解雇に必要な客観的に合理的な理由

2020/12/21|1,289文字

 

YouTube「合理的」の意味

 

<解雇は無効とされやすい>

会社が社員に解雇を通告しても、解雇権の濫用となれば無効になります。

これを不当解雇といいます。

解雇したつもりになっているだけで、解雇できていないので、対象者が出勤しなくても、それは会社側の落ち度によるものとされ、賃金や賞与の支払義務が消えません。

会社にとっては、恐ろしい事態です。

施行されてから10年余りの労働契約法という法律に次の規定があります。

 

(解雇)

第十六条   解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

大変抽象的な表現ですから、いかようにも解釈できそうです。

しかし、正しい解釈の基準は裁判所の判断です。

そして、裁判所の判断によれば、解雇権の濫用は簡単に認定されます。

つまり、多くの場合、不当解雇が認定されます。

 

<「客観的」の落とし穴>

客観的に合理的な理由を欠けば、解雇権の濫用となり、解雇は無効となるわけです。

しかし、当事者である会社側と対象社員の言い分は、完全に主観的なものです。

会社がそれなりの理由を示して解雇を通告した場合、その解雇理由は主観的な判断により示したものです。

また、これに対する対象社員の反論も主観的なものです。

ですから、「どちらが正しいか」という議論は、解雇の有効性については無意味です。

あくまでも、客観的に合理的な理由が有るか無いかによって、解雇権の濫用となるか否かが決まってきます。

 

<客観的に合理的な理由>

客観的に合理的な理由とは、誰が見ても解雇はやむを得ないという理由です。

なぜなら、誰が見ても正しいというのが、客観的に正しいということだからです。

ただし、当事者である会社側と対象社員は「誰が見ても」の「誰」からは除かれます。

当事者は、主観的に考えてしまうからです。

解雇の客観的に合理的な理由となりうるものとしては、次のものが挙げられます。

まず、労働者の著しい能力不足や協調性不足です。

これは、会社側が十分な教育指導を行っていることが前提となります。

教育指導をせずに、会社が能力不足や協調性不足を主張することはできません。

つぎに、労働者が正当な理由なく遅刻や欠勤を繰り返していることです。

ただし、長時間労働や過重労働などで疲労が蓄積しているような場合には、会社に落ち度があるので客観的に合理的な理由にはなりません。

さらに、労働者の不法行為や反社会的行為は、客観的に合理的な理由となりえます。

しかしこれは通常、懲戒解雇でしょうから、就業規則に具体的な規定があることや、対象社員が十分な弁明の機会を与えられるなど、厳格な条件を満たし適切な手順を踏んでいる場合に限り可能です。

そして、会社が解散するような場合には、「客観的な合理性」が認められるのが原則です。

会社の経営不振による整理解雇であれば、対象者の選択基準の合理性が問題とされます。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

「客観的」というのがネックになり、社内で検討し結論を出すのはリスクを伴います。

解雇を検討する場合には、なるべく早く、客観的な第三者である社労士にご相談ください。

 

解決社労士

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