どんな理由なら入社14日以内の解雇ができるのか

2022/10/04|1,486文字

 

<法令の規定>

入社から14日以内であれば、解雇予告期間も解雇予告手当の支払いもなく、解雇することができます。〔労働基準法第21条第4号〕

しかし、その解雇に客観的に合理的な理由がなかったり、社会通念上相当といえなかったりした場合には、解雇権の濫用となり解雇が無効とされるのは、入社後15日以上経過してからの解雇と同様です。〔労働契約法第16条〕

 

<人材要件の確認が不十分な場合>

求人広告や求人票などに、採用条件として「パソコンが使える方」と書いてあったとします。

採用面接でも、「パソコンは使えますか?」「はい、毎日使っています」というやり取りがあったとします。

ところが、入社後にパソコンを使っての基本的な事務作業を指示したところ、「自分はマウスを使って、web上の情報を閲覧できるだけで、キーボードの操作はできない」と断られてしまったらどうでしょう。

本人は嘘をついていたつもりなどなく、採用側の確認ミスであれば、この人を解雇するのは不当解雇となりかねません。

基本的には、必要なパソコン操作を丁寧に教えるのが筋ということになります。

 

<労働者による労働契約の即時解除権>

さて、労働者は入社後の労働条件が事前の説明と異なっていたら、すぐに退職する権利があります。〔労働基準法第15条第2項〕

これは労働者を保護する趣旨ですから、採用にあたって、採用側が虚偽の労働条件を提示していた場合に限られず、提示された労働条件の具体性が不十分で思い違いを生じていた場合を含むと考えられます。

 

<入社14日以内の解雇が有効になるパターン>

求人広告や求人票などに、採用条件として「パソコンの基本操作(Excel、Word、PowerPoint)」と書いてあったとします。

採用面接でも、次のようなやり取りがあったとします。

「Excelでマクロを含め関数を組んで使用する業務を行っていましたか?」「はい」

「Wordを使って社内外に宛てた文書を作成していましたか?」「はい」

「PowerPointを使ってプレゼンなどしていましたか?」「はい、人事制度の改善案についての資料をPowerPointで作成し、プレゼンするなどしていました」

ところが、入社後にパソコンを使っての基本的な事務作業を指示したところ、「パソコンの操作があまりできないと採用してもらえないので、採用面接ではできるふりをして、入社までの1週間で急いで覚えればよいと思いましたが、間に合いませんでした」と白状した場合にはどうでしょう。

この場合には、ミスマッチの責任が応募者にあって、採用側にはありません。

必要な人材要件を欠いていることを理由に解雇しても、決して解雇権の濫用とはなりません。

 

<ミスマッチを防ぐために>

上記のようなケースで、14日以内の解雇が有効になるとしても、採用に関わった社員の人件費や、適正な人材を採用できなかったことによる空白期間の発生など、大きな不都合が発生してしまいます。

ましてや、解雇の通告が解雇権の濫用となり、不当解雇となってしまうような場合には、会社の損失が大変大きなものになってしまいます。

こうした事態を防ぐには、求人広告や求人票などの求人情報に、可能な限り具体的な人材要件を示しておくことが大前提となります。

そして、採用面接ではより詳細な人材要件について、漏らさず聞き取りができるよう、予め質問事項を網羅した「採用面接シート」を準備しておき、これに沿って、採用面接を進めることが必要です。

ここまでしても、応募者の嘘をすべて見抜くことは困難ですが、不要な労働力を抱え続けるリスクは軽減することができます。

 

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