2025/08/05|814文字
<労働基準法における「労働者」の定義>
労働基準法第9条では、「労働者」とは事業または事務所に使用され、賃金を支払われる者と定義されています。つまり、職種や雇用形態に関係なく、使用者の指揮命令のもとで働き、報酬を受け取る人が対象です。
<「労働者」の判断基準>
判断基準の適用は、形式ではなく実態に従って行われます。つまり、契約書の名称(請負・委任など)にかかわらず、実際の働き方に基づいて「労働者性」が判断されます。厚生労働省は以下の2つの基準を中心に判断しています。
- 指揮命令下の労働かどうか
- 業務の依頼や指示に対して拒否できる自由があるか
- 業務遂行に関して具体的な指示を受けているか
- 勤務時間や場所に拘束があるか
- 他人に代替できるか(本人でなければならないか)
- 報酬が労務の対価かどうか
- 成果報酬ではなく、時間や労働量に応じて報酬が支払われているか
この2つを総称して「使用従属性」と呼び、これが認められると労働者と判断されます。
<「労働者」に該当する例>
次のような人は、労働基準法上の労働者に該当します。
雇用形態 | 労働者性の有無 |
正社員 | ✅ 該当する |
パート・アルバイト | ✅ 該当する |
派遣社員 | ✅ 派遣元との契約により該当 |
契約社員 | ✅ 雇用契約があれば該当 |
日雇労働者 | ✅ 雇用契約があれば該当 |
<「労働者」に該当しない例>
次のような人は、原則として労働者に該当しません。
立場 | 理由 |
事業主・法人代表者 | 使用者に該当するため |
業務委託契約のフリーランス | 指揮命令関係がないため |
家事使用人 | 労働基準法第116条により適用除外 |
同居の親族のみを使用する事業 | 同条により適用除外 |
ただし、実態が雇用関係に近い場合は労働者と認定される可能性があります。
<実務の視点から>
契約書の形式だけで判断してはいけません。実態が雇用関係であれば、労働者としての保護が必要です。
労働者性が認められると、労働時間・休憩・休日・賃金支払いなどの規定が適用されます。社会保険や労災保険の加入義務も発生します。