2022/07/08|1,283文字
<懲戒処分の種類>
民間企業での懲戒処分の種類は、会社によって名称が違うものの、一般的には次のようなものです。
- 懲戒解雇
- 諭旨解雇 ― 自主的に退職を申し出てもらうよう促します
- 降格
- 出勤停止
- 減給
- 譴責(けんせき)― 始末書を提出させるなどして反省してもらいます
<懲戒処分の制限>
就業規則や労働条件通知書に具体的な規定があることが大前提です。
就業規則がなくて、新人に労働条件通知書も交付していない会社であれば、何も懲戒処分ができません。〔労働基準法第89条〕
こうしたルールが事前に表示されていないのに懲戒処分が行われたなら、使用者と労働者の関係ではなく、王様と奴隷の関係になってしまいますから当然のことです。
減給には、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならず、また、総額が1賃金支払い期における賃金の総額の10分の1を超えてはならないという制限があります。〔労働基準法第91条〕
賞与から減額する場合も同じです。
たとえば月給の総支給額が平均30万円なら、平均賃金の1日分は約1万円ですから、1つの減給処分でできる減給は約5千円です。
もし、いくつもの懲戒理由が重なって、いくつもの減給処分が重なっても、約3万円までとなります。これを超える減給は、労働基準法違反となります。
<懲戒処分の比較>
懲戒解雇と諭旨解雇とでは、就業規則で退職金の支払額に差を設けていることが多いので、退職金の支払がゼロとなりうる懲戒解雇が最も重い処分ということになります。
降格という処分は微妙です。
あえて懲戒処分にしなくても、人事考課で評価を下げるとか昇進を停止するとか左遷するなどによって同様の効果が得られるので、あえて懲戒処分とする必要性は疑わしいものです。
ただし、人事考課を含めきちんとした人事制度がない会社では懲戒処分も必要でしょう。
減給については、労働基準法の制限が厳しいですから、出勤停止のほうが重い処分になります。
たとえば、1週間の出勤停止であれば、就業規則に定めた計算方法に従って、給与からそれだけの欠勤控除ができます。
譴責の効果は、対象者によって大きく異なります。
普段から、事務職で文書作成を業務としている社員にとって、始末書の作成はあまり負担になりません。
減給1,000円のほうが辛いでしょう。
しかし、普段全く文書を作成しない社員にとって始末書の作成は大きな負担となります。
減給1万円のほうが楽かもしれません。
もっとも、譴責処分に必ず始末書の作成が伴うわけではなく、就業規則の規定によります。
<どの懲戒処分を選ぶか>
基本的には就業規則の定めに従うことになります。
しかし「懲戒解雇とする。ただし、本人が深く反省しているなど情状酌量の余地があるときは、諭旨解雇または降格にとどめることがある」などと幅を持たせる規定も多く見られます。
こうした場合には「どうして一段下の懲戒処分ではダメなのか」ということを、よく考えて決めることになります。
対象者によっては、減給より譴責のほうが辛いということもあるのですから、よく考えて一段軽い処分を選択するのも効果的でしょう。