2022年 8月 23日

2022/08/23|1,345文字

 

<不当解雇の一般的な基準>

労働契約法には、解雇が無効となる一般的な基準が次のように示されています。

「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」〔労働契約法第16条〕

この条文自体は、表現が簡潔で抽象的なため、これだけを読むと解釈の幅が広いものとなります。

しかし、労働契約法は判例法理をまとめたものです。

ですから、実務的には、数多くの判例や裁判例を参照して、具体的な事例に当てはめて、解雇権の濫用となるのか、不当解雇となるのかを判断することになります。

それでも、使用者側が「不当解雇ではない」ことを証明するのは、困難であることが多いのが実態です。

 

<裁判所の判断基準>

裁判所は基本的に、解雇は従業員を会社の外に放り出す最終手段であると捉えています。

ですから、注意指導、教育研修、配置転換など解雇以外の方法によって、問題を解決できる可能性があるにもかかわらず、これらを試みずに解雇に踏み切るのは解雇権の濫用であり不当解雇になると判断しています。

 

<注意指導>

注意指導は、抽象的なものでは足りません。

「ちゃんとしてください」「気をつけましょう」という抽象的な言葉の投げかけだけでは、相手の人格を傷つけ萎縮させるだけですから、場合によってはパワハラになることすらあります。

その人の言動のどこにどんな不足や問題があって、業務の正常な遂行を妨げているのかを具体的に説明する必要があります。

そのうえで、どのように変えれば問題なく業務を遂行できるのか、能力に応じた丁寧な指導でなければ役に立ちません。

これは実質面ですが、将来トラブルとなりうることを踏まえ、記録を残すという形式面も大事です。

いつ、どこで、誰が誰に、何をどのように指導したのか、また、本人の態度や改善内容について、指導者と対象者との双方が確認したことが分かる記録を残します。

 

<教育研修>

教育研修は、新人に対する集合研修だけでは足りません。

各従業員の個性に応じたOff-JTも必要です。

これについても、注意指導と同様に記録を残します。

 

<配置転換>

注意指導や教育研修によっても、当初予定した業務をこなせないのであれば、配置転換を検討する場合もあります。

ただし、たとえば小規模な会社で、経営者の配偶者が事務仕事を一手にこなしていて、従業員は画一的に現場の仕事を行っているような場合には、配置転換のしようがありません。

こうした場合には、配置転換を検討しないことをもって、不当解雇の理由とされることはありません。

これに対して、一定以上の規模の企業で、多くの部門・部署があり、多種多様な担当業務が存在する場合には、配置転換の検討が必須となってきます。

 

<解雇の種類>

業務上、ミスを連発しても、それは能力不足に起因するものであって、懲戒により注意を促して改善を求めるのは意味がありません。

ほとんどの場合、普通解雇としては有効であっても、懲戒解雇とすることは懲戒権と解雇権の濫用となり、無効となってしまいます。

ですから、能力不足の従業員に注意指導、教育研修、配置転換の検討と、手を尽くしても改善できなければ、懲戒解雇ではなく、普通解雇の対象とすることを検討しなければなりません。

 

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