2025/12/24|1,038文字
労災かくしとは、労働者が仕事中にケガや病気をしたにもかかわらず、企業がその事実を隠したり、虚偽の報告をしたりする違法行為のことです。これは労働者の権利を奪い、企業にとっても大きなリスクを生む重大な問題です。
令和7(2025)年1月1日から、電子申請が義務付けられているのですが、対応できない企業が多いこともあり、当分の間、書面での報告でも良いことになっています(労働安全衛生規則第97条附則第3条、第4条)。
<労災かくしの基本>
定義:労働災害(労災)が発生した際に、労働基準監督署へ提出すべき「労働者死傷病報告」を出さない、または虚偽の内容で提出すること。
対象となる災害:労働者が業務中にケガや病気で休業した場合や死亡した場合。休業が4日未満でも、企業は補償義務を負います。
違法性:労働安全衛生法違反であり、犯罪行為として処罰対象になります。
<労災かくしが起きる理由>
企業が労災を隠す背景には、以下のような理由があります。
・監督署の調査や処分を避けたい
・元請や発注者からの受注を守りたい(特に建設業で多い)
・労災保険のメリット制による保険料増加を避けたい
・「無災害記録」を維持したい
・労災保険未加入や他の法令違反が発覚するのを恐れている
<労災かくしの罰則と企業への影響>
罰則:労働安全衛生法により、1件につき50万円以下の罰金が科されます。
刑事事件化:悪質な場合は検察庁へ送検され、前科がつく可能性があります。
社会的信用の失墜:顧客離れ、入札停止、融資困難など、企業存続に関わる打撃を受けます。
内部への悪影響:従業員のモチベーション低下、退職者増加、採用困難、再発防止策が取れず事故が繰り返される危険。
<労働者への不利益>
労災かくしは、労働者に深刻な影響を与えます。
・適切な治療や休業補償が受けられない
・後遺症が残る可能性が高まる
・職場の安全対策が進まず、再び事故が起きる
・会社からの圧力や報復を恐れて声を上げられない
<発覚のきっかけ>
労災かくしは隠し通せるものではなく、以下の経路で発覚します。
・労働者本人や同僚による内部告発
・病院から労働基準監督署への通報
・労働基準監督署の立入調査(臨検監督)
<予防と正しい対応>
企業が労災かくしを防ぐためには、以下のことが必要です。
・「目先の利益より従業員の安全」を優先する姿勢を持つ
・労災発生時は迅速に報告・補償を行う
・労働安全衛生教育を徹底し、事故を未然に防ぐ
・労災事例を学び、リスクを理解する
・弁護士や社労士に相談し、正しい手続を確認する
<実務の視点から>
労災かくしは「会社のため」ではなく、労働者の権利を奪い、企業自身を危機に追い込む行為です。
事故が起きたら隠すのではなく、正しく報告し、再発防止に活かすことこそが企業の責任です。