精皆勤手当を廃止すべきか

2021/07/05|949文字

 

<精皆勤手当の趣旨・目的>

精勤手当・皆勤手当は、1か月の給与支給対象期間の出勤予定日に欠勤しないことについて、給与の一部として支給される手当です。

1か月の欠勤が1日か2日の場合にも、減額され支給される場合があります。

なお、年次有給休暇の取得をもって欠勤とする扱いは、不利益な扱いとなり労働基準法に反します。〔労働基準法第136条〕

自動車運輸業では、ドライバーが欠勤した場合に代替要員の補充が困難なため、精皆勤手当を支給して欠勤しないことを奨励することが広く行われます。

建設業でも、工期の遅れを避けるため、精皆勤手当を支給して欠勤しないことを奨励することが広く行われます。

他にも、飲食業や製造業などで精皆勤手当を支給する企業は多く存在します。

 

<精皆勤手当導入拡大の動き>

平成2(1990)年前後に見られるように、新卒採用が困難な時期が周期的に訪れます。

大企業であれば、基本給の増額や休日・休暇の増加によって、学生を集めることができます。

しかし、中小企業では人材不足と採用難で、簡単に休日・休暇を増やすことはできませんし、基本給の増額によって賞与が増額されることなどを嫌いますので、新たな手当を設けることにより対処する傾向が見られました。

こうして新たに導入する手当としては、精皆勤手当も手頃だったため、導入が進んだという経緯があります。

 

<同一労働同一賃金の検討の中で>

令和3(2021)年4月には、中小企業にも同一労働同一賃金が義務付けられることとなりました。

これによって、正社員と非正規社員とで、手当の有無や支給額の差異について、合理的な説明がつくかが問われるようになりました。

そこで、各企業は自社の手当ひとつ一つについて、その趣旨目的を再確認することとなったのです。

このとき、欠勤しないことは労働契約上の義務であり当然のことであって、当然のことに対して手当を支給するのは不合理ではないかという疑問が出てきました。

この流れから、精皆勤手当が廃止され、基本給に組み入れられたり、別の手当に振り替えられたり、あるいは賞与の支給額に反映されたりの動きが盛んとなったのです

しかしこれからも、欠勤しないことが強く要請される職種では、会社の態度を示す意味でも精皆勤手当の支給が続くのではないかと考えられます。

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