2022/07/17|1,019文字
<労災保険の保険証>
労災保険が適用される労働者は、適用事業に使用される労働者です。
雇用形態に関係なく、賃金を支払われている人はすべてが対象者です。
契約社員、嘱託社員、アルバイト、パート、日雇い労働者も対象となります。
不法就労を含む外国人労働者も対象者です。
派遣社員は、派遣元で対象者になります。
雇用保険や健康保険では個人に保険証(被保険者証)が交付されますが、労災保険では交付されません。
保険料は全額事業主が負担します。
この結果、保険証は持っていないし、給与から保険料は控除されていないけれども、労災保険には入っているという状態になります。
<適用事業>
労災保険法が「この法律においては、労働者を使用する事業を適用事業とする」と規定しています。〔第3条第1項〕
個人事業主であっても労働者を雇えば、労災保険の適用対象となります。
ただし、公務員、農林水産業従事者の一部は対象外です。
<適用されることの意味>
赤ちゃんが生まれれば、その子について出生届が提出されなくても、一人の人間としての人権を保有することになります。
出生届を提出しなければ、生まれなかったことになったり、その子は人権が無いなどということにはなりません。
これと同じように、事業主が所轄の労働基準監督署長に「労働保険関係成立届」を提出しなくても労災保険は適用されます。
たとえ事業主が、保険料の納付を逃れ、労働基準監督署や労働局の監督を逃れる意図で届出をしなくても、そこで働く人々には労災保険が適用されるのです。
<届出しないリスク>
事業主が届出を怠っていて、これが発覚したときには大きな不都合が発生します。
何も労災事故が発生しないうちに発覚したのであれば、遡って手続をして、遡って保険料を納めるだけで済みます。
しかし、たとえば従業員が自転車に乗って出勤する途中で転倒し、意識を失ったまま病院に運ばれれば、通常は労災保険が適用されるでしょう。
なぜなら、家族や友人が駆けつけて、通勤途上の事故だと話すからです。
この場合には、事業主が治療費を負担させられ、賃金の補償もさせられます。
労災事故には健康保険が適用されませんから、3割負担ではありません。
事業主は100%負担で高額になりますから、場合によっては、事業の運営ができなくなります。
さらに、マイナンバー制度は今後も利用範囲が拡大されていきます。
法人番号と個人番号から、届出をしていない事業主が一斉に摘発される日も近いことでしょう。