2024/01/11|1,283文字
<更新の有無を伝える必要がある場合>
有期労働契約であれば、契約期間満了により雇用が終了するのが原則です。
ですから、もともと更新が無い契約であれば、あえて更新が無いことを伝える必要はありません。
反対に、必ず更新がある契約の場合にも、これを伝える必要はありません。
問題は、更新の「可能性」があるという契約にした場合です。
この場合には、なるべく早く更新の有無を決定して、対象者に伝えるのが望ましいわけです。
それでも、契約を更新する場合であれば、契約期間満了の直前に契約更新を伝えても大きな問題にはなりません。
しかし、契約の更新をせず打ち切る場合には、これを「雇止め」と呼び、一定の場合には、その予告が義務づけられています。
<雇い止めの予告>
雇い止めの予告が義務となるのは、次のような場合です。
・労働契約を3回以上更新している場合
・1年を超えて継続勤務している場合
・1年を超える労働契約の場合
これらの場合に事業主は、少なくとも期間満了の30日前までに、雇止めの予告をしなければなりません。
<理由の明示>
雇い止めの予告をしたのに対応して、対象者から雇い止めの理由について証明書を請求された場合には、遅滞なく交付しなければなりません。
退職後に請求された場合でも、事業主には交付義務がありますが、あくまでも請求があった場合のみの義務となります。
雇い止めの理由の例としては、次のものが挙げられます。
・前回の契約更新時に本契約を更新しないことが明確に合意されていたため
・契約締結当初に定めた契約更新回数の上限に達したため
・閉店など事業縮小のため
・業務を遂行する能力が十分ではないと会社が判断したため
雇止めの理由は、わかりやすく事実に沿った理由を示す必要があります。
誤解を生じる表現だと、これが元で訴訟トラブルに発展することもあります。
退職後は特にそうですが、「雇止め理由書」を郵送して終わりにするのは危険です。
せめて電話で、できれば面談で説明したいものです。
<トラブルを防止するには>
雇止めというのは、本当に訴訟トラブルを発生しやすいものです。
決まりきったルールを守るだけではなく、プラスアルファのトラブル防止策をお勧めします。
まず、雇止めの予告にあたってのトラブルを防ぐには、最初の採用のときと、契約更新のときに、次回の契約更新の条件を具体的に示しておくことが必要です。
対象者から反論されたり、疑問を出されたりするような条件では、具体性に欠けるということになります。
また、雇止めの理由を示したことによって、新たなトラブルを発生させないようにするには、その理由が客観的に合理的なものであって、世間一般の常識からしても「やむをえない」といえるものであることが必要です。
その基準は、労働法や裁判例を参考にすれば明らかになるものです。
<実務の視点から>
もし社内に専門の担当者がいないのであれば、しろうとの「常識」で考えず、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。
それぞれの会社と業務内容に応じた対策をとることによって、リスクを大幅に軽減し、経費を削減することができます。