労使協定の役割

2021/05/04|1,596文字

 
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<労使協定>

労使協定とは、各事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者と使用者との書面による協定のことをいいます。

つまり、次のような当事者間に交わされた協定です。

労働組合 ― 使用者  または  労働者の代表 ― 使用者

 

<代表は三六協定>

労働基準法第36条は、労使協定を締結し、これを労働基準監督署長に届け出ることによって、労働基準法第32条に定められた法定労働時間を超えて労働させ、または労働基準法第35条に定められた法定休日に労働をさせることができる旨を定めています。

この三六(さぶろく)協定は、労働基準監督署長に届け出て初めて効力を認められますから、届け出前の期間に法定労働時間を超える残業があれば、使用者に罰則が適用されうることになります。

 

<労働基準法の労使協定>

労働基準法に規定されている労使協定を条文順に挙げると次の通りです。

 

貯蓄金管理協定(第18条)

労働者の貯蓄金の使用者による管理を、労使協定の締結と届け出を条件に認めるものです。

 

賃金控除協定(第24条)

財形貯蓄の積立金などについて賃金からの控除を認めるものです。

 

1か月単位の変形労働時間制の労使協定(第32条の2)。

 

フレックスタイム制の労使協定(第32条の3)

フレックスタイム制を導入するためには、労働基準法の他、労働基準法施行規則12条の3に定められた項目について労使協定を締結する必要があります。

 

1年単位の変形労働時間制の労使協定(第32条の4)。

 

1週間単位の変形労働時間制の労使協定(第32条の5)

常用労働者30人未満の小売業、旅館、飲食店、料理店の事業所に限定された労使協定です。

 

休憩時間の一斉付与を免れるための労使協定(第34条第2項)

休憩時間の一斉付与は、多くの事業で適用が除外されていますので、除外されていない事業について必要となります。

 

時間外・休日労働に関する労使協定(第36条)

 

割増賃金の割増率引き上げ分に相当する有給代替休暇を付与する労使協定(第37条第3項)

1か月に60時間を超える時間外労働に対して必要な50%以上の割増賃金について、労使協定を締結することにより、60時間を超えかつ割増賃金が引き上げられた部分に対応した部分(25%部分)について、割増賃金の支払いに代えて有給の代替休暇を付与することが可能となります。

 

事業場外労働のみなし労働時間の労使協定(第38条の2)

 

専門職型裁量労働制の労使協定(第38条の3)

労使委員会が設立されればその決議をもってこの協定に代えることができます。

 

年次有給休暇の分割付与についての労使協定(第39条第4項)

1年に5日分を限度として、時間単位の年次有給休暇の取得を可能にするものです。

 

計画年休制度の労使協定(第39条第5項)

各労働者の有する年次有給休暇のうち5日間を超える部分について、計画的に付与するための協定です。

 

年次有給休暇の賃金を標準報酬月額で支払う労使協定(第39条第7項)

平均賃金や給与計算上の1日当たりの賃金額を使わず、標準報酬月額で支払う場合に必要となります。

 

このほか、育児・介護休業法や雇用保険法などにも労使協定についての規定が見られます。

 

<労使協定の効力>

労使協定の多くは、労働基準法などの最低基準を解除する効力や、罰則の適用を免除する効力を持っています。

労働協約のように、各従業員の労働契約を直接規律する効力は認められませんが、事業場の全従業員との間で効力を持っています。

 

<解決社労士の視点から>

労使協定書の作成・届け出は形式的なものですが、これを怠ると違法となり罰則が適用されうるのです。

労使協定書が不要な会社は稀ですから、遵法経営のために必要なことは、信頼できる国家資格者の社会保険労務士(社労士)にご用命ください。

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