傷病手当金の手続を会社が嫌がる理由

2026/09/26|1,342文字

 

健康保険の傷病手当金は、本来、病気やけがで働けなくなった従業員の生活を支えるための大切な制度です。そのため、会社は必要な証明を行うことが期待されています。しかし、実務上は会社が手続を嫌がったり、協力的でなかったりするケースもあります。

ただし、会社が手続を嫌がることと、傷病手当金を受けられるかどうかは別問題です。受給要件を満たしていれば、会社が不快感を示したとしても傷病手当金の権利はなくなりません。

会社が嫌がる主な理由として、次のようなものがあります。

 

1.人手不足や業務への影響が大きい場合

従業員が長期間休職すると、その人の仕事を他の従業員がカバーしなければなりません。

特に小さな企業では、代わりの人材がいない、残業が増える、顧客対応が難しくなるなどの事情があります。

そのため、会社としては「早く復帰してほしい」という気持ちが強くなり、傷病手当金の申請をすると休業が長引くと考えて協力を渋ることがあります。

 

2.メンタルヘルス不調への理解が不足している場合

うつ病や適応障害などの場合、「本当に働けないのか」 「気持ちの問題ではないか」などと誤解する経営者や管理職も残念ながらいます。

骨折や入院のように目に見える病気ではないため、病気そのものを十分理解できず、傷病手当金の手続に消極的になることがあります。

 

3.労務管理上の問題が表面化することを心配する場合

長時間労働やハラスメントが原因で休職した場合、会社は労働時間管理に問題がなかったか、パワハラやセクハラがなかったか、安全配慮義務違反が指摘されないかと心配することがあります。

傷病手当金の申請書には病名は通常記載されませんが、休職の経緯から会社の管理責任が問題になる可能性を懸念して、協力的でなくなるケースがあります。

 

4.会社負担のお金と勘違いしている場合

傷病手当金は健康保険から支給されるものであり、会社が支払うわけではありません。

しかし、中には「会社が休んだ人にお金を出す制度」と誤解している経営者もいます。

実際には、会社が行うのは賃金支払状況などの証明であり、傷病手当金そのものは健康保険組合や協会けんぽなどの保険者が支給します。

 

5.事務手続が面倒だと感じる場合

申請書には事業主証明欄があります。

会社は、休んだ期間、賃金の支給状況、出勤状況などを確認しなければなりません。

人事担当者がいない小さな企業では、事務負担を理由に後回しにされたり、嫌がられたりすることがあります。

 

6.退職予定者や退職者との関係が悪化している場合

本人と会社がトラブルになっていると、「もう辞める人だから協力したくない」 「労働問題になっているので関わりたくない」という感情的な理由で対応が遅れることがあります。

しかし、感情的な理由で必要な証明を拒否することは適切ではありません。

もし会社が、傷病手当金の手続に協力してくれない場合は、まずは人事担当者や上司に制度の趣旨を説明して依頼しましょう。

それでも対応してもらえない場合は、協会けんぽや健康保険組合などの保険者、労働基準監督署の中にある労働局総合労働相談コーナー、社会保険労務士などに相談できます。

会社には事業主証明が求められますが、健康保険の保険者も事情を確認しながら対応してくれる場合があります。

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