2026/03/11|1,125文字
企業によっては「給与をシンプルにしたい」「通勤費を別にすると管理が面倒」という理由で、基本給の中に通勤費を含めてしまうケースがあります。しかし、これは労務管理上さまざまなトラブルの原因になります。
<税金が本来より高くなる>
通勤費は、一定限度内で非課税と扱われます。
しかし、基本給に含めてしまうと給与として課税対象になり、本人の所得税・住民税が増えてしまいます。
<通勤費の実費精算ができなくなる>
通勤費は本来「実費補填」です。
基本給に含めてしまうと、次のような不都合が生じます。
・交通機関の変更や引っ越しで通勤費が変わっても調整できない
・実際の通勤費より多く払ってしまう、または逆に足りなくなる
・「実費補填」という性質が失われ、給与と同じ扱いになる
結果として、労務管理がむしろ複雑になることが多くなります。
<残業代の計算が不適切になるリスク>
残業代は「基本給+諸手当(通勤費を除く)」を基礎に計算します。
通勤費を基本給に含めると、次の問題が起きます。
・本来残業代の基礎に含めなくてよい通勤費まで含まれてしまう
・結果として残業代が高くなり、会社の負担が増える
・逆に、会社が「通勤費分を除いて計算したい」と思っても、基本給に含めてしまった以上、法的には除外できない
つまり、残業代計算のトラブルが発生しやすいのです。
<トラブルの原因になる>
給与明細で「基本給に通勤費が含まれている」と説明しても、実際には次のような誤解が起きやすいです。
・従業員が「通勤費が支給されていない」と感じる
・基本給を下げて通勤費を別建てに戻すと「減給だ」と受け取られる
・採用時の説明と異なるとクレームにつながる
賃金の内訳は明確であるほどトラブルが少なくなります。
<最低賃金の計算で問題が起きる可能性>
最低賃金は「基本給+通勤費以外の手当」で比較します。
通勤費を基本給に含めると、
・本来除外すべき通勤費が含まれてしまい、最低賃金を下回っていることに気づきにくい
・行政調査で指摘されるリスクがある
最低賃金は毎年上がるため、気づかないうちに違反していたというケースが実務では起こりがちです。
<退職金・賞与の計算が不適切になる>
退職金や賞与の計算基礎に「基本給」を使う会社は多いです。
通勤費を基本給に含めると、
・本来含める必要のない通勤費まで退職金・賞与の基礎に入ってしまう
・会社の負担が増える
・後から除外しようとすると「不利益変更」とみなされる可能性がある
長期的に見ると、会社側のコスト増につながることが多いです。
通勤費を基本給に含めると、会社にも従業員にもデメリットが大きいのが実情です。
そのため、実務では「通勤費は基本給とは別に、非課税枠で支給する」という方法が最も安全で一般的です。