採用の記事

2021/08/31|1,538文字

 

労働契約https://youtu.be/dcnpbjVePB0

 

<労働条件の決定>

労働条件の決定は、労働者と使用者が対等の立場で決めるべきものだとされています。

このことは、労働基準法第2条第1項に次のように定められています。

 

(労働条件の決定)

第二条  労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。

 

本来は対等なのでしょうけれども、労働者は生活がかかっているので、使用者に対する遠慮があります。

また、少子化によって労働者が不足している業種では、労働者側が優位に立つこともあるでしょう。

さらに、入社後は会社に対する貢献度に応じて、優位に立つ労働者と、弱い立場の労働者に分かれてくるでしょう。

 

いずれにせよ、労働者と使用者が対等の立場で話し合い、制服代やそのクリーニング代、筆記用具などについて労働者の負担とすることは、そのような内容の労働契約になるのであって、法令の規定に触れることはありません。

 

<労働条件の明示>

とはいえ、制服代や備品代の負担も労働条件の一つです。

労働条件を口頭で説明されただけでは不明確ですから、主なものは文書にして労働者に交付することが使用者に求められています。

そこで、労働基準法は労働条件の明示について、次のように規定しています。

 

(労働条件の明示)

第十五条  使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

 

明示すべき事項は労働基準法施行規則第5条第1項に規定されています。

次に示すのがその内容ですが、制服代や備品の負担は、(8)労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項 に含まれます。

労働者に対して制服代や備品の負担について明示しないまま雇い入れてしまったなら、これらを負担させることは労働条件の明示義務違反になります。

 

(1)労働契約の期間に関する事項 (2)就業の場所及び従業すべき業務に関する事項 (3)始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時点転換に関する事項 (4)賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金等を除く。)の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項 (5)退職に関する事項(解雇の事由を含む。) (6)退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払いの方法並びに退職手当の支払いの時期に関する事項 (7)臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及びこれらに準ずる賃金並びに最低賃金額に関する事項 (8)労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項 (9)安全及び衛生に関する事項 (10)職業訓練に関する事項 (11)災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項 (12)表彰及び制裁に関する事項 (13)休職に関する事項

 

<就業規則の項目にも>

「労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項」が就業規則に規定する事項として法定されています。〔労働基準法第89条第5号〕

「負担をさせる定めをする場合」には、就業規則に規定を置かなければなりませんし、定めをしない場合には、就業規則に規定を置きようがありません。

就業規則に規定が無いにもかかわらず、うっかり労働者に負担させてしまうと、労働基準法違反になってしまいます。

 

労働者の負担になることは、法令で規制されている可能性を考えて、社会保険労務士などの専門家に確認してから行うようにすることをお勧めします。

2021/05/21|965文字

 

<厚生労働省が履歴書の様式例を作成した理由>

履歴書は、主に採用選考で使用されます。

このことからすれば、厚生労働省が履歴書の統一様式を定めても良さそうですが、これまでは独自の様式を定めず、一般財団法人日本規格協会が示していたJIS規格の履歴書の様式例を推奨してきました。

ところが、令和2(2020)年7月に、LGBT当事者を支援する団体から、厚生労働省、日本規格協会等に対して履歴書様式の検討(性別欄の削除等)を求める要請が行われました。

これをきっかけとして、JIS規格の履歴書の様式例全体が削除されました。

このため、令和3(2021)年4月16日、厚生労働省労働政策審議会安定分科会が履歴書の様式例を作成しました。

厚生労働省は、公正な採用選考を進めるため、新たに作成された様式を推奨しています。

 

<JIS規格の履歴書からの変更点>

性別欄が「男・女」の一方を○で囲むことによって選択する方式から、任意記載欄に変更されました。

任意記載ですから、未記載とすることも可能です。

採用選考に当たって、性別そのものや性別に関連して見た目から受ける印象などを排除する意図です。

また、「配偶者」「扶養家族数」「配偶者の扶養義務」「通勤時間」の各欄を様式内に設けないこととしました。

これらは、本人の業務遂行能力などとは関係の無い事項であり、公正な採用選考をするにあたっては有害無益だからです。

 

<履歴書の様式例の使用義務>

厚生労働省が作成した履歴書の様式例は、公正な採用選考を確保するために例示しているのであって、法的拘束力はありません。

そのため、企業側が特定の履歴書の様式を指定して応募させる場合に、厚生労働省の様式を使用するか否かは各企業の判断に任されています。

また、企業側が特定の履歴書の様式を指定しない場合には、応募者が任意の様式を用いることができます。

応募者にとって、履歴書は自己アピールのツールですから、特技、資格、学歴、職歴、趣味、健康状態など、企業側に訴えたい特長を十分に記載できる様式を用いるのが有利です。

今回の厚生労働省による様式作成の趣旨からすれば、企業側が特定の様式を指定しない場合に、「性別」「配偶者」「扶養家族数」「配偶者の扶養義務」「通勤時間」の各欄が無いことをもって、マイナスに評価することがあってはならないでしょう。

2021/04/07|1,493文字

 

YouTube労働条件を確認しましょう

https://youtu.be/QzMHmif7cgY

 

<ブラック企業の特徴>

ブラック企業は、一部の社員を最低の賃金で過重労働させたうえ使い捨てにします。

この特徴が求人広告に反映されています。

優良企業が求人広告を出す場合でも、同じ特徴を備えていると、ブラック企業ではないかと疑われるので注意が必要です。

 

<低賃金で長時間労働だから>

ブラック企業の社員は極端な長時間労働ですから、結果的に一部の社員に最低賃金法違反が発生します。

ところが、ブラック企業も優良企業も、求人広告をザッと見ると給与が高いと感じられます。

ブラック企業は、「この仕事でこの給与ならお得だ」と思わせる工夫をしているからです。

区別のポイントは、労働時間、休日出勤、休暇、基本給、手当、残業など労働条件の分かりやすさです。

ブラック企業は、実際の労働時間が判断できないような不明確な表現をしています。

休日出勤や休暇についてもあやふやです。

優良企業ならば、明確な実績を表示できるはずです。

ブラック企業の求人広告には、聞き慣れない名称の手当があったり、残業代が別計算なのか手当に含まれるのか分からなかったりと怪しいのです。

優良企業ならば、一般的な用語を使っていますから明確です。

 

<社員の使い捨て>

ブラック企業は、疲れた社員を意図的に退職に追い込むので、いつも大量の退職者が出ています。

その一方で、大量の新規採用を行います。

「事業拡大につき大量採用!」という表現が求人広告に入っていたら、優良企業が本当に事業を拡大する予定なのか、それともブラック企業がウソをついているのか、少し調べて判断する必要があります。

 

<本当は魅力が無いから>

優良企業なら、労働者が魅力を感じるポイントがたくさんありますから、具体的な魅力を求人広告にアピールできます。

一方ブラック企業は、アピールできる魅力が無いのでイメージでごまかそうとします。

そのため、次のような表現が多く見られます。

 

・一部の人の昇給例の表示

使い捨てにする側の社員は昇給や昇進があるので、これを例示します。

使い捨てにされる側の社員の「平均」は表示できません。

 

・年次有給休暇など休暇の「実績」の表示が無い

制度があるという表示はあるものの、本当に休暇を取れているという実績は無いので表示できないのです。

 

・「和気あいあい」「アットホーム」など人間関係が良いことをアピール

実際には小規模で、社員が親から叱られるように厳しく扱われているのが現実です。

それでいて、親とは違って愛情が感じられません。

 

・精神論的な表現が目立つ

「あなたの熱意を買います」「やる気だけ持ってきてください」「あなたの夢は何ですか」「お客様への感謝の気持が原動力です」など実体の無い表現が多く見られます。

 

<広告がデタラメなら>

求人広告に実際と違うことが書かれていたら、どうしてもダマされてしまいます。

 

求人広告がまともな場合でも、応募の電話を掛けてみたり採用面接に行ってみたりして、採用担当者がとても早口だったら警戒しましょう。

面接の時間が短くて、すぐに採用が決まったり、書類の記入をさせられたりするのは怪しいのです。

ブラック企業は、大量退職・大量採用ですから、ひとり一人の応募者に対して丁寧に応対する時間が無いのです。

そのため、じっくり選考する態度は見られず、どうしても大急ぎの対応となります。

 

また、運良く面接会場が会社の中であれば、その会社の社員の姿を見ることができるかも知れません。

採用された場合の数年後の姿が、その社員と重なることでしょう。

無表情だったり、身だしなみが乱れていたりして、疲労感がにじみ出ているようなら、直感的に入社を見送ることになると思います。

 

解決社労士

2021/04/01|2,022文字

 

YouTube情報漏洩の防止

https://youtu.be/nnTZG2FyG8w

 

<雇入れ時の健康診断>

雇入れ時の健康診断は、1週間の所定労働時間が正社員の4分の3以上で、1年以上勤続する予定の従業員について実施義務があります。〔労働安全衛生法第66条第1項、労働安全衛生規則第45条〕

また、1週間の所定労働時間が正社員の半分以上であれば、受診させることが望ましいとされています。

努力義務です。

いずれにせよ雇入れ時の健康診断実施義務は、採用側の義務ですから、基本的には採用側が実施し費用も負担するのが法の趣旨に適合します。

とはいえ、費用負担について法令に明確な規定が無いので、応募者側が費用を負担するルールにしても違法ではありません。

また、応募者が自主的に健康診断の結果を提出することも問題ありません。

 

<採用面接時の対応>

かつては採用面接を行うにあたって、健康診断結果の提出を求め、雇入れ時の健康診断を兼ねていた会社が多かったのです。

ところが、平成5(1993)年労働省通知と平成13(2001)年厚生労働省通知によれば、「雇い入れ時健康診断は、雇い入れた際における適正配置と入職後の健康管理のためのものであって、採用選考時に採用の可否の決定のための健診を行うことは適切を欠く」とされています。

この背景には、採用側がHIV検査を義務付けるなど、人権侵害の問題がありました。

やはり、法定の項目以外の検査を義務付けるのは避けるべきでしょう。

そもそも、法令の文言を素直に読めば、「雇い入れ時」というのは採用前ではなく採用後のことを言っています。

ですから基本的には、採用決定後に雇入れ時の健康診断を実施することになります。

 

<健康状態の確認漏れによるトラブル>

健康状態に問題のある応募者を採用してしまっても、採用取消や解雇は簡単にはできません。

ほとんどの場合は、採用取消や解雇が無効とされ、損害賠償請求の対象となってしまいます。

トラブルになるのは、入社後に健康不良が発覚したものの、「その点については質問されませんでした」と言ってかわされていまい、採用側は有効な手を打てなくなるというケースです。

ですから、採用面接の段階で応募者の健康状態について、人権侵害にならない範囲で、詳細な情報を申告してもらうのが得策です。

これと併せて、就業規則には、採用時の虚偽申告は採用取消や解雇の理由となりうることを規定しておくべきです。

もちろん、応募者本人も把握していなかった病気については、虚偽申告とはいえません。

この場合には、その病気が業務の遂行を不可能とするものであるかどうかの問題になります。

 

<健康状態の確認が必要とされる範囲>

採用する側は、興味本位で応募者の病気を詮索するわけではなく、予定される業務を行うのに支障のない健康状態であることを確認したいわけです。

応募者も、具体的な業務内容を想定して応募してきているわけですから、自分の今の健康状態で、その業務を遂行できるかどうかを確認したいと考えます。

この利害の一致する範囲で、健康状態や病気、薬の服用や通院などの予定について確認することが許されると考えて良いでしょう。

 

採用側は、業務内容をなるべく具体的に説明します。

そして、応募者側はその業務を行える状態か、何か不安はあるか、雇い主に求めたい配慮はあるかといった情報を提供するということになります。

 

自動車の運転、機械類の操作、高温での調理、高所での作業など、意識が途切れたら危険な業務は、重度の高血圧症や貧血症なら避けるべきです。

これらは、通常の健康診断の項目に入っていますから、判断は比較的容易です。

しかし、一定の精神疾患でも同様の危険があり、健康診断では見つからないだけに、応募者の自己申告に頼るしかありません。

 

結局のところ、業務の環境や作業内容など、具体的な事情により確認が必要な範囲は異なります。

そして、その必要な範囲内で、健康状態の確認が許されるということになります。

 

<応募者確保のために>

業務内容を良く知っている会社の担当者が面接を行うと、その場の雰囲気や感情に流されて、聞いてはいけないことをストレートに聞いてしまうリスクがあります。

そのリスクというのは、応募者がどこかに申告して行政の介入を許すとか、損害賠償を求められるとかいうことではなく、採用面接を受けた応募者からの口コミ情報で、全体の応募者数が減少してしまうリスクです。

応募者には採用面接についての守秘義務がありませんから、ネットを介しての口コミ情報は、思わぬ威力を発揮してしまいます。

 

<解決社労士の視点から>

こうしたトラブルを避けるためには、業務内容ごとの「採用面接シート」を利用するのが便利です。このシートに書かれている項目を漏れなく確認し、書かれていない項目については尋ねないようにするのです。

この作成と効率的な運用には、専門知識と技術が必要ですから、作成にあたっては、ぜひ信頼できる国家資格者の社会保険労務士(社労士)にご相談ください。

2021/03/24|549文字

 

YouTube解決社労士のご紹介

https://youtu.be/qUAFJ0sjnDg

 

<採用したい応募者のパターン>

・電話に出た採用担当者のことを気遣って話を良く聞く。

・静かな場所から電話をかけているので話し声が鮮明。

・午前9時から午後5時までに電話をかけてくる。店舗などの場合には、お客様の少ない時間帯を考えてかけてくる。

・いろいろ準備してから電話をかけてくるので、メモを取りながら要領よく受け答えする。

・「まだ募集していますか?」という嬉しい質問をする(良い条件なので応募者が殺到しているだろうという話をしてくれている)。

・面接に何を持参すべきか聞いてくる。

 

<採用したくない応募者のパターン>

・求人広告をきちんと読んでいないので、そもそも条件が合っていない。

・面接の日時を知らされる前に電話を切ろうとする。

・「メモを取るのでちょっと待ってください」と言い電話が中断する。

・周囲の騒音が大きくて聞き取りにくい。

・電波が途切れる。

・自分の言いたいことを勝手にしゃべっている。

・早朝や深夜、忙しい時間帯に電話をかけてくる。

・応募者本人からの電話ではない。

 

このように、応募者からの電話ひとつをとっても、採用選考の手掛かりは多いものです。

採用を急いでいるからといって、妥協してはいけません。

採用も社会保険労務士(社労士)の専門分野です。

困ったら社会保険労務士(社労士)にご相談ください。

 

解決社労士

2021/03/14|1,295文字

 

YouTube常識ってなんだろう?

https://youtu.be/UgGT9OM0_S8

 

<常識とは>

「常識」という日本語は、一般の社会人が共通に持つ/持つべき普通の知識・意見や判断力などと説明されます。

これを英語に訳すと、次の3つの内のどれかになると思われます。

general knowledge ― 誰もが持っている知識・情報

common courtesy ― 礼儀作法、マナー

common sense ― 当たり前の感覚、分別(ふんべつ)

「常識」という言葉が出てきたときには、どの意味で使われているのかを考える必要があるでしょう。

 

<誰もが持っている知識・情報としての常識>

社内にこの「常識」を欠く社員がいると、仕事が上手く進まないことがあります。

しかし、単純に知識や情報を与えることで不都合は解消します。

社内でAさんの「常識」とBさんの「常識」が食い違った場合、ネットで検索すれば大抵の場合に、どちらが正しいか簡単に判明します。

社内に特有なことであれば、社内資料で確認できます。

ですから、3つの中では最もトラブルになりにくい「常識」です。

 

<礼儀作法、マナーとしての常識>

社内にこの「常識」を欠く社員がいると、人間関係がぎくしゃくし、取引先との関係が悪くなることがあります。

ビジネスマナー研修を受講させ、上司や先輩が手本を示すことによって、「常識」を身に着けさせることができます。

「中途採用の〇〇さんは、挨拶の仕方も知らない。常識が無い」という話を耳にすることがあります。

たしかに、応接室や車内での席順、名刺交換の方法などは、ほとんどの企業に共通の「常識」となっています。

しかし、挨拶の仕方については地域や業界によって「常識」が異なっていますから、転職すれば「常識」の修正が必要になります。

こうした違いについての知識が無い社員が、異なる「常識」を備えた社員を馬鹿にしたり、叱ったりすることでトラブルが発生します。

また、中途採用の社員を試用期間中に解雇してしまうなど、誤った判断をすれば訴訟に発展することもあります。

社内での礼儀作法とマナーを統一し、それが全企業統一の「常識」ではなく社内ルールであることを、社員に教育しておく必要があります。

 

<当たり前の感覚、分別としての常識>

これが最もトラブルになりやすい「常識」です。

なぜなら、この「常識」は個人ごとに異なり、それにもかかわらず多くの人に共通するものだという勘違いがあるからです。

「近頃の若いもんは」というのは、世代による「常識」の違い、ゼネレーションギャップを端的に表した言葉です。

この「常識」の違いが、ハラスメントの原因にもなります。

部下に反省させるためなら、怒鳴るのも、多少の暴力をふるうのも仕方が無いという「常識」が、パワハラの原因となります。

いつも笑顔で感謝の言葉を述べるのは、自分に好意を抱いている確たる証拠であるという「常識」が、セクハラの原因となります。

勤務中にマスクを外すことは許されないという「常識」が、コロナハラスメントの原因となります。

社員一人ひとりの「常識」に任せておけば、必然的にトラブルの温床となります。

安全配慮義務を果たし、ハラスメントを防ぐには、社内の統一ルールと教育が必要なのです。

 

解決社労士

2021/01/19|1,140文字

 

YouTube労働条件を確認しましょう

https://youtu.be/QzMHmif7cgY

 

<会社に損害が発生するケース>

従業員が業務上、自動車の運転をしていて、人身事故や物損事故を起こした場合には、使用者責任(民法第715条)により、被害者に対して会社が賠償責任を負うことがあります。

その他、自動車の修理代や自動車保険料の増額分、営業上の損失も発生します。

 

<報償責任という考え方>

こうした場合に、会社は事故を起こした従業員に対して、損害のすべてを賠償するよう求めることはできないとされています。

それは、従業員に働いてもらって売上と利益を上げているのだから、損失が発生した場合には、会社もその損失を負担するのが公平だという報償責任の法理が働くからです。

会社が儲かっても、利益のすべてを従業員に分配するわけではないのに、損害が発生したときに、その損失のすべてを従業員に負担させるのでは不合理だというわけです。

会社ができたばかりのときは、共同経営者だけで運営している場合があります。

この場合には、利益も損失も分かち合う関係にあるでしょう。

ところが、誰かを雇う場合には、その従業員に利益のすべてを給与として支払ってしまうわけではありません。

会社の取り分があります。

このように、利益が出れば会社が一部を得るのに、従業員の過失で損失が出たら、その従業員にすべての損失を押し付けるというのは、正義に反するということなのです。

会社としては、安全運転のできる注意深い人を採用できるし、従業員を教育できるし、保険にも入れるのだから、そのようにして損害を回避すれば良いのです。

 

<損害の何割までなら従業員に賠償を求められるか>

その従業員が故意に事故を起こしたような特殊なケースであれば、会社は損害のほとんどを従業員に賠償させることができそうにも思えます。

しかし、長時間労働で疲労が蓄積し注意力が低下していた、スケジュールがタイトで常に急がねばならない状況だった、不注意な人間であることを承知のうえで運転させていた、会社は交通安全についての教育に熱心ではなく安全運転について本人の自覚に任せていたなどの事情があれば、ある意味、事故を起こした従業員も被害者であって、会社が加害者の性質を帯びてしまいます。

こうした具体的な事情を踏まえて、どれほどの賠償を請求できるのか慎重に検討しなければなりません。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

訴訟になれば、どの程度の賠償請求が妥当かを考えるのは、弁護士の仕事になるでしょう。

社労士が法廷に立つにしても、補助的な役割を担うに過ぎません。

むしろ、交通事故を予防すべきです。

そのための、長時間労働の解消、ノルマやスケジュール管理の適正化、安全運転のできる従業員の採用・教育、あるいは労災保険の手続について、信頼できる社労士にご相談いただきたいと思います。

 

解決社労士

2020/12/05|959文字

 

<入社日と初出勤>

入社日は労働契約の初日であり、勤務先に籍を置いた初日です。

そして、初出勤は初めて出勤した日です。

正社員であれ、パートやアルバイトであれ、必ずしも入社日に初出勤するわけではありません。

たとえば、平成29年の4月は1日が土曜日でしたから、新卒採用の入社日が41日で、初出勤が月曜日の43日というのが多数派でした。

 

<労務管理上の基準日>

健康保険、厚生年金保険、雇用保険などの保険関係は、入社日に加入することになります。

かつては、試用期間が終わって本採用の時に加入するという誤った運用も見られましたが、基準を満たしている限り、試用期間の初日に加入するのが正しいわけです。

これを後から修正するには、保険料もまとめて納付しなければならず、大きな負担となりますから遅れずに手続しましょう。

年次有給休暇は、法定通りであれば入社日から6か月後に付与されます。

これも、試用期間があれば、試用期間の初日から6か月後に付与されることになります。

 

<入社日と初出勤が離れている場合>

入社日に社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入して、その月の保険料も発生します。

ところが、入社してから初出勤までの日が空いてしまうと、就業規則により、その間の欠勤控除が発生する場合があります。

その結果、社会保険料を給与から控除すると、マイナスになってしまうことがあります。

これは違法なことではありません。

別途支払ってもらうなど、予めルールを定めておくと良いでしょう。

年次有給休暇は法定通りであれば、入社日から6か月間の出勤率が8割以上の場合に付与されます。

入社してから初出勤までの日が空いてしまい、この間を欠勤扱いにしてしまうと、出勤率の点で不利になってしまいます。

会社側の都合でこうした現象が発生するのであれば、入社日から初出勤まで、出勤率の計算のうえでは出勤扱いにするなどのルールを設けておくと良いでしょう。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

入社して何年も経てば当り前の事でも、新人にとっては首をかしげるような事であったりします。

せっかく入社した新人が気持よくスタートを切れるよう、会社に合った仕組みづくりのアドバイスをして、適切に運用できるよう支えるのも、顧問社労士の重要な役割です。

ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/11/05|1,279文字

 

<メンバーシップ型雇用>

メンバーシップ型雇用というのは、職種を限定せずに総合職として採用し、総合的なスキルを求める方式です。

「この仕事をしてもらう」のではなく、「この会社の社員になってもらう」という雇用です。

日本では、新卒一括採用がこれに当たります。

会社は、社員の職種や仕事内容を変えながら適性を見極め、会社に長く貢献する人材を育てていきます。

この過程で、社員自身も自分に合った仕事を見出すチャンスを与えられます。

メンバーシップ型雇用で入社した社員には、長く勤める者が多く、仕事も広範囲に及ぶため、社歴の差が物を言います。

途中で退職しないように、勤続していれば昇給し、退職金の支給額も累進的に増額するような、年功序列的な雇用ですから、社員にとっては転職する場合のリスクが高く、優秀な人材でも転職しにくい環境にあります。

こうしたメンバーシップ型雇用は、定着率が高いことと、異動が容易であることから、人材の確保には適していますが、専門職の人材が育ちにくい欠点があり、市場環境の変化が著しい現代の日本には適合しなくなってきています。

 

<ジョブ型雇用>

メンバーシップ型雇用に対置されるジョブ型雇用は、特定の職種に限定して採用し、専門的なスキルを求める方式です。

「この会社の社員になってもらう」のではなく、「この仕事をしてもらう」という雇用です。

専門職の社員が急に辞めたとき、資格・経験・能力を備えた人材を中途採用するような場合が、これに当たります。

専門的な仕事ができるのであれば、年齢や学歴は重視されません。

メンバーシップ型雇用では、主に会社の責任で教育研修を行うのに対して、ジョブ型雇用では、予定した業務をこなすのに必要な経験・能力を備えている前提で雇用されたのですから、不足するものがあれば、基本的には社員自身の自己研鑽が求められます。

ジョブ型雇用の社員は、その会社で予定した仕事が無くなったら、異動して雇用を維持するということが難しいですし、多くの場合には本人も望みません。

むしろ、「その会社」での勤務を続けるのではなく、転職することにより、「その仕事」での勤務を続ける選択をするでしょう。

 

<新型コロナウイルスの影響>

新型コロナウイルスの感染拡大を避けるため、大企業だけでなく中小企業でも、在宅勤務を中心とするテレワークが広がりを見せました。

その中で、人事考課や採用方法の見直しが進んでいます。

評価をする上司は、評価される部下の働きぶりではなく、仕事の結果や成果物を評価対象とせざるを得ません。

勤務態度や潜在能力を考慮しないのであれば、メンバーシップ型雇用よりも、ジョブ型雇用の方が適合します。

こうして、テレワークには、ジョブ型雇用が向いていると言われます。

さらに、そもそも雇用ではなく、専門家やフリーランスへの業務委託で足りるとまで言われるようになってきています。

たとえば、勤務時間や休暇の管理、社員情報の管理なども、社内に担当者を置くよりは、外部のサービスを利用したほうが、正確で経済的でもあります。

ジョブ型雇用の、一歩先を考えてみてはいかがでしょうか。

 

解決社労士

2019/12/26|1,752文字

 

<令和元年度補正予算案>

令和元(2019)年12月13日、政府は令和元年度補正予算案を閣議決定しました。

これは、次の4つの経済対策のために編成されています。

 

1.災害からの復旧・復興(2兆3,086億円)

2.経済の下振れリスク対応(9,173億円)

3.東京2020後を見据えた景気活性化策(1兆771億円)

4.その他(392億円)

 

以下、経済の下振れリスクを乗り越えようとする者への重点支援として、厚生労働省と経済産業省が補正予算案に示しているものをご紹介します。

 

<厚生労働省関連(一部抜粋)>

 

【中小企業・小規模事業者の生産性向上の支援(14億円)】

最低賃金の引上げや被用者保険の適用拡大等を踏まえ、生産性向上に資する設備投資等に対する助成の拡充を行い、最低賃金引上げに取り組む中小企業・小規模事業者を支援するとともに、中小企業等において、被用者保険の適用に当たり、労働者への丁寧な説明等を行えるよう、事業者を対象とした説明会等による周知や専門家の活用支援等を行う。

 

【生活衛生関係営業者の生産性向上の支援(2.8億円)】

生活衛生関係営業者の生産性向上を支援するため、個別相談やセミナーを実施するとともに、経営改善に役立つ情報提供や経営診断ツール等により、経営力底上げを図る。

 

【介護事業所における生産性向上の推進(1.5億円)】

介護現場の生産性向上の推進に向けて、各自治体の先進的な取組を収集し、介護現場の生産性向上に関するモデル事例の全国への普及・展開を図る。

 

【就職氷河期世代への支援(18億円)】

就職氷河期世代を支援するため、ハローワークに専門窓口の設置を進め、就職から職場定着まで一貫した支援を実施するほか、トライアル雇用を行う事業主、正社員として雇い入れ定着させた事業主等への助成金の拡充等、技能修得期間における生活福祉資金の貸付を行う新しいメニューの創設等により、就職氷河期世代の正社員雇用や就労を支援する。また、市町村におけるひきこもり支援を強化するため、ひきこもり支援施策の前提となる調査研究に要する経費や広報経費について補助を行う。

 

<経済産業省関連(一部抜粋)>

 

【中小企業生産性革命推進事業(3,600億円)】

中小機構が複数年にわたり中小企業の生産性向上を継続的に支援する「生産性革命推進事業」(仮称)を創設。設備投資、IT導入、販路開拓等の支援を一体的かつ機動的に実施。

よろず支援拠点等の支援体制を充実するほか、生産性及び省エネ性能の高い設備更新を支援。

 

【事業承継の円滑化(64億円)】

事業承継時に経営者保証の解除を促進するため、専門家による支援を実施。

事業承継ネットワークによるプッシュ型支援、事業承継補助金による後継者の経営革新等の支援等を実施。

 

【海外展開企業の事業円滑化(60億円)】

TPP11、日EU・EPA、日米貿易協定等を踏まえ、地域の中堅・中小企業による海外需要の取り込み活動等を支援。

世界市場(グローバル)に地方の中堅・中小企業等(ローカル)が直接製品等を提供するグローカルな取組等を促進。

(情報提供・相談体制整備、新輸出大国コンソーシアムによる支援、越境ECの活用、コンテンツの海外展開支援等)

 

【イノベーションの担い手の輩出(75億円)】

大企業等からの人材開放も含め、スタートアップ立ち上げ活動等を支援。また、アジアの新興国企業と共創し、社会課題解決に資する新事業創出(アジアDX)を推進。

産総研のAIクラウドシステムを拡充。また、公設試・大学等による先端設備の導入、人材育成事業を支援。

 

<経済の下振れリスク対応>

厚生労働省と経済産業省が補正予算案に示している経済の下振れリスク対応は、その性質上、中小企業に限定されたものもあります。

生産性向上策や海外需要の取り込みの点で、中小企業だけが支援されることについては、大企業にとっての脅威だと捉えるべきでしょう。

今後は、大企業が生産性向上や海外需要の取り込みに、より積極的に取り組む必要があります。

また大企業は、就職氷河期世代の採用と教育にも社会的責任を負っています。

人材不足への対応と生産性向上のため、大企業には、就職氷河期世代の採用と職場定着のための教育に、積極的に取り組んでいただきたいと思います。

 

解決社労士

2019/11/29|1,154文字

 

<面接シートの利用>

採用面接を実施するときには、確認もれを防いだり、聞いてはいけないことを聞かないようにして、効率よく行うことが必要です。

効率の悪い面接をしてしまうと、面接に時間がかかり、面接を担当する社員の人件費が余計にかかったり、応募者の印象を悪くしたりと、何もよいことはありません。

また、聞いてはいけないことを聞いてしまい、応募者が労基署に相談するようなことは防ぎたいものです。

やはり面接には、質問事項を列挙し回答欄を設けた面接シートが不可欠です。

 

<採用側の思惑>

企業としては、社会的責任を果たすためにも、障害者の採用には積極的でありたいものです。

しかし、採用したならば平成28(2016)4月に改正された障害者雇用促進法の趣旨に沿い、責任をもって様々な配慮をしなければなりません。

特に常用労働者数が100人を超える企業では、障害者雇用納付金の制度が適用されるため、障害者雇用率2.2%の達成も必要となってきます。

それでも、きちんと対応しきれない障害者を雇用することは、かえって無責任なことになってしまいます。

 

<応募側の期待>

一方で、障害のある応募者の企業に対する期待は様々です。

障害を知られたくない応募者、すべてを明らかにして配慮を求めてくる応募者、どの程度の情報を示したら採用されやすくなるか探ってくる応募者、それぞれの思いがあるのです。

 

<応募側の権利>

基本的に、障害者であること、障害の内容・程度は、保護されるべき個人情報です。

ですから応募者に対して、これらの情報を明らかにすることを義務付けるわけにはいきません。

話の流れの中で、自然にこうした情報が示されるか、あるいは教えていただけるようにお願いすることになります。

 

<障害者採用時の面接シート>

応募者が予め障害者であることを告げてきて、了解のうえで採用面接をする場合には、専用の面接シートを作ることも考えられます。

しかし、こうしたケースは例外的ですし、人事関連の業務では場合分けを多くすればするほど、効率が低下しミスも増えてしまいます。

応募の段階では障害のあることを示さない応募者が大半であることを考えると、面接シートは1種類に統一したいものです。

面接シートの終わりのほうに、「働くにあたって必要な配慮」の欄を設け、すべての応募者に対して「たとえば毎月特定の日に病院に行くためのお休みが必要であるとか、一緒に働く仲間に知っておいてほしいことなどありませんか?」という自然な質問を投げかけて、情報を引き出すようにしてはいかがでしょうか。

もちろん、面接の途中でご本人から話があった場合には、この欄に情報を書きとめておきます。

採用面接にあたっては、採用側の配慮が応募者に悟られないよう、さりげなく行うという一段上の配慮を心がけたいものです。

 

解決社労士

令和元(2019)年8月9日、厚生労働省が「平成30年度のハローワークにおける求人票の記載内容と実際の労働条件の相違に係る申出等の件数」を取りまとめ公表しました。

 

<結果の概要>

平成30(2018)年度の申出等の件数は6,811件で、対前年度比20.0%減となり、平成27(2015)年度から4年連続で減少しました。

申出等を内容別に分類すると、「賃金に関すること」(30%)が最も多く、「就業時間に関すること」(23%)、「職種・仕事の内容に関すること」(17%)が続いています。

 

【申出等の件数の推移】

        

30年度

29年度

28年度

27年度

26年度

申出等の件数

6,811件

8,507件

9,299件

10,937件

12,252件

参考:
新規求人件数

6,600,951件

6,468,438件

6,161,398件

5,835,295件

5,553,055件

 

<是正指導>
ハローワークでは、求人票の記載内容と実際の労働条件の相違に関する相談を受けた場合には、求人を受理したハローワークと連携して、すぐに事実確認を行い、事実確認の結果、求人票の記載内容が実際の労働条件と異なっていた場合には、是正指導を行っています。

平成30(2018)年度の求人票の記載内容と実際の労働条件が異なっていたのは、2,967件でした。
 

<ハローワークの方針>
ハローワークでは、引き続きこうした事実確認と是正指導などの対応を徹底することで、求人票の記載内容が適切なものとなるように努め、求職者の期待と信頼に応えられる職業紹介などを行っていく方針です。

今後も、求人票の記載内容と実際の労働条件の相違に関する申出等については、最寄りのハローワーク、または「ハローワーク求人ホットライン」に連絡するよう協力を求めています。
 

【ハローワーク求人ホットライン(求職者・就業者専用)】
・電話番号 03 ( 6858 ) 8609(ハ ローワーク)
・受付時間 8時30分~17時15分(年末年始を除く)

 

2019.08.30. 解決社労士 柳田 恵一

<性別による差別>

募集・採用の際、次のような差別的取扱いは、男女雇用機会均等法違反となります。

・募集または採用で男女のどちらかを排除すること。

・募集または採用の条件を男女で異なるものにすること。

・能力や資質を判断する場合に、その方法や基準について男女で異なる取扱いをすること。

・募集または採用で男女のどちらかを優先すること。

・求人の内容の説明など、募集または採用の情報提供で、男女で異なる取扱いをすること。

・合理的な理由なく、身長・体重・体力の条件を付け、または、コース別採用で転勤に応じることを条件とすること。

 

<年齢による差別>

募集・採用では、原則として年齢を不問としなければなりません。

年齢制限の禁止は、ハローワークを利用する場合だけでなく、民間の職業紹介事業者や求人広告などを通じて募集・採用をする場合、雇い主が直接募集・採用する場合を含めて広く適用されます。

ただし、長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、正社員を募集・採用する場合など、一定の場合については、例外的に年齢制限が認められます。

例外的に年齢制限を設ける場合であっても、求職者、職業紹介事業者などに対して、制限を設ける理由を提示することが会社に義務付けられています。

 

<その他の差別>

このほか、労働組合に入っていることや、労働組合の正当な活動を理由として不利益に取り扱うことは、労働組合法で禁止されています。

また、法律で明確に禁止されていない場合でも、基本的人権を傷つけ、社会常識の上で相当とはいえないような差別をすれば、損害賠償責任が発生することがあります。

 

2019.08.15. 解決社労士 柳田 恵一

<経歴詐称>

経歴詐称とは、学歴・職歴を偽ることです。

通常は、履歴書の学歴・職歴欄に架空の内容を書いたり、一部の事実を隠して会社に提出する形で行われます。

学歴については、大学中退なのに「卒業」というように高学歴を偽るパターンが多いようです。しかし、高卒限定での採用を希望する会社に、大学卒を隠して応募する場合もあります。

職歴については、経験者限定の募集に対して、勤務経験が無いのに履歴書に記入するパターンが多いようです。しかし、たとえばA社の東京営業所で勤務し職場の人間関係を悪化させて自ら退職しておきながら、この職歴を隠して同じA社の大阪営業所の求人に応募するという場合もあります。

また、一つの企業での勤続期間が短く、転職を繰り返している人については、多くの企業が採用を避けていますから、このような応募者は、職歴の一部のみ記入し勤続期間を長く偽ることもしばしば見られます。

 

<就業規則の規定>

厚生労働省のモデル就業規則にも、「重要な経歴を詐称して雇用されたとき」は懲戒解雇と書いてあります。これにならって、就業規則に採用取り消しや懲戒解雇の規定を置き、実際に退職させても問題は無いのでしょうか。

「重要な経歴を詐称」の中の「重要」の判断がむずかしいように思われます。

裁判での判断基準を見ると、その会社について具体的に考えた場合、その経歴詐称が無かったならば採用しなかっただろうし、実際に勤務に支障が出ているという場合であれば、有効と判断されることが多いようです。

たまたま履歴書の職歴欄に誤りが見つかったからといって、会社がこれを盾に退職に追い込むようなことは、不誠実な態度であり許されないのです。

 

<経歴詐称に優先して考えたい要素>

経歴詐称は客観的な事実ですから、これを立証するのも容易でしょう。

しかし、問題となる社員に退職して欲しい本当の理由は、期待した仕事ぶりではないということです。

たとえば、ある特定の分野でシステムエンジニアとしての経験が豊富だというので採用したところ、経歴はデタラメだった。しかし、大変な努力をして独学により充分な技能を身に着けているので、その能力を期待以上に発揮しているという社員がいたならどうでしょうか。会社は懲戒解雇など勿体なくてできません。

反対に、履歴書に書いてある経歴は正しいが、期待したほどの能力を発揮してくれない社員についてはどうでしょう。どこかに少しでもウソの経歴が無いか、履歴書を見直すことは無意味です。たとえわずかな経歴詐称が見つかったとしても、それを理由に解雇を考えるのは言いがかりというものです。むしろ、端的に能力不足による普通解雇や人事異動を考えるのが適切です。

 

<結論として>

配属先での評価が著しく低い新人がいる。怪しんで経歴の裏をとってみたらデタラメだった。もし、本当の経歴がわかっていたら採用しなかっただろう。こんなケースなら、懲戒解雇に正当性があります。その新人は会社をダマし、会社に損害を加えたわけですから。

しかし、3年、5年と無事に勤務してきた社員について、今さら経歴詐称を理由とする懲戒解雇は適切ではありません。やはり、人事異動を考えるべきでしょう。

 

2019.06.08. 解決社労士 柳田 恵一

<社員紹介制度(リファラル採用)>

社員紹介制度は、自社の従業員から知人を紹介してもらい、採用活動の対象とするものです。

推薦・紹介を英語でreferralと言いますので、リファラル採用とも呼ばれます。

紹介者に対しては、謝礼の進呈や報奨金の支払いが行われます。

企業にとっては、採用コストの削減や、応募条件を満たさない応募者への対応の回避などの点でメリットがあります。

 

<法的な規制>

社員紹介制度は、労働基準法に違反する場合があります。

 

【中間搾取の排除】

第六条 何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。

 

ここでいう法律とは、通達によると、職業安定法や船員職業安定法です。

また、業として利益を得るというのは、営利を目的として、同種の行為を反復継続することをいうものと解されています。

いわゆるピンハネを禁止する規定です。

この規定に違反した場合の罰則は、労働基準法上2番目に重い、1年以下の懲役または50万円以下の罰金です。ともすると、人身売買につながり得るとの配慮から、こうした重い罰則となっています。

もっとも、社員紹介制度をそこまで大々的に展開することは稀でしょうから、一般の企業で、労働基準法違反は起こり難いと思われます。

 

しかし、注意しなければならない法的規制として、職業安定法の次の規定があります。

 

【報酬の供与の禁止】

第四十条 労働者の募集を行う者は、その被用者で当該労働者の募集に従事するもの又は募集受託者に対し、賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合又は第三十六条第二項の認可に係る報酬を与える場合を除き、報酬を与えてはならない。

 

この中の第36条第2項は、従業員以外の者に報酬を与えて労働者の募集に従事させようとする場合をいいますから、従業員を対象とする社員紹介制度は含まれません。

「賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合」と言っていますから、商品券など物品の進呈はいけません。

従業員が紹介により得られる報酬は、賃金として支払われる制度にすることが必要です。

 

<就業規則の規定>

紹介者には賃金が支払われるのですから、給与や賞与にプラスして支給される内容を就業規則に規定する必要があります。

基本給や本来の賞与額に比べて相当に高額であると、「業として利益を得る」ことになり、労働基準法第6条に違反する恐れが出てきます。1回の紹介に対する謝礼の他、1人の従業員が紹介できる人数に制限を設ける必要もあるでしょう。特定の従業員の知り合いが多数集まると、派閥形成のリスクもあります。

また、支給の時期については、紹介があったとき、紹介された人が採用されたとき、採用されて6か月など一定の期間定着したときなどが考えられます。各時点で異なる金額を支給する制度も可能です。

 

2019.06.07. 解決社労士 柳田 恵一

<採用内定の性格>

採用内定の法的性格は、それぞれの具体的な事情により異なりますが、採用内定通知のほかに労働契約締結のための意思表示をすることが予定されていない場合には、採用内定により始期付解約権留保付労働契約が成立したと認められます。

 

始期付=働き始める時期が決まっていること

解約権=契約を無かったことにできる権利

留保付=効力を残して持ち続けること

始期付解約権留保付労働契約=すぐに働き始めるのではなくて、いつから働き始めるかが決められていて、しかも、場合によっては契約を無かったことにできる権利が残されたまま成立している労働契約

 

<内定取消>

採用内定取消は解雇に当たり、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合には、権利を濫用したものとして無効となります。〔労働契約法第16条〕

採用内定取消が有効とされるのは、原則的には、次の2つの条件を満たす場合に限られると考えられます。

・採用内定の取消事由が、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であること。具体的には、契約の前提となる条件や資格の要件を満たさないとき、健康状態の大幅な悪化、採否の判断に大きく影響する重要な経歴詐称、必要書類を提出しないなど手続きへの非協力的態度、その他の不適格事由などが考えられます。

・この事実を理由として採用内定を取消すことが、解約権留保の趣旨と目的に照らして、客観的に合理的な理由によるものと認められ社会通念上相当として是認することができる場合であること。

 

<内定辞退>

内定辞退は学生・労働者側からの行為になります。

内定辞退の場合には、すでに労働契約は成立しているものの、民法の規定により「雇用の期間を定めなかった時はいつでも解約できる」とされているので、基本的には認められることになります。

ただし、労働契約を解約することはできても、一方的な解約が信義に反し不誠実な場合には、会社側から損害賠償の請求をすることも考えられます。

もっとも、損害と内定辞退の因果関係や損害額を立証することは難しく、立証できても大きな金額とはならないので、実際に損害賠償を求めた判例は見当たりません。

内定を辞退された採用担当者としては、恨み言の一つも言ってやりたくなりますが、ハラスメントを主張され、会社の評判が落ちてしまったら責任重大ですから、グッとこらえなければなりません。

 

2019.05.24. 解決社労士 柳田 恵一

<親権者・後見人の権限>

親権者や後見人は、法定代理人として、未成年者が交わす労働契約などの法律行為に同意を与え、未成年者の財産を管理し、その財産に関する法律行為につき未成年者を代表する権限を有します。〔民法第5条、第824条、第859条〕

 

<労働基準法による制限>

こうした民法の規定にもかかわらず、労働契約に関しては、本人の同意を得ても未成年者に代って締結できないこととされています。〔労働基準法第58条〕

これはかつて、親が親権を濫用し、子が知らないうちに子に不利益な内容の労働契約を締結する事例が多く見られたことから、その弊害をなくすために設けられた規定です。

このことから、親権者等の法定代理人としての行為に限らず、未成年者の委任による任意代理の場合にも、未成年者に代わる労働契約の締結はできないものと考えられています。

また、親権者や後見人は、未成年者の賃金を代って受け取ってはならないとされています。〔労働基準法第59条〕

口座振り込みの場合にも、本人名義の口座であることが必要です。

 

<本人の意思に反する労働契約の解除>

労働契約が未成年者に不利と判断される場合に、親権者や後見人が本人の意思に反してでもこれを解除できるかという疑問があります。

この点について裁判例は、未成年者に不利であると認められる場合には、未成年者の意思に反しても未成年者の利益になるものとして契約解除はできるとしています。

その一方で、親権者等が雇い主を個人的に嫌いであるなどを理由に、労働契約の解除が不利である場合にまで解除するのは、解除権の濫用として否定される場合があります。

いずれにせよ、未成年者を雇っている場合に、その親権者から労働契約の内容が不利であるとして解除されることがあるということです。

ですから、未成年者については、採用や契約の更新について親権者等に確認をとっておく必要があるのです。

 

2019.04.27. 解決社労士 柳田 恵一

<内容についての法規制>

ハローワークの求人票や求人情報誌の求人広告には、求職者の知りたい情報が詳しく明確に記載されていることが重要です。

このため、求人の申込みや労働者の募集を行う際に書面や電子メールなどで明示すべき労働条件が、次のように定められています。〔職業安定法第5条の3〕

・労働者が従事すべき業務の内容に関する事項

・労働契約の期間に関する事項

・就業の場所に関する事項

・始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間及び休日に関する事項

・賃金の額に関する事項

・健康保険、厚生年金、労働者災害補償保険及び雇用保険の適用に関する事項

なお、労働契約を締結する際に明示すべき労働条件と明示の方法についても法定されています。〔労働基準法第15条〕

また、労使当事者は労働契約の内容について、できる限り書面により確認するものとされています。〔労働契約法第4条〕

 

<委細面談>

ではなぜ、飲食店などの店頭に「アルバイト急募!委細(いさい)面談」というような、中身の全然わからないハリガミが貼ってあったりするのでしょうか?

実は、求人広告にいろいろな事項を明示する義務はあるものの、「できる限りやりましょう」という努力義務に過ぎないのです。

つまり、違反しても罰則はありません。

ですから倫理観を欠くブラック企業や、いちいち細かいことまで書くことを面倒に思う使用者は、書きたい範囲内で書いているというのが実態なのです。

ただ、採用が決まって労働契約を締結する際の労働条件明示義務については、30万円以下の罰金が定められています。〔労働基準法第120条〕

ということは、求職者としては求人広告は応募のキッカケに過ぎないのであって、採用面接の際に示された労働条件を詳細にチェックする必要があるということなのです。

 

2019.04.25. 解決社労士 柳田 恵一

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