2024/11/15|1,758文字
<正社員の定義>
法令には「正社員」という言葉の定義がありません。
「正社員」は法律用語ではないのです。
ですから、正社員の定義は会社ごとに独自に定められています。
正社員の明確な定義の無い職場も多数存在します。
一般的な正社員のイメージは次のとおりです。
・定年を除き労働契約の期間が定まっていない無期労働契約である。
・時間外労働(早出、残業)に応じる義務がある。
・深夜労働に応じる義務がある。
・勤務地が限定されず転勤に応じる義務がある。
・業務内容が限定されず異動に応じる義務がある。
<多様な正社員の定義>
正社員の労働条件のうち、一つか複数を欠いている場合を、「多様な正社員」と呼んでいます。
・早出や残業を免除されている。
・深夜労働を免除されている。
・転勤が全くない。または、一部の地域内に限定されている。
・異動が無い。
・1日の所定労働時間が正社員よりも短い。
・週の所定労働日数が正社員よりも少ない。
「その会社の正社員と比較して」という話ですから、正社員の定義が会社ごとに決められている以上、多様な正社員の定義も会社ごとに様々です。
正社員の所定労働時間が1日8時間で、1週間の所定労働日数が5日という会社が多数派です。
しかし、正社員の所定労働時間が1日6時間半で、1週間の所定労働日数が6日という少数派の会社もあります。
この少数派の会社で、1週間の所定労働日数が5日の正社員は、多様な正社員であると認識されます。
出勤日数が一般の正社員よりも限定されているからです。
また、多数派の会社では、1日の所定労働時間が6時間半の正社員は、多様な正社員であると認識されます。
勤務時間が一般の正社員に比べて限定されているからです。
労働時間と出勤日数の両方が限定されている正社員も、労働時間と出勤日数が限定されているうえさらに、勤務地が関東地方に限定されている正社員もいます。
こうなると、一口に多様な正社員と言っても、数多くのパターンがあるわけですから、多様な正社員のイメージは統一しにくいといえます。
そのためか、かつて「限定正社員」と呼ばれていましたが、「多様な正社員」と呼ぶようになっています。
<パート社員などとの比較>
労働時間や出勤日数が限定された正社員がいる一方で、同じ職場にパート社員や契約社員と呼ばれる人たちも働いていたりします。
パート社員の中にも、正社員並みの労働時間と出勤日数の人がいる一方で、週1日だけの勤務や、1日3時間の勤務という人もいます。
こうしてパート社員、契約社員の境界線が不明確になっています。
就業規則などで、正社員、パート社員、契約社員などの定義が明確になっていないと、「私にこの規定が適用されないのはおかしい」という主張がされて、トラブルとなることがあります。
就業規則に具体的な定義の無い会社は、速やかに社会保険労務士などに相談して、就業規則を改定しておくよう強くお勧めします。
就業規則が無い会社はもっと危険です。
個人ごとに労働条件通知書や雇用契約書などで、労働条件をきちんと定めておかないことが、思わぬトラブルを招いてしまいます。
「何かあったら話し合って決める」と思っていても、トラブルが発生したら話し合いが難しくなりますから、あらかじめ決めておく必要があるのです。
<個別契約の時代>
もともと就業規則には、労働条件のうち共通の部分が定められています。
「正社員就業規則」「パート社員就業規則」「アルバイト社員就業規則」という形で、ある程度の区分ができていた昭和時代ならともかく、今は「多様な正社員」がいて、同じ会社の中に労働条件が全く異なるパート社員がいます。
そして、正社員とパート社員、アルバイト社員の区分も不明確になってきています。
ここまで来たら、就業規則は正社員、パート社員、アルバイト社員、契約社員などに共通する項目だけを定めて、共通しない項目は、個別の労働契約で確認するというのが現実的です。
労働条件の一部を決めず曖昧にしておいたり、口約束だけで文書化せずにいたりしたところ、退職者からとんでもない要求をされたという経験をお持ちの経営者の方は少なくないでしょう。
これからは、個別契約の時代です。
人を雇うにあたって、専門性の高いことは、信頼できる国家資格者の社労士にご相談ください。