ダブルワーク労働者の使用者による労働時間管理(通達)

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2020/10/17|2,045文字

 

<ダブルワークと労働基準法>

労働基準法には、次の規定があります。

 

【労働基準法第38条第1項:時間計算】

労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。

 

ここで、「事業場を異にする場合」には、事業主を異にする場合をも含む(昭和23(1948)年5月14日付基発第769号通達)とされています。

つまり、労働時間は通算されるのが原則です。

しかし、ダブルワークについては、この規定の解釈について、さまざまな疑義が出されていました。

令和2(2020)年9月1日付で、厚生労働省労働基準局長から都道府県労働局長に宛てられた通達(基発0901第3号)は、こうした疑義のいくつかに答えるものです。

 

<副業・兼業の確認>

通達は、使用者による副業・兼業の確認について、次のように説明しています。

「使用者は、労働者からの申告等により、副業・兼業の有無・内容を確認します。

その方法としては、就業規則、労働契約等に副業・兼業に関する届出制を定め、既に雇い入れている労働者が新たに副業・兼業を開始する場合の届出や、新たに労働者を雇い入れる際の労働者からの副業・兼業についての届出に基づくこと等が考えられます。

使用者は、副業・兼業に伴う労務管理を適切に行うため、届出制など副業・兼業の有無・内容を確認するための仕組みを設けておくことが望ましいです」

 

<労働時間を通算管理する使用者>

副業・兼業を行う労働者を使用する使用者は、法第38条第1項の規定により、それぞれ、自らの事業場における労働時間と他の使用者の事業場における労働時間とを通算して管理する必要があります。

しかし、他所の事業場における労働時間を、確実に把握することは困難であることから、通達は次のように行うことを説明しています。

「労働時間の通算管理は、自らの事業場における労働時間と労働者からの申告等により把握した他の使用者の事業場における労働時間とを通算することによって行います。

労働者からの申告等がなかった場合には、労働時間の通算は要せず、また、労働者からの申告等により把握した他の使用者の事業場における労働時間が、事実と異なっていた場合でも、労働者からの申告等により把握した労働時間によって通算していれば問題ありません」

つまり、労働者からの申告等により得られる情報の範囲内で管理すれば良いのであって、それ以上に自ら事実を探知してまで確認する必要は無いということです。

 

<基礎となる労働時間制度>

ダブルワーク労働者が働いている他所の事業場の労働時間制度が、自社のものと異なる場合について、通達は次のようにするよう説明しています。

「法第38条第1項の規定による労働時間の通算は、自らの事業場における労働時間制度を基に、労働者からの申告等により把握した他の使用者の事業場における労働時間と通算することによって行います。

週の労働時間の起算日または月の労働時間の起算日が、自らの事業場と他の使用者の事業場とで異なる場合についても、自らの事業場の労働時間制度における起算日を基に、そこから起算した各期間における労働時間を通算します」

 

<通算して時間外労働となる部分>

この部分は、従来からの変更は無く、通達では次のように説明されています。

「原則として、自らの事業場における所定労働時間と他の使用者の事業場における所定労働時間とを通算して、自らの事業場の労働時間制度における法定労働時間を超える部分がある場合は、時間的に後から労働契約を締結した使用者におけるその超える部分が時間外労働となり、その使用者における36協定で定めるところによって計算することになります。

例外的に、原則の所定労働時間の通算に加えて、自らの事業場における所定外労働時間と他の使用者の事業場における所定外労働時間とをその所定外労働が行われる順に通算して、自らの事業場の労働時間制度における法定労働時間を超える部分がある場合は、その超える部分が時間外労働となります」

つまり、原則として、後から雇った使用者が時間外割増賃金を負担しますが、先に雇った使用者でも例外的に時間外割増賃金を負担することがあるわけです。

そして、「各々の使用者は、通算して時間外労働となる時間のうち、自らの事業場において労働させる時間については、自らの事業場における36協定の延長時間の範囲内とする必要があります。

また、各々の使用者は、通算して時間外労働となる時間によって、時間外労働と休日労働の合計で単月100時間未満、複数月平均80時間以内の要件を遵守するよう、1か月単位で労働時間を通算管理する必要があります」

 

<割増賃金の支払>

上記のように労働時間の通算管理を行う主な目的は、時間外割増賃金の支払を適正に行うことにあります。

通達は、割増賃金の支払について、次のように説明しています。

「各々の使用者は、自らの事業場における労働時間制度を基に、他の使用者の事業場における所定労働時間・所定外労働時間についての労働者からの申告等により、

・ まず労働契約の締結の先後の順に所定労働時間を通算し、

・ 次に所定外労働の発生順に所定外労働時間を通算することによって、

それぞれの事業場での所定労働時間・所定外労働時間を通算した労働時間を把握し、その労働時間について、自らの事業場の労働時間制度における法定労働時間を超える部分のうち、自ら労働させた時間について、時間外労働の割増賃金(法第37条第1項)を支払う必要があります。

時間外労働の割増賃金の率は、自らの事業場における就業規則等で定められた率(2割5分以上の率。ただし、所定外労働の発生順によって所定外労働時間を通算して、自らの事業場の労働時間制度における法定労働時間を超える部分が1か月について60時間を超えた場合には、その超えた時間の労働のうち自ら労働させた時間については、5割以上の率。)となります(法第37条第1項)。

 

<実務上のポイント>

ダブルワーク労働者の割増賃金の計算は、やや複雑に思われるかもしれません。

それだけに、未払い賃金が発生する恐れも大きいものです。

通達の内容を踏まえて、適正な賃金支払を行っていただきたいと思います。

 

解決社労士