同一労働同一賃金というより公正待遇

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2019/10/18|1,870文字

 

<同一労働同一賃金の説明>

「同一労働同一賃金」という言葉を素直に読めば、「同じ仕事をしている人には同じ賃金を支払う」という意味に取れます。

ところが、同一労働同一賃金について、厚生労働省は次のように説明しています。

 

【同一労働同一賃金とは】(厚生労働省ホームページより)

同一労働同一賃金の導入は、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。同一企業内における正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消の取組を通じて、どのような雇用形態を選択しても納得が得られる処遇を受けられ、多様な働き方を自由に選択できるようにします。

 

「同じ仕事をしている」というキーワードは現れず、雇用形態間の不合理な待遇差を問題視しています。

 

<法律の規定>

また、同一労働同一賃金に関わる労働契約法第20条は、次のように規定しています。

 

【期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止】

第二十条 有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

 

こちらにも、「同じ仕事をしている」というキーワードは現れず、有期契約と無期契約とで不合理な待遇差はいけないと言っています。

 

厚生労働省の説明と労働契約法第20条を合わせると、契約形態や雇用期間の有無の違いによって、不合理な待遇差があってはならないと言っているのです。

 

<働き方改革関連法>

「パートタイム労働法」は、法改正により「パートタイム・有期雇用労働法」となり、令和2(2020)年4月1日から施行(中小企業は令和3(2021)年4月1日から適用)されます。

短時間労働者だけでなく、フルタイム有期雇用労働者も法の対象に含まれることになりました。そのため、法律の名称も、「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(略称「パートタイム・有期雇用労働法」)に変わります。

この中には、「同じ仕事をしている」場合についての規定があります。

 

【通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止】

第九条 事業主は、職務の内容が通常の労働者と同一の短時間・有期雇用労働者(第十一条第一項において「職務内容同一短時間・有期雇用労働者」という。)であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるもの(次条及び同項において「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」という。)については、短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならない。

 

つまり、「同じ仕事をしている」のであれば、正社員、パート社員、契約社員という違いにかかわらず、待遇を差別せず平等にしなさいとしています。

ここでやっと「同一労働同一賃金」という言葉に対応する規定が現れました。

一方で、労働契約法第20条に相当する規定も、そのまま残されています。

 

<同一労働同一賃金の意味>

こうして見ると、「同一労働同一賃金」という言葉には、次の2つの意味が含まれていることがわかります。

 

均等待遇 = 職務、責任、異動の範囲、その他の事情が同じであれば、同じ待遇にする。

均衡待遇 = 職務、責任、異動の範囲、その他の事情が違えば、その違いに応じてバランスの取れた待遇にする。

 

均等待遇は、同じ仕事なら同じ待遇にするという「平等」の考え方です。

均衡待遇は、違う仕事なら違いに応じた合理的な待遇にするという「公平」の考え方です。

「平等」と「公平」を両方含む概念は、「公正」でしょう。

だとすれば、「同一労働同一賃金」は「公正待遇」と呼んだ方がわかりやすいでしょう。

各企業は、不平等や不公平の無い「公正待遇」の実現を目指して変革を遂げるよう迫られているのです。

 

解決社労士 柳田 恵一