2024/06/30|1,132文字
<弁護士のアドバイス>
うつ病で休職していた社員が復職する場合、弁護士に相談すると、負担の軽い部署に配置転換して復職させるようアドバイスされる傾向にあるようです。
これは、会社として何かしらの対策を取らないまま、ただ単純に元の部署に同じ仕事で復職させたのでは、会社が責任を問われかねないと考えるからです。
休職していた社員に配慮し、何かアクションを起こすことによって、会社の責任は軽減されると考えるわけです。
<社労士(社会保険労務士)のアドバイス>
ところが、同様のケースを社労士に相談すると、元の部署に復職させるようアドバイスされる傾向にあるようです。
これは、良く知った上司や同僚の中で慣れた仕事をする方が、別の仕事に移るよりも精神的な負担が軽いから、うつ病が再発しにくいと考えるからです。
うつ病が再発したり、悪化したりすれば、会社は責任を問われうるので、余計なアクションを起こさない方が、会社の責任は重くならないと考えるわけです。
就業規則にこれとは異なる原則が示されていれば、これに従うことになります。ただ、多くの就業規則では元の職務、元の役職を原則としています。
<鳥取県米子市中学校教諭事件>(鳥取地裁平成16年3月30日判決)
うつ病で休職していた女性教諭が復職するに際して、中学校側が勤務の負担を軽減させる意図で、本校から分教室への配置転換を行いました。
この分教室は、県の設置する児童自立支援施設の中にあり、生徒数が少なく教諭2人で運営している小さな教室です。
この女性教諭は、「配置転換の当時、精神疾患、精神障害が完治しておらず、以前の勤務状況を続けるべきであったにもかかわらず、配転を受けた結果、精神的、肉体的苦痛を被ったもので、これは中学校長、米子市、鳥取県による不法行為であるから、損害賠償を請求する」として、鳥取地方裁判所に民事訴訟を提起しました。
その結果、「中学校長、米子市、鳥取県は各自33万円を女性教諭に支払うように」との判決が下されました。
<敗訴の原因>
この中学校長は、女性教諭本人と配置転換について相談していませんでした。
また、過去に分教室での生徒指導が負担となり、退職した女性講師がいたという事実を見落としていました。
さらに、専門医の意見を改めて確認することも怠っていました。
本当に女性教諭の事を考えるのであれば、第一に本人の考えを確認しておくべきでした。
ただ、職場の責任者が、うつ病で休職している人と会話することで、さらに病状を悪化させるリスクもありますから、できれば、専門医、弁護士、社労士などの第三者が間に入って話し合いを持つべきでした。
もし、職場にメンタルヘルス不調の従業員がいたら、なるべく早く信頼できる社労士にご相談ください。