2022/07/07|1,697文字
<職場における学び・学び直し促進ガイドライン>
令和4(2022)年6月29日、厚生労働省が「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」を策定し公表しました。
前年12月の労働政策審議会建議『関係者の協働による「学びの好循環」の実現に向けて(人材開発分科会報告)について』を踏まえ、労働政策審議会人材開発分科会では議論が重ねられてきました。
企業・労働者を取り巻く環境が急速かつ広範に変化し、労働者の職業人生の長期化も同時に進行する中で、労働者の学び・学び直しの必要性が益々高まっています。
変化の時代においては、労働者の「自律的・主体的かつ継続的な学び・学び直し」が重要であり、学び・学び直しにおける「労使の協働」が必要となります。
厚生労働省は、このような背景を踏まえて、ガイドラインを策定したと説明しています。
今回策定された「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」では、職場における人材開発(「人への投資」)の抜本的な強化を図るため、基本的な考え方や、労使が取り組むべき事項、公的な支援策等が体系的に示されています。
<基本的な考え方>
ガイドラインの基本的な考え方として、次の内容が示されています。
急速かつ広範な経済・社会環境の変化は、企業内における上司・先輩の経験や、能力・スキルの範囲を超えたものであり、企業・労働者双方の持続的成長を図るためには、企業主導型の教育訓練の強化を図るとともに、労働者の自律的・主体的かつ継続的な学び・学び直しを促進することが、一層重要となります。
労働者の学び・学び直しを促進するためには、労使が「協働」して取り組むことが必要となります。
特に、次の1~4が重要です。
1 個々の労働者が自律的・主体的に取り組むことができるよう、経営者が学び・学び直しの基本認識を労働者に共有
2 管理職等の現場のリーダーによる、個々の労働者との学び・学び直しの方向性・目標の「擦り合わせ」や労働者のキャリア形成のサポート。併せて、企業による現場のリーダーへの支援・配慮
3 キャリアコンサルタントによる学び直しの継続に向けた労働者に対する助言・精神的なサポートや、現場のリーダー支援
4 「労働者相互」の学び合い
学び・学び直しにあたっては、雇用形態等にかかわらず、学び・学び直しの基本認識の共有や、職務に必要な能力・スキル等の明確化を踏まえた学び・学び直しの方向性・目標の擦り合わせ、学びの機会の提供、学び・学び直しを促進するための支援、学びの実践・評価という、「学びのプロセス」を踏まえることが望ましいといえます。
学び・学び直しが実践されることで、学びの気運や企業風土が醸成・形成され、キャリアの向上を実現し、より高いレベルの新たな学び・学び直しを呼び込むという「学びが学びを呼ぶ」状態、いわば、「学びの好循環」が実現されることが期待されます。
<労使が取り組むべき事項>
また、労使が取り組むべき事項として、次の1~6が挙げられています。
1 学び・学び直しに関する基本認識の共有
2 能力・スキル等の明確化、学び・学び直しの方向性・目標の共有
3 労働者の自律的・主体的な学び・学び直しの機会の確保
4 労働者の自律的・主体的な学び・学び直しを促進するための支援
5 持続的なキャリア形成につながる学びの実践、評価
6 現場のリーダーの役割、企業によるリーダーへの支援
<解決社労士の視点から>
新型コロナウイルス感染症拡大前までの短期間に、人手不足が急速に進みました。
その過程で、人材を育成するのに必要な人手の確保も、育成される側のまとまった時間の確保も困難となりました。
また、未経験者を育て戦力化することよりも、即戦力の採用を強化する傾向が見られました。
働き方改革により期待された国全体の生産性向上も、IT人材・DX人材の確保も進んでいません。
こうした状況を打破するため、労働者の自律的・主体的かつ継続的な学び・学び直しを国が主導する事態となっています。
「利は仕入にあり」とはいうものの、これが困難な今、企業は「利は教育にあり」と心得て、人材育成や自己啓発の支援に取り組むべきでしょう。