自爆営業の禁止(パワハラ指針改正)

2026/07/27|1,339文字

 

今回の改正で「自爆営業(=会社が従業員に自社商品を買わせる行為)」は、パワハラの3要件を満たす場合はパワハラに該当すると、指針に明確に書かれました。

これにより、企業は「営業指導の一環」「本人が自主的に買った」などと曖昧に逃げることができなくなり、自爆営業は明確に「禁止されるべき行為」として扱われます。

 

<自爆営業とは>

自爆営業=ノルマ達成のために、従業員が自腹で自社商品を買わされること。

・「売れないなら自分で買え」

・「家族に買わせろ」

・「取引先に迷惑をかけるな。お前が買って数字を作れ」

こうした行為は、従業員の自由意思ではなく、職場の力関係を背景にした事実上の強制になりやすいのが特徴です。

 

<改正指針で変わったこと>

厚生労働省の審議会資料では、次のように明記されました。

事業主が労働者に対し、自由意思に反して自社商品・サービスを購入させる行為は、パワハラの3要件を満たす場合、パワハラに該当する。

つまり、「自爆営業はパワハラになり得る」ではなく、「パワハラとして扱う」と明文化されたという点が大きな改正です。

 

<パワハラの3要件と自爆営業の関係>

指針が示すパワハラの3要件は次のとおりです。

 

①優越的な関係を背景とした言動

上司・店長・管理職がノルマ未達を理由に購入を迫る場合には、従業員は断りにくく、優越的関係が明らかです。

 

②業務上必要かつ相当な範囲を超えている

営業指導として「売れ」と言うのは業務ですが、従業員に私費で買わせることは業務の範囲外です。

 

③労働者の就業環境が害される

自腹購入による金銭的負担、断れない心理的圧力、評価への不安などが就業環境の悪化と判断されます。

 

➡自爆営業は3要件を満たしやすく、パワハラ認定されやすい行為です。

 

<どの類型のパワハラに当たるのか>

厚生労働省の示すパワハラ6類型のうち、特に次の2つと強く関連します。

 

・精神的な攻撃(脅迫・侮辱・ひどい暴言)

「売れないならお前が買え」「使えないやつだな」

・過大な要求

達成不可能なノルマを課し、未達を理由に購入を迫る行為。

 

<指針以外の法律との関係>

指針は改めて「パワハラとして明記した」だけで、実は従来から複数の法律で問題視されていました。

 

  • 民法

自由意思を奪われた売買契約は、公序良俗違反で無効となり得る。

 

  • 労働基準法

購入代金を給与から天引きすれば、賃金全額払いの原則(第24条)違反になる可能性。

 

  • 労働契約法

購入を拒否したことを理由に不利益な扱いをすれば、懲戒権濫用・解雇権濫用となる。

 

<裁判例でも違法性が認められている>

厚労省が紹介する裁判例では、上司が「商品を理解しない者には仕事をさせない」などと繰り返し言い、従業員が約18万円の自社商品を購入した事案で、裁判所は“不法行為”として企業の責任を認めています。

 

<改正の実務的な意味>

今回の改正で企業は次のような対応が必須になります。

 

・自爆営業を禁止する社内ルールの整備

・ノルマ管理の見直し

・「買わせる空気」を作らない指導方法の徹底

・相談窓口での丁寧な事実確認(従業員の受け止めを重視)

・相談者・行為者のプライバシー保護の強化

 

特に、「自主的に買ったように見えるが、実際は断れない状況だった」というケースが多いため、企業は実態を重視して判断する必要があります。

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