憲法改正をするのは誰か ― 街角で行われている憲法改正反対運動の意味って何なのでしょうか?

2024/03/08|1,439文字

 

<憲法改正の手続>

「この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする」〔日本国憲法第96条第1項〕

つまり憲法改正案は、国会が特別多数決によって国民に提案し、改正は国民投票で決まるということです。

内閣が憲法を改正することはできませんし、国会の議決で憲法を変えることもできません。

決めるのは国民です。

ですから、「憲法9条改正反対!」などの集会は、政府や国会議員に向けられるのではなく、全国民に向けられるべきものでしょう。

 

<基本的人権の保障>

日本国憲法は、基本的人権を保障するためにできました。

日本国民の一人ひとりが人間らしく生きていくための最低限の権利として生存権が規定されています。

私たちが「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障しています。〔憲法第25条〕

生活保護などの諸施策は、この規定が根拠となっています。

さらに、国が生存権の保障をできるように財源を確保するしくみも定めています。

・「文化的な生活」ができるための義務教育〔憲法第26条〕

・教育を受けた人が働く権利と義務〔憲法第27条〕

・立場の弱い働き手が団結する権利〔憲法第28条〕

・働いて得た財産を自分のものとする権利〔憲法第29条〕

・収入や財産によって税金を納める義務〔憲法第30条〕

・そしてこの税金を使って守られる生存権〔憲法第25条〕

このように、憲法25条から30条までは循環する関係にあります。

 

<憲法に規定されていること>

日本国憲法は、昭和22(1947)53日 に施行されました。

その目的は、私たちが人間らしく生きていけるようにすることです。

この目的にそって規定されている内容は、主に次の2点です。

・日本国民の一人ひとりが人間らしく生きていく権利(基本的人権)の保障

・権力が日本国民の基本的人権を侵害しないようにする権力細分化のしくみ

 

<権力細分化のしくみ>

国家権力が、王様のような一人の人間に集中すると、私たちが人間らしく生きていくのに必要な基本的人権は、その人の感情によって簡単に侵害されてしまいます。

そうしたことがないように、憲法は権力を細かく分割するしくみを定めました。

・国家権力を、立法権・行政権・司法権に分けました。三権分立です。

・立法権のある国会を衆議院と参議院に分けました。

・行政権を内閣と多くの行政機関に分けました。

・司法権を最高裁判所・高等裁判所・地方裁判所・簡易裁判所・家庭裁判所に分けました。

・地方分権のため、都道府県とその下に市町村を設けました。

・この他、政党や派閥の存在を認めています。最近になって、派閥解消の議論も出てきていますが、派閥には権力を細分化する意味があるので悪者扱いばかりはできません。

このように国家権力が細分化されたことによって、誰か一人の偉い人が、自分だけの考えで好きなことを自由にできるわけではありません。

もし、そうしたことをすれば、国民や住民の批判にさらされることになります。

今後も、選挙制度が正しく機能している限り安心です。

ですから、私たちが投票に行くことはとても大切です。

 

繰り返しになりますが、日本国憲法は国家権力から私たちの人権を守るためにあります。

そして、憲法の改正を決定するのは、私たち国民です。

憲法記念日は、年に1回、このことを確認する日にしたいものです。

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