パワハラによるケガの治療費

2023/11/27|935文字

 

<労災保険は適用されない>

パワハラによってケガをさせた場合、労災保険は適用されません。

パワハラでケガをさせるのは、本来の業務に含まれませんし、本来の業務に通常伴うものでもなく、また関連するものでもないからです。

 

<パワハラ加害者の責任>

暴力によって、相手にケガをさせれば傷害罪が成立します。

これは、最高刑が懲役15年という重い犯罪です。〔刑法第204条〕

また、これとは別に、被害者から治療費や慰謝料などの損害賠償を請求されるでしょう。〔民法第709条、第710条〕

刑事責任と民事責任は別問題ですから、たとえ国家から罰金刑を科されたとしても、これとは無関係に損害賠償責任を負うわけです。

さらに、会社から懲戒処分も受けるでしょう。 

 

<会社の責任>

そして会社は、職場で行われた加害について、加害者の使用者として、使用者責任を負います。〔民法第715条〕

人を雇うというのは、大きなリスクを伴います。

会社は、それを承知で雇っているわけですし、採用選考を慎重にしたり、教育訓練を実施したり、問題の発生を未然に防ぐ手段を持ち合わせています。

さらに会社は、労働者がその生命、身体などの安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮をする労働契約上の責任もありますから、加害行為があることを知りながら適切な対処をしなかったときは、この義務違反による損害賠償責任が発生します。〔民法第415条〕

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

このように、パワハラによるケガの治療費は、被害者から加害者に対しても、また会社に対しても請求することができます。

会社は、被害が発生したら賠償請求に応ずれば良いということではなく、パワハラそのものが発生しないようにする義務を負っています。

具体的には、パワハラの定義を就業規則などで明確にして禁止し、従業員を教育してその発生防止に努め、発生した場合には懲戒処分が行えるように具体的な懲戒規定を置くことも必要です。さらに、パワハラを行う従業員に適正な評価をし、役職者から外せるような人事制度も必要ですし、問題が小さいうちに被害者が相談できる窓口の設置も必要です。

信頼できる社労士を相談窓口に指定し、具体的な施策の推進についても相談されてはいかがでしょうか。

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