納得できない雇止め

2021/09/18|1,262文字

 

雇止めの有効性

 

<雇止め(やといどめ)とは>

会社がパートやアルバイトなど有期労働契約で雇っている労働者を、期間満了時に契約の更新を行わずに終了させることを「雇止め」といいます。

一定の場合に「使用者が(労働者からの契約延長の)申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす」という抽象的な規定があります。〔労働契約法第19条〕

これは、数多くの裁判の積み重ねによって作られた「雇止めに関する法理」という理論を条文にしたものです。ですから、雇止めがこの理論による有効要件を満たしていなければ、裁判では無効とされ、有期労働契約が自動的に更新されることになります。

 

<雇止めの有効性の判断要素>

雇止めは、次のような事情が多く認められるほど、有効と判断されやすくなります。

1.業務内容や労働契約上の地位が臨時的なものであること。

2.契約更新を期待させる制度や上司などの言動が無かったこと。

3.契約更新回数が少ないこと、また、通算勤続期間が短いこと。

4.他の労働者も契約更新されていないこと。

5.雇止めに合理的な理由が認められること。

 

<会社の義務>

契約期間の終了間際になってから雇止めの話を切り出したり、事前に充分な説明が無かったりすれば、それだけで「社会通念上相当でない」と判断されます。

ですから、雇止めをする事情が発生したら、対象者には早く説明してあげることが大切です。

上記1.については、労働条件通知書や就業規則の規定を示せば足りることが多いでしょう。

万一、就業規則が無く労働条件通知書の交付を忘れていたような場合には、説明のしようがありません。

口頭で伝えてあったとしても、労働条件を書面で労働者に通知することは法的義務なので、裁判になったら負けてしまいます。

上記2.については、有期契約労働者から契約更新の期待について話があれば、その範囲内で事実を確認すれば足ります。

上記3.4.については、事実を確認して有期契約労働者に示せば良いことです。

問題となるのは、上記5.の合理的な理由です。

ここでいう「合理的」とは、法令の趣旨や目的に適合するという意味だと考えられます。

法令の趣旨や目的は、法令の条文と裁判所の解釈が基準となります。

会社側の解釈も労働者側の解釈も基準とはなりません。

判断が分かれた場合には、早い段階で社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

会社は以上のような説明義務を負っていますが、有期契約労働者が納得することまでは求められていません。

そのため、説明文書を用意しこれを交付して説明するのが得策です。

説明義務を果たしたことの証拠となるからです。

 

<労働者が雇止めに納得できない場合>

会社側が上記のような説明をしない場合には、きちんと説明するよう求めましょう。

それでも説明が無い場合や、説明の内容がおかしいと感じたら、不当解雇を疑って、社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

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