喫煙所の廃止による離席時間の増加

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2020/06/28|1,717文字

 

<労働安全衛生法の努力義務>

受動喫煙の防止について、労働安全衛生法には次の規定が置かれています。

 

【受動喫煙の防止】

第六十八条の二 事業者は、室内又はこれに準ずる環境における労働者の受動喫煙(健康増進法(平成十四年法律第百三号)第二十八条第三号に規定する受動喫煙をいう。第七十一条第一項において同じ。)を防止するため、当該事業者及び事業場の実情に応じ適切な措置を講ずるよう努めるものとする。

 

これは、事業者に対して、労働者の受動喫煙を防止するための措置を講ずるよう求めるものです。

しかし、文末が「努めるものとする」となっていることから分かるように、努力義務であって、これに違反しても罰則はありません。

 

<健康増進法の規制>

令和2年4月1日から、第二種施設(多数の者が利用する施設)では、屋内での喫煙が原則として禁止となりました。〔健康増進法第30条第1項〕

都道府県知事は、第二種施設の管理権原者等に対し、受動喫煙を防止するために必要な指導及び助言をすることができるとされています。〔同法第31条〕

また、第二種施設の管理権原者等が屋内での禁煙(同法第30条第1項)に違反して器具や設備を喫煙に使える状態で設置しているときは、都道府県知事が期限を定めて、器具や設備の撤去などを勧告することができます。

さらに、管理権原者等がこれに従わなかったときは、その旨を公表することができますし、勧告に従った措置をとるよう命ずることもできます。

この命令に違反すれば、50万円以下の過料も規定されています。〔同法第76条第1項〕

会社の喫煙所が廃止された場合、それは会社の方針というよりも、これらの健康増進法の規制から止むを得ないことだと考えられます。

ただ、喫煙者の皆さんには、十分な説明が必要となります。

 

<労働時間の問題>

会社の喫煙所が廃止され、喫煙者が社外の喫煙所で喫煙するようになると、今までよりも離席時間が長くなります。

喫煙者は、上記の事情から「喫煙所を廃止した会社のせい」とは言えないでしょう。

非喫煙者からすると、喫煙者が離席中の賃金を減額されずにいるのは、不愉快に思えるかもしれません。

ところで、労働時間とは「労働者が実際に労働に従事している時間だけでなく、労働者の行為が何らかの形で使用者の指揮命令下に置かれているものと評価される時間」と定義されます。

これは、会社ごとに就業規則で決まったり、個人ごとに労働契約で決まったりするのではなく、客観的に決められている定義です。

「喫煙者が社外に出かけていき、そこで喫煙している」という事実に目を向けがちですが、何をしているかではなく、「使用者の指揮命令下に置かれているものと評価」されるかがポイントとなります。

喫煙していて会議の開始時刻に遅れて到着したり、電話番の最中に喫煙のため離席して顧客からの電話に対応できなかったりすれば、「使用者の指揮命令下に置かれているものと評価される時間」に職務を離脱していた、つまり、サボっていたということになります。

これらの場合には、欠勤控除や懲戒、人事考課での評価対象とすることなどが考えられます。

しかし、作業と作業との間に短時間の休憩がとれる状況で、喫煙のため離席し、何も支障が無かったのであれば、職務離脱とまではいえないでしょう。

 

<実務的な対応>

労働時間の定義からすると、自席にいなければ労働時間ではないとは言えませんし、自席にいれば労働時間だとも言えません。

「使用者の指揮命令下に置かれている」というのは、幅のある概念ですから、これを基本に会社のルールを定める必要があります。

1時間の休憩時間をどのように使うか、使用者と喫煙者とで話し合って決めている会社もあります。

たとえば、喫煙は休憩時間に行うこと、昼食休憩は40分、10分の喫煙休憩が2回といった約束にするのです。

この場合、休憩時間ですから、喫煙休憩中に呼び戻されることは無いルールとなります。

新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、テレワークが一気に進みました。

テレワーク中の喫煙についても考えなければなりません。

非喫煙者の意見も踏まえて、会社の実情に合ったルールを明確にしていくことが必要でしょう。

 

解決社労士