建設業の労働時間の特殊性はあるものの令和6(2024)年4月からは一般の事業と同じ基準で労働基準法が適用されるようになります

2024/03/09|1,094文字

 

<違法残業の発生パターン>

労働基準法の制限とは別に、三六協定に関連して、次のような状況下で法定労働時間を超える勤務をさせると違法残業となります。

・三六協定を労働基準監督署長へ届け出ていない

・三六協定の有効期限が切れたままになっている(有効期間は最長1年)

・労働者代表の選出について会社が関与しているため三六協定が無効

また、三六協定の限度を超える勤務をさせた場合にも違法残業となります。

結局、違法残業というのは、有効な三六協定が届出されない状態で法定労働時間を超える勤務があった場合と、三六協定に違反する勤務があった場合を指すものだといえます。

 

<建設業の特殊性>

三六協定には、法定労働時間を上回って勤務させる場合の限度時間を定めます。

この限度時間についても、労働省(現厚生労働省)告示「労働時間の延長の限度等に関する基準」により、その上限が定められています。

一般には、1か月で45時間(1年単位の変形労働時間制の場合は42時間)、1年で360時間(1年単位の変形労働時間制の場合は320時間)と規定されています。

ところが建設業では、この基準が適用除外となっています。工事の受注量は変動しやすいですし、作業は天候に左右されやすいですから、時間外労働に一定の上限を設けることはむずかしいからです。

こうしたことから、労働基準法上、建設業では残業が無制限にできてしまうことになります。

もっともこの例外が認められるのは、令和6(2024)年3月31日までです。4月1日からは、例外が認められなくなるために、建設業界は対応に苦慮しています。

 

<残業時間の基準>

しかし、法的な制限が無いというだけで、長時間労働によって労働者に何があっても責任を負わないということではありません。

「法定労働時間を上回る残業時間が1か月で100時間を超えた場合、または、直近2~6か月の平均が80時間を超えた場合」という基準が、次のように多く用いられています。

・「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」(平成13年12月12日付基発第1063号厚生労働省労働基準局長通達)

・「心理的負荷による精神障害の認定基準について」(平成23年12月26日付基発1226第1号厚生労働省労働基準局長通達)

・ハローワークで雇用保険給付手続きをした場合に自己都合退職ではなく会社都合退職として特定受給資格者となる基準

このように、建設業の場合でも、健康管理措置上の上限があると考えられています。

つまり、労働基準法の罰則が適用されなくても、従業員や遺族から多額の賠償請求を受けるリスクはあるわけです。

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