労災対策は証拠を残しておくことも大事です

2021/04/20|1,532文字

 
YouTube労災防止策の落とし穴

 

<企業の労災防止>

各企業は、労災事故の発生を防ぐため、安全教育、設備・機械・器具の点検、安全のためのルールの設定と遵守指導に取り組んでいます。

業務災害は、新人とベテランに多いものです。

新人はまだ良くわかっていないからですし、ベテランは昔教育されただけで、その後教育されていないこともありますし、本人が油断していることもあります。

また通勤災害は、交通機関や道路の改善などは無理ですが、交通安全教育、通勤経路の危険個所についての情報提供などによって、間接的に防止するよう努めています。

 

<労災防止の効果>

労災防止の効果としては、労災事故の減少・軽減による会社資産の保護、労働力の確保、従業員の安心などがあります。

そして労働者の安心は、定着率の向上、応募者の増加、会社の評判の上昇をもたらしますから、企業は本気で労災防止に取り組むべきなのです。

 

<忘れがちな形式面の対策>

たとえば、所轄の労働基準監督署が企業に調査(臨検監督)に入ったとします。

そして、その企業では労災防止策が徹底されていて、数年にわたって労災事故が無かったとします。

対応に当たった社員が、月1回労働安全研修会を行っていることを説明しても、労働基準監督官は証拠が無ければ説明内容を安易に信じるわけにはいきません。

監督官が報告書に「毎月研修会を実施していると聞きました」と書くわけにはいかないのです。

同様に、毎日朝礼で安全対策の確認をしていて、従業員は設備・機械・器具の使い方や注意点をしっかり頭に入れていたとしても、証拠が無ければそうした対策が徹底されているとは認定されません。

むしろ、労災保険の給付請求書が提出されないのは、違法な労災隠しが行われているのではないかと疑われかねないのです。

 

YouTube労働基準監督官の行動規範

 

またたとえば、不幸にして死亡事故が発生し、遺族から損害賠償を求められたらどうでしょう。

企業としてできる対策をきちんと行い、死亡した被災者にも定期的に十分な教育をしていたにもかかわらず、たまたま本人が想定外の不注意で事故を起こしてしまったような場合でも、証拠が無ければ裁判では企業の労災事故防止に向けた努力を主張できないのです。

こうなると、企業の負う賠償額はかなり高額になってしまいます。

企業の存続すら脅かすかもしれません。

 

<証拠を残すとは>

企業が労災事故の発生防止に努めているという証拠を残しておくには、それを意図して行わなければできるものではありません。

 

社内研修を行うのであれば、社内研修の案内・資料・参加者名簿を残す準備が必要です。

参加者名簿は、参加者のひとり一人から署名を得ておくのが良いでしょう。

また、マニュアルなど参照しなくても問題なく作業できる従業員ばかりの職場であったとしても、すぐ参照できる所にマニュアルを保管しておくべきです。

「危険!」「熱い!」などの表示は、それ自体が本当に労災防止に役立つものではなくても、労災防止に努めている証拠として積極的に施しておくべきです。

 

また、交通ルール・自転車マナー・危険個所情報の掲示も有効です。

通勤災害の防止にも取り組んでいる資料を示しておくことになります。

実際には、通勤災害についてまで企業が責任を負うことは稀です。

しかし、勤務中の自動車・自転車の使用や移動中の歩行でケガをした場合には業務災害になりますから、こうした対策も必要でしょう。

 

<解決社労士の視点から>

労働基準法や労働安全衛生法などにより、作成・保管を義務付けられている書類は多いものですし、上記のように法的義務の無いものであっても、作成・保管が企業防衛に必要なものもあります。

こうしたことを一括してチェックするには、信頼できる国家資格者の社会保険労務士(社労士)に調査をご用命ください。

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