複数事業場での労働時間通算には批判も多いのですが、ダブルワークの労働時間通算には通達で基準が示されています。

2024/04/09|1,614文字

 

<ダブルワークと労働基準法>

労働基準法には、次の規定があります。

 

【労働基準法第38条第1項:時間計算】

労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。

 

ここで、「事業場を異にする場合」には、事業主を異にする場合をも含む(昭和23(1948)年5月14日付基発第769号通達)とされています。

つまり、労働時間は通算されるのが原則です。

しかし、ダブルワークについては、この規定の解釈について、さまざまな疑義が出されていました。

令和2(2020)年9月1日付で、厚生労働省労働基準局長から都道府県労働局長に宛てられた通達(基発0901第3号)は、こうした疑義のいくつかに答えるものです。

 

<労働時間が通算されない場合>

今回の通達では、労働基準法第38条第1項の規定による労働時間の通算が行われない場合について、そもそも法が適用されない場合と、法は適用されるが労働時間規制が適用されない場合を、次のように確認しています。

 

・法が適用されない場合

フリーランス、独立、起業、共同経営、アドバイザー、コンサルタント、顧問、理事、監事等

 

・法は適用されるが労働時間規制が適用されない場合(法第41条と第41条の2)

農業・畜産業・養蚕業・水産業、管理監督者・機密事務取扱者、監視・断続的労働者、高度プロフェッショナル制度

 

<労働時間が通算して適用される規定>

通達は、労働時間が通算される規定について、次のように説明しています。

「法定労働時間(法第32条・第40条)について、その適用において自らの事業場における労働時間および他の使用者の事業場における労働時間が通算されます。

時間外労働(法第36条)のうち、時間外労働と休日労働の合計で単月100時間未満、複数月平均80時間以内の要件(同条第6項第2号および第3号)については、労働者個人の実労働時間に着目し、その個人を使用する使用者を規制するものであって、その適用にあたっては、自らの事業場における労働時間および他の使用者の事業場における労働時間が通算されます。

時間外労働の上限規制(法第36条第3項から第5項までおよび第6項(第2号および第3号に関する部分に限る))が適用除外(同条第11項)または適用猶予(法第139条第2項、第140条第2項、第141条第4項または第142条)される業務・事業についても、法定労働時間(法第32条・第40条)についてはその適用において自らの事業場における労働時間および他の使用者の事業場における労働時間が通算されます」

 

<通算されない規定>

通達は、労働時間が通算されない規定について、次のように説明しています。

「時間外労働(法第36条)のうち、法第36条第1項の協定(以下「36協定」という)により延長できる時間の限度時間(同条第4項)、36協定に特別条項を設ける場合の1年についての延長時間の上限(同条第5項)については、個々の事業場における36協定の内容を規制するものであって、それぞれの事業場における延長時間を定めることになります。

また、36協定において定める延長時間が、事業場ごとの時間で定められていることから、それぞれの事業場における時間外労働が36協定に定めた延長時間の範囲内であるか否かについては、自らの事業場における労働時間と他の使用者の事業場における労働時間とは通算されません。

休憩(法第34条)、休日(法第35条)、年次有給休暇(法第39条)については、労働時間に関する規定ではなく、その適用において自らの事業場における労働時間および他の使用者の事業場における労働時間は通算されません」

 

<実務でのポイント>

ダブルワークにおける労働時間の通算は、当事者である労働者から不満が出やすいものです。

労働者から、通達とは異なる見解が主張された場合には、会社から通達の内容を丁寧に説明する必要があります。

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