不正受給の公表基準

2023/05/05|963文字

 

<運が悪いわけではない>

都道府県労働局は、助成金の不正受給をした企業名や、労働局の指導に従わない企業名などを公表しています。

このような企業は、たまたま運悪く公表されてしまったのではなく、公表基準に従って公表されています。

 

<公表基準の見直し>

また、公表基準は固定的なものではなく、動向を踏まえて、たびたび見直しが行われています。

たとえば、令和5(2023)年3月29日の第193回労働政策審議会職業安定分科会では、雇用調整助成金(コロナ特例)と緊急雇用安定助成金の不正受給に関する、令和5(2023)年4月以降の公表基準が示されています。

 

<令和5年4月以降の公表対象>

不正受給による支給取消額および不正を理由として不支給決定を受けた支給申請額の合計額が100万円以上の場合は、原則として公表対象となります。

ただし、労働局の調査前に「自主申告」を行い、返還命令後1か月以内に「全額納付」した場合であって、不正の態様・手段、組織性等から判断して、管轄労働局長が特に重大または悪質でないと認める場合は公表しないことができるものとされています。

ここで、形式的に自主申告を行った場合でも、自主申告を踏まえた調査に非協力的であるなどの場合には「自主申告」とは認められません。

また、「全額納付」とは、受給した金額、違約金、延滞金の全額を納付した場合に限られます。

「自主申告」したものの「全額納付」できていない企業の場合には、「自主申告」のあったことが付記されて企業名が公表されます。

そして全額納付後は、労働局ホームページからの削除が可能となります。

 

<令和5年4月以降の公表対象外>

不正受給による支給取消額および不正を理由として不支給決定を受けた支給申請額の合計額が100万円未満の場合は、原則として公表対象とはなりません。

ただし、不正の態様・手段、組織性等から判断して、管轄労働局長が特に重大または悪質であると認める場合は公表対象となります。

 

<その他の留意点>

社会保険労務士や代理人が不正に関与した場合には、金額、返還の有無にかかわらず、社会保険労務士や代理人が公表対象となります。

また、企業が自主的に調査を行い、不正が疑われる場合には、たとえば「全体は調査中だが、一部で不適正な部分が見つかり、まずは自主申告したい」という内容で、調査中であることを含めて申告することもできます。

 

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