モデル就業規則と勤務間インターバル制度

2023/04/18|1,269文字

<勤務間インターバル制度>
厚生労働省から、モデル就業規則令和4(2022)年11月版が公開され、新たに勤務間インターバル制度に関する規定例が加わっています。
勤務間インターバル制度とは、終業時刻から次の始業時刻の間に、一定時間以上の休息時間(インターバル時間)を設けることで、従業員の生活時間や睡眠時間を確保しようとするものです。
「労働時間等設定改善法」(労働時間等の改善に関する特別措置法)が改正され、平成31(2019)年4月1日より勤務間インターバル制度の導入が事業主の努力義務とされています。

<インターバル時間と翌日の所定労働時間が重複する部分を働いたものとみなす規定例>

第22条  いかなる場合も、従業員ごとに1日の勤務終了後、次の勤務の開始までに少なくとも、○時間の継続した休息時間を与える。ただし、災害その他避けることができない場合は、この限りではない。
2 前項の休息時間の満了時刻が、次の勤務の所定始業時刻以降に及ぶ場合、当該始業時刻から満了時刻までの時間は労働したものとみなす。

適用対象者は、疲労蓄積を避け健康障害を防止できるメリットがあります。
会社としては、長時間の時間外労働を指示しやすいというメリットもあります。
この反面、時間外割増賃金の他、深夜手当も支給したうえで、一定時間の勤務を免除することになりますから、人件費の面で会社の負担が増加します。
また、特定の従業員に片寄って適用される実態があれば、他の従業員に不公平感を生じうることになります。

<インターバル時間と翌日の所定労働時間が重複した時、勤務開始時刻を繰り下げる規定例>

第22条  いかなる場合も、従業員ごとに1日の勤務終了後、次の勤務の開始までに少なくとも、○時間の継続した休息時間を与える。ただし、災害その他避けることができない場合は、この限りではない。
2 前項の休息時間の満了時刻が、次の勤務の所定始業時刻以降に及ぶ場合、翌日の始業時刻は、前項の休息時間の満了時刻まで繰り下げる。

翌日の始業時刻を、休息時間の満了時刻まで繰り下げることによって、一応は、疲労回復できるメリットがあります。
しかし、始業時刻を繰り下げたことにより、そのぶん終業時刻も繰り下げられますから、深夜勤務から抜け出せなくなる恐れもあります。

<実務の視点から>
厚生労働省はこのほか、ある時刻以降の残業を禁止し、次の始業時刻以前の勤務を認めないこととする等により、インターバル時間を確保することを提唱しています。
しかし、一般的な残業禁止と同様に、業務が軽減されずに勤務時間が制限されることによるストレスも大きいため、安易にルール化することは疑問です。
むしろ、時間単位の年次有給休暇制度を運用し、インターバル時間と翌日の所定労働時間が重複する部分について、希望により時間単位の年次有給休暇を取得してもらう運用としてはいかがでしょうか。
このようにした場合であっても、時間単位の年次有給休暇の取得は年5日分までという制限がありますので、結局のところは、長時間労働の削減に取り組まなければ、根本的な解決には至らないといえるでしょう。

 

 

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