯罪被害者としての警察からの事情聴取、裁判への出廷・傍聴

 

上記の例では「有給の休暇」としていますが、無給とする場合であっても、年次有給休暇を付与する場合の出勤率の計算にあたって出勤扱いにするとか、人事考課にあたって欠勤扱いにしないとか、退職金の計算にあたって勤続期間から控除されないなどの利益がありますから、決して無意味ではありません。

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