給与が求人広告よりも安いとき

2023/07/27|1,177文字

 

<疑問の内容>

求人雑誌やハローワークの求人票で条件を確認し、入社して最初の給与明細書を見たら、広告よりも少ない金額で計算されていたということがあります。

この場合、差額を会社に請求することができるでしょうか。

 

<労働契約の成立とは>

求人広告は、募集のための広告であって、広告の中身がそのまま労働契約の内容になるわけではありません。

契約は、申込と申込に対する承諾によって成立します。

もしも、求人広告が申込で応募が承諾ならば、求人広告の内容で労働契約が成立します。

しかし、求人広告は申込を誘っている広告に過ぎません。

その証拠に、応募したからといって必ず採用されるわけではありません。

実際には、応募が申込で採用決定が承諾になります。

 

<裁判になったら>

裁判になった例でも、「求人広告に記載された基本給額は見込額であり、最低額の支給を保障したわけではなく、将来入社時までに確定されることが予定された目標としての金額である」と判断されています。

結局、求人広告に書いてある労働条件と、その後の採用にあたって合意した労働契約の内容が異なる場合には、労働契約の内容が優先されることになります。

 

<求職者の対処法>

使用者は、雇い入れ時に、賃金や労働時間などの労働条件について、書面を交付する方法で労働者に明示しなければならず、その明示された労働条件が、事実と異なる場合は、労働者は即時に労働契約を解除できます。〔労働基準法第15条第2項〕

書面による労働条件の明示が無ければ、労働条件通知書、雇い入れ通知書、雇用契約書など労働条件を示す書類を会社に請求しましょう。

忘れていただけならば問題ないのですが、「そんなの無いよ」ということならばブラック企業の可能性が高いです。

この場合には採用辞退をお勧めします。

書面が交付されても、求人広告などを見て考えていた内容や、採用面接のときの説明よりも悪い労働条件ならば、やはり辞退すべきです。

 

<労働契約成立の性質>

どの求人広告に応募するかは労働者の自由です。そして、どの応募者を選ぶかは会社の自由です。これが基本です。

ですから、採用されたり採用したりという場面では、慎重な判断が求められます。

「ちょっと変だな」と思ったら、採用しない採用されないのが無難です。

 

<結論として>

初任給が求人広告の表示よりも安くても、差額を会社に請求することはできません。

ただし、労働条件通知書など、入社時に交付された書面で明示された内容よりも安い給与であれば、差額を会社に請求できるのが原則です。

 

給与について会社に話をしても聞いてもらえない場合には、信頼できる特定社労士(特定の付記を受けた社会保険労務士)にご相談ください。

正当な権利がある場合には、都道府県の労働局で「あっせん」の手続きを行い、会社に支払いを約束してもらうよう働きかけることができます。

 

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