結婚、妊娠・出産、育児を理由とする不利益な取扱

2021/02/28|2,044文字

 

YouTube年次有給休暇と出勤率

 

<妊娠中や出産前後のルール>

働く女性が妊娠したときは、一定の危険有害な業務に従事させることが禁止されるほか、本人が希望した場合に軽い業務への転換をしたり、時間外・深夜労働をさせなかったりが義務付けられています。

ただし、軽い業務については、社内の通勤可能な職場に軽い業務が無く、新たに軽い業務を作るのがむずかしい場合にまで、企業に義務付けるものではありません。

 

また企業には、妊娠中や産後の女性が、保健指導や健康診査を受診するために必要な時間を確保できるようにすること、医師の指導に応じて勤務時間を短縮したり、特別な休憩時間を設けたりすることなど、必要な措置をとることも求められています。

 

そして出産にあたっては、出産予定日の6週間(双子など多胎妊娠のときは14週間)前から、本人が希望したときは、休むことを認めなければなりません。

ここで、出産予定日当日は産前にカウントされますので、出産予定日を含めて6週間(14週間)となります。

 

出産後は8週間の間、本人が希望しても就労させてはいけません。

ただし7週目以降は、本人が希望し、医師が支障がないと認めた業務については可能です。

 

なお、妊娠・出産に伴う休業の場合、企業がその間の給与を保障することは義務付けられていませんが、健康保険の加入者(被保険者)になっているときは、出産手当金が支給されます。

 

以上は、会社の規模に関係なく、法令により統一的に定められたルールです。

「うちは小さな会社だから対応できない」というわけにはいきません。

 

<妊娠・出産を理由とする不利益な取扱>

女性が上記の休業をしている間とその後30日間、企業はその女性を解雇することが禁止されています。

ただし、あらかじめ定められた契約の終了や、本人が望んで退職することは、もちろん認められます

また、妊娠中または出産後1年を経過しない女性を解雇しようとするときは、解雇をする正当な理由があると証明できない限り無効とされます。

この場合、妊娠や出産を理由として解雇するのではないということが、客観的に証明されなければなりません。

これも会社の規模に関係のない統一ルールです。

 

このように法律で認められた産前、産後の休業をしようとしたことや、実際に休業したことについて、欠勤した分の給料を支払わないことを超えて、解雇や職位を下げるなどの不利益な取扱いをすることは許されないのはもちろんのこと、結婚、妊娠、出産を理由に退職を求めること、解雇することなどの不利益な取扱いをすること全般が禁止されています。

基本的には、結婚、妊娠のタイミングや、出産1年未満の期間に、不利益な取扱いがあった場合には、結婚、妊娠、出産を理由にしているのではないという証明がむずかしいといえます。

 

さらに男性を含め、育児のための長期休業、子の看護のための短期休暇などの法律で認められた権利を使おうとしたこと、実際に使ったことを理由に、解雇や不利益な取扱いをすることも許されません。

 

<環境の整備は企業の責任>

妊娠、出産や育児のため休んだり、勤務時間を短縮したりすることによって、結果的に職場の同僚たちの仕事が増えたり、忙しくなることはもちろんありうるでしょう。 

しかし、だからといって休んだり勤務時間を短縮した人の責任にしてしまうのは不当です。

企業は、妊娠、出産、育児を理由にその対象者を不利益に扱ってはならないというだけでなく、働く人たちが誰でも当たり前に出産、育児に関する権利を使えるよう環境を整備する責任があります。

休業や勤務時間短縮によって業務の運営に支障が生じるのであれば、企業の責任で解消すべきです。

 

あわせて、管理職や同僚らの理解の促進を図る必要があります。

妊娠、出産を理由とする嫌がらせは、マタニティハラスメント(マタハラ)と呼ばれています。

妊娠や出産をした人が、上司や同僚からマタハラを受けることがないよう、企業は、あらかじめ環境を整備することが求められています。

万一、嫌がらせを受けたとの申し出があったときは、当事者から十分に事情を聴取し、再発防止のための措置をとることが求められます。

悪質な嫌がらせが認められたときは、加害者に対して懲戒処分をもって対処することも求められています。

こうした義務を怠った企業や加害者は、被害者に対する損害賠償責任を負うこともあります。

 

<解決社労士の視点から>

作りっ放しで法改正に対応しきれていない就業規則には、子の看護休暇やパパママ育休プラスなどの規定が無いかもしれません。

たとえ、「この規則に定めた事項のほか、就業に関する事項については、労基法その他の法令の定めによる」という規定があったとしても、実際にこうした休暇の申し出があった場合には、速やかな対応がむずかしくなってしまいます。

今はまだ、対象者がいない状態であっても、将来困らないように就業規則を整備しておくことをお勧めします。

こうした専門性の高いことは、信頼できる国家資格者の社労士にご相談ください。

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