常識とは違う誕生日と年齢の関係

2021/10/14|795文字

 

誕生日の前日に歳を取る

 

<誕生日の前日に1歳年をとる>

「年齢計算ニ関スル法律」という古い法律に次の規定があります。

 

年齢は出生の日より之を起算す

民法第143条の規定は年齢の計算に之を準用す

 

つまり、誕生日の前日の「午後12時」(2400秒)に年をとります。

「前日午後12時」と「当日午前0時」は、時刻としては同じですが日付は違うという理屈です。

学校でも、42日生まれから翌年41日生まれまでを1学年としています。

41日から翌年331日までの間に○歳になる生徒の集団ということです。

おそらく「誕生日に年をとる」だと、229日生まれの人は、4年に1回しか年をとらないので不都合だからでしょう。

2月29日生まれの人は、前日の228日に年をとることにして、救済しているのだと思います。

 

<就業規則にある定年の規定>

会社の就業規則で、「65歳の誕生日が属する月の月末をもって定年とする」なら勘違いは無いのですが、「65歳に達した日の属する月の月末をもって定年とする」だと、毎月1日生まれの人の定年退職日を間違えやすいのです。

たとえば、41日生まれの人の場合、前者の規定なら4月末で定年、後者の規定なら3月末で定年です。

間違った運用を長く続けているのなら、就業規則の方を改定しましょう。

 

<保険年齢という考え方>

満年齢で計算したうえで、1年未満の端数については6か月以下のものは切り捨て6か月を超えるものは切り上げて計算する方式があります。

端数についての「67入」です。

たとえば、299か月の保険加入者(被保険者)は30歳として取り扱われるわけです。

これは、保険年齢方式と呼ばれ、健康診断でも健診機関によっては個人の問診票にこの年齢が記載されます。

従業員から「私の年齢が1歳多い」というクレームが出ることもあります。

こうした場合には、健康診断のお知らせの中に保険年齢の説明を加えておくことをお勧めします。

つぎはぎだらけのハラスメント防止規程を見直しましょう

2021/10/13|1,951文字

 

パワハラの定義

 

<パワハラの定義の法定>

令和2(2020)年6月1日、労働施策総合推進法(正式名称:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律)が改正され、パワハラの定義が法定されました。

これをきっかけに、就業規則やハラスメント防止規程の見直しをした企業は多数に上ります。

しかしハラスメント対策は、セクハラ対策→パワハラ対策→マタハラ対策の順に進んだ企業も多いことから、社内規程が継ぎ接ぎだらけになっている恐れがあります。

また、社内規程の運用をする中で、新たに意識されるようになった問題も増えてきています。

これを機会に、ハラスメント防止に関する社内規程を、再度見直していただけたらと思います。

 

<セクハラ対策>

企業内でのセクハラ問題がクローズアップされた当初は、主に男性の女性に対するものが取り沙汰されていました。

やがて、女性の男性に対するセクハラが問題視されるようになり、現在では同性間のセクハラ防止が求められるようになっています。

もし社内規程の中に「異性」という言葉が含まれているならば、同性間のセクハラ防止が十分な内容となっているか確認することをお勧めします。

また、かつてはセクハラの直接の対象者の保護が重視されていましたが、今では周囲にいる従業員の被害や就業環境を害することが強く認識されています。

被害者は、決して行為の直接の相手方だけではないという視点からの規定となっているか、社内規程の内容を見直すことが必要です。

 

<パワハラ対策>

パワハラ対策については、法改正もあり、厚生労働省等の資料も充実していますので、企業の社内規程も完成度の高い内容に改正されているものと思われます。

労働施策総合推進法には、「労働者は、優越的言動問題に対する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる前条第一項の措置に協力するように努めなければならない」と規定されています。〔第30条の3第4項〕

ですから、パワハラ問題に対する関心と理解を高め、パワハラ行為を行わないように注意し、企業のパワハラ対策に協力するといった労働者の義務についても、社内規程に定めておきたいものです。

 

<マタハラ対策>

マタハラ対策についても、多くの企業で社内規程が充実していることでしょう。

ただ少子化対策は、政府が強力に推進し続けていますし法改正も盛んです。

これらに合わせた更新が行われているか、3か月に1回程度はチェックしましょう。

また、男性が育児休業に関連した制度を利用しようとしたとき、これに対して行われるハラスメント(パタハラ)についても、社内規程の充実が必要です。

 

<企業内相談窓口の運用>

相談者から得られたプライベートな情報については、相談者の許諾の範囲内での利用が許されます。

・誰のどのような情報であるかを明かさずに改善に役立ててほしい

・事実関係について誰の話か特定できないような形で情報を活用してほしい

・誰と誰についての話か公表してもかまわない など

相談窓口の趣旨に反しない限り、相談者の意向を尊重するルールとしたいです。

ただし、加害者にもプライバシー権がありますので、「公表」には加害者の同意が必要となることもあります。

また、加害者からの相談もあります。

「自分のした言動の相手方から『ハラスメントだ』と言われたが理解できない」のような相談です。

こうした場合の対応についても、企業内相談窓口が行うのか、どのように行うのかについてルールを定めておかないと、相談を受けた担当者が対応に困ります。

さらに、相談窓口に対するクレームも発生します。

これにどう対応するかのルールも必要です。

いきあたりばったりの対応では、社内での信頼を失ってしまいます。

 

<包括的・横断的規定>

ハラスメント対策が必要なのは、セクハラ、パワハラ、マタハラに限られません。

被害者が働けなくなったり退職したりすれば、企業にとって大きなダメージとなるのは、他のハラスメントでも同様です。

モデル就業規則第15条のような「第12条から前条までに規定するもののほか、性的指向・性自認に関する言動によるものなど職場におけるあらゆるハラスメントにより、他の労働者の就業環境を害するようなことをしてはならない」といった、すべてのハラスメントを禁止する規定が必要でしょう。

また、労働施策総合推進法には「業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより」ということが明示されています。〔前掲の第30条の3第4項〕

つまり、業務上必要かつ相当な範囲内の言動は、パワハラに該当しないということです。

これは、すべてのハラスメントに共通の内容ですので、パワハラのみについて規定するのではなく、共通の総論的な部分に規定するのがお勧めです。

暑すぎる/寒すぎる職場と法律の規制

2021/10/11|1,688文字

 

<労働安全衛生法>

快適な職場環境の形成について、基本的なことを定めているのは労働安全衛生法です。

略して安衛法と呼びます。

安衛法の目的について、第1条が次のように規定しています。

 

第一条 この法律は、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)と相まつて、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。

 

つまり、この法律は、次の2つのことを目的としています。

・労災を防止して労働者の安全と健康を確保する

・快適な職場環境の形成を促進する

 

<事業者の講ずる措置>

そして、快適な職場環境の形成を促進するために、会社など事業者に次のような義務を課しています。

 

第七十一条の二 事業者は、事業場における安全衛生の水準の向上を図るため、次の措置を継続的かつ計画的に講ずることにより、快適な職場環境を形成するように努めなければならない

一 作業環境を快適な状態に維持管理するための措置

二 労働者の従事する作業について、その方法を改善するための措置

三 作業に従事することによる労働者の疲労を回復するための施設又は設備の設置又は整備

四 前三号に掲げるもののほか、快適な職場環境を形成するため必要な措置

 

この条文の「努めなければならない」というのは、努力義務であることを示しています。

努力義務というのは、法律の規定に違反しても、刑事罰や過料等の法的制裁を受けない義務です。

結局、守られるか否かは当事者の任意の協力次第ですし、守られているか否かの判断も当事者の評価に委ねられることになります。

 

<快適職場指針>

会社など事業者が快適な職場環境の形成を促進する義務については、労働安全衛生法に基づき、厚生労働省が「事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針」を定めています。

その中の「温熱条件」という項目には、次のように定められています。

 

屋内作業場においては、作業の態様、季節等に応じて温度、湿度等の温熱条件を適切な状態に保つこと。

また、屋外作業場については、夏季及び冬季における外気温等の影響を緩和するための措置を講ずることが望ましいこと

 

<事務所衛生基準規則>

さらに、事務所内で事務作業に従事する労働者については、空気調和設備等による調整が可能である場合に限定して、事務所衛生基準規則に次の規定があります。

 

第五条 事業者は、空気調和設備又は機械換気設備を設けている場合は、室に供給される空気が、次の各号に適合するように、当該設備を調整しなければならない。

3 事業者は、空気調和設備を設けている場合は、室の気温が十七度以上二十八度以下及び相対湿度が四十パーセント以上七十パーセント以下になるように努めなければならない

 

これによると、事務所内は気温が17℃以上28℃以下、湿度が40%以上70%以下というのが基準になります。

つまり、年間を通してこの範囲内にあれば、法令の基準を満たしていることになります。

それでもなお、「暑い」「寒い」という話が出てくるのであれば、話し合いによる調整が必要となります。

 

<働き方改革との関係で>

働き方改革の定義は、必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革実現会議の議事録や、厚生労働省から発表されている数多くの資料をもとに考えると「企業が働き手の必要と欲求に応えつつ生産性を向上させる急速な改善」といえるでしょう。

ひとり一人の労働者が「暑い」「寒い」ということで生産性が低下しているのであれば、温度環境を整えることで生産性が向上するのは目に見えています。

設備投資と電気代を人件費と比べるだけでなく、定着率の向上や採用の困難性を考えて、どこまでの対応が必要なのか、経営者としての判断は難しいのかもしれません。

それでも、蒸し暑い部屋で採用面接を行った場合と、快適な室内で採用面接を行った場合とでは、辞退者の人数に違いが出てくるのではないでしょうか。

 

過労死基準の変更

2021/10/10|1,473文字

 

労災事故と被災者本人の過失

 

<過労死等防止啓発月間>

厚生労働省では、11月を「過労死等防止啓発月間」と定め、過労死等をなくすためにシンポジウムやキャンペーンなどの取組を行っています。

この月間は、「過労死等防止対策推進法」に基づくもので、過労死等を防止することの重要性について国民の自覚を促し、関心と理解を深めるため毎年11月に実施されています。

月間中は、国民への啓発を目的として、各都道府県で「過労死等防止対策推進シンポジウム」、「過重労働解消キャンペーン」として、長時間労働の削減や賃金不払残業の解消などに向けた重点的な監督指導やセミナーの開催、土曜日に過重労働等に関する相談を無料で受け付ける「過重労働解消相談ダイヤル」等が行われます。

ここで「過労死等」とは、業務における過重な負荷による脳血管疾患又は心臓疾患を原因とする死亡、もしくは業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡又はこれらの脳血管疾患、心臓疾患、精神障害をいいます。

 

<脳・心臓疾患の労災認定基準の改正>

厚生労働省は、「心理的負荷による精神障害の認定基準」を改正し、厚生労働省労働基準局長から都道府県労働局長宛てに通知しました。〔令和2年5月29日付基発0529第1号通達〕

そして今度は、「脳・心臓疾患の労災認定基準」が改正されました。〔令和3年9月14日付基発第0914第1号〕

従来は、業務による過重負荷を原因とする脳血管疾患や虚血性心疾患等については、平成13(2001)年12月に改正された「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準」に基づき労災認定が行われていました。

しかし、改正から約20年が経過する中で、働き方の多様化や職場環境の変化が生じていることから、最新の医学的知見を踏まえて、「脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会」において検証等を行い、令和3(2021)年7月16日に報告書が取りまとめられ、認定基準が改正されたものです。

 

<改正前の基準>

業務の過重性の評価基準として、改正前の基準はそのまま維持されています。

これは、長期間の過重業務を基準とするものです。

・発症前1か月間に100時間または2~6か月間平均で月80時間を超える時間外労働は、発症との関連性が強い。

・月45時間を超えて長くなるほど、関連性は強まる。

・発症前1~6か月間平均で月45時間以内の時間外労働は、発症との関連性が弱い。

労働時間以外の負荷要因としては、 拘束時間が長い勤務、 出張の多い業務などが挙げられています。

 

<改正後の基準>

業務の過重性の評価基準として、従来の認定基準に新たに追加されたのが次の内容です。

まず、長期間の過重業務を基準とするものに以下が加わりました。

・改正前の基準の水準には至らないがこれに近い時間外労働があり、一定の労働時間以外の負荷もあった場合には、業務と発症との関連が強いと評価。

・勤務間インターバルが短い勤務、身体的負荷を伴う業務なども、評価対象とする。

また、短期間の過重業務であっても「発症前おおむね1週間に継続して深夜時間帯に及ぶ時間外労働を行うなど過度の長時間労働が認められる場合」等、異常な出来事があった場合には、業務と発症との関連性が強いと判断できる。

 

<解決社労士の視点から>

新たに加わった基準により労災と認定される事例は、これから出現してくることになります。

しかし少なくとも、従来の労災認定基準が一段緩和され、認定されやすくなったことは確かです。

「雇い主である会社側の責任もそれだけ重くなった」と言えます。

残業削減の具体的な手法(働き方改革)

2021/10/09|1,974文字

 

残業の削減方法

 

<必要性の高くない業務をやめる>

「昔からこの業務をやっているから」というのは、無駄な業務である可能性が高いといえます。

なぜなら市場は変化し、これに対応する企業の業務も変化するわけですから、昔から行っている業務ほど無駄な業務である可能性は高いのです。

「もし、この業務をやめてしまったら」と仮定してみて、特に支障が無いのであれば直ちにやめましょう。

多少の不都合がある場合でも、それには目をつぶるとか、やり方を変えて時間を短縮できます。

ひとつの部門で無駄な業務を削減しようとしても、何が無駄なのか分からないことがあります。

関連する複数の部門で意見交換すれば、「その資料はもう要らないよ」という話が出てくるでしょう。

 

<ダブって同じ業務をやらないようにする>

上司が部下の仕事の具体的な内容を把握できていないことがあります。

これは上司が悪いのではなく、把握する仕組みが無いために起こる現象です。

上司が部下の仕事を具体的に把握できる仕組みがあれば、同じ仕事を複数の社員が行っているという無駄は省けます。

また、上司が部下の仕事内容を具体的に把握できている場合でも、別の部門とダブって同じ仕事を行っているケースは多いのです。

たとえば、総務、人事、経理で仕事内容の比較をすると、似通った業務があります。

どこか一つの部署でまとめて行えば、全体の労働時間が減少します。

 

<業務に必要な情報を社内外で共有する>

名刺情報を社内で共有するシステムは一般化しています。

小さな会社でも、「来週の火曜日は取引先の〇〇さんがお休み」という情報を共有すれば、その取引先に無駄な連絡を取ることが無くなります。

また、その取引先にとっても煩わしさが軽減されます。

情報の共有は、パソコンのサーバーを活用するなどITの活用が中心となりますが、専門的な知識は不要です。

できるところから実行に移しましょう。

 

<会議・打合せの廃止・短縮>

定例の会議というのは、必要性が疑われます。

その会議によって得られる効果がどのようなものであるか、具体的に検討して、よく分からなければ一度やめてみたらどうでしょう。

それで不都合が無いのであれば、廃止するのが正しいのです。

たとえ必要な会議であっても、本来の勤務時間外にはみ出してしまうようなものは開催時間帯の再検討が必要です。

また、会議の時間を2時間に設定していたところ、1時間で結論が出たので、あとの1時間は雑談や意見交換というのも見直したいです。

本当に必要な会議や打合せというのは、法定のものを除き、驚くほど少ないものです。

 

<その業務を行う日時の見直し>

たとえば、「業務日報はその日のうちに」というルールを設定すれば、当然に残業が発生するでしょう。

しかし、上司の自己満足ではないのかなど、これが本当に必要なのかを検討して、期限を延ばすとか、日報ではなく週報や月報にできないかなど、検討の余地が大いにあります。

 

<空き時間の活用>

手が空いてしまう時間があります。

こんなとき雑談したり仮眠を取ったりも良いのですが、「手が空いた時やることリスト」を作っておいて、これを行ってはいかがでしょうか。

書類のファイリング、不要書類の廃棄、徹底清掃、OJT、ロールプレイイングなど、「時間のある時にやろう」と思えることをリストアップしておいて、実際に行うということです。

 

<役割分担の見直し>

「全員が必ず」という仕事を、得意な人に集中して任せてしまうことが考えられます。

任された人は、その能力が高いのですから、給与が上がって当然です。

その分、負担が減った社員に別の仕事を任せるとか、見合った待遇を考えるとか、調整することも必要になります。

 

<スキルの向上>

社員の能力が向上するというのは、本人にとっても嬉しいものです。

資格を取得して業務に活用している社員に資格手当を支給するというのが一般的ですか、資格取得に必要な経費を会社が負担するという形もあります。

客観的に認められる形で能力の向上が示されるのであれば、他の社員も納得できますし、社員にとっても、能力向上へのモチベーションが高まります。

いずれにせよ、会社が負担する経費以上に、その社員が会社の利益に貢献してくれるのなら生産性が向上します。

そして、業務内容が同じであれば、それに要する時間も短縮されています。

 

<新たなツールの導入、運用の改善>

マニュアル、チェックリスト、予定表、目標達成グラフなどを新たに導入することにより、効率が上がったり、モチベーションがアップしたりということがあります。

ミスの軽減になったり、情報共有による効率化を図れたり、いずれにせよ労働時間の短縮につながります。

また、今使っているツールについても、そのツールを導入した目的に立ち返り、より良い活用法を考え、場合によっては廃止することも考えましょう。

労災防止も転ばぬ先の杖

2021/10/07|883文字

 

<転倒予防の日>

10月10日は、日本転倒予防学会が制定する転倒予防の日です。

「テン、とお」の語呂合わせです。

職場での転倒災害は、休業4日以上のものに限っても、令和2(2020)年に30,929件と労働災害で最も多く、さらに増加傾向にあります。

転倒災害は、その約6割が休業1か月以上と重症化するものも多く、特に50代以上の女性で多く発生しています。

転倒予防は、政府の目指す女性や高齢者の活躍できる社会の実現のためにも、大変重要な課題です。

具体的な予防策としては、次のようなものが有効です。

 

<整理・整頓・清掃・清潔>

いわゆる4Sです。

事故の発生しやすい通路、階段、出口に物を放置せず、定位置管理を徹底します。

また、床の水たまりや氷、油、粉類などは放置せず、その都度取り除きます。

定期的な清掃も大事ですが、転倒を予防するには「その都度」の清掃が必要です。

 

<危険の見える化>

ヒヤリハット活動により、転倒しやすい場所の危険マップを作成し、周知すると効果的です。

また、段差のある箇所や滑りやすい場所など、転倒事故が発生しやすい箇所に注意を促す標識を付けましょう。

十分に大きな文字と図を併用すると効果的です。

 

<設備の改善>

通路や階段を安全に移動できるように十分な明るさ(照度)を確保します。

節電の観点からも、一般の電球や蛍光管よりもLEDライトがお勧めです。

職場環境の改善等のために、エイジフレンドリー補助金も活用できます。

 

<転倒・腰痛予防体操>

これはかなり効果的であることが知られており、労働基準監督署が労災関係の監督に入ると推奨することが多いと思います。

ストレッチや転倒予防のための運動を朝礼の内容に取り入れるなど、無理無く習慣化することが大事です。

 

<転倒予防教育>

ポケットに手を入れたまま歩かない、滑りにくくちょうど良いサイズの靴を履くなど、基本的なことほど効果があります。

また、転倒・腰痛予防体操は職場だけでなく、休日等に自宅で行うことも必要ですから、こうした指導も行いましょう。

YouTubeで、転倒・腰痛の予防に役立つ「いきいき健康体操」も公開されています。

 

解決社労士のご紹介

労災事故の発生と本人の過失

2021/10/05|1,405文字

 

労災事故と被災者本人の過失

 

<労災保険の適用>

労災認定にあたっては、被災者本人の過失は問題とされず労災保険が適用されることになります。

仮に、被災者本人に過失があれば労災保険は適用されないのだとすると、労災保険は適用範囲が著しく制限されてしまいますから、制度そのものの存在意義が薄れてしまいます。

ところが現実には、被災者本人の不注意を反省させる意図があってか、上司から「自分の過失だから労災にはならない」という誤った説明が行われることもあるようです。

 

<労災事故の発生原因>

労災事故の発生原因として、その責任の所在から考えると次のようなパターンが考えられます。

・被災者本人に過失がない場合

・被災者本人にも使用者にも過失がある場合

・被災者本人だけに過失がある場合

・被災者本人が故意にケガをする場合

なお、通勤災害については、被災者本人の過失の他、道路の管理者、鉄道会社、バス会社などの落ち度が考えられます。

使用者の過失というのは、ほとんど問題にされることがありません。

 

<被災者本人に過失がない場合>

まず、使用者側に責任がある場合として、滑りやすい床の上で作業するにあたって会社から支給された靴を履いていたが、その滑りやすさから会社に改善を求めていたが拒否され、実際に事故が発生してしまったなどのケースが想定されます。

あるいは、設備の安全点検が不十分で、天井からの落下物によりケガをするケースも考えられます。

また、酔ったお客様から理由なく突然に暴行を受けて転倒しケガをするような第三者行為災害もあります。

これらの場合には、「自分の過失だから労災にはならない」という誤った説明がなされることは稀でしょう。

 

<被災者本人にも使用者にも過失がある場合>

これが労災事故では最も多いでしょう。

たとえば、被災者本人の過失が認められるものの、適切な指導教育が不足していたり、危険個所に危険を知らせる表示が無かったりと、使用者側にも落ち度がある場合です。

使用者としては、被災者本人の過失のみに注目して「自分の過失だから労災にはならない」という誤った説明が行われやすいケースです。

しかし、きちんと労災の再発防止を考えた場合には、使用者の行うべきことが数多く見つかりますので、被災者本人の過失に片寄って責任が追及されることは少なくなります。

 

<被災者本人だけに過失がある場合>

設備、機械、器具などに安全上の問題点はなく、被災者本人に対する指導教育も十分で、危険個所の表示も適切であって、本人の不注意以外に原因が見当たらないような場合もあります。

被災者本人がルールを無視して行動し被災してしまう場合や、椅子を傾けて座っていて椅子ごと倒れてしまう場合などが考えられます。

このような場合であっても、労災認定され労災保険が適用され給付が行われるのが一般です。

 

<被災者本人が故意にケガをする場合>

一般には、労災保険の適用対象外となります。

しかし、過重労働やパワハラなどによって、被災者本人が精神障害に陥り自傷行為に及んだような場合には、労災事故と認定されることがあります。

 

<労災の判断権者>

そもそも事故が起こってケガ人が出た場合に、それが労災となるかどうかの判断は、所轄の労働基準監督署(労働局)が行います。

使用者や被災者本人の判断が、そのまま有効になるわけではありません。

労災認定について疑問がある場合には、労働基準監督署や社会保険労務士に相談することをお勧めします。

将来の老齢年金受給額を増やすには

2021/10/04|1,003文字

 

年金手帳の再発行

 

<従業員の心理>

給与明細書を見て「社会保険料が高い」と嘆いていた社員も、老齢年金の受給開始年齢が近づくと自分の受給予定額を知ることになり、「思ったよりも少ない」という感想を抱くことが多いものです。

さらに、将来の年金額を増やしたいと考える従業員も少なくありません。

このニーズに応える方法としては、次のようなものがあります。

 

<繰り下げ>

特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)を受給できる人を除き、老齢年金の受給開始年齢は原則として65歳です。

この受給開始時期を66歳以降に遅らせることによって、老齢年金の受給額を増やすことができます。

この場合、年金受給開始年齢は上がるわけです。

しかし紛らわしいことに、年金の「繰り下げ」と呼んでいます。

老齢年金の受給額は、繰り下げ1か月につき0.7%の増額となります。

最長で10年間繰り下げることができますから、最大で84%増額できる計算です。

老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方を受給できる場合に、両方を同時に繰り下げることもできますし、片方だけ繰り下げることもできます。

年金受給者に妻や子がいると加算される「加給年金」という仕組もあります。

老齢厚生年金を繰り下げている期間中は、加給年金を受給できませんので、老齢基礎年金だけを繰り下げると得なこともあります。

 

<70歳まで働く>

働いて厚生年金に加入し続けていれば、70歳までは、加入期間が延びることによって年金額も増えます。

働いて収入がある期間だけ年金の繰り下げをすることも考えられます。

会社としては、65歳以降も継続勤務して欲しい社員に対しての説得材料ともなります。

 

<追納>

経済的な理由で、国民年金保険料の全部または一部の免除を受けた期間がある人は、その内容に応じて年金額が減額されます。

この場合、10年以内に追納すれば、追納した保険料が年金額に反映され受給額が増えることになります。

学生納付特例制度など、国民年金保険料の納付猶予制度を利用した人は、そのままでは年金額が減額されてしまいます。

この場合にも、10年以内に追納すれば、追納した保険料が年金額に反映され受給額が増えることになります。

 

<任意加入>

老齢基礎年金が満額でない場合など、60代前半で厚生年金に加入していなければ、国民年金に任意加入して、満額となるまで受給額を増額することができます。

 

上記の他にも、付加年金や国民年金基金制度を利用することもできます。

社労士事務所との契約解除

2021/10/03|818文字

 

社会保険労務士の顧問契約

 

<柳田事務所の契約>

基本契約書の中に次の条項があります。

 

第4条 契約の解除

 甲乙双方は、次の各号のいずれかに該当する場合、直ちに本契約を解除することができる。

⑻ 所期の目的が達成されたとき

 

つまり、顧問契約は交わしたけれど、必要が無くなったので契約を解除したいという場合には、いつでも解約できるという条項です。

企業が社会保険労務士と顧問契約を交わすのは、会社設立に際して手続がわからない、算定基礎届や年度更新などの手続がわからない、労働トラブルへの対応方法がわからないなどの事情があるときです。

しかし、社会保険労務士の指導のもと、必要なノウハウが顧問先に伝授されたなら、自社で何とかなるわけですから、顧問の社会保険労務士は要らなくなるはずです。

そこまで行かなくても、柳田事務所では顧問先が成長すると顧問料が減額していく仕組を採用しています。

顧問先の手がかからない分、顧問料は安くなって当然だと思います。

 

<顧問契約の重要性>

会社が従業員を雇う場合には、労働条件通知書や雇用契約書によって、基本的な労働条件を書面で示すことが労働基準法によって義務づけられています。

ところが、社会保険労務士が企業の顧問となる場合には、契約書の作成が義務付けられているわけではありません。

顧問契約については、社会保険労務士から企業に対して説明する義務があります。

これは法的な義務というよりも道義上の義務です。

顧問料でどこまでの業務を行うのか、どの業務は顧問料の範囲外になるのかということが書面で確認されないのはトラブルの元です。

顧問料の請求があった場合に、なぜその金額になるのか明確な基準が無ければ企業にとっても不安です。

今、顧問の社会保険労務士がいる場合には、顧問契約書の内容を再確認していただきたいですし、これから社会保険労務士と顧問契約を交わしたいと思っている企業様は、契約の内容について十分な説明を受けたうえで、契約締結に臨むよう強くお勧めします。

高校生アルバイトの労働条件

2021/10/02|820文字

 

労働者本人の同意

 

<高校生の時給>

最低賃金法の制限があります。

高校生でも同じ最低賃金です。

試用期間でも最低賃金を下回ることはできません。

例外的に都道府県労働局長の許可を受けたときは、最大2割減額できるというのが最低賃金法に規定されています。〔最低賃金法第7条〕

しかし、ほとんど許可の実績がありません。

 

<17歳までの労働時間>

1日8時間を超える勤務はできません。

平均ではなく、どの日も8時間までです。

1週間で40時間を超える勤務はできません。

就業規則に特別な定めがなければ、日曜日から土曜日までの7日間で計算します。

日曜日から土曜日まで7日間連続で勤務することはできません。

また、フレックスタイム制などの変形労働時間制は使えません。

 

<17歳までの勤務時間帯>

午後10時以降翌日午前5時までは勤務できません。

 

<17歳までの業務内容の制限>

重量物の取り扱いについては、次の表のとおりの制限があります。

年齢と性別

重量の制限

たまに持ち上げる場合

続けて持ち上げる場合

15歳まで

12キログラム未満

8キログラム未満

15キログラム未満

10キログラム未満

16・17歳

25キログラム未満

15キログラム未満

30キログラム未満

20キログラム未満

運転中の機械・動力伝導装置の危険な部分の掃除、注油、検査・修繕をさせ、運転中の機械・動力伝導装置にベルト・ロープの取付け・取りはずしをさせ、動力によるクレーンの運転をさせ、その他厚生労働省令で定める危険な業務に就かせることはできません。

毒劇薬、毒劇物その他有害な原料・材料または爆発性、発火性、引火性の原料・材料を取り扱う業務、著しくじんあい・粉末を飛散し、有害ガス、有害放射線を発散する場所または高温・高圧の場所における業務その他安全、衛生または福祉に有害な場所における業務に就かせることはできません。

坑内労働に就かせることはできません。

 

※以上の内容には特別な例外もあるのですが、成人と同じようには扱えないということです。

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