マスコミが違法解雇と言わず不当解雇と言う理由

2023/11/11|856文字

 

<確実に違法解雇と呼べるもの>

労働基準法により違法とされ、罰則が規定されている解雇には次のものがあります。〔労働基準法第119条第1号〕

・業務災害を理由とする休業期間中と業務復帰後30日間の解雇〔労働基準法第19条〕

・産前産後休業期間中と業務復帰後30日間の解雇〔労働基準法第19条〕

・法定の解雇予告や解雇予告手当が無い解雇〔労働基準法第20条〕

これらの場合には、国家により使用者に刑罰が科されるという規定です。

この刑罰とは別に、労働者から使用者に対して、不法行為を理由とする損害賠償の請求がありえます。〔民法第709条〕

前者が刑事的な側面の話で、後者が民事的な側面の話です。

 

<不当解雇は違法でもあるが効力が無い>

一方で、不当解雇というのは、使用者が労働者を解雇したつもりになっていて、それが不当であるために無効とされる場合をいいます。

労働契約法に「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と規定されているのが不当解雇です。

罰則はありません。〔労働契約法第16条〕

解雇が有効になるのは、解雇を通告された本人が客観的に合理的な理由があると納得できる場合であって、しかも、世間一般の人々が「やむを得ない」と納得できる事情がある場合に限られるのです。

たとえば、毎日普通に勤務していた男性社員が、社長の好きなアイドルの歌を嫌いだと言ったがために、30日分の解雇予告手当を渡されると同時に解雇を通告された場合、罰則の適用はありませんが、不当解雇になります。

つまり、解雇予告手当を支払ったとしても、解雇が無効になるわけです。

こうした場合、使用者が罰せられることはないのですが、解雇が無効なのに退職扱いされた労働者は、使用者に対して慰謝料を含め損害の賠償を請求できます。

 

<解決社労士の視点から>

適法で有効な解雇は条件が厳しいものです。

無効とされない解雇を考える経営者も、不当解雇されたと感じる労働者も、ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。

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