2024/07/08|1,277文字
<解雇は無効とされやすい>
会社が社員に解雇を通告しても、解雇権の濫用となれば無効になります。
これを不当解雇といいます。
解雇したつもりになっているだけで、解雇できていないので、対象者が出勤しなくても、それは会社側の落ち度によるものとされ、賃金や賞与の支払義務が消えません。
会社にとっては、恐ろしい事態です。
施行されてから17年の労働契約法という法律に次の規定があります。
(解雇)
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
大変抽象的な表現ですから、いかようにも解釈できそうです。
しかし、正しい解釈の基準は裁判所の判断です。
そして、裁判所の判断によれば、解雇権の濫用は簡単に認定されます。
つまり、多くの場合、不当解雇が認定されます。
<「客観的」の落とし穴>
客観的に合理的な理由を欠けば、解雇権の濫用となり、解雇は無効となるわけです。
しかし、当事者である会社側と対象社員の言い分は、完全に主観的なものです。
会社がそれなりの理由を示して解雇を通告した場合、その解雇理由は主観的な判断により示したものです。
また、これに対する対象社員の反論も主観的なものです。
ですから、「どちらが正しいか」という議論は、解雇の有効性については無意味です。
あくまでも、客観的に合理的な理由が有るか無いかによって、解雇権の濫用となるか否かが決まってきます。
<客観的に合理的な理由>
客観的に合理的な理由とは、誰が見ても解雇はやむを得ないという理由です。
なぜなら、誰が見ても正しいというのが、客観的に正しいということだからです。
ただし、当事者である会社側と対象社員は「誰が見ても」の「誰」からは除かれます。
当事者は、主観的に考えてしまうからです。
解雇の客観的に合理的な理由となりうるものとしては、次のものが挙げられます。
まず、労働者の著しい能力不足や協調性不足です。
これは、会社側が十分な教育指導を行っていることが前提となります。
教育指導をせずに、会社が能力不足や協調性不足を主張することはできません。
つぎに、労働者が正当な理由なく遅刻や欠勤を繰り返していることです。
ただし、長時間労働や過重労働などで疲労が蓄積しているような場合には、会社に落ち度があるので客観的に合理的な理由にはなりません。
さらに、労働者の不法行為や反社会的行為は、客観的に合理的な理由となりえます。
しかしこれは通常、懲戒解雇でしょうから、就業規則に具体的な規定があることや、対象社員が十分な弁明の機会を与えられるなど、厳格な条件を満たし適切な手順を踏んでいる場合に限り可能です。
そして、会社が解散するような場合には、「客観的な合理性」が認められるのが原則です。
会社の経営不振による整理解雇であれば、対象者の選択基準の合理性が問題とされます。
<実務の視点から>
「客観的」というのがネックになり、社内で検討し結論を出すのはリスクを伴います。
解雇を検討する場合には、なるべく早く、客観的な第三者である社労士にご相談ください。