2024/09/08|1,131文字
<就業規則の軽視>
就業規則が作成されたとき、あるいは変更されたとき、それを全従業員が見られるようにしておいたのに、誰も関心を示さず読まれないということがあります。
社労士(社会保険労務士)に就業規則の作成・変更を委託したのなら、併せて説明会の開催も任せればこうした事態は生じないのですが、通常は別料金なので省略されることもあります。
<食い違い判明時の対応>
就業規則ができた時点で、従業員から社内の実態と違う部分があることを指摘されることもあります。
この場合には、会社は従業員の意見を参考にしつつ、変更を検討すべきでしょう。
就業規則を実態に合わせて改定するか、実態を改めて就業規則に合わせるか、あるいは別のやり方を決めて就業規則に反映させるかということになります。
<食い違いが継続した場合>
たとえば、所定労働時間が8時間であるものとして、全従業員がそのように勤務していたとします。
この場合には、8時間労働が社内の共通認識であり慣行となっています。
労働条件通知書にも、所定労働時間は8時間と記載されているでしょうし、給与計算でも8時間労働が前提となっています。
ところが、退職予定者がふと就業規則を見たところ、所定労働時間は7時間と規定されていたらどうでしょう。
<就業規則の効力>
就業規則で定める基準に達しない労働条件は無効となり、就業規則で定める基準が適用されるという規定があります。〔労働契約法第12条〕
労働条件のうち所定労働時間は、短い方が労働者に有利ですから、労働条件通知書や労働契約書に8時間労働と書かれていても、就業規則の7時間労働の方が有効になります。
これは、8時間労働が長年の慣行となり、全従業員の共通認識となっていたとしても結論は変わりません。
<誤りが明らかな場合>
よくよく調べてみたら、就業規則が最初から間違っていた、あるいは昔変更したときに誤って7時間労働にしてしまっていたことが判明したとします。
この場合、月給制であれば1日あたり1時間分の賃金の支払い漏れがあったことになり、従業員から会社に対して未払い賃金の請求をすることができます。
会社は誤った就業規則を周知し、従業員はその就業規則をきちんと読んで誤りを指摘しなかったのですから、責任は半々のような気もしますが、裁判などでは会社が全責任を負うと判断されています。〔「甲商事事件」東京地裁平成27年2月18日判決〕
就業規則を作成・変更する会社側に責任があると認定されるわけです。
<実務の視点から>
就業規則の規定と実態との食い違いを放置しておくことは、それが法令違反ではなくても、会社に大きな損害をもたらす原因となりえます。
就業規則のことは、信頼できる国家資格の社労士にご相談ください。