2023/06/01|1,683文字
<フリーランス新法の成立>
令和5(2023)年5月12日、フリーランス新法(正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が公布され、1年半以内に施行される予定です。 この法律は、個人や実質個人で業務委託を受ける事業者(フリーランス)を「特定受託事業者」と位置付け、フリーランスに業務委託する者に対して、下請法と同様の規制をする他、限定的に労働者類似の保護を与え、違反に対しては行政の指導を可能とするものです。
<フリーランス新法の目的>
働き方の多様化が進む中で、フリーランスが事業者として受託した業務に、安定的に従事することができる環境を整備する必要があります。
そのため、フリーランスに業務委託をする事業者について、フリーランスの給付の内容その他の事項の明示を義務付ける等の措置を講じます。
これによって、フリーランスとの取引の適正化やフリーランスの就業環境の整備を図ります。
最終的な目的は、国民経済の健全な発展に寄与することです。
<対象となるフリーランス>
フリーランス新法では、適用対象となるフリーランスを「特定受託事業者」と呼んでいます。具体的には、次の2種類が規定されています。
・個人であって従業員を使用しないもの
・法人であって1名の代表者以外に役員や従業員がいないもの |
ここで、同居の親族は「従業員」には含まれません。
また、フリーランスが実質的に見て、労働基準法上の労働者に当たる場合には、労働基準法による保護を受けますから、フリーランス新法の適用はありません。
<フリーランスの給付の内容等の明示>
事業者がフリーランスに業務を委託した場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより、フリーランスの給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項を、書面または電磁的方法によりフリーランスに明示しなければなりません。
ただし、これらの事項のうち、業務委託の時点で、その内容が定められないことにつき正当な理由があるものについては、その明示をしなくてもよいのですが、その事項の内容が決まったら直ちに、書面または電磁的方法によりフリーランスに明示しなければなりません。
<報酬の支払期日>
事業者がフリーランスに業務を委託した場合の報酬の支払期日は、事業者がフリーランスの給付の内容について検査をするかどうかを問わず、給付を受領した日から起算して 60 日の期間内で、かつ、できる限り短い期間内で、定めなければなりません。
<業務を委託する事業者の遵守事項>
事業者は、フリーランスに業務を委託した場合は、次に掲げる行為をしてはなりません。
・ フリーランスの責めに帰すべき事由がないのに、フリーランスの給付の受領を拒むこと。
・ フリーランスの責めに帰すべき事由がないのに、報酬の額を減ずること。 ・ フリーランスの責めに帰すべき事由がないのに、フリーランスの給付を受領した後、フリーランスにその給付に係る物を引き取らせること。 ・ フリーランスの給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い報酬の額を不当に定めること。 ・ フリーランスの給付の内容を均質にし、又はその改善を図るため必要がある場合その他正当な理由がある場合を除き、自己の指定する物を強制して購入させ、又は役務を強制して利用させること。 |
事業者は、フリーランスに対し業務委託をした場合は、次に掲げる行為をすることによって、フリーランスの利益を不当に害してはなりません。
・ 自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。
・ フリーランスの責めに帰すべき事由がないのに、フリーランスの給付の内容を変更させ、又はフリーランスの給付を受領した後に給付をやり直させること。 |
<実務の視点から>
大企業では、すでに下請法対策やハラスメント防止対策に取り組んでいますので、これをフリーランスに拡張することで対応できるものも多いでしょう。
しかし、下請法の適用がないなどの理由から、対策に取り組んでいない中小企業では、フリーランス新法に対応するための対策に取り組まなければなりません。