2026/10/06|1,079文字
パワーハラスメント(パワハラ)を受けた結果、ケガをしてしまった場合、その治療費を誰が負担するかは、ケガの状況やパワハラと業務との関係によって変わります。しかし、一般的にはまず労災保険が適用されるかどうかが重要なポイントになります。
- 労災保険が適用される場合
パワハラが職場で行われ、その結果としてケガや精神疾患を負ったのであれば、「業務上の災害」と認められる可能性があります。
例えば、次のようなケースが考えられます。
・上司からの暴行で骨折した
・パワハラによる強い精神的ストレスだけが原因でうつ病になった
・パワハラにより自傷行為に至った
ただしパワハラは、被害を受けたと思った人の主観ではなく、客観的な基準に基づいて認定されます。
労災と認められれば、治療費は労災保険から支給されるため、本人の自己負担は原則ありません。また、仕事を休んだ場合には休業補償給付などを受けられることがあります。
- 健康保険を使う場合
労災として扱われない場合や、まだ労災認定の手続中である場合には、健康保険を利用して治療を受けることがあります。
ただし、業務上の災害であるにもかかわらず健康保険を使うことは適切ではありません。
このため、後で労災認定された場合には、健康保険の手続や給付を取り消して、つまり返金して精算しなければなりません。
- パワハラを行った加害者の責任
労災保険で治療費が支払われても、それで加害者の責任がなくなるわけではありません。
労災保険の適用によって、加害者が得をしてしまうことにはならないのです。
加害者本人には、治療費、慰謝料、休業による損害、後遺障害が残った場合の損害などの賠償責任が発生します。
この場合の治療費には、健康保険も労災保険も適用されませんので、100%加害者負担となります。個人的に賠償責任保険に加入していれば、この保険によって救済されます。
- 会社の責任
パワハラについては、加害者だけでなく会社が責任を負うことも少なくありません。
会社には従業員が安全に働けるようにする「安全配慮義務」があります。
例えば、次のような場合には、会社も損害賠償責任を負う可能性があります。
民法上の使用者責任です。
・パワハラの相談があったのに適切な対応をしなかった
・加害者への指導をしなかった
・パワハラが常態化していた
つまり、被害者は加害者だけでなく会社に対しても損害賠償を請求できることになります。
- 実際には誰が支払うのか
実務上は、まず労災保険で治療費等が補償されます。
そして、労災保険では補填されない慰謝料などについて、加害者や会社に損害賠償を請求するという流れになることが多いです。