2024/08/26|1,154文字
<営業手当の意味>
営業手当は、営業という業務を担当することにより、他の業務には無い負担があるため、その負担に応じて支給される所定労働時間内の業務に対する手当です。
洋服代や靴代、精神的負担など、その理由は様々です。
ですから、所定労働時間外の残業代の代わりにはなりません。
また、営業手当に残業代を含めるということもできません。
<よくある言い訳>
会社が営業手当を残業代の代わりに支給する、あるいは残業代を含めて支給するときの言い訳としては、「営業社員は勤務時間を把握できないから」というのが多いでしょう。
しかし、これが本当なら営業社員はサボり放題です。
なぜなら、会社は営業社員の勤務時間を把握しないのですし、営業手当を支給しているから把握しなくても良いと思って安心しているからです。
きちんと勤務時間を把握し、営業成績を正しく評価し、個人ごとの生産性を人事考課に反映させて、給与や賞与にメリハリをつけなければサボりは防げません。
反対に、過重労働による過労死の危険もあります。
営業成績の上がらない社員は、サボりどころか長時間労働に走ります。
営業成績の良い社員がたくさん働いているとは限らないのです。
万一、営業社員が過労死あるいは自殺したときに、過重労働ではなかったという証拠が無ければ、遺族から慰謝料など多額の損害賠償を請求された場合に反論のしようがありません。
<退職者から未払い残業代を請求されたら>
残業代は25%以上の割増賃金なのですが、そのベースとなる賃金には営業手当が含まれます。
会社としては、残業代の代わりに営業手当を支給していたつもりでも、その営業手当を加えた賃金の25%以上割増で計算することになるのです。
会社にとっては、まるで残業代が複利計算になっているような感じを受けます。
恐ろしいのは、会社側に勤務時間のデータが無いために、退職者の手帳の記録などが証拠となりうることです。
退職者が退職後に記録を作成することさえあるのです。
それでも、退職者の記録が誤っていることを一つひとつ立証するのは、とても無理なことでしょう。
そして、退職者は過去3年分の残業代を請求することになります。
労働基準法の規定する消滅時効期間は2年でしたが、令和2(2020)年4月に民法が改正されたことで、3年に延長されました。
やがて、5年に延長されることが予定されています。
<実務の視点から>
営業社員の誰かが退職して、過去の未払残業代を請求してきたら、在籍している営業社員の全員が同じことを考えても不思議ではありません。
過去の退職者からの請求もあるでしょう。
たしかに、残業代の代わりに営業手当を支給する制度を適法に行う方法もあります。
しかし、これは導入も運用もむずかしいのです。
詳しいことは、信頼できる社労士にご相談ください。