人口減少・超高齢社会における社会保障と労働施策の課題と展望

2025/08/23|1,064文字

 

<日本の人口構造の変化とその影響>

日本は世界でも類を見ないスピードで人口減少と高齢化が進んでいます。総人口は2008年をピークに減少に転じ、2025年には65歳以上の高齢者が全人口の約30%を占めています。この変化は、社会保障制度や労働市場に深刻な影響を及ぼしています。

生産年齢人口(15〜64歳)が減ることで、経済活動を支える人材が不足し、企業の競争力や税収にも影響しています。年金、医療、介護など社会保障費の支出が増え、現役世代の負担が重くなっています。若年層の流出が進み、医療・福祉サービスの維持が困難になってきている地方もあります。

 

<社会保障制度の課題と改革の方向性>

現行の年金制度は賦課方式、つまり現役世代が高齢者を支える仕組みであり、人口構造の変化により持続性が問われています。

このことから、就労延長による保険料収入の確保、マクロ経済スライドによる給付水準の調整、私的年金制度の活用・促進といったことが行われます。

医療・介護制度の分野では、高齢者の医療・介護ニーズが増加する一方、医療従事者や介護人材の不足が深刻となっています。

地域包括ケアシステムの推進、ICTやロボット技術の活用による効率化、予防重視の健康づくり政策の取組が進んでいます。

社会保障費の増加に対し、財源確保が課題となっていますが、消費税率の見直し、 高所得者層への負担強化、社会保障給付の重点化・効率化といった対応が検討されています。

 

<労働施策の課題と展望>

労働力不足に対応するため、定年延長・再雇用制度の充実などによる高齢者の就労促進、育児・介護との両立支援や柔軟な働き方の推進、特定技能制度の整備と共生支援による外国人労働者の受け入れが進むと思われます。

働き方改革の視点から、長時間労働の是正、テレワークや副業の推進、公正な評価制度の構築などにより、労働生産性の向上とワークライフバランスの実現が求められます。

技術革新や産業構造の変化に対応するため、リスキリング(再教育)が不可欠です。公的職業訓練の充実、企業による教育投資の促進、地域・大学との連携による学び直し支援が必要です。

 

<社会全体で支える仕組みへ>

人口減少・超高齢社会においては、社会保障や労働施策を「支える側」と「支えられる側」の対立構造ではなく、世代や立場を超えて支え合う仕組みが求められます。

地域コミュニティや企業、NPOなどの連携による支援体制といった共助の強化、多様なライフスタイルに対応した制度の柔軟化、孤立を防ぎ、誰もが安心して暮らせる社会の実現といったことが必要です。

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