整理解雇の人選基準と人事考課の必要性

2021/04/19|1,118文字

 

<整理解雇の有効要件>

整理解雇は、会社の経営上の理由により行う解雇です。

これには、最高裁判所が「整理解雇の4要件」を示していて、これらの要件を満たしていないと解雇権の濫用となり無効となる可能性があります。

その4要件とは次の4つです。

1.人員削減の必要性が高いこと

2.解雇回避の努力が尽くされていること

3.解雇対象者の人選に合理性が認められること

4.労働者への説明など適正な手続きが行われていること

これらはそれぞれに厳格な基準があるわけではなく、また、すべての基準を満たしていなければ解雇が無効になるということではありません。

裁判では、4要件を総合的に見て、一定の水準を上回っていれば整理解雇が有効とされています。

 

<人選の合理性について>

整理解雇対象者の選定については、客観的で合理的な基準を設定し公正に適用して行う必要があります。

年齢や勤続年数のように簡単に数値化できるものは、客観的な基準として挙げられやすいものです。

しかし、たとえば比較的転職しやすいだろうという理由で、30歳未満の社員を整理解雇の対象とした場合でも、社内での経歴から転職しやすさに差が出るのは明らかです。

会社の判断で配属し異動させているわけですから、転職しやすさに差が出るのは会社側にも責任があります。

また反対に、会社に対する貢献度の割に給与が高いという理由で、50歳以上の社員を整理解雇の対象とした場合でも、年齢とともに昇給する給与体系となっているのは会社がそのようにしているわけですから、これも会社側に責任があります。

 
YouTube「合理的」の意味

 

<人事考課が適正に行われている場合>

協調性が無い、素行不良である、上司の指示に従わない、報連相ができない、身体が虚弱で業務に支障が出ているなど、総合的に評価された結果が、「直近3年間ですべてC評価以下であった」などの基準は、客観的で合理的な基準として使うことができます。

人事考課は、止むを得ず整理解雇を行う場合に備えてのものではありませんが、適正な人事考課の運用は、こうした場合にも役立つということです。

 

<懲戒処分が適正に行われている場合>

過去5年間に、減給処分または1週間以上の出勤停止処分を受けた者という基準も、客観的で合理的な基準として使うことができます。

ただし、解雇権の濫用と同様に、懲戒権の濫用も問題になりますから、あくまでも懲戒処分が適正に行われてきたことが前提となります。

 

<解決社労士の視点から>

今は、新型コロナウイルスの影響で、整理解雇が必要になる企業も増加しています。

しかし、このような状況下でこそ、新たな人事考課制度や給与体系を構築しやすいものです。

このチャンスに、人事考課制度の課題に取り組むことをお勧めします。

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