2026/04/04|1,004文字
<法律上の大原則>
残業申請の有無にかかわらず、実際に労働させた時間があれば残業代は必要です。
労働基準法では「申請の有無」ではなく「実際に労働したかどうか」で労働時間を判断します。
そのため、次のような事情があっても、会社が労働を把握できた(または把握すべき)状況であれば、残業代の支払義務が発生します。
・事前申請がない
・上司が承認していない
・就業規則に「申請のない残業は認めない」と書いてある
例外的に残業代の支払が必要ないのは「会社が全く把握できず、把握すべき状況にもなかった場合」のみです。
ただし、次のような場合は「労働時間」と認められない可能性があります。
・完全に私的な判断で勝手に居残り
・業務量的にも残業の必要性がない
・上司も会社も全く気づき得ない状況
しかし、こうした例外というのは、実務上は非常に限定的で、会社側が「知らなかった」で通るケースはほぼありません。
<実務で問題になるポイント>
① 上司が黙認している場合
黙認=使用者の黙示による指揮命令と評価されるため、残業代の支払義務は確実に発生します。
(例:上司が残業を知りながら放置、業務量的に残業が必要と分かっているのに何も言わない 等)
② 申請しづらい雰囲気がある場合
「申請すると嫌な顔をされる」「申請が通らない」などの状況は、会社側の管理体制の問題と評価され、未払残業のリスクが極めて高い状態です。
③ 就業規則に「申請のない残業は認めない」と書いてある場合
これは「事前申請を徹底させるための社内ルール」としては有効ですが、未払残業代を払わない根拠にはなりません。
<会社として取るべき対応>
(A)残業代の支払に関する対応
・申請の有無にかかわらず、実際の労働時間を把握し、適切に支払う
・黙認残業があった場合は、過去分も含めて精算する
・タイムカード・PCログ・入退館記録などを総合して労働時間を把握する
(B)申請ルールの運用改善
・上司が申請を却下・嫌な顔をするなどの運用を是正
・「事前申請が原則、事後申請は例外」と明確化
・事後申請の手続(理由記載・上長確認)を整備
・上司に対して労務管理研修を実施し、黙認を禁止
(C)申請しない従業員への対応
会社側の管理体制を整えたうえで、次のような段階的対応は可能です。
・指導 → 注意 → 文書指導 → 懲戒(最終手段)
ただし、残業代の支払義務とは別問題であり、「申請しなかったから残業代を払わない」は成立しません。