2024/01/01|1,444文字
<ハラスメントの本質>
ハラスメントは、必要かつ相当な範囲を超えた言動により、身体的・精神的な苦痛を与えて、就業環境を害することをいいます。
ここで、「就業環境を害する」というのは、ハラスメント行為を受けた人や、ハラスメント行為を見聞きした人が、働きにくくなったり、出勤しにくくなったりすることをいいます。
<ハラスメント認識の困難性>
ハラスメントについて、社内でこうした基本的なことの教育が完了していないと、ハラスメントの正しい認識は困難になります。
従業員は、社内でハラスメント行為を見聞きしても、問題視することがないので、制止することができません。
また、自分自身の行為が、ハラスメント行為であるという認識も持てません。
特に若年層では、社内で不愉快な思いをすれば、それはハラスメントによるものだと認識しがちです。
<会社のハラスメント防止義務>
会社は、ハラスメントを防止する義務を負っているとされます。
しかし、仮にこの義務がなかったとしても、ハラスメントの影響を受けた従業員が仕事に集中できなくなったり、その従業員が出勤しなくなったりということで、会社は大きな損害を被ります。
ですから会社は、打算的な考えからも、ハラスメントの防止に努めることになります。
<被害を申し出た人の認識>
ハラスメントについての理解を欠く従業員は、不愉快な思いをしたことをもって、ハラスメントを受けたと認識します。
相手の行為が、業務上必要かつ相当な範囲内の行為に該当するか否かについては、考慮しないことになります。
<加害者とされた人の認識>
加害者だと指摘された従業員は、安易に自分の行為が業務上必要かつ相当な行為だと認識する傾向にあります。
また、ハラスメントの加害者扱いされるのは、相手の考え次第であって、そのような主観で判断されるのは不合理だと感じます。
<ハラスメントの聞取り調査>
労働問題の解決に当たっては、まず、客観的事実の確認が必要です。担当する部門の責任者や担当者は、まず徹底的に事実の確認をしなければなりません。
聞取り調査にあたっては、被害者・加害者の主観的な感情を排除して、客観的な事実の確認に努めます。
合わせて、その事実に客観的な証拠があるのか、証人がいるのかも、確認する必要があります。
こうした確認を尽くしてから、ハラスメントの有無を検討し認定していきます。
<加害者への対応>
加害者とされる従業員に、これらの認定事実を示せば、ハラスメントの理解が不十分でも、事実の有無は確認することができます。そして、ハラスメント行為に該当することを丁寧に説明することになります。
嘘をついていても、これを覆す証拠や証言を突きつけることができます。
あとは、加害者の反省など態度を踏まえて、懲戒処分や人事異動を検討することになります。
<被害者への対応>
会社が認定した事実について、被害者に伝えます。
ついで、加害者に対する対応を説明します。
加害者とされている従業員について、ハラスメント行為が認定できなかった場合でも、会社が何をどこまで行ったかを説明することによって、ある程度の納得は得られるでしょう。
加害者のハラスメント行為が認定された場合でも、認定されなかった場合でも、被害者を異動させたり、退職させたりというのは誤った対応です。これでは、被害の申し出をした従業員から、会社が損害賠償の請求をされるリスクが高まります。
もっとも、被害の申し出をした従業員本人から、異動の希望や退職の申し出があった場合には、会社の一般的なルールに従って対応すれば良いでしょう。