2026/10/02|1,362文字
会社によっては、タイムカードやパソコンの使用記録だけではなく、従業員自身に残業時間を申告してもらう「自己申告制」を採用しています。自己申告制そのものは違法ではありませんが、運用方法によっては労使トラブルにつながることがあります。
自己申告制のメリット
① 柔軟な労働時間管理ができる 営業職や外回りの多い職種、テレワーク勤務では、会社が実際の労働時間を把握しにくい場合があります。このような場合、本人が業務内容とともに残業時間を申告することで、実態に近い労働時間を把握できます。
② 管理コストを抑えられる 専用の勤怠管理システムを導入しなくても運用できるため、中小企業では比較的導入しやすい方法です。
③ 業務内容の確認ができる 残業時間だけでなく、「何の業務を行ったか」を報告させることで、業務量の偏りや生産性の課題を把握しやすくなります。
自己申告制のデメリット
① 実際の残業時間と申告時間がずれる可能性がある 自己申告制の最大の問題です。
例えば、「早く帰るように言われているので少なめに申告する」「残業代を増やしたいので多めに申告する」といったケースが起こることがあります。
その結果、会社も従業員も正しい労働時間を把握できなくなります。
② サービス残業が発生しやすい 特に注意が必要なのは、会社の雰囲気によって残業時間を少なく申告してしまうケースです。
例えば、「残業を申請しにくい」「上司から残業を削るよう言われる」「評価に影響するので申告しない」などの場合、実際には働いているのに残業代が支払われない「サービス残業」となります。
労働基準法では、会社は自己申告の時間ではなく、実際に働いた時間に対して賃金を支払わなければなりません。
③ 労使トラブルにつながりやすい 退職後に従業員から 「実際はもっと残業していた」 と未払い残業代を請求されるケースがあります。
このとき、パソコンのログ記録、メールの送信履歴、入退館記録、チャットの送信記録などが証拠として利用されるため、会社が自己申告時間だけを根拠に反論できないこともあります。
④ 会社の安全配慮義務の問題 会社には従業員の健康を守る義務があります。
自己申告だけに頼っていると、長時間労働を正確に把握できず、過労、メンタルヘルス不調、健康障害の発見が遅れる可能性があります。
会社(店長・管理職)が注意すべきポイント
自己申告制を採用する場合でも、会社は「申告された時間をそのまま信じればよい」というわけではありません。
例えば、タイムカード、パソコンの使用記録、入退館記録、業務日報などと照合し、実際の労働時間との大きな差がないか確認することが重要です。
また、残業時間を過少申告させたり、申告を妨げたりしてはいけません。
実務の視点から
残業の自己申告制には、柔軟な管理や事務負担の軽減といったメリットがあります。しかし、実際の労働時間とのズレやサービス残業の発生、未払い残業代請求などのリスクも大きい制度です。
そのため、自己申告制を用いる場合は、従業員の申告だけに頼るのではなく、パソコンの記録や入退館記録などの客観的なデータと照合しながら運用することが大切です。会社は「労働時間を適切に把握する責任」があるため、自己申告制はあくまで補助的な手段として活用するのが望ましいでしょう。