2025/11/14|1,335文字
「兼業・副業をしている」という事実だけでは、原則として解雇の理由にはなりません。労働者には職業選択の自由があり、就業時間外に何をするかは基本的に本人の自由です。
ただし、一定の条件下では「解雇が認められる可能性がある」ケースもあります。
<兼業・副業の禁止>
兼業・副業は、法律では禁止されていません。むしろ、政府は働き方改革の一環として、兼業・副業を推進しています。厚生労働省も「モデル就業規則」の中で、兼業・副業を原則容認する方向に改定しています。
ただし、企業が独自に就業規則で制限を設けることは可能です。たとえば以下のようなケースです。
・競業避止義務(同業他社で働くことの禁止)
・会社の信用や利益を損なう行為の禁止
・業務に支障をきたす副業の禁止
これらは、企業の正当な利益を守るために認められることがあります。
<制限が認められる可能性があるケース>
以下のような場合には、兼業・副業が「就業規則違反」や「信頼関係の破壊」とみなされ、解雇が認められる可能性があります。
- 業務に支障が出ている場合
・副業の疲労で本業に遅刻・欠勤が増える
・注意力が低下し、業務ミスが頻発する
これは「労務提供義務違反」として、懲戒処分や解雇の対象になる可能性があります。
- 同業他社で働いている場合(競業行為)
・顧客情報やノウハウが漏れるリスクがある
・自社の利益を損なう可能性がある
この場合は「競業避止義務違反」として、重大な規律違反と判断されることがあります。
- 会社の信用を損なう副業
・風俗業や違法性のある仕事
・社会的に問題視される活動
企業の社会的信用に影響する場合、就業規則違反として処分される可能性があります。
<解雇を検討するには>
解雇は労働者の生活に大きな影響を与えるため、法律上とても厳しく制限されています。以下のような手順と配慮が必要です。
- 就業規則に明記されているか確認
副業禁止や競業禁止の規定があるか、明確に記載されている必要があります。就業規則のない会社では、労働条件通知書への記載が必須です。
- 本人に事実確認と弁明の機会を与える
いきなり解雇ではなく、本人に事情を聞き、改善の機会を与えることが重要です。
- 段階的な対応(注意→指導→懲戒)
注意・指導・懲戒処分などを経て、それでも改善されない場合に限り、最終手段として解雇が検討されます。
- 解雇理由が「客観的に合理的」で「社会通念上相当」であること
これは労働契約法第16条で定められており、裁判でも厳しくチェックされます。会社の判断は、主観的なものですから、第三者的立場の専門家の判断を仰ぎます。
<実際の裁判例での判断>
裁判では、単に副業していたという理由だけでの解雇は「無効」とされています。
・副業が本業に影響していない
・就業規則に明確な禁止規定がない
・事前に注意や指導がなかった
こうした場合、解雇は「不当解雇」として無効になる可能性が高いです。
<解雇が無効とならないために>
まずは就業規則を見直し、副業に関するルールを明確にしておくことが重要です。
従業員が副業をしていることが判明した場合は、事実確認と対話を重視し、いきなり解雇に踏み切らないようにしましょう。
解雇を検討する場合は、法的リスクを十分に踏まえ、段階的な対応と証拠の整理が不可欠です。