パワハラの6類型を踏まえたパワハラ防止対策

2024/05/28|1,154文字

 

<パワハラの成立要件>

職場におけるパワーハラスメントは、職場において行われる

・優越的な関係を背景とした言動であって、

・業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、

・労働者の就業環境が害されるもの

であり、3つの要素を全て満たすものをいいます。

なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しません。

 

<パワハラの6類型>

厚生労働省は、パワハラを6つの類型に分類しています。

①身体的な攻撃(暴行・傷害)

②精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)

③人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)

④過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)

⑤過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事

を命じることや仕事を与えないこと)

⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

 

<業務上必要かつ相当な範囲>

パワハラの6類型のうち、①身体的な攻撃と③人間関係からの切り離しについては、「業務上必要かつ相当な範囲」というものが想定できませんので、絶対的禁止が求められます。

しかし、②精神的な攻撃については、業務に伴う通常の「精神的な苦痛」との区別が必要です。たとえば、5人の部署に相当量の急ぎの仕事が来た場合に、5人で分担しても、5人とも「精神的な苦痛」を感じるということはあります。しかし、これは業務に伴う通常のものであり、避けられないものですから、誰もパワハラの被害者にはなりません。

②精神的な攻撃は、業務指示や指導など業務に不可欠な範囲を超えて「精神的な苦痛」を与えることを指しています。昭和時代には、当たり前のように行われていたことでもあり、「業務に不可欠な範囲」の言葉や声の大きさなどについて、研修などを通じて、丁寧な説明を行う必要があります。

また、少しだけ難易度の高い業務を任せて成長を促すのは、④過大な要求とまではいえません。疑問があればすぐに質問すること、荷が重ければ断っても良いことなどを説明しておけば問題はないでしょう。

反対に、心身の疲労が見られる部下に対して、普段より楽な業務を与えるのは、⑤過小な要求とまではいえません。「疲れているようだから、しばらくこの仕事をしてください」という説明をしておく必要はあります。

総務・人事部門では、担当業務によっては、個人情報を扱うことがあります。また業務上、上司が部下の個人情報を知ることもあります。この業務の範囲を超えて詮索することや、業務上知り得た個人情報を業務と関係なく公開することが、⑥個の侵害によるパワハラとなります。このように、業務上、個人情報を扱う従業員に対しては、個人情報の保護について一段上の教育をする必要があります。

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