2024/04/12|1,085文字
<年次有給休暇の趣旨>
年次有給休暇は、労働者の心身の疲労を回復させ、リフレッシュすることを目的として、会社が付与する有給の休暇です。
労働基準法は、労働者に一定の日数以上の年次有給休暇を付与することを、会社に義務づけています。見方を変えれば、労働基準法により国から労働者に権利が与えられているともいえます。
これは、労働力の維持や、ゆとりある生活の実現にも資する権利です。
<有給の買取が禁止されている理由>
時間給や日給で働く従業員は、有給休暇をとると給料が増えるという感覚を持っているかもしれません。
しかし、有給休暇のメリットは「給料が減らないので安心して休める」というところにあります。
ですから、「対価を支払うから休むのは我慢してください」という、有給休暇買取は、休息を与えるという本来の趣旨に反してしまうので、原則として禁止されるのです。
これは、労働基準法が定める日数の有給休暇についていえることで、会社がプラスアルファで付与している有給休暇については、会社のマイルールでの運用が許されますから買取も可能です。
<例外的に許される買取>
会社が法定の日数を上回って付与している場合の法定を上回る日数、2年の消滅時効にかかってしまい消えた日数、退職によって使い切れなかった日数については、有給休暇の買取が許されます。
これらの場合、会社は法定の日数分の有給休暇を与えていますし、権利の消滅を救済する意味での買取は、制度の趣旨に反しないからです。
<買取金額>
消滅時効にかかったり、退職によって使えなくなったりした有給休暇の買取金額は、必ずしも有給休暇を取得した場合に支払われる賃金と同額でなくても構いません。
本来消えてしまって無価値となる有給休暇を買い取るのですから、労働者に不利益はないと考えるのです。実際に、1日につき1,000円など定額で買い取っている会社もあります。
もっとも、現在、有給休暇を取得した時の賃金を、平均賃金や所定労働時間働いたときに支払われる通常の賃金としていたのを、1日1,000円などに引き下げるのは、不利益変更となってしまいますので、基本的に許されません。
<積立有給休暇制度>
時効によって失効した有給休暇を積み立てておき、介護や育児、病気や怪我の治療等のための休暇に利用できる積立有給休暇制度も考えられます。
これも法定の制度ではありませんから、それぞれの会社で制度を設計、導入、運用することができます。
導入のメリットとしては、休暇不足による離職の防止、従業員のエンゲージメント向上、年次有給休暇を上手く取得できないことに対する不満の減少などがあります。