2022年 6月

2022/06/30|1,311文字

 

<経歴詐称>

経歴詐称とは、学歴・職歴をいつわることです。

通常は、履歴書の学歴・職歴欄に架空の内容を書いたり、一部の事実を隠して会社に提出する形で行われます。

学歴については、大学中退なのに「卒業」というように高学歴を偽るパターンが多いようです。

しかし、高卒限定での採用を希望する会社に、大学卒を隠して応募する場合もあります。

職歴については、経験者限定の募集に対して、勤務経験が無いのに履歴書に記入するパターンが多いようです。

しかし、たとえばA社の東京営業所で勤務し職場の人間関係を悪化させて自ら退職しておきながら、この職歴を隠して同じA社の大阪営業所の求人に応募するという場合もあります。

また、一つの企業での勤続期間が短く、転職を繰り返している人については、多くの企業が採用を避けていますから、このような応募者は、職歴の一部のみ記入し勤続期間を長く偽ることもしばしば見られます。

 

<就業規則の規定>

厚生労働省のモデル就業規則にも、「重要な経歴を詐称して雇用されたとき」は懲戒解雇と書いてあります。

これにならって、就業規則に採用取消や懲戒解雇の規定を置き、実際に退職させても問題はないのでしょうか。

「重要な経歴を詐称」の中の「重要」の判断がむずかしいように思われます。

裁判での判断基準を見ると、その会社について具体的に考えた場合、その経歴詐称が無かったならば採用しなかっただろうし、実際に勤務に支障が出ているという場合であれば、有効と判断されることが多いようです。

たまたま履歴書の職歴欄に誤りが見つかったからといって、会社がこれを盾に退職に追い込むようなことは、不誠実な態度であり許されないのです。

 

<経歴詐称に優先して考えたい要素>

経歴詐称は客観的な事実ですから、これを立証するのも容易でしょう。

しかし、問題となる社員に退職して欲しい本当の理由は、期待した仕事ぶりではないということです。

たとえば、ある特定の分野でシステムエンジニアとしての経験が豊富だというので採用したところ、経歴はデタラメだった。

しかし、大変な努力をして独学により充分な技能を身に着けているので、その能力を期待以上に発揮しているという社員がいたならどうでしょうか。

会社は懲戒解雇など勿体なくてできません。

反対に、履歴書に書いてある経歴は正しいが、期待したほどの能力を発揮してくれない社員についてはどうでしょう。

どこかに少しでもウソの経歴が無いか、履歴書を見直すことは無意味です。

たとえわずかな経歴詐称が見つかったとしても、それを理由に解雇を考えるのは言いがかりというものです。

むしろ、端的に能力不足による普通解雇や人事異動を考えるのが適切です。

 

<結論として>

配属先での評価が著しく低い新人がいる。

怪しんで経歴の裏をとってみたらデタラメだった。

もし、本当の経歴がわかっていたら採用しなかっただろう。

こんなケースなら、懲戒解雇に正当性があります。

その新人は会社をダマし、会社に損害を加えたわけですから。

しかし、3年、5年と無事に勤務してきた社員について、今さら経歴詐称を理由とする懲戒解雇は適切ではありません。

やはり、再教育や人事異動を考えるべきでしょう。

 

2022/06/29|1,162文字

 

<社員紹介制度(リファラル採用)>

社員紹介制度は、自社の従業員から知人を紹介してもらい、採用活動の対象とするものです。

推薦・紹介を英語でreferralと言いますので、リファラル採用とも呼ばれます。

紹介者に対しては、謝礼の進呈や報奨金の支払が行われます。

企業にとっては、採用コストの削減や、応募条件を満たさない応募者への対応の回避などの点でメリットがあります。

 

<法的な規制>

社員紹介制度は、労働基準法に違反する場合があります。

 

【中間搾取の排除】

第六条 何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。

 

ここでいう法律とは、通達によると、職業安定法や船員職業安定法です。

また、業として利益を得るというのは、営利を目的として、同種の行為を反復継続することをいうものと解されています。

いわゆるピンハネを禁止する規定です。

この規定に違反した場合の罰則は、労働基準法上2番目に重い、1年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

ともすると、人身売買につながりうるとの配慮から、こうした重い罰則となっています。

もっとも、社員紹介制度をそこまで大々的に展開することは稀でしょうから、一般の企業で、労働基準法違反は起こり難いと思われます。

 

しかし、注意しなければならない法的規制として、職業安定法の次の規定があります。

 

【報酬の供与の禁止】

第四十条 労働者の募集を行う者は、その被用者で当該労働者の募集に従事するもの又は募集受託者に対し、賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合又は第三十六条第二項の認可に係る報酬を与える場合を除き、報酬を与えてはならない。

 

この中の第36条第2項は、従業員以外の者に報酬を与えて労働者の募集に従事させようとする場合をいいますから、従業員を対象とする社員紹介制度は含まれません。

「賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合」と言っていますから、商品券など物品の進呈はいけません。

従業員が紹介により得られる報酬は、賃金として支払われる制度にすることが必要です。

 

<就業規則の規定>

紹介者には賃金が支払われるのですから、給与や賞与にプラスして支給される内容を就業規則に規定する必要があります。

基本給や本来の賞与額に比べて相当に高額であると、「業として利益を得る」ことになり、労働基準法第6条に違反する恐れが出てきます。

1回の紹介に対する謝礼の他、1人の従業員が紹介できる人数に制限を設ける必要もあるでしょう。

特定の従業員の知り合いが多数集まると、派閥形成のリスクもあります。

また、支給の時期については、紹介があったとき、紹介された人が採用されたとき、採用されて6か月など一定の期間定着したときなどが考えられます。

各時点で異なる金額を支給する制度も可能です。

 

2022/06/28|927文字

 

<労働者協同組合の必要性>

少子高齢化が進む中、子育て、介護、地域の活性化など幅広い分野での担い手が必要とされています。

これらの担い手が不足しており、多様な働き方を実現しつつ、地域の課題に取り組むための新たな組織として労働者協同組合が創設されました。

 

<労働者協同組合法>

令和4(2022)年10月1日、労働者協同組合法が施行されます。

労働者協同組合法は、労働者協同組合の設立や運営、管理などについて定めた法律です。

この法律は、労働者協同組合が、持続可能で活力ある地域社会に資する事業を行うことを目的とし、次の3つを基本原理とすることを示しています。

・組合員が出資すること  

・その事業を行うに当たり組合員の意見が適切に反映されること

・組合員が組合の行う事業に従事すること

 

<組合員の出資>

組合員は出資する必要があり、組合員自らが出資することにより、組合の資本形成を図ります。

これによって、組合員による自主的・自立的な事業経営を目指します。

 

<組合員の意見反映>

組合員には、1人1票の議決権と選挙権があり、事業・経営に組合員の意見が反映されます。

意見反映の方法を定款に定め、総会でその実施状況と結果を報告しなければなりません。

 

<組合員の従事>

組合員は原則として、組合の事業に従事する必要があります。

ただし、育児や介護など家庭の事情などで、一時的に働けない場合などには例外も認められています。

 

<労働者協同組合の主な特色>

労働者派遣事業を除くあらゆる事業が可能で、介護・福祉関連(訪問介護等)、子育て関連(学童保育等)、地域づくり関連(農産物加工品販売所等の拠点整備等)など地域における多様な需要に応じた事業を実施できます。

ただし、許認可等が必要な事業についてはその規制を受けます。

その設立には3人以上の発起人が必要です。

NPO法人(認証主義)や企業組合(認可主義)と異なり、行政庁による許認可等を必要とせず、法律に定めた要件を満たし、登記をすれば法人格が付与されます(準則主義)。

組合員は組合との間で労働契約を締結します。

出資配当は認められず、剰余金の配当は、組合員が組合の事業に従事した程度に応じて行われます。

そして、都道府県知事による監督を受けます。

 

2022/06/27|838文字

 

<休職中の社会保険料>

休職中で賃金の支払が無くても、通常通り社会保険料を納付しなければならず、会社と社会保険加入者(被保険者)とで折半します。

雇用保険の場合には、月々の賃金に対する一定割合として計算されますから、賃金の支払が無ければ保険料も発生しません。

しかし社会保険料は、標準報酬月額という基準額に対する一定割合として計算されますから、賃金が発生しなくても保険料が発生するのです。

 

<9月分からの増額>

社会保険料の基準となる標準報酬月額は、原則として、毎年4月から6月までの賃金支払実績から計算されます。

その年の4月から6月までの賃金支払実績が、その時の標準報酬月額の水準より高ければ、9月分の保険料は高くなった新しい標準報酬月額を基準に計算されます。

そして、9月分の社会保険料は、一般には10月支給分の賃金から控除されます。この時から、社会保険料が増えることになります。

ですから、7月以降に休職が始まった場合には、「休んでいるのに10月から社会保険料が増えた」という現象が生じます。

人手不足で残業代が増える一方、長時間労働で疲労が蓄積して病に倒れ入院したなどの場合には、このようなことが起こります。

 

<昇給して5か月目からの増額>

社会保険料の基準となる標準報酬月額は、「標準報酬月額保険料額表」という表に定める基準で、2ランク以上アップすることになると、昇給の5か月目から社会保険料が増額されます。

たとえば、11月に支給された賃金から増えたとすると、11月から翌年1月までの賃金支払実績をもとに、2月からの新しい標準報酬月額が決定されます。

2月分の保険料は、3月に徴集されるのが一般ですから、11月から数えて5か月目に保険料が増額されることになります。

3月に休職が始まった場合には、3月に徴集される保険料から増額されますから「休職したら保険料が増えた」という感覚に陥ります。

昇進して忙しくなり責任も重くなって、体調を崩し入院したなどの場合には、このようなことが起こります。

 

2022/06/26|1,425文字

 

<労働時間・休憩時間の定義>

労働基準法には、休憩について次の規定があります。

 

【休憩】

第三十四条 使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。

 

労働基準法の中に「労働時間」「休憩時間」の定義はありません。

このため、会社が独自の解釈で労務管理や賃金計算を行っている場合があります。

たとえば、業務で着用が決められている制服に着替える時間を労働時間から除いていたり、お弁当を食べながらの電話番を休憩時間として扱っていたりという違法な運用も見られます。

その結果、労働基準監督署の立入調査(臨検監督)が入れば、その違法性を指摘され、すぐに是正するよう求められます。

 

<通達の役割>

労働基準監督署が企業を指導するにあたって、「労働時間」「休憩時間」の定義があやふやであれば、企業側が納得できません。

そのため、法令解釈の基準として次のような通達が示されています。

 

労働時間とは、使用者の指揮命令下にある時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる。〔平29.1.20 基発第3号〕 

 

休憩時間とは、単に作業に従事しない手待時間を含まず労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間の意であって、その他の拘束時間は労働時間として取扱う。〔昭22.09.13発基第17号〕

 

これらの通達は公表されていますから、ネットで調べるなり、所轄の労働基準監督署に問い合わせるなりすれば、比較的容易に内容を知ることができます。

 

<判例の役割>

上の通達によっても、従業員が社外で市場調査の業務を行い、そのまま帰宅した場合には、どこまでが「使用者の指揮命令下にある時間」といえるのかが不明確です。

また、昼休みであっても、業務上の必要に応じて電話で呼び出せる状態では、「労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間」とはいえないのかという疑問も生じます。

このため、会社が休憩時間として扱った時間を、従業員や退職者が労働時間であると判断し、会社を相手に未払い賃金の請求訴訟を提起するということが起こります。

会社は、訴訟代理人の弁護士を選任するでしょう。そして、依頼された弁護士は、事実関係、使える証拠、条文、通達、過去の裁判例などを確認します。

過去の判決などは、最高裁判所のホームページで参照することができます。

しかし、今回の事例にどの判例があてはまるのか、この判例の射程はどうなのか、会社が準備できる証拠によって主張できるのはどこまでかなど、難しい判断を迫られます。

 

<企業としての対応>

欲を言えば、社内に専門部署を置いて、法改正、新たな通達、新判例の情報を随時吸収し、社内の問題点を改善していきたいものです。

新たな判例が、いままでの判例や通達を覆すということもありますから、判例の研究には重点を置かなければなりません。

しかし、こうした体制が取れない場合には、労働問題に詳しい社会保険労務士を顧問に置いて、トラブルの発生を未然に防止に努め、万一トラブルが発生したら、労働事件に対応できる弁護士と連携させるというのが現実的でしょう。

社会保険労務士の中には、手続を専門として活動している先生もいます。

弁護士の中には、労働事件を扱わない先生もいます。

その先生の専門をよく確認したうえで選ぶと良いでしょう。

 

2022/06/25|944文字

 

<パワハラによる労災認定>

現在の「心理的負荷による精神障害の認定基準」には、「パワーハラスメント」の出来事が「心理的負荷評価表」に追加されています(令和2年5月29日付基発0529第1号通達)。

業務により精神障害を発病した可能性のある人に対しては、この基準が適用されて労災保険適用の有無が検討されます。

ですから、パワハラを受けたという思い込みが原因で精神障害を発病した場合には、「パワハラによる労災」が認定されないことになります。

 

<パワハラではない嫌がらせなどによる労災認定>

しかし、「心理的負荷による精神障害の認定基準」には、パワーハラスメントに該当しない優越性のない同僚間の暴行やいじめ、嫌がらせ等を評価する項目として次のような項目が掲げられています。

 

【強いストレスと評価される例】

 同僚等から、治療を要する程度の暴行等を受けた場合

 同僚等から、人格や人間性を否定するような言動を執拗に受けた場合

 

この基準に該当すれば、パワハラではないものの、やはり労災保険の適用対象となることもあるわけです。

 

<思い込みによる精神障害に対する会社の責任>

改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)は、事業主に次のことも義務づけています。

・職場におけるパワハラの内容を明確化し労働者に周知・啓発すること

・相談窓口をあらかじめ定め労働者に周知すること

・相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること

つまり、会社がこれらのことを怠っていたことによって、パワハラではないことをパワハラであると思い込み、思い悩んで精神障害を発病するに至ったのであれば、会社にも責任があるといえます。

会社が義務を怠ったことと、精神障害の発病との間に因果関係が認められるのであれば、会社が責任を問われることもあります。

 

<実務の視点から>

改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)によって、パワハラの定義が法定され、事業主の防止対策義務が明確化される前は、従業員が思い込みで精神障害を発病しても会社の責任が問われることは稀だったでしょう。

しかし法改正後の現在では、同様の事案についても、会社の責任が問題となるケースが増えています。

こうしたことからも、会社のパワハラ防止対策は積極的に取組む必要があるのです。

 

2022/06/24|1,678文字

 

<始末書を提出させる意味>

始末書の目的は、事実の報告、発生の原因分析、謝罪、具体的な再発防止策の提示です。

この中に謝罪が含まれないものは、単なる報告書あるいは顛末書ですから、上司の判断で部下に提出を求めることができます。

しかし、謝罪が含まれるものは始末書ですから、懲戒処分として提出を求めることになります。

これは上司の判断で行えるわけではなく、就業規則に譴責(けんせき)処分などの具体的な規定があって、懲戒処分の適正な手続に従い、会社の代表者が提出を命じることになります。

上司だけの判断で部下に始末書の提出を求めることは、職場での優越的な関係を背景として業務上必要相当な範囲を超えたことを行わせることになり、パワハラに該当するのが一般です。

 

<「いかなる処分もお受けします」の法的効力>

(懲戒)処分は、就業規則に具体的な規定があって、適正な手続に従い行われるものです。

どのような行為が対象となるのかが不明確な状態で懲戒処分が行われれば、客観的に合理的な理由を欠いているので、懲戒権の濫用となり無効となります。

このことは、労働契約法第15条に規定されています。

 

【懲戒】

第十五条 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

 

つまり、始末書に「いかなる処分もお受けします」と書いたところで、就業規則の規定を超える処分は無効となってしまうのですから、この記載も無効ということになります。

また、「相応の処分を受ける覚悟でおります」などの記載は、当たり前のことを書いたに過ぎませんから、書いても書かなくても効力に違いはありません。

 

<裁判での効果>

従業員が何度も就業規則違反を行い、何度も始末書を書かされ、ついには懲戒解雇となったとします。

これを不服として、解雇された人が訴訟を提起した場合には、会社から不当解雇ではないことの証拠資料を提出することになります。

実際には、会社が不当解雇ではないことの証拠を揃えておくことは大変で、顧問の社会保険労務士などと相談して、解雇の相当前から準備しておかなければなりません。

会社は証拠資料として、裁判所に始末書も提出することになります。

そこに「いかなる処分もお受けします」と書かれていたら、裁判官は会社に対して良い印象を持ちません。

懲戒権の濫用があるのではないかと疑ってしまいます。

そして、民事訴訟法には次の規定があります。

 

【自由心証主義】

第二百四十七条 裁判所は、判決をするに当たり、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断する。

 

日本の民事訴訟では、何が証拠となるかについて法令に網羅されているわけではなく、裁判所の自由な心証に委ねられているのです。

この自由心証主義によって、会社側から証拠として提出した始末書が、解雇された側に有利に働くことがあるわけです。

つまり法的効力の無い「いかなる処分もお受けします」の記載が、会社にとってマイナスとなりうるのですから、こうした言葉の入った始末書が提出されたら、再提出を求めるべきです。

 

<始末書は必要か>

さて、始末書は本当に必要でしょうか。

会社にとって役立つのは、事実の報告、発生の原因分析、具体的な再発防止策です。

特に再発防止に向けた具体的な取組は、大いに役立つでしょう。

謝罪の部分は、会社側つまり経営者、人事部門、上司の気が済む程度の効果しかありません。

しかも、そこに本心が書かれているとは限りません。

本人の反省の程度とは無関係です。

こうしてみると、上司から報告書の提出を求めた方が現実的ではないでしょうか。

裁判になっても、この報告書からルール違反の事実は認定できますし、裁判所の心証を害することもありません。

就業規則に始末書に関する規定があるのなら、その必要性を再検討することをお勧めします。

 

2022/06/23|1,262文字

 

<役員の立場>

役員と会社との関係については、会社法に次の規定があります。

 

【株式会社と役員等との関係】

第三百三十条 株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う。

 

そして、「委任に関する規定」は民法にあります。

 

【委任】

第六百四十三条 委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。

 

ここで、当事者の一方は会社であり、相手方は役員です。

つまり、会社が役員に法律行為を委託し、役員が会社に承諾して効力が発生します。

「法律行為」というのは、権利の発生・変更・消滅を望む意思で行うことにより、その通りの効果を生じさせるものをいいます。

 

<兼務役員の立場>

役員として、会社との間で委任契約を締結したからといって、雇用契約を重ねて契約できなくなるわけではありません。

雇用契約についての基本的な規定は、民法にあります。

 

【雇用】

第六百二十三条 雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。

 

会社との間で役員として契約し、同時に労働者としても契約している人のことを、兼務役員といいます。

会社からは、役員報酬と給与の両方が支給されます。

労働者としての立場では労働基準法などの保護を受ける一方で、役員としての立場では労働基準法などの保護が受けられず、会社法などに定められた重責を負うことになります。

兼務役員の行動が、役員としてのものか労働者としてのものか、明確に区分することが困難な場合も多々ありますが、会社は労働者として勤務している部分について、労働時間の適正な把握が義務付けられています。

つまり、この部分については、出勤簿が必要ということになります。

 

<名ばかり役員の立場>

役員として登記されているにもかかわらず、それに相応しい権限を与えられず、取締役会に出席することもないという「名ばかり役員」がいます。

こうした人は、100%労働者ですから、労働基準法などが適用されます。

つまり、出勤簿が必要です。

 

<健康保険と労働保険>

傷病手当金など健康保険の給付は、純然たる役員にも、兼務役員にも、名ばかり役員にも権利があります。

出勤簿が無い場合でも、別の資料から役員として、あるいは労働者としての活動があった日、休業した日は判りますから、手続をするのに困らないはずです。

純然たる役員には、労災保険も雇用保険も適用がありません。

兼務役員には、労働者の部分について、労災保険・雇用保険が適用されます。

兼務役員になったときは、ハローワークで手続が必要です。

給付が受けられるのは、労働者としての立場に基づく部分に限られます。

名ばかり役員は、労災保険も雇用保険も適用されます。

ただ困ったことに、会社は労働基準法や労働保険などの適用を排除し、不当に会社の負担を減らそうとしていることが多いものです。

名ばかり役員の立場を1日も早く解消するため、専門家へのご相談をお勧めします。

 

2022/06/22|820文字

 

<以前の三省合意>

文部科学省・厚生労働省・経済産業省の三省合意である「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」の平成27(2015)年改正版では、インターンシップは「学生が在学中に自らの専攻、将来のキャリアに関連した就業体験を行うこと」と定義され、そこで取得した学生情報を広報活動や採用選考活動に使用してはならないとされていました。

 

<産学協議会の報告書>

これに対し、「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」(産学協議会)は、令和4(2022)年4月に公表した報告書で、インターンシップについて新たな定義を定め、一定の基準に準拠するインターンシップで得られた学生情報については、その情報を採用活動開始後に活用可能とすることで産学が合意に至ったとし、三省合意は早急な見直しの要望を受けていました。

 

<三省合意の改正>

これを踏まえ、令和4(2022)年6月13日、三省合意が改正されました。

令和6(2024)年度の大学卒業予定者、大学院修士課程の修了予定者より、就業体験要件(必ず就業体験を行う。インターンシップ実施期間の半分を超える日数を職場での就業体験に充てる)や、実施期間要件(インターンシップの実施期間は、汎用的能力活用型では5日間以上、専門能力活用型では2週間以上)等一定の基準に準拠するインターンシップで得られた学生情報については、その情報を採用活動開始後に活用可能となります。

 

<類型の限定>

今回の改正で、インターンシップで得られた学生情報を採用活動開始後に活用できるとはいえ、その対象は限定されています。

学生のキャリア形成支援における産学協働の取組の4類型のうち、タイプ3とタイプ4の基準を満たしたものたけが対象となります。

 

参考:学生のキャリア形成支援に係る産学協働の取組の4類型

タイプ1 オープン・カンパニー

タイプ2 キャリア教育

タイプ3 汎用的能力・専門活用型インターンシップ

タイプ4 高度専門型インターンシップ

 

2022/06/21|993文字

 

<性別による差別の禁止>

事業主は、労働者の募集・採用において性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならないとされています。〔男女雇用機会均等法第5条〕

また、事業主は、配置、昇進、降格、教育訓練、福利厚生、職種・雇用形態の変更、退職の勧奨、定年、解雇、労働契約の更新について、労働者の性別を理由として差別的な取り扱いをしてはいけません。〔男女雇用機会均等法第6条〕

労働者が女性であることを理由として、賃金について男性と差別的取扱いをすることも禁止されています(男女同一賃金の原則)。〔労働基準法第4条〕

 

<間接差別の禁止>

事業主が以下の措置を行うことは、実質的に一方の性に不利益となって、性別を理由とする差別となるおそれがあるため、合理的な理由がない限り、間接差別として禁止されています。〔男女雇用機会均等法第7条〕

・募集・採用にあたり身長、体重または体力を要件とすること

・コース別雇用管理における総合職の募集・採用にあたり転居を伴う転勤に応じることができることを要件とすること

・昇進にあたり、転勤経験があることを要件とすること

 

<セクシュアルハラスメント対策>

セクシュアルハラスメントとは、「職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否・抵抗などしたことで解雇、降格、減給などの不利益を受けること(対価型セクシュアルハラスメント)」及び「性的な言動が行われることで就業環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に重大な悪影響が生じること(環境型セクシュアルハラスメント)」をいい、女性、男性ともに対策の対象となります。

事業主は、職場におけるセクシュアルハラスメント対策として雇用管理上必要な措置を講ずる義務があります。〔男女雇用機会均等法第11条〕

LGBTについての認識も高まっていますから、同性しかいない場所や同性間でのセクハラにも対応する必要があります。

 

<ポジティブ・アクション>

過去の女性労働者に対する取り扱いなどが原因で、職場に生じている男女間格差を解消する目的で、女性のみを対象としたり、女性を有利に取扱う措置については法違反とはなりません。〔男女雇用機会均等法第8条〕

また、このような格差の解消を目指して雇用管理の改善について企業が自主的かつ積極的に取り組みを行う場合、国が援助できる旨の規定が設けられています。〔男女雇用機会均等法第14条〕

 

<労働安全衛生法>

職場での労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境を形成することを目的として、労働基準法の特別法である労働安全衛生法が定められています。

この法律は事業者に、仕事が原因で労働者が事故にあったり、病気になったりしないようにする義務を定めています。

一方、労働者に対しては、労働災害を防止するために必要な事項を守り、事業者が行う措置に協力するように定めています。

ただし、労働者がこれを行うのに必要な教育は、事業者が行わなければなりません。

 

<定期健康診断などの実施義務>

事業者は、労働者を雇い入れた際とその後年1回、医師による健康診断を行わなければなりません。

労働者はその健康診断を受ける必要があります。〔労働安全衛生法第66条〕

また最近では、仕事のストレスによるうつ病など、労働者のメンタルヘルスも大きな問題となっており、快適な職場環境形成のためには、事業者が、作業方法の改善や疲労回復のための措置だけでなく、メンタルヘルス対策を行うことも重要となっています。

 

<労働者災害補償保険法>

労働者が仕事や通勤によって病気やけがをした場合には、労災保険給付の対象になります。

労災保険給付を受けるためには、病院や労働基準監督署に、各種の請求書を提出する必要があります。

会社が被災労働者から災害の原因など必要な証明を求められたときは、速やかに証明をしなければなりません。

なお、仕事が原因の病気には、長期間にわたる長時間の業務による脳・心臓疾患や人の生命にかかわる事故への遭遇などを原因とする精神障害なども含まれますので、ご留意ください。

社会保険や雇用保険は、従業員一人ひとりについて、個人ごとに手続をしないと保険に加入しません。

しかし、労災保険は雇われると同時に保険に加入しますので、個人ごとの手続は要りませんし、保険料は雇い主側の全額負担となります。

 

<パワーハラスメント>

パワ―ハラスメント(パワハラ)とは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係など職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」を指します。

パワハラは内容によっては刑法などに触れる犯罪となります(名誉毀損罪、侮辱罪、暴行罪、傷害罪、強要罪など)。

また、会社には快適な職場環境を整える義務があることから、会社も責任を問われる場合があります。〔民法第715条〕

さらに、社長以下取締役が責任を追及される裁判も増えています。〔会社法第429条1項〕

 

2022/06/19|1,401文字

 

<金額についての規制>

使用者が支払わなければならない賃金の最低額が、時間単価で定められています。〔最低賃金法〕

これは原則として都道府県単位で定められていて、政府は全国平均が1,000円以上となるように引き上げる方針です。

最低賃金は、これを目指して毎年のように改定されています。

改定されれば、改定日当日に勤務した分の賃金から適用されます。

外国人であっても、日本国内で働いている労働者は、ごく一部の例外を除き、この最低賃金を守ることが必要です。

たとえ労働者が同意しても、基準より低い賃金は認められません。

法律によって、使用者は最低基準額で計算した賃金支払義務を負うことになります。

最低賃金法違反で書類送検された使用者のニュースは、ときどき報道されていますので、現に最低賃金に満たない賃金が支払われることもあるわけです。

 

<減給の制限>

労働者が、無断欠勤や遅刻を繰り返して職場の秩序を乱したり、職場の備品を勝手に私用で持ち出したりするなどの規律違反をしたことを理由に、制裁として、賃金の一部を減額することを減給といいます。懲戒処分の一つです。

1回の減給金額は平均賃金の1日分の半額を超えてはなりません。

平均賃金は、世間相場とは関係なく、対象者の過去の賃金を基準として法令に従って計算されます。

また、複数回規律違反をしても、減給の総額が一賃金支払期における金額(月給なら月給の金額)の10分の1が限度です。〔労働基準法第91条〕

なお「罰金」というのは、死刑や懲役と同様に、国家権力以外が科すことはできませんから、会社の中で設定することはできません。

 

<支払い方法の規制>

労働者を保護するため、賃金の全額が確実に労働者に渡るように、支払方法には、次の4つの原則が定められています。〔労働基準法第24条〕

 

<通貨払いの原則>

賃金は現金で支払わなければならず、会社の商品などの現物ではいけません。

ただし、労働組合のある会社で、労働協約により定めた場合には、通貨ではなく現物支給をすることができます。

また、労働者の同意を得た場合には、銀行振込み等の方法によることができます。

労働者から振込口座の指定があれば、銀行振り込みの同意があったものと考えられます。

 

<直接払いの原則>

賃金は労働者本人に払わなければなりません。

満18歳未満の未成年者だからといって、親などに代わりに支払うことはできません。

 

<全額払いの原則>

賃金は全額支払われなければなりません。

「積立金」などの名目で、強制的に賃金の一部を天引きして支払うことは禁止されています。

ただし、所得税や社会保険料など、法令で定められているものの控除は認められています。

これ以外は、労働者の過半数で組織する労働組合、または労働者の過半数を代表する者と労使協定を結んでいる場合に限り認められます。

また、年次有給休暇を取得すると賃金が減少する、残業代の一部がカットされる、残業代に上限が設けられるなども、全額払いの原則に違反します。

 

<毎月1回以上定期払いの原則>

賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければなりません。

したがって「今月分は来月に2か月分まとめて払うから待ってくれ」ということは認められません。

また、支払日を「毎月20日~25日の間」や「毎月第4金曜日」など変動する期日とすることも認められません。

ただし、臨時の賃金や賞与(ボーナス)は例外です。

 

2022/06/18|1,058文字

 

<遺族からの退職金請求>

あと2年で定年退職という社員が、急病で亡くなりました。

会社から多くの社員が葬式に参列しました。

ただ泣くばかりの奥様が気の毒でした。

後日、就業規則の規定に従い、奥様名義の銀行口座に退職金が振り込まれました。

それから半年後、亡くなった社員の息子さん2人が会社にやってきて、退職金を請求します。

会社としては、もう退職金は支払い済みと思っていたところ、奥様とは別の相続人2人があらわれたのです。

確かに、法定相続分は、奥様が半分、息子さんは4分の1ずつです。

彼らは、母親とは仲が悪く10年以上会っていないのだそうです。

それで、自分たちの取り分である退職金の4分の1ずつは、直接自分たちに支払えということなのです。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる事件なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

(退職金の支払方法及び支払時期)

第54条 退職金は、支給事由の生じた日から  か月以内に、退職した労働者(死亡による退職の場合はその遺族)に対して支払う。

〔厚生労働省のモデル就業規則令和3年4月版〕

 

<注意書きを見ると>

厚生労働省のモデル就業規則には、次のような注意書きがあります。

退職金の支払方法、支払時期については、各企業が実情に応じて定めることになります。

労働者が死亡した場合の退職金の支払については、別段の定めがない場合には遺産相続人に支払うものと解されます。

 

もっともよく使われているひな形なのですが、どうやら今回のようなケースには対応できていないようです。

ですから、専門家ではない人が、就業規則のひな形だけを頼りに自分の会社の就業規則を作ると、思わぬ事態を招いてしまうのです。

 

<こうしてカスタマイズ>

こうした困ったことにならないようにするには、次のような規定にしておけば良いのです。

 

(退職金の支払方法及び支払時期)

第54条

2 死亡による退職のときの退職金を受ける遺族の範囲および順位は、次のとおりとします。

    ・配偶者(内縁関係にある者を含みます)

    ・子

    ・父母

    ・孫

    ・祖父母

    ・兄弟姉妹

3 同順位の者が2人以上ある場合には、その人数によって等分するものとします。

 

「就業規則の適用対象は社員だけだから、何かあったら、そこは話し合いで」という考え方は危険です。

特に、社員が退職した後のことや、ご家族にも影響のあることについては、慎重に規定の内容を吟味する必要があるのです。

 

2022/06/17|1,407文字

 

<揺れ動く判断基準>

従業員が不都合な行動に出た場合、それが就業規則に定められた禁止行為であったり、義務違反であったりして、個々の具体的な懲戒規定に当てはまるものであれば、懲戒処分を検討することになります。

しかし人手不足の折、たとえ従業員の落ち度であっても、けん責処分、減給処分、出勤停止などすれば、気を悪くして退職してしまい、会社に大きな痛手となるかもしれません。

こうして、人手が余っているときには懲戒処分が多発し、人手不足の場合には多少のことに目をつぶるという企業の態度が見られることもあります。

一方で、従業員の方も、人手が余っているときには品行方正を保ち、人手不足のときには強い態度に出るということがあります。

 

<情状酌量の考え方>

モデル就業規則の最新版(令和3(2021)年4月版)は、次のように規定しています。

 

(懲戒の事由)

第66条 2 労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。ただし、平素の服務態度その他情状によっては、第51条に定める普通解雇、前条に定める減給又は出勤停止とすることがある。

 

本来は懲戒解雇に該当するような行為があっても、平素の服務態度その他の情状によっては、減給や出勤停止にとどめることがあると規定しています。

ここでの「情状」は、あくまでも懲戒対象者個人の情状です。

また、重大な過失により会社に重大な損害を与えたが、ミスがあってはならない仕事を1人の従業員に任せていて、チェック体制が整っていなかったというような事情があった場合には、会社側にも落ち度があって、従業員だけに責任を負わせるわけにはいかないので、こうした事情を斟酌して情状酌量するということがあります。

 

<懲戒処分の有効性>

懲戒処分の有効性については、労働契約法に次の規定があります。

 

(懲戒)

第十五条 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

 

無効とされれば、懲戒処分から生じた従業員の損害は、慰謝料を含め会社に請求されることとなります。

裁判にでもなれば、従業員の会社に対する信頼や、世間からの評判は大いに低下することでしょう。

人手不足のときに懲戒処分の対象とせず見逃していた行為を、人手が足りているときに懲戒処分の対象としたなら、これは会社側の都合でそのようにしたわけであって、「客観的に合理的な理由」や「社会通念上相当」であることは否定されてしまいます。

人手不足のときに軽い懲戒処分、人手が足りているときに重い懲戒処分というのも同様です。

どちらも、その懲戒処分は無効になってしまいます。

 

<ご都合主義の排除>

その時々の社内事情により、懲戒処分の判断基準を変えてしまうことは危険です。

なぜなら、過去に許されていた行為が許されないと判断されたり、過去に軽い処分で済んでいた行為が重く処分されたりというのは、労働契約法第15条により無効になってしまうからです。

会社が「人手不足だから多少のことは大目に見る」という態度を取っていれば、従業員は足元を見てしまい、会社の規律は保たれなくなります。

これでは労働生産性が低下してしまいます。

人手不足だからこそ、懲戒規定の運用は厳格にしなければなりません。

 

2022/06/16|1,768文字

 

<パート・有期法への改正>

パート法は、パート・有期法に改正されました。

施行日は、令和2(2020)年4月1日でした。

中小企業でも令和3(2021)年4月1日に施行済です。

 

【正式名称】

パート法 = 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

パート・有期法 = 短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律

 

旧法では、フルタイム以外の労働者だけが対象です。

新法では、有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者が対象となります。

 

区分

無期

有期

派遣

フルタイム

通常の労働者

新法対象者

新法対象者

フルタイム以外

新法対象者

新法対象者

新法対象者

 

ここで通常の労働者とは、定年以外に雇用期間が限定されない無期雇用で、フルタイム勤務の労働者ですから、「正社員」と呼ばれるのが一般です。

 

<事業主の説明義務>

新法には、事業主の説明義務が規定されています。

 

【パート・有期法第14条第2項】

事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、当該短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由並びに第六条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならない。

 

説明は、事業主が新法対象者を雇い入れた後、本人から求められたときに行うことになります。

説明内容は、主に待遇の相違の内容とその理由です。

事実に反する嘘の説明はできませんし、不合理な説明もダメです。

理解しうる説明であることが必要ですが、必ずしも納得してもらうことまでは必要ありません。

 

<慶弔休暇の性質>

慶弔休暇は、自分自身や近親者の慶事(結婚・出産)、近親者の弔事(葬式)の際に取得できる休暇のことです。

これについては、労働基準法などに規定がありません。

法定外の特別な休暇です。

そのため、慶弔休暇の内容については、各企業で自由に定められてきました。

しかし、正社員など一般の労働者のみに慶弔休暇を与えていたり、パート・有期労働者に対して一般の労働者よりも少ない日数の慶弔休暇を与えていたりすれば、その内容と理由について説明を求められうることになったわけです。

説明を求めたことに対して、不利益な取扱いをすることは禁止されています。〔パート・有期法第14条第3項〕

ですから、不快な思いをさせないように配慮する必要があります。

 

<慶弔休暇に差を設ける合理的な理由>

会社に全く慶弔休暇の制度が無いとしても、これは違法ではありません。

あくまでも、正社員など一般の労働者のみに慶弔休暇を与えていたり、パート・有期労働者に対して一般の労働者よりも少ない日数の慶弔休暇を与えていたりすれば、その内容と理由に合理性があるかという形で問題とされるのです。

これは、働き方改革の一内容である同一労働同一賃金の視点からの規制です。

慶弔休暇の必要性については、所定労働日数が正社員など一般の労働者と同じであれば、パート・有期労働者であっても否定のしようがありません。

また、勤続年数や1日の所定労働時間、役職などによって、その必要性に違いが生ずることもほとんどありません。

ですから、正社員など一般の労働者のみに慶弔休暇を与えていたり、パート・有期労働者に対して、一律に一般の労働者よりも少ない日数の慶弔休暇を与えていたりすれば、合理的な理由を見出すのは困難でしょう。

 

<企業の取るべき対応>

週所定労働日数が2~3日であれば、結婚式や葬式などが出勤日と重なる可能性は低いでしょう。

それだけ、慶弔休暇を与える必要性も低くなります。

慶弔による休みが必要になった場合には、勤務日の振替で対応することを原則とし、対応し切れないときに慶弔休暇を与える制度にすることは、決して不合理ではありません。

これは、有期雇用・無期雇用による差別でもなく、1日の所定労働時間による差別でもありません。

同一労働同一賃金の趣旨に反してはいないのです。

しかし、これを理由に、一部の従業員の慶弔休暇が減るのであれば不利益変更となります。

この場合には、個別の同意を得るなどの対応が必要となります。

実態を把握するために従業員への聞き取り調査を行い、顧問の社会保険労務士などと相談しながらうまく対応しましょう。

 

2022/06/15|956文字

 

<退職者から賞与の請求>

勤続10年以上で円満退職した正社員から「賞与が振り込まれていない」という電話が入ります。

もう3か月も前に退職した方です。

この電話を受けた人事担当者は、頭の中がパニックです。

なにしろ、つい先日「退職金が振り込まれていました」という電話をくださったその退職者から、今度は賞与の催促です。

後日、その退職者の代理人弁護士から、賞与請求の内容証明郵便が会社に届くということがあります。

ネット上でも、こうした情報が増えるにつれ、実際の請求も増えているようです。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる事件なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

(賞与)

第48条 賞与は、原則として、下記の算定対象期間に在籍した労働者に対し、会社の業績等を勘案して下記の支給日に支給する。

ただし、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由により、支給時期を延期し、又は支給しないことがある。

算定対象期間

支給日

    日から    日まで

    

    日から    日まで

    

 

この規定では「下記の算定対象期間に在籍した労働者」に支給するとなっています。

「算定対象期間の最終日に在籍した労働者」とは書いてありません。

これだと、算定対象期間の途中まで在籍していて、その後退職した労働者には、本当に支給しなくて良いのかが不明確です。

労働法の原理からすると、「疑わしきは労働者の有利に」ですから、会社は賞与の支払を拒めないように思われます。

就業規則に、賞与の支給対象者を一定の日(例えば、6月1日や12月1日、又は賞与支給日)に在籍した者とする規定を設けることで、期間の途中で退職等し、その日に在職しない者には支給しないこととすることも可能です。

ちょっとしたポイントですが、こうした規定を設けるか設けないかで大きな違いを生じてしまいます。

 

<ひな形はひな形>

ひな形はあくまでもひな形です。

就業規則のひな形に合わせて、会社を運営することなど殆ど不可能です。

当たり前のことですが、会社の実情を反映した就業規則でなければ使い物になりません。

ひな形を利用するのであれば、注意書きをすべて読み込んだうえで、上手にカスタマイズしましょう。

 

2022/06/14|1,441文字

 

<労働法での休日>

「休日」は、労働者が労働義務を負わない日のことをいいます。

労働法上は、カレンダーで日付の色が違う土日や祝日ではなく、就業規則や労働契約で定められた休日のことを「休日」と呼んでいます。

何も手続をしなくても、当然にお休みなのが「休日」です。

「休日」の中でも、労働基準法によって定められている「休日」を、特に「法定休日」と呼んでいます。

 

【労働基準法第35条:休日】

使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。

② 前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。

 

そして、この法定休日とは別に、就業規則や労働契約にプラスアルファで設けた「休日」が「法定休日ではない所定休日」ということになります。

週休2日であれば、1日は「法定休日でもある所定休日」、もう1日は「法定休日ではない所定休日」です。

しかし、法定休日を明確に定めていない就業規則や労働契約もあります。

この場合には、週の初日を別に定めていなければ、日曜日から土曜日までの7日間にすべて出勤していれば、少なくとも、1日は法定休日となります。

 

<法定休日の労働>

「法定休日」は、法定の休日ですから原則として労働できません。

しかし、三六協定を交わせば、その限度で法定休日の労働も可能です。

三六協定の正式名称は「時間外労働休日労働に関する協定」ですが、ここでの「時間外労働」は法定時間外労働を指しますし、「休日労働」は法定休日労働を指します。

ですから、三六協定の範囲内で、法定休日労働も一応は可能ということになります。

 

<法定時間外労働の制限>

労働基準法によって、法定時間外労働には罰則付きで上限が設けられています。

 

原則 = 月45時間かつ年360時間(1日あたり約2時間)

 

三六協定の締結により、臨時的な特別の事情があって、労使が合意する場合であっても、

・年720時間以内

・法定休日労働の時間と合わせて複数月平均80時間以内

・法定休日労働の時間と合わせて月100時間未満

ただし、月45時間を超えられるのは年6回までという制限があります。

複数月平均80時間以内というのは、過去2か月、3か月、4か月、5か月、6か月のどの平均も80時間以内ということです。

 

ここで、「法定休日労働の時間と合わせて」というフレーズに注目してください。

三六協定で、月2回までは法定休日の出勤が許されたとしても、その勤務時間は法定時間外労働の時間と合算され、上限が設けられています。

こうして法定休日労働は、間接的に制限を受けることになるのです。

 

<法定休日ではない所定休日の労働>

週休2日制で、毎週土曜日と日曜日が所定休日の社員が、仕事の都合で止むを得ず土曜日に出勤すれば、この日の出勤は所定休日の労働となります。

土曜日が法定休日なら法定休日労働となりますし、日曜日が法定休日なら土曜日の労働は「法定休日ではない所定休日」の労働となります。

そして、「法定休日ではない所定休日」の労働であっても、一部の例外を除き週40時間を超える時間は、法定時間外労働として加算されます。

したがって、上記の法定時間外労働の制限にかかってくることになります。

 

<解決社労士の視点から>

働き方改革の一環で、平成31(2019)年 4月1日に労働基準法が改正され、休日出勤も三六協定を守っていれば大丈夫ということではなくなりました。

本腰を入れて、労働時間の削減に取り組まなければならない時代になったといえます。

 

2022/06/13|1,805文字

 

<パート・有期法への改正>

令和2(2020)年4月1日、パート法は、パート・有期法に改正されました。

中小企業でも令和3(2021)年4月1日に施行済です。

 

【正式名称】

パート法 = 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律パート・有期法 = 短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律

 

旧法では、フルタイム以外の労働者だけが対象です。

新法では、有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者が対象となります。

 

区分

無期

有期

派遣

フルタイム

通常の労働者

新法対象者

新法対象者

フルタイム以外

新法対象者

新法対象者

新法対象者

 

ここで通常の労働者とは、定年以外に雇用期間が限定されない無期雇用で、フルタイム勤務の労働者ですから、「正社員」と呼ばれるのが一般です。

 

<事業主の説明義務>

新法には、事業主の説明義務が規定されています。

 

【パート・有期法第14条第2項】

事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、当該短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由並びに第六条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならない。

 

説明は、事業主が新法対象者を雇い入れた後、本人から求められたときに行うことになります。

説明内容は、主に待遇の相違の内容とその理由です。

事実に反する嘘の説明はできませんし、不合理な説明もダメです。

理解しうる説明であることが必要ですが、必ずしも納得してもらうことまでは必要ありません。

 

<退職金支払の理由>

もし、正社員など一般の労働者のみに退職金を支給しているのであれば、退職金支払の有無と理由について説明が必要になります。

説明を求めたことに対して、不利益な取扱をすることは禁止されています。〔パート・有期法第14条第3項〕

ですから、不快な思いをさせないように配慮する必要があります。

さて、退職金支払の一般的な理由としては、次のようなものが挙げられます。

 

【退職金支払の一般的な理由】

長期雇用を前提とした無期契約労働者に対する福利厚生を手厚くし、人材の確保・定着を図るため。

 

正社員など通常の労働者以外は、すべて2~3年で退職しているという実態があれば、こうした理由で退職金を支給するのは合理性があります。

しかし、多くの企業では、有期雇用労働者が契約の更新を繰り返して、相当長期にわたり働いているのではないでしょうか。

 

<正社員だけに退職金が支給される合理的な理由>

次のような制度であれば、正社員など通常の労働者だけに退職金が支給されるのは、合理的な理由があるということになります。

 

正社員など無期・フルタイムの労働者には、賃金の後払い、長年の功労に対する報償として退職金を支給する。一方、新法対象者であるパート・有期労働者に対しては、退職金が無いことを前提として、退職金引当金に相当する額を賃金に上乗せして支給している。

そのため、職務の内容、職務の内容や配置の変更の範囲、その他の事情が同等であれば、無期・フルタイムの労働者よりも、新法対象者の方が賃金の時間単価が高い。

 

<企業の取るべき対応>

現在のところは裁判でも、「一般論として、長期雇用を前提とした無期契約労働者に対する福利厚生を手厚くし、有為な人材の確保・定着を図るなどの目的をもって無期契約労働者に対しては退職金制度を設ける一方、本来的に短期雇用を前提とした有期契約労働者に対しては退職金制度を設けないという制度設計をすること自体が、人事政策上一概に不合理であるということはできない」とされています。

また、同一労働同一賃金ガイドラインには、退職金についての具体的な記述がありません。

ですから、賃金の時間単価の違いや、勤続年数の実態を踏まえ、正社員など無期・フルタイムの労働者のみに退職金制度を設けることの合理性を検討し、不合理な部分があれば修正する、そして、裁判例の動向を踏まえつつ定期的な修正を行っていくことになります。

しかし、退職金の原資には限りがありますから、一部の従業員の退職金が減るのであれば不利益変更となります。

この場合には、個別の同意を得るなどの確実な対応が必要となります。

長期的な展望に立ち、顧問の社会保険労務士などと相談しながらうまく対応しましょう。

 

2022/06/12|994文字

 

<採用内定の性格>

採用内定の法的性格は、それぞれの具体的な事情により異なりますが、採用内定通知のほかに労働契約締結のための意思表示をすることが予定されていない場合には、採用内定により始期付解約権留保付労働契約が成立したと認められます。

 

始期付=働き始める時期が決まっていること

解約権=契約を無かったことにできる権利

留保付=効力を残して持ち続けること

始期付解約権留保付労働契約=すぐに働き始めるのではなくて、いつから働き始めるかが決められていて、しかも、場合によっては契約を無かったことにできる権利が残されたまま成立している労働契約

 

<内定取消>

採用内定取消は解雇に当たり、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合には、権利を濫用したものとして無効となります。〔労働契約法第16条〕

採用内定取消が有効とされるのは、原則的には、次の2つの条件を満たす場合に限られると考えられます。

・採用内定の取消事由が、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であること。具体的には、契約の前提となる条件や資格の要件を満たさないとき、健康状態の大幅な悪化、採否の判断に大きく影響する重要な経歴詐称、必要書類を提出しないなど手続への非協力的態度、その他の不適格事由などが考えられます。

・この事実を理由として採用内定を取消すことが、解約権留保の趣旨と目的に照らして、客観的に合理的な理由によるものと認められ社会通念上相当として是認することができる場合であること。

 

<内定辞退>

内定辞退は学生・労働者側からの行為になります。

内定辞退の場合には、すでに労働契約は成立しているものの、民法の規定により「雇用の期間を定めなかった時はいつでも解約できる」とされているので、基本的には認められることになります。

ただし、労働契約を解約することはできても、一方的な解約が信義に反し不誠実な場合には、会社側から損害賠償の請求をすることも考えられます。

もっとも、損害と内定辞退の因果関係や損害額を立証することは難しく、立証できても大きな金額とはならないので、実際に損害賠償を求めた判例は見当たりません。

内定を辞退された採用担当者としては、恨み言の一つも言ってやりたくなりますが、ハラスメントを主張され、会社の評判が落ちてしまったら責任重大ですから、グッとこらえなければなりません。

 

2022/06/11|998文字

 

<「トラガール促進プロジェクト」サイト>

令和4(2022))年6月7日、国土交通省が、女性トラックドライバー(トラガール)の多様な働き方・キャリア形成等の魅力や企業のトラガール活躍推進方策を紹介する「トラガール促進プロジェクト」サイトを全面リニューアルしました。

運送業での人手不足解消や女性活躍推進といった政策を背景に、トラガールを目指す人やトラガールのさらなる活躍を目指す経営者等へ有益な情報を発信することを目的として、国土交通省が平成27(2015)年に開設しました。

この中の企業向け情報では、トラガール促進のメリットを次のように説明しています。

 

<企業イメージの向上>

女性が働けるほど安全管理や教育がしっかりしている企業として評価されます。

また、女性がトラックを運転していることで「対応がソフトで安心」「細かな気配りが嬉しい」など、企業のイメージ向上につながることもあります。

 

<コミュニケーションの円滑化>

従業員同士の会話が増え、社内の風通しがよくなります。

現場でのコミュニケーション能力が高い人が多く、女性を採用することで職場環境が整備され、若年層や中高年男性ドライバーも含め、職場全体の働きやすさが向上します。

 

<ドライバー不足の解消>

女性を育成することで女性の応募が増え、労働力不足の解消につながります。

また、女性ドライバーが働きやすい環境は若年層が求める職場環境にも通じているため、若年層採用にも効果があります。

 

<営業力の強化>

荷扱いやお客様を含めた取引先や周囲への対応が丁寧なため、荷主からの評判が良くなり、業績の向上に貢献が期待できます。

また、女性の視点からの新鮮な提案がなされることで、営業力の強化につながることもあります。

 

<解決社労士の視点から>

女性トラックドライバーとしての能力を備え、意欲に溢れている人でも、昭和時代には活躍の場が殆ど与えられて来なかったという実態があります。

いち早く、女性トラックドライバーの労働環境を整え、活躍の場を提供している企業では、有能な人材の確保に成功しています。

こうした動きは、バスやタクシーのドライバーでは先行して見られました。

建設業、土木業、引越業のように、まだまだこれから女性の活躍が期待される業種もあります。

男性従業員の比率が高い業種では、積極的に女性の採用に取組むことで、人材不足の予防・解消を狙ってはいかがでしょうか。

 

2022/06/10|671文字

 

<通常の場合>

期間の定めのある労働契約(有期労働契約)で働く労働者について、使用者はやむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間の途中で労働者を解雇することはできないとされています。〔労働契約法第17条第1項〕

期間の定めのない労働契約の場合よりも、解雇の有効性は厳しく判断されます。

 

<長期勤続の場合>

また、有期労働契約が3回以上更新されている場合や、1年を超えて継続勤務している有期契約労働者について、契約を更新しない場合、使用者は少なくとも契約の期間が満了する日の30日前までに、その予告をしなければなりません。〔有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準第1条〕

ただし、あらかじめその契約を更新しない旨が明示されている場合を除きます。

 

<証明書の交付>

さらに、使用者は、雇止めの予告後に労働者が雇止めの理由について証明書を請求した場合は、遅滞なくこれを交付しなければなりません。

これは、雇止めの後に労働者から請求された場合も同様です。〔有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準第2条〕

明示すべき「雇止めの理由」は、契約期間の満了とは別の理由とすることが必要です。

たとえば、以下のような理由です。

・前回の契約更新時に、本契約を更新しないことが合意されていたため

・契約締結当初から、更新回数の上限を設けており、本契約はその上限に係るものであるため

・担当していた業務が終了・中止したため

・事業縮小のため

・業務を遂行する能力が十分ではないと認められるため

・職務命令に対する違反行為を行ったこと、無断欠勤をしたことなど勤務不良のため

 

2022/06/09|1,717文字

 

<パート・有期法への改正>

パート法は、パート・有期法に改正されました。

施行日は、大企業では令和2(2020)年4月1日、中小企業では令和3(2021)年4月1日施行でした。

 

【正式名称】

パート法 = 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

パート・有期法 = 短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律

 

旧法では、フルタイム以外の労働者だけが対象です。

新法では、有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者が対象となります。

 

区分

無期

有期

派遣

フルタイム

通常の労働者

新法対象者

新法対象者

フルタイム以外

新法対象者

新法対象者

新法対象者

 

ここで通常の労働者とは、定年以外に雇用期間が限定されない無期雇用で、フルタイム勤務の労働者ですから、「正社員」と呼ばれるのが一般です。

 

<事業主の説明義務>

新法には、事業主の説明義務が規定されています。

 

【パート・有期法第14条第2項】

事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、当該短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由並びに第六条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならない。

 

説明は、事業主が新法対象者を雇い入れた後、本人から求められたときに行うことになります。

説明内容は、主に待遇の相違の内容とその理由です。

事実に反する嘘の説明はできませんし、不合理な説明もダメです。

理解しうる説明であることが必要ですが、必ずしも納得してもらうことまでは必要ありません。

 

<賞与支払の理由>

もし、正社員など一般の労働者のみに賞与を支給しているのであれば、賞与支払の有無と理由について説明が必要になります。

説明を求めたことに対して、不利益な取扱いをすることは禁止されています。〔パート・有期法第14条第3項〕

ですから、不快な思いをさせないように配慮する必要があります。

さて、賞与支払の一般的な理由としては、次のようなものが挙げられます。

 

【賞与支払の一般的な理由】

会社の利益の分配、功労報償、生活補償、従業員の意欲向上、長期雇用への期待

 

これらの理由で賞与を支払っているのなら、正社員など通常の労働者に限定して賞与を支払っているのは不合理ですから、改めなければなりません。

なぜなら、会社の利益の分配、功労報償、生活補償、従業員の意欲向上、長期雇用への期待は、全従業員に共通ですから、一部の従業員に限定して賞与を支払うことは、客観的に合理的な説明がつかないのです。

もっとも、正社員など通常の労働者以外は、すべて2~3年で退職しているという実態があれば、「長期雇用への期待」という理由も合理性が認められます。

しかし、多くの企業では、有期雇用労働者が契約の更新を繰り返して、相当長期にわたり働いているのではないでしょうか。

 

<正社員だけに賞与が支給される合理的な理由>

次のような制度であれば、正社員など通常の労働者だけに賞与が支給されるのは、合理的な理由があるということになります。

 

正社員など無期・フルタイムの労働者だけが、半期に一度上司と面接して目標を設定し、この目標の達成度に応じて賞与が支給される。

ただし、達成度が基準に達しないほど低ければ、職能等級が低下するなどによって、基本給も下がってしまうという待遇上の不利益が発生する。

そして、新法対象者であるパート・有期労働者は、こうした仕組みの対象外であるから、時給が下がるようなことはない。

 

<企業の取るべき対応>

すでに賞与支給の理由が明確となっていて、一部の従業員だけに支給されているのであれば、その合理性を検討します。

客観的な合理性が無いのであれば、全従業員に同じ基準で賞与を支給することになります。

しかし、賞与の原資には限りがありますから、一部の従業員の賞与が減るのであれば不利益変更となります。

個別の同意を得るなどの対応が必要となります。

実際には、賞与支給の趣旨があやふやなことも多いものです。

この場合には、顧問の社会保険労務士などと相談してうまく対応しましょう。

 

2022/06/08|1,422文字

 

<請負契約のメリット・デメリット>

大手企業でも、雇用契約を請負契約に切り替える動きが見られます。

請負契約の場合、働く人のメリットとしては、細かい指図を受けずに伸び伸びと自由に働けること、自分の自由な時間で働けること、成果に応じた報酬が得られることなどがあります。

こうしたメリットに着目して、社員が請負契約への切り替えに同意するわけです。

しかし、雇用ではありませんから、労働基準法を始めとする労働法の保護の対象外となりますし、社会保険や労働保険も基本的には対象外となります。

また、年次有給休暇や産休・育休などもありません。

こうしたデメリットは覚悟しておく必要があります。

この裏返しとして、請負契約にすれば、企業は社会保険料や労働保険料の負担が無くなりますし、使用者としての責任は免れることになります。

一方で、企業は細かい指示を出せなくなりますし、予定外の「残業」のようなことも命ずることはできなくなります。

 

<名ばかり業務委託契約>

企業と個人とが請負契約を交わす場合、一般には「業務委託契約」という名称が用いられます。

業務を委託する企業と、業務を行う人との契約関係が、実質的には雇用契約〔民法第623条〕なのに、契約書のタイトルが業務委託契約書となっていることもあります。

もちろん、労働審判や労働訴訟になれば、契約書のタイトルにかかわらず、その実態から雇用契約であると認定され、働き手は労働者としての権利が保障されることになります。

契約書の体裁だけを整えても、その通りの効果が認められるわけではないということです。

 

<労働基準監督署の介入>

ネット通販「アマゾン」の荷物の宅配について、ある運送会社と個人事業主であるドライバーとの間で業務委託契約が交わされていました。

ところが、労働基準監督署がこの運送会社に、労働基準法違反で是正勧告したことが報道されています。

是正勧告ですから、労働基準監督署が労働法違反だと判断し、運送会社に是正を求めたことになります。

運送会社からドライバーに対してルートを指定し、予定外の配達を急に指示し、制服の着用も求めていたという実態があります。

また、「事務管理料」を報酬から控除していましたが、これも給与からの控除とは異なり許されていないことです。

これらの実態から見て、業務委託契約(請負契約)ではないと判断され、労働基準監督署から労働法違反を指摘されたわけです。

 

<解決社労士の視点から>

物流業界では、宅配荷物の急増と人手不足を背景に、運送会社が個人ドライバーに宅配業務を委託する件数が急増しています。

運送会社と個人ドライバーとは、1日いくらという固定料金で宅配の業務委託契約を交わしていることが大半です。

しかし、その実態に照らして雇用契約と判断され、労働法違反を指摘されることが一般化すれば、物流業界全体で身動きが取れなくなる恐れさえあります。

最終的には、司法判断を待つことになりますが、今後の動向を注視せざるを得ません。

労働基準監督署(労働局)としては、目に余る事態と考えて対応したものと思われます。

これまでグレーゾーンで、同業他社のどこもが行っていたことに対して、一気に行政のメスが入って一網打尽ということがあります。

対応しきれない企業が業界から姿を消すことは、やむを得ないという考えでしょうけれど、業界全体が縮小すると国民の生活にも重大な影響が出てしまいます。

そこまでは、配慮していただけないのかもしれません。

 

2022/06/07|1,470文字

 

<30万円の罰金>

労働基準法には、「30万円以下の罰金」についての規定が50種類以上あります。

このうち、分かりやすいものとして次のようなものがあります。

・国籍や性別で賃金を差別する

・遅刻などに「罰金」を設ける

・業務災害による休業中に解雇する

・法定の休憩時間を与えない

・年次有給休暇を与えない

・満18歳に満たない者(現在の未成年者)を午後10時から午前5時に働かせる

・労働条件通知書などにより労働条件を明示しない

・使用者側の都合で休業させたのに休業手当を支払わない

・法定の制限を超えて減給処分を行う

 

<犯罪の個数>

原則として、労働者1人に対する1回の行為が1個の犯罪としてカウントされます。

上記の国籍や性別で賃金を差別した場合については、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が規定されています。

たとえば、外国人や女性を採用するにあたって、日本人や男性よりも低い賃金で雇用し、これが5人続いたとします。

そして、6か月にわたって低い月給を支給し続けたとします。

この場合、5 × 6 = 30 で、30個の犯罪が成立していることになります。

これでも、懲役刑が科される場合には、9か月が上限となります。〔刑法第47条〕

しかし、罰金が科される場合には、単純に 30万円 × 30 = 900万円 が上限となります。〔刑法第48条第2項〕

労働基準法違反を承知で、長年にわたって多数の従業員に違法な扱いをしていると、数百個の犯罪が成立していることもあるのです。

 

<実際の罰則適用>

実際に罰金が適用されるのは、労働者からの申告を受けて労働基準監督署が摘発し、あるいは無作為抽出による定期的な監督に基づき勧告があって、使用者が指導に従わないような悪質な場合です。

この場合でも、数十万円の罰金に留まるのが一般です。

これは、書類送検されるような悪質な事件については、マスコミの報道により社会的な制裁が十分であることや、罰則よりも被害者や遺族に対する損害賠償の金額の方が遥かに多額であることなどが考慮されているようです。

 

<遵法経営が一番>

こうして見ると、労働基準法違反で罰金が科される場合、本当に怖いのは、罰金よりも社会的制裁や被害者への補償により、企業に莫大な損失が発生してしまうことだと考えられます。

「30万円以下の罰金」であっても、罰則に触れるようなことは、決して行わないよう注意を怠ってはなりません。

 

【刑法の規定】

(併合罪)

第四十五条 確定裁判を経ていない二個以上の罪を併合罪とする。ある罪について禁錮以上の刑に処する確定裁判があったときは、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪とに限り、併合罪とする。

 

(併科の制限)

第四十六条 併合罪のうちの一個の罪について死刑に処するときは、他の刑を科さない。ただし、没収は、この限りでない。

2 併合罪のうちの一個の罪について無期の懲役又は禁錮に処するときも、他の刑を科さない。ただし、罰金、科料及び没収は、この限りでない。

 

(有期の懲役及び禁錮の加重)

第四十七条 併合罪のうちの二個以上の罪について有期の懲役又は禁錮に処するときは、その最も重い罪について定めた刑の長期にその二分の一を加えたものを長期とする。ただし、それぞれの罪について定めた刑の長期の合計を超えることはできない。

 

(罰金の併科等)

第四十八条 罰金と他の刑とは、併科する。ただし、第四十六条第一項の場合は、この限りでない。

2 併合罪のうちの二個以上の罪について罰金に処するときは、それぞれの罪について定めた罰金の多額の合計以下で処断する。

 

 

2022/06/06|573文字

 

次の事項を理由に解雇することは、一部の例外を除き禁止されています。

 

・労働者の国籍、信条、社会的身分〔労働基準法第3条〕

・労働者の性別〔男女雇用機会均等法第6条〕

・労働者が労働基準監督機関に申告したこと〔労働基準法第104条〕

・女性労働者が婚姻したこと、妊娠・出産したこと〔男女雇用機会均等法第9条〕

・個別労働関係紛争に関し、都道府県労働局長にその解決の援助を求めたこと〔個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第4条〕

・男女雇用機会均等法、育児・介護休業法及びパートタイム労働法に係る個別労働紛争に関し、都道府県労働局長に、その解決の援助を求めたり、調停の申請をしたこと

・労働者が育児・介護休業等の申出をしたこと、又は育児・介護休業等をしたこと〔育児・介護休業法〕

・労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、又はこれを結成しようとしたこと、労働組合の正当な行為をしたこと等〔労働組合法第7条〕

・公益通報をしたこと〔公益通報者保護法第3条〕

 

ちょっと耳慣れない法律もありますが、すべては労働者を保護するための規定です。

中には、会社にとって不都合なことや、会社に逆らっているかのような内容もあります。

うっかり解雇を通告すれば、それは解雇権の濫用となって無効となるばかりではなく、慰謝料を含め未払い賃金など損害賠償請求の対象ともなります。

 

2022/06/05|813文字

 

<説明が無い場合>

賞与の支給額を明細書で初めて知り、どうしてこの金額なのか分からないというのは小さな会社ほど多いようです。

そもそも賞与の金額は、社長が一人で思い悩んで決めたので、全員についてハッキリした説明などできないという場合もあります。

もらった社員は、前回に比べていくら増えた/減ったしか感じません。

会社の経費を、それも多額の経費を賞与に充てたのに、ちっとも感謝してもらえないなんて勿体ない話です。

 

<説明のある場合>

賞与の支給額は、基本給を基準に会社の業績を反映した支給月数、個人の貢献度を反映した考課係数を設定して、次のように計算されていれば納得しやすいでしょう。

個人の賞与支給額 = その人の基本給 × 支給月数 × 考課係数

支給月数が多ければ「会社は経営状況が良い」と分かりますし、考課係数が高ければ「私は高い評価を得ている」と分かります。

支給月数が少なかったり、考課係数が低かったりしても、「次こそは!」という気持になります。

このことが、社員ひとり一人のヤル気に結びつくでしょう。

また、連続して考課係数が低い社員は、大いに努力するか会社を去るかの決断を迫られます。

 

<具体的な計算方法>

「うちの会社は、そんなにキチンとやっていない」とあきらめる必要はないのです。

たとえ、社長が一人で考えて決めた支給額であっても、次の手順で計算できます。

 

賞与支給額の総額 ÷(支給対象者の基本給の合計額)= 支給月数

こうして、平均的な人事考課(考課係数=1)の場合の支給月数がわかります。

 

個人の賞与支給額 ÷(その人の基本給 × 支給月数)= 考課係数

これで、賞与から逆算したその人の考課係数がわかります。

 

結局、「あなたの今回の賞与は次の計算によって決まりました」と説明できるのです。

個人の賞与支給額 = その人の基本給 × 支給月数 × 考課係数

 

社長や上司が各社員と面談して、この説明をして激励してはいかがでしょうか。

 

2022/06/04|682文字

 

<適用事業所に該当しなくなったとき>

次に該当した場合、事業主が「健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届」を提出します。

(1)事業を廃止(解散)する場合

(2)事業を休止(休業)した場合

(3)他の事業所との合併により事業所が存続しなくなる場合

(4)一括適用により単独の適用事業所でなくなった場合

 

<手続の方法>

事業主が「適用事業所全喪届」を日本年金機構へ提出します。

提出時期 =事実発生から5日以内

提出先 =郵送で事務センター(事業所の所在地を管轄する年金事務所)

提出方法 =電子申請、郵送、窓口持参

 

<添付書類>

1.原則 下記(1)、(2)のいずれか

(1)解散登記の記入がある法人登記簿謄本のコピー

(破産手続廃止又は終結の記載がある閉鎖登記簿謄本のコピーでも可)

(2)雇用保険適用事業所廃止届(事業主控)のコピー

 

2.1.の添付ができない場合

下記(3)~(6)のいずれか

(3)給与支払事務所等の廃止届のコピー

(4)合併、解散、休業等異動事項の記載がある法人税、消費税異動届のコピー

(5)休業等の確認ができる情報誌、新聞等のコピー

(6)その他、適用事業所に該当しなくなったことを確認できる書類

 

※ 電子申請の場合、上記1.2の添付書類は、画像ファイル(JPEG形式またはPDF形式)による添付データとして提出することができます。

 

<留意事項>

この届書に記入された情報(事業所名称、所在地、全喪年月日)は、適用の適正化の観点から、日本年金機構のホームページに掲示され、閲覧に供されることとなります。

適用事業所が不当に保険料を免れることがないよう、念のための措置でしょう。

 

2022/06/03|1,319文字

 

<休職制度>

休職とは、業務外での病気やケガなど、主に労働者側の個人的事情により、長期間にわたり働けない見込みとなった場合に解雇せず、労働者としての身分を保有したまま一定期間就労義務を免除する特別な扱いをいいます。

しかし、これは一般的な説明であって、休職の定義、休職期間の制限、復職等については、労働基準法にも規定がありません。

つまり、法令に違反しない限り、会社は休職制度を自由に定めることができますし、休職制度を設けないこともできます。

なぜなら、長期の欠勤は労働契約の債務不履行ですから、契約の一般原則からすれば、債務不履行は正当な契約解除の理由となるのですが、休職制度は、就業規則などの取り決めで、すぐには労働契約の解除をせずに、復帰を期待して一定の期間様子を見るという恩恵的な制度だからです。

 

<法令の趣旨による制限>

休職期間満了の時点で、休職理由が消滅していないときには解雇、あるいは労働契約の自動終了(自動退職)という効果を発生させる規定を置くことがあります。

この場合には、解雇予告期間の趣旨を踏まえ、休職期間は30日以上とすることが必要になるでしょう。〔労働基準法第20条第1項〕

 

<休職制度のあり方>

各企業が休職制度を自由に設計できるため、就業規則に規定する場合にも、会社に主導権のある規定、労使の合意を前提とする規定、条件を満たせば自動的に休職となる規定など、個性が見られます。

また、就業規則に休職の規定が無い場合もあります。

就業規則に休職の規定が無い場合、あるいは、そもそも就業規則が無い場合であっても、労働者に休職を命ずることができます。

休職を命じなければ、長期欠勤で退職となるところ、休職を命じて救済するわけですから、法令以上に有利な扱いをすることになるからです。

こうして、休職制度の無い会社でも、休職の実績が積み重ねられてから、就業規則に規定を置くということも可能です。

ただ、行き当たりばったりの不公平で不合理な運用をすれば、休職扱いとならず解雇された労働者から、解雇の無効を主張される可能性があります。

 

<休職制度の存在理由>

休職制度を設けるのは会社の自由ということであれば、あえて休職制度を設けるのはなぜなのかということになります。

これは、労働契約法の次の規定と大きな関わりがあります。

 

【労働契約法第16条:解雇】

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

つまり、しばらく会社を休み、労働契約の債務不履行があったとしても、解雇をするには、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められないのであれば、解雇権の濫用とされ解雇の通告が無効になるということです。

解雇となれば、会社は貴重な労働力を失い、労働者は生活の糧を失うのですから、これに合理性はあるのかということが問われます。

そこで、労働者側にそれなりの事情がある場合には、一定の期間猶予を与え、期限内に復帰できれば、労働契約は解除されないという制度を設けて、解雇権の濫用を防止しているというわけです。

こうしてみると、休職制度を設けることに大きな意義があることが分かります。

 

2022/06/02|1,642文字

 

<解雇無効の主張>

試用期間中に時間が守れない、パソコンも使えない、当然本採用は見送りということで、試用期間終了をもって退職とした社員の代理人弁護士から「解雇は無効であり労働者の権利を有する地位にあることの確認を求める」という内容証明郵便が会社に届くということがあります。

ネット上でも、こうした情報が増えるにつれ、不当解雇の主張も増えているようです。

「いや、うちの会社はすべての新人に試用期間を設け、試用期間の評価によっては本採用とならず退職となることをきちんと説明している」と言っている会社が、実際に解雇無効を主張される結末になっているのです。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる事件なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

(試用期間)

第6条 労働者として新たに採用した者については、採用した日から  か月間を試用期間とする。

2 前項について、会社が特に認めたときは、この期間を短縮し、又は設けないことがある。

3 試用期間中に労働者として不適格と認めた者は、解雇することがある。ただし、入社後14日を経過した者については、第49条第2項に定める手続によって行う。

4 試用期間は、勤続年数に通算する。

 

この条文は、次のことを言っています。

・試用期間を○か月とするが、短縮したり無しにすることがある。(しかし延長は無い)

・入社して14日を超えた人を解雇するときは、第49条2項に定める手続き(30日以上前の予告、解雇予告手当)が必要である。

この「第49条2項」というのがクセ者です。

そんなに後の方に書いてあることは読まずに済ませてしまう危険があるのです。

 

<注意書き>

実はこのひな型には、次のような注意書きがあります。

試用期間中の者も14日を超えて雇用した後に解雇する場合には、原則として30日以上前に予告するか、又は予告の代わりに平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払うことが必要となります(労基法第20条、第21条)。

 

専門家ではない人が、この大事な注意書きを読み飛ばしてしまいます。その結果、思わぬ事態を招いてしまうのです。

 

<実例として>

新入社員のAさんが、就業規則で定めた3か月の試用期間終了近くなっても、電話応対がきちんとできません。

同じ職場のメンバーの顔と名前が覚えられず、自分から挨拶できません。

社長が「せっかく入社したのだからもう少し様子を見よう」という特別の計らいで、もう1か月だけ試用期間を延長したのですが、結局、Aさんは不適格者ということで、解雇となってしまいました。

「大変ご迷惑をおかけしました」と挨拶して会社を去っていったAさんの代理人から「解雇は無効である。一方的に試用期間を延長されたことに対する慰謝料も支払え」などという内容証明郵便が届きます。

この場合、会社としては就業規則に無い試用期間の延長や、解雇予告手当を支払わずに解雇したことについて、法令違反や就業規則違反があったのです。

 

<こうして使いましょう>

困ったことにならないようにするには、2つのポイントがあります。

1つは、試用期間を定めたら延長しないこと。

そのためには、本採用とするための条件を書面で明らかにして、会社と新人とが保管することです。

たとえば「遅刻・欠勤が無いこと。基本的な電話応対を身に着けること。身だしなみを整えること。業務の報告は確実に行うこと」などです。

試用期間内にクリアする条件を明確にすれば、温情的な延長も防げます。

もう1つは「ちょっと無理かな」と思ったら、試用期間が終わるまで待たないで、14日以内に解雇することです。

長引けば、その新人の転職のチャンスも遠のきます。

もちろん、こうしたドライな対応をする前提として、募集・選考・採用の精度は高めておかなければなりません。

試用期間中の教育訓練も、スケジュールに沿って着実に行わなければなりません。

人は見極めて採用し育てることが肝要なのです。

 

2022/06/01|1,271文字

 

<退職金の請求>

長年働いて円満退職したパート社員の代理人弁護士から、退職金請求の内容証明郵便が会社に届くということがあります。

ネット上でも、こうした情報が増えるにつれ、実際の退職金請求も増えているようです。

「いや、うちの会社は契約更新のたびに、きちんと雇用契約書でパート社員には退職金の支給が無いことを確認しています」と言っている会社が、実際に退職金を支払う結末になっているのです。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる事件なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

(適用範囲)

第2条 この規則は、    株式会社の労働者に適用する。

2 パートタイム労働者の就業に関する事項については、別に定めるところによる。

3 前項については、別に定める規則に定めのない事項は、この規則を適用する。

 

この条文は、次のことを言っています。

・「この就業規則」が原則としてすべての従業員に適用される。

・パート社員の就業規則は別に作る。

・パート社員の就業規則に書いていないことは、パート社員を含め、すべての従業員に「この就業規則」が適用される。

結局、この規定は「この就業規則」とは別に「パート社員就業規則」を作ることが前提となっているのです。

ですから、「この就業規則」に退職金の規定を置いて、別に「パート社員就業規則」を作らなければ、パート社員にも退職金の規定が適用されます。

たとえ、雇用契約書や雇い入れ通知書、労働条件通知書に「退職金は支給しません」とはっきり書いてあっても、労働者に有利なことは就業規則が優先的に適用されるのです。〔労働契約法第12条〕

 

<注意書き>

実は、このひな形には、次のような注意書きがあります。

 

なお、パートタイム労働者等について、規程の一部を適用除外とする場合や全面的に適用除外とする場合には、就業規則本体にその旨明記し、パートタイム労働者等に適用される規定を設けたり、別の就業規則を作成しなければなりません。

 

ところが、専門家ではない人が、この大事な注意書きを読み飛ばしてしまいます。

その結果、思わぬ事態を招いてしまうのです。

 

<こうして使いましょう>

困ったことにならないようにするには、2つの方法があります。

1つは、正社員用の就業規則とは別に「パート社員就業規則」を作ることです。

しかし、これは就業規則を2つ作るのですから、骨の折れる作業です。

もう1つは、就業規則の中で、正社員とパート社員とで違う取り扱いをする部分に、そのことをきちんと書いておくことです。

たとえば「退職金は正社員のみに支給し、パート社員には支給しない。パート社員に退職金を支給しないことは、雇用契約書(雇い入れ通知書、労働条件通知書)にその旨明示する」という規定を、就業規則の退職金の規定のところに加えておけば良いのです。

たったこれだけのことで、会社が痛い目を見ることは避けられるでしょう。

こうした規定の仕方は、同一労働同一賃金への対応としてもお勧めできます。

 

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