正社員以外の健康診断

2021/03/13|1,494文字

 

<正社員以外の労働者と健康診断>

企業は、常時使用する労働者に対し、労働安全衛生法に定める基準により、健康診断を実施しなければなりません。

たとえ就業規則に規定がなくても、この実施義務は免れることができません。

労働安全衛生法に定める対象者の基準は次の2つです。

両方の基準を満たす人については、健康診断の実施義務があります。

1. 期間を定めないで採用されたか、期間を定めて採用されたときでも1年(深夜業を含む業務、一定の有害業務に従事する人は6か月)以上引き続き使用(または使用を予定)されていること。

2. 1週間の所定労働時間が、その企業で同種の業務に従事する正社員の4分の3以上であること。

 

また、1週間の所定労働時間が正社員の4分の3未満の労働者であっても、上記1.の要件に該当し、1週間の所定労働時間が正社員の2分の1以上であれば、健康診断を実施することが望ましいとされています。

努力義務です。

 

<実施義務のある健康診断>

実施しなければならない健康診断は次のとおりです。

1. 常時使用する労働者に対しては、雇入れの際に行う健康診断、及び1年に1回定期に行う健康診断。

2. 深夜業に常時従事する労働者に対しては、その業務への配置替えの際に行う健康診断、及び6か月に1回定期に行う健康診断。

3. 一定の有害な業務に常時従事する労働者に対しては、採用、及びその業務への配置替えの際と、その後に定期で行う特別の項目についての健康診断。

4. その他必要な健康診断。

 

<健康診断の費用>

法律によって定められた健康診断は、実施することが企業に義務付けられていますから、その費用は企業が負担することになります。

これに対し、法律上義務付けられていない健康診断や、法定の事項以外の検査を希望者に実施する場合の費用負担については、労働契約や就業規則などによって決まることになります。

なお、健康診断を受けてから3か月を経過していない人を採用する場合で、その健康診断の結果を提出したときは、企業は健康診断を省略できることになっています。

このため、企業から採用前に自分で健康診断を受け、その結果を提出するよう求められることがあります。

この費用については、必ず企業が費用負担すべきとまではいえません。

 

<健康診断とプライバシー>

企業は、健康診断を実施した際に、結果を従業員に通知する義務があり、その結果に基づいて、従業員の健康管理や適切な配置転換などの措置を講じなければなりません。

また、健康診断に関する情報は重要な個人情報であることから、その取扱いは慎重にし、外部に漏れないようにしなければなりません。

なお、企業が実施する健康診断を受けたくない人は、自分で必要な事項の健康診断を受け、その結果を提出することもできます。ただし、費用については本人負担にしてもよいとされています。

 

<解決社労士の視点から>

企業は、健康診断の実施結果を5年間保管する義務を負っています。

事業主の方が、従業員の個人情報、特に身長や体重などのデータを取得することについて、ためらうことがあります。

しかし、企業には労働者の安全配慮義務があります。

遠慮していては、義務を果たせないことになってしまいます。また、健康診断の結果票が、後々障害年金の請求に役立つこともあります。

健康診断の実施と、結果の保管はきちんとしましょう。

今まで健康診断の実施対象者がいなかった企業で、新たに実施義務を負うようになった場合など、健康診断の手配や情報の管理について不明な点も多いと思います。

こうした専門性の高いことは、信頼できる国家資格者の社労士にご相談ください。

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