交通事故と健康保険

2026/06/27|1,156文字

 

1.交通事故でも健康保険は使える

健康保険法では、交通事故のような「第三者(加害者)の行為による負傷」でも、被保険者の治療を妨げないために健康保険の使用を認めるという立場を取っています。

したがって、加害者がいる事故でも、窓口負担は原則3割負担で受診可能です。

 

2.「第三者行為による傷病届」の提出が必要

健康保険を使った場合、保険者(協会けんぽ・健保組合)は、本来加害者が負担すべき治療費を立て替えるという扱いになります。

そのため、保険者は後日、加害者側(自賠責・任意保険)に対して求償を行う必要があります。

この求償のために、被保険者は「第三者行為による傷病届」を保険者へ提出しなければなりません。

 

企業が押さえるべきポイント

・従業員が事故に遭ったら、健康保険を使う場合は必ず届出が必要

・事故状況、相手方情報、保険会社情報を整理して提出

・会社が代行提出することも可能(実務では多い)

 

3.労災との関係(通勤災害・業務災害)

交通事故が業務中または通勤中に発生した場合は、健康保険ではなく労災保険が優先となります。

ただし、自動車事故であれば、さらに自賠責保険の適用を考えます。

 

◯業務災害

・配送中、営業中、出張中など

・会社の支配下での事故はすべて労災扱い

 

◯通勤災害

・自宅と会社の合理的経路での事故

・寄り道があっても「日常生活上必要な行為」なら通勤扱い

 

◯労災保険を使うべき理由

・窓口負担ゼロ

・休業補償給付が支給される

・健康保険より補償が手厚い

※労災保険を使わず健康保険を使うと、後日保険者から会社に照会が来ることも多い。

 

4.健康保険を使うべきでないケース

以下の場合は健康保険の適用が制限されます。

 

(1)故意の事故

自殺未遂や故意の傷害は保険給付の対象外。

 

(2)酒酔い運転・無免許運転

治療は受けられるが、保険者が後日、加害者本人に求償する可能性がある。

 

(3)業務災害・通勤災害

前述のとおり、労災が優先。

 

5.企業としての実務対応ポイント

 

(1)事故発生時の初動

・事故状況の確認

・業務中や通勤中かの判断(必要に応じ労働基準監督署に確認)

・健康保険か労災保険かの整理

・相手方情報の収集

 

(2)健康保険を使う場合

・「第三者行為による傷病届」の提出を案内し作成を補助

・保険者からの照会に備えて記録を残す

 

(3)労災の場合

・速やかに労災申請書類を準備

・交通事故の場合は「第三者行為災害届」も必要

・自賠責との調整(休業損害・治療費の重複請求防止)

 

6.実務の視点から

次のようなことがポイントとなります。

・交通事故でも健康保険は使えるが、届出が必須

・業務災害・通勤災害は労災保険が優先

・健康保険を使う場合は、保険者の求償手続を理解しておく

・労災保険と自賠責の調整は混乱しやすいので、顧問社労士が整理して助言する

・事故後の初動対応が、後のトラブル防止に直結する

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